水の音がする
水に揺蕩う音がする
ここはどこで 俺は誰だろう
『問◾️う、◾️◾️が私◾️マ◾️◾️ーか?』
これは……なんだろう
『もし、◼️◼️しが◼️い◼️◼️なっ◼️ら
◼️◼️は◼️ってくれ◼️すか?』
なぜ…懐かしく思うのだろう
『………うん。◼️◼️◼️は、こんなコト◼️っちゃダ◼️なん◼️◼️ど…◼️◼️◼️は、明◼️も◼️いに◼️てくれる?』
なぜこんなにも心揺さぶられるのだろう
『◼️けた者が女なら◼️すな。目◼️◼️で◼️なれるのは、◼️◼️に応◼️るぞ』
悲しいのか
『◼️◼️◼️、◼️方にとって◼️はその程◼️の存在◼️すか』
思い出すのが辛いのか
『……ちゃった。◼️◼️し、◼️しちゃった。あんなに◼️◼️にして◼️れてたのに、わた◼️、◼️◼️◼️を、◼️し、ちゃった───』
消えてゆくのが虚しいのか
『◼️ったよね、兄貴は妹を守るもんなん◼️って。 ええ。◼️は◼️◼️◼️ゃん◼️もん。なら、◼️を◼️らなくっちゃ』
分からない
『僕はね、◼️◼️◼️◼️◼️になりたかったんだ』
もう何も分からない
水の音が聞こえる 何かが消えていく
水の音が聞こえる 何が掠れていく
水に溶けて 何かが終わって
意識が消えた
♢♢♢♢♢♢♢
暗かった意識に光がともり徐々に明るくなっていく
身体に感覚が生まれ 指先が空気の流れを感じ取り始める 呼吸の感触と自分の心臓の音が聞こえくる
目を開けると 空気に触れた反射だろう 涙が溢れた
熱い雫が頰を伝う、何か夢を見ていた気がするが何も思い出すことはなかった
滲んだ視界がクリアになった頃 白衣を着た男がやって来た
「やあ! 目が覚めたようだね
私のことがわかるかい?」
喜色を浮かばせ なにやら楽しそうに男が問う
上体を起こし至極当然のように口を開く
そんな事…………"知らない筈がない"
俺を創った 俺を生み出した
"天才"科学者 【Dr.ジェイル・スカリエッティ】だ
……データに一部 ナルシズムを感じるが気にしてはいけない
「ふむ…情報入力は上手く出来ているようだね
なら自分の事も分かっているね?」
もちろんだ俺は…
「俺は 戦闘機人 code.Archer これよりドクターの指揮下に入る」
頭に刻み込まれた情報を確認するように復唱した
そう 俺は戦闘機人 正確にはナンバーズとは別アプローチでの強化を成された、レリックを使用した人造魔導師とのハイブリットだ
「うん 君の誕生を祝福しよう これから家族としてよろしく頼むよ 『シロウ』」
シロウ
聞き慣れたようで覚えのない単語に一瞬思考が停止する 胸に痛みが走った様な気もしたが、すぐに消えてしまった
「シロウって…俺の名前はArcher じゃないのか?」
「それだと味気ないし 何より呼びにくいからね
名前はシロウということに今決めた」
あっけらかんと言う様子呆れつつ自分の開発コードがArcher で自分の個体名をシロウという風に記録する
ドクターがわざわざこの名前を与えた真意は分からないが 『今決めた』と言うぐらいだし深い意味はない
ただの気まぐれなのかもしれない
『カシュッ』
背後でドアの開く音が響いた誰か入って来たようだ
「ドクター 、シロウはもう起き………」
目が合った
合ったと思ったら視線が下にずれる
そう、丁度 俺のへその下あたりまで……
一瞬動きが止まったと思うと目線を逸らしながら俺の方に歩いて来た
そして…
『ドゴォォッ!!』
「ふげっ!?」
いきなりゲンコツを食らった
しかも割と本気っぽい力で…戦闘機人じゃなかったら頭蓋ぐらいは陥没していたかもしれない
「なんでさ……」
「下くらい履かんかバカモノ!」
言われて初めて気がついた………
俺 全裸だ
慌てて着るものを探すと自分のすぐ横に簡素な服が置いてある 上は白地に肩から手首にかけて薄紫の線が入ったシャツで下は濃い紺色のズボンだ、一見すると何かの制服のようにも見える
それらを手に取り、縮こまるようにして着替えた。
(それにしても、目が覚めたときドクターが言ってくれればこんな事にはならなかったのに……)
そう思いドクターを睨む
恨めしそうな視線に気が付いたのか、くつくつと笑いながらドクターは言う
「いや、私も言おう思っていたのだがね あまりに堂々としていたから気づいていると思ったのだよ」
絶っっっ対、嘘だ!面白がって敢えて言わなかったに違いない。
そうじゃなきゃ、あんな悪い笑みは浮かべないだろう
「ゴホンッ!」
背後でわざとらしい咳払いがされる
「お前の戦闘指導を担当する事になったトーレだ以後よろしく頼む」
彼女は少し固い、けれど親しみを感じさせる表情で
そう言って右手を差し出してくる
「あ、ああ よろしく えぇっと……トーレ姉!」
「ね、姉ぇ? やっ、やめんか!トーレでいいトーレで!!」
