戦闘機人 code.Archer   作:國真流

3 / 23
2/鑑定

sideスカリエッティ

 

 

 

先日、私はとても興味深い素体を手に入れた

 

切っ掛けは、そう 【起源弾】という遺失物を手に入れた事だった

【起源弾】自体は闇オークションで競り落とした物だ。

しかし効果を疑う声が大きく私以外に興味を持った者はほとんどいなかった

そのオークションは実用品を欲しがる 所謂マフィアやテロリスト、そして私のような違法研究者が主なものだったのも理由の一つだろう

コレクターらしき者も居ないではなかったが【起源弾】には興味は持たなかったようだ

 

かくいう私自身も半信半疑だったがAMFの実験に使えるかと思い気紛れに手に入れたのだ

 

しかし研究所に戻り解析してみると未知の宝庫だった

 

この弾丸には特殊な魔力が込められており「切断」と「結合」の効果があるらしい

そういうレアスキル持ちの製造したものなのかそれとも魔法生物由来なのか

それすら分からなかったが、ともあれ私の知的好奇心を著しく刺激したのは言うまでもない

 

余りにも興奮しすぎて実際に撃ってしまったのも仕方ないと言えよう

それに撃った時のデータもキチンと取ってあるので後悔はしていない

 

まあそのせいでトーレを派遣する羽目になったのだが今回のことを考えると結果的に良かったと言える

 

トーレを派遣したのは第72管理外世界

 

 

星を滅ぼした原因と思われる【クモ】以外の生物が一切存在しない灰色の世界

 

古くからその存在は知られており、ベルカ戦乱時にもこの世界から発掘された遺失物が多数使われたと記録されている。

特にこの世界の衛星から発見された【巨神】と呼ばれる遺失物は凄まじい猛威を振るったとされる

それも【聖王の揺り籠】に討滅されたようだが…。

 

【起源弾】から発せられる微量の、しかし特徴的な魔力を辿り あの場所を見つけ出した。

 

だが、そこで私は【彼】を見つけた……

 

【衛宮士郎】

星が滅びてなお形を損なわず眠り続けていた少年

サーチャー越しに彼を見た瞬間私は直感した…

 

彼は、私の最高傑作の一つになり得ると

 

トーレに彼を運ばせ直接見てもその考えは変わらなかった。

否。むしろ強くなったと言ってもいい

 

観察すれば観察するほど

 

解析すれば解析するほど

 

彼への興味は尽きなかった

 

 

 

 

 

【全て遠き理想郷】と言うらしい

彼が人としての形を保つことのできた理由だ

彼の資料から知ることができた

古き王の遺失物であり、癒しなどと言う半端なものではなく事象の否定という力を持つものだった

 

だが彼の体が崩れていなかった理由はこれだけではない

これも資料から分かったことだがこの【全て遠き理想郷】ある特定の人物が居なければ本来の力を発揮しないらしい。

 

そう。本来ならこの遺失物が体の中にあると言うだけでは力を発し得ないのだ

なら何故この遺失物は十全の力を発揮し彼の体を守っているのか…

 

その疑問は彼の体を解析しているうちに分かった

 

彼の体内には、リンカーコアが三つある

 

正確には彼のリンカーコアは三人のリンカーコアが融合して形成されている

一つ目は【衛宮士郎】自身のもの

二つ目は【彼と同質の何か】(おそらく彼のクローンか何かだと私は推測している)

そして、三つ目。

前の二つとはあまりに異質な極大の力を持つもの

何処か【竜種】を思わせる、Sランクのリンカーコアだ

 

この【竜種】のリンカーコアこれが【全て遠き理想郷】とリンクしているようだ

 

 

だが、さらに詳しく彼に調べていくと

これすらも、あくまで付属品でしかなかった…

 

 

【投影】

 

これこそが彼があそこで眠って居た理由だ

 

資料にはこうあった

『創造理念を鑑定し、基本骨子を想定し、構成材質を複製し、製作技術を模倣し、憑依経験に共感し、

蓄積年月を再現する

衛宮士郎のみに可能な魔法にも届き得る力である』

 

所々、意味のわからない場所もあるが、要は刀剣の類であれば遺失物だろうと何であろうと複製できるものだものだと言う

それも魔力が続くかぎり何度でもだ

 

これには驚かされた。魔法とは物理法則を無視した力の総称でもあるが、ある程度の法則性、規則性はある

しかし、これは明らかにそれを無視している

 

