ある午後の昼下がり、シロウはいつもの様にラボの掃除をしていた。
頭には白い頭巾を被り割烹着の様なものも着ている
手にはハタキと水の入ったバケツ—雑巾がかけられている—を持っている
基本的にはル●バのような掃除ロボが辺りを絶えず清掃しているのだが、気づいたら暇な時掃除するのが日課になっていた。何か言いようもない満足感と言うか妙にしっくりくると言うか、まぁ そんな訳で掃除をしていた。
因みに頭巾や割烹着、その他は全て投影品で何故か使い慣れている様な気がする
「よしっ、これで終わりっと。」
『シロウ、ちょっといいかい?』
掃除がひと段落ついた頃に、ドクターから通信が来た
いつも通りのにやけた笑みがやはり怪しさを醸し出している
「いいけど…何かあったのか?」
「ああ、急ぎの用という訳ではないんだが、ちょっとみてもらいたい物があってね。私の部屋まで来てくれるかな?」
「了解っ、片付けが終わったらすぐいく」
「待っているよ…」
そう言うと通信を切るドクター。それにしても見てもらいたい物とは何だろうか、
一応長話になるかもしれないからお茶でも淹れて行くか。
そうしてシロウは厨房に向かい茶を淹れてからドクターの私室に向かった
コンコン
「ドクター、入るぞ。」
『………………………』
返事はなかったが、どうせ中に居るだろうと思いシロウはドアを開けた。
思った通りドクターは部屋で待っていた様で一人中央で立っていた
「やぁ、よく来たね」
「呼んだのはドクターだろ」
それもそうだ、と笑う。ドクターは見てもらいたいものがあると言っていたが、それらしいものは見当たらない
「ドクター、見てもらいたい物って何だよ」
「実は、昨日また闇オークションに行ってきてね…」
ドクターは偶にオークションに行ってきて遺失物を買ってくる事がある。正規のオークションではあまり目当ての物はない事が多いらしいけど、所謂闇オークションでは本来管理局が保管していなければならない物が出品されたりするらしい。
「ある遺失物を買ったんだが、なかなか興味深くてね」
「どんな効果があるんだ?」
「うむ、移動速度を3割増し、反射速度を2割増しにすると言う物だよ」
それは凄…くもないか、いや十分強力ではあるんだけど、ハッキリ言って物凄い遺失物と言う訳ではない
けれどドクターがここまで注目するのだ、まだ何かあるに違いない
「なんて名前かは分かったのか?」
「ああ、その名も【デンジャラスビースト】と言う。
第72管理外世界でかつて使われた鎧の一つだ」
でんじゃらすびーすと、……どう言う意味だろうか、オレも最近ではドクターの命令で色々な次元世界に渡り研究所を襲ったり、遺跡を発掘してきたりしたがまだミッド語以外の言語は習得出来ていないのだ
「【危険な獣】という意味らしいね。この鎧の前に歴戦の猛者たちが悉く敗れ去ったと言う文献が残されていたよ」
【危険な獣】…か、さっき聞いたデータでなら大したことないと思ったけど、文献といい名前といい本当はもっと恐ろしいチカラを持っているのかもしれない
「今何処に?」
「トーレに言っていま着てもらっているところだよ」
速さといえばトーレだからね、と続けるドクター。確かにその通りだ。
プシュ
タイミングよくトーレが到着したようでドアの開く音がした
「ドクター、こr—————」
紫色の線が見えた
ガシッ
シロウは後ろから万力の様な力で頭を押さえつけられる。指が頭蓋にめり込んでおりメリメリと嫌な音を立てていた。
「いだだだだだっ!、トーレ姉…痛い痛い!」
「—振り向いたら……、コロス…」
『本気』である、本気と書いてマジだ。
「ッドクター、何故ここにシロウがいるのです。私はは聞いてない!!」
「いや、それを着たトーレが最大どの位の速度を出せるのか気になってね?シロウの全投影連続層写なら実戦に近いデータが取れるとおもってね、お願いしようと思ったわけさ」
つらつらと説明するドクターだが、物凄い良い笑顔だ
しかもいつもの、ぎょろついた爬虫類めいた笑顔ではなく、爽やかな、それでいて明るい笑顔だった
——いや誰だよ
♢♢♢♢♢♢♢
そんなわけで訓練場。シロウは戦闘服に着替えていつでも投影できるよう準備を整える。
一方トーレも諦めたのか準備体操している。なお、あまりにもトーレが抵抗するのでクアットロにお願いしてシロウからは見えないよう幻術が掛けられている
実験が始まれば消すそうだが、トーレは
『全力で走れば見えない筈……』と呟いていた。
必死である。
『それじゃあそろそろいいかい?』
ドクターの声が響く。シロウとトーレは問題ない旨を伝えると実験は始まった
まずトーレが飛び出す。速すぎてシロウの目にはただ紫色の線が通っている様にしか見えなかった
すかさずシロウの投影がトーレを襲う。
数十本の剣がトーレに向かって放たれるがその全てをトーレは躱していく
というよりトーレが速すぎて剣がトーレに向かって放たれた時にはトーレは既に遥か遠くに移動していた
「ッ!!」
シロウは集中しトーレの移動パターンや加速度を見極め剣を放つ。そうすると徐々にトーレの近くに着弾するようになってきた