トーレ姉が少し赤面しつつ顔を背けた
不覚にもちょっと可愛いと思ってしまう
「いいじゃないかトーレ、初めての弟だろう?」
ドクターも意地悪く微笑みながらオレに加勢してくる
トーレ姉は暫く葛藤していたがやがて観念したように溜息をつき
「分かったそれでいい 、呼びやすいように呼ぶのが一番理にかなっているしな……うん…」
どこか無理やり自分を納得させているように見えるが一応、許可は貰えたので良しとしよう
「それにしても、なんで此処に?」
ずっと気になっている疑問をぶつけてみる
「挨拶…と言うのも理由の一つだがドクターの事だから此処の案内もしてくれないだろうからな、
研究所内の案内と此処にいる他のメンバーの紹介を済ませようと思って来た。」
成る程。確かに納得の理由だドクターは全裸すら指摘してくれなかったぐらいだし…
「この研究所には私とドクター、そしてお前以外には二人しかいない。
まあ二人共今は作業中で顔は出せなかったが、案内するついでに会いに行くとしよう」
そう言ってトーレ姉はドクターに向き合った
「と言うわけでシロウはお借りします」
「ああ、ちゃんと案内してあげなさい
私もチンクとクアットロの調整に戻ろうかな
予定より二週間程遅れてしまっているのでね」
ドクターが怪しく目を光らせながら言う
オレとトーレ姉はすっかり研究者モードになったドクターに背を向けその部屋を後にした
♢♢♢♢♢♢♢
モニターが立体的に並び様々なデータが映し出されている 不規則に浮かぶそれらは目眩を起こしそうな程大量に流れている
そんな部屋の中心で薄紫の少しウェーブがかかった長髪で背筋をスッと伸ばし 薄く微笑んでいる女性が目の前に座っている
「ドクターから話は聞いているわ
私はウーノ、主にドクターのサポートやシステム面での防衛が仕事よ
これからよろしくね」
「あっ…はい、よろしくお願いします、ウーノさん」
しどろもどろになりながら返す
忙しくキーボードを叩いていたのをわざわざ呼び止めて挨拶して貰ったので気が引けてしまったのかもしれない
そんな様子がおかしかったのか、ウーノさんはクスリと笑った
「そう緊張しなくてもいいわよ、トーレみたいに呼んで頂戴」
「そう…ですか? じゃあ よろしくウーノ姉」
そう言うとウーノ姉は満足そうに頷いた
と、何故かトーレ姉の肩震えている、何かあったのだろうか?
「待て…なぜ私がトーレ姉と呼ばれている事を知っている…」
そういえばそうだこの部屋に来てからは一度も言っていないはず、精々案内の途中に数回呼んだくらいだ
「まさか…見てたな」
恨みがましそうにトーレ姉がウーノ姉を睨む
ウーノ姉はそれを涼しい顔で受け流す
その態度に何も言えないトーレ姉を見るとなんとなく力関係が見えてくるようだ
関係はもちろんウーノ姉>トーレ姉だ
「ドゥーエもいればよかったのだけれど
ついさっき任務に戻ってしまったのよ
だからまた後日挨拶しに行くといいわ、ちなみにドゥーエは あなたの対人スキルの指導に当たる予定よ」
対人スキル? 耳慣れない言葉に困惑する。人と対するというぐらいだから格闘術の一種だろうか?
俺の困惑を察したらしくトーレ姉が言う
「対人スキルと言うのは、自然な会話や態度、仕草などの事だ誘導尋問や思考操作も含まれるがな
私は苦手なのでドゥーエに任せた」
あんまりにもキッパリと言うものだから少し感心してしまった
しかし自分のできない事を気付けているというのは尊敬すべきところなのだろう
それにしても対人…会話技術が……
成る程、確かにトーレ姉は苦手そうだ……
♢♢♢♢♢♢♢
「さて…もう粗方案内は終わったし、あとは自室だが…空き部屋があるから自由に使っていい。
今日は稼働したばかりだし もう休んでおけ」
そう言って空き部屋の多い棟まで連れてこられた
どの部屋も簡素なベットと机 水洗一式が揃っている
飾り気のない部屋だが、まぁ部屋ってゆうものは大体そう言うものだろう
「うん、ありがとトーレ姉 。じゃあおやすみ」
「ああ、また明日」
案内してくれたトーレ姉にお礼を言って簡単に挨拶を済ませる。トーレ姉も俺に気を使って長居する事なくさっさと出て行ってしまった
『ドサッ』
ベットに倒れこむ 意外とこの研究所は広く説明を聞きながらだったからか、すべて回るのに3時間も掛かってしまった。幾ら戦闘機人とは言え稼働仕立てでこれだけ歩くのは割と辛かった。
「明日から…頑張らなきゃな」
なんてったて訓練や調整で大忙しだ。トーレ姉によると固有武装やISの試運転もしなければならないとのことで暫くは大変そうだ
徐々に目蓋が重くなってくる
自分で思っていたよりも一層疲れていたようだ
色々と考えるのは明日にして 今はただこの眠気に身を任せよう…
そうしてオレは1分も経たないうちに眠ってしまった