しかも番外編です
牢屋に入れられてどれくらいたっただろうか。
なにぶんここには日の光が入らないうえに、食事の時間も適当だ。これじゃあ日にちの間隔だって失う。
「どうしたもんかねえ」
そういって鉄格子の向こう側にかけてあるデルフを見た。
いつも口うるさく騒がしい彼は、今は鞘の中に収められているせいでしゃべることもままならない。
なぜ彼が私の牢屋の前においてるかというと、私が牢屋に入るときにデルフが私の近くにおいてくれと騒ぎ立てたかららしい。
らしい、というのは、私が気絶して目覚めたときには、すでにデルフと離されていて、収容されてから何日かして突然兵士がデルフを持ってきて事情を教えてもらったからだ。
なんでも
『こんなさびれた剣に一体何ができるってんだい! それともなにか、トリステインの兵士ってのはさびた剣ににすら怖気づく臆病者の集まりなのかい?』
とかなんとかのたまったらしく、彼の要求を飲まないことは、自分たちトレステインの兵士が臆病者だと認めるのと同義だということで、晴れて私の牢屋の前を確保したということらしい。
しかしさすがに騒ぎすぎたのか鞘に入れられてしまった。
「…」
いつも騒がしいデルフがこんなに静かだと、さらに静かに感じてしまう。
「別に私にこだわることなんてなかっただろうに。」
デルフは剣だ、しかもインテリジェンスソードというしゃべる剣だ。私になんかこだわらずのだれかもっとちゃんとした持ち主のところに届けてもらえばよかったものを、こんな女についてくるなんて…。
「馬鹿だねえ」
肌寒いはずの牢屋が、少し暖かく感じた。
それからまた何日かしてからそいつはやってきた。
「貴様が土くれのフーケか。」
帽子を深めにかぶり顔を隠した男がいた。見るからに怪しい男だ。
見ると見張りが二人倒れている。
「なんだいあんたは。」
「質問しているのはこっちだ。答えてもらおう」
直後に思った。
私はこいつが好きじゃない。
「そうだよ。私が土くれのフーケさ。」
「貴様に仕事がある。引き受けてくれるというのならば、そこから自由にしてやろう。」
どうするか、答えは考えるまでもなかった。
「話を聞かせてもらおうか」
私はここで立ち止まるわけにはいかないんだ。あの子と、あの子が大切にしているものを守るためだったら、私はどんなことでもして見せる。
その日の夜、ある地下牢から、一人と一本が消えた。
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それは未だ誰も知らぬ伝説の始まりだった