シロウは更に集中する。トーレの足運び、視線、体重の移動、体幹の向き。それら全てを観察し、剣の速度を調節する。あと少し、あと少しで——
『そこまで!』
ドクターの声で我に帰った。時計を見るともう20分も連続で投影し続けていたらしい
『データはだいたい取れたからもう休んでいいよ』
ドクターが実験の終わりを告げた。
「あと少しで当てられたんだけど…惜しかったなぁ」
「そうだな、私もいつ当てられるかとヒヤヒヤしていた。よく上達したな」
実験の後、椅子に座っ休憩しているとトーレ姉が声を掛けてきた。服はいつものスーツに戻っている
「大分、訓練してきたからな。成長くらいするさ」
「背も随分伸びてきたしなもう少しで、追い抜かれそうだ」
今、オレの身長は170cm丁度だトーレ姉より少しだけ小さい。
「それにしてもあの鎧凄かったな、いつもより断然早くて驚いたよ」
「あっ、ああ、そう…だな…」
トーレ姉が顔を背けるこころなしか赤くなっているようにも見える
「?。 あっそう言えば大丈夫だったのか?」
「何がだ?」
キョトンとトーレ姉が目をパチクリする
「いや、すっごい揺れてたから痛くなかったのかなって……」
「揺れ?………………お前…見えてたのか?」
「何が?」
「私の姿がだ………」
「そりゃあ途中からは、固有時制御を併用して目で追えるようにしてたからな。そうでもしないと何もできなかったし」
「………………………」
「いや〜それにしても参ったよ、五重加速でも捉えきれないなんで速すぎだって……トーレ姉?」
急に沈黙したトーレをシロウは訝しげに呼ぶ
すると…
「お…」
「お?」
「おぉああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」
叫び声とともにトーレが拳を振る。足首から腰、背、肩、手首全ての関節の捻りを利用し、捻り叩き込む様にして前に突き出す。それは音を置いてけぼりにし、終いには光を超え、無音無色の世界で放たれた
「なんでごふぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シロウは錐揉み回転しながら天井に突き刺さる、首から下が吊るされている様子はさながら前衛美術の様だ
ぷらんぷらんと力なくぶら下がるシロウは電球の様にも見えた
「おぉぉ…おぉぉぉ………」
トーレは獣の様に唸りながら頭を抱え膝をつく、何故か彼女の周りからは色が消え燃えかすのように見える
その顔色は伺うことはできないが死んだ目をしているに違いない
ひとしきり唸りそこに小さな水たまりを作った後、彼女はその場を後にした
ちなみにシロウは、チンクが偶々通りかかるまで四時間半ぶら下がったままであり、陰でドクターとウーノに散々観察され笑われていたそうな………
おまけ
スカさん「シロウ!あの姿のトーレを見てどう思った?」(自白剤ブチュー)
シロウ「うぅん、トーレ姉は基本スーツしか着ないから、新鮮な感じがしたかな。トーレ姉は筋肉質だけど案外肉付きはいいからあの服とマッチしていたと思うよ。訓練の時からずっと思ってたけどトーレ姉は胸が大きいから腰との対比が凄かったね少し服のサイズが小さいせいか食い込み気味なのも蠱惑的だった。だけどそんなことより一番目を引くのはなんといってもお尻だよね。あの服じゃあほとんど隠せてないんだけどさ尻尾のせいで絶対に全体を見る事は出来ないんだ。そこがまた良いと思うんだよ。不完全だからこその無限の美。完全に見えてしまったら完璧止まりなんだよ、全部見えないからこそ無限の可能性がありそこに限りない美しさが生まれるんだ。もちろんむき出しでも全く垂れず形を保ったままのトーレ姉のお尻があってこそだけどね。他にもトーレの恥ずかしそうな顔、見たかい?トーレ姉はいつもキリッとしてカッコいいけどこういう弱々しい姿を急に見せられると並みの男たちならコロッといってしまうだろうね。そのくらいの威力がある。それと太もも、太腿より太ももの方がなんだか良さそうだと思わないかい?まぁ良い、太ももは全体で見れば露出が少なく魅力が少なく思われるかもしれない、ちがうよ。布一枚隔てた先に理想郷があるというのがなんとも想像力を掻き立てるとおもわないか?特にトーレ姉は脚は鍛えてるだけあって綺麗な形をしている流線型の形は最早造形美の域だろうその脚に張り付く布、曲げるたびに細かな皺が寄るんだ……良い、凄く良い。それにファーの上にあるレース部分、あれって凄くエロくないかい?さっきも言ったけどチラ見せって一番イヤラシイと思うんだよね。そういう意味では上半身は減点かも知れないけど張り巡らされた紐がアクセントを加えて見せすぎな印象を若干抑えてるんじゃないかな?まぁ見せすぎだけど。あと話は変わるけど戦闘中のトーレ姉は凄かったよ。何処がって?あまり言い過ぎるものではないけど我らが目指すべき丘とだけ言っておくよ。っとまぁだいたいこんなものかな?まだまだ語り足りないけどね!!」
トーレ「ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
周回してたら(何処をとは言わないが)急に頭に浮かんで朝の四時ぐらいに書いた。
正直どうかしてたと思う