あの世界でも恐れられたことだろう

 

 

 

さて彼の戦闘機人化にあたって一つ、いや結果的に二つ困ったことがあった

まず一つ目。

再生能力が高すぎて強化がしにくい

【全て遠き理想郷】によって常に身体が最良の状態に保たれるので切開して骨格を補強するだけでも一苦労だった

なので肉体面の強化は骨格の補強、人工筋肉への差し替えだけにとどまった

 

そして二つ目の問題だが、【全て遠き理想郷】により肉体面の強化が最低限になったことにより

本人の戦闘力があまり高くできなかったことだ。

 

生産だけをさせるのであればそれでも良かったかもしれない。

しかし彼はSランクの魔力を持っている

折角ならば活用したい。

 

そこで目を着けたのが彼、衛宮士郎の義父、衛宮切嗣の魔法だ。

 

 

衛宮士郎の資料と共に保管されていた素材

【魔術刻印】と言うものらしい

これは衛宮切嗣のレアスキル(と思われる)【固有時制御】の使用を可能にするものだそうだ

 

 

ただ正確にはこれは衛宮切嗣のものではなくその父、衛宮矩賢のものだ。

(衛宮切嗣 自身も同様のものを持っていたようだが、死亡した折失われたようだ)

 

【魔術刻印】というものは血脈と共に受け継がれていくものであり本来であれば衛宮矩賢から衛宮切嗣へと受け継がれる筈だったが、何か不備があったのだろう全体の約7割と思われる量が残されていた

 

血の繋がりのない衛宮士郎にはこれを移植するのは難しいことだったが、レリックで彼を蘇生させるついでに組織を変容させて上手く移植した

使えば使うほど身体に馴染んでいくことだろう…

 

 

 

 

♢♢♢♢♢♢♢

 

 

「ふぅ…」

 

シロウの調整が粗方終わり一息つこうとする

 

「ドクター、どうぞ」

 

目の前に紅茶が差し出された

どうやらウーノ が淹れてくれたらしい

「ありがとう、ウーノ 」

 

お礼をいい一服する

それにしても、目の前に紅茶を差し出されるまでウーノ の接近に気がつかないとは

自覚していなかったが余程集中していたようだ

 

 

「それで、彼の調整はどうですか?」

 

「順調だとも、後は不必要な記憶の削除と必要事項の転写ぐらいのものさ」

 

ただ、彼の投影は記憶したものから再現するという事なので、エピソード記憶は上手く消して、意味記憶を残さなければならない

とは言え二つは密接に絡み合ったものだ。

多少は記憶が残ってしまうだろう

 

まあ ある程度、記憶があった方がより人間味のある人格になり易いだろうし

それはそれで面白い

 

 

「武装や固有装備の方は?」

「武装はトーレ達よりも防御に重きをおく予定だよ

固有装備については少し考えがあってね」

「【起源弾】ですか?」

「ッ!! よくわかったね」

 

素直に驚く

と同時にここまで自分の事を理解してくれているウーノ に心強さを感じる

 

「衛宮切嗣の骨の培養の目処がついたからね

ただ大分劣化した出来にはなりそうだが」

「それでも十分でしょう あの弾丸は魔導師には脅威です」

「あぁ それともう一つ考えていることがあってね…」

「それは?」

 

考えただけで笑みが溢れてしまう

ウーノ には気づかれているだろうか

 

「シロウの【起源弾】を作ってみようと思ってるんだ」

「それは…また、可能なのですか?」

「どうだろうね、彼は特殊だから。ただ試す価値はあるだろう」

 

衛宮切嗣が切断と結合なら、シロウは剣

どういった効果が現れるかは未知数だ

 

「他に質問は?」

 

「……あ、そういえばトーレがシロウの稼働はいつからか頻りに気にしていました」

「トーレが?」

「はい」

 

初めて自分より製造順が後の子が生まれるのだ

気になりもするか…

 

「ふむ…明後日の午後には目覚めるだろう

そう伝えてあげなさい」

「…はい」

 

それだけ言うとウーノは部屋から出ていってしまった

 

それにしてもトーレが……うん

 

 

 

これから妹達も増える事だし『お姉ちゃん』と呼ばれるのに慣れておいた方が良いかもしれないな

 

 

 

 

 

そんな事を考えつつシロウの調整を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。