悪神殺しはD×Dの世界へ   作:ヴォルト

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十二話

 

 

 

「聞いてるんですか、姉様……」

 

「聞いてます、にゃ……」

 

 

 さっきまでだらしなくだらけていた黒歌が正座している。ちゃっかりとカーペットがない硬い床で……。

 

 

 イカン……笑えてきた……。

 

 冷たい視線を放つ白音()と正座して萎縮してる黒歌()

 

 部屋に入る前のシリアスが一気に飛んじまった。

 

 

 

「……プフッ……ククッ……」

 

「そこッ、何笑ってるにゃ!こうなったのは摩桜のせいにゃ!」

 

「いや、知らんがな。だらけてテレビ見てたお前が(わり)ぃんだろ」

 

「連絡くれたらちゃんとしてたにゃ!」

 

「連絡したらヘタレ猫のお前は逃げるだろうが」

 

「…………逃げる訳ないにゃ……」

 

「おい、その間は何だ」

 

「……姉様」

 

 

 おいおい、お前の妹が呆れた眼を向けているぞ。

 

 

「事情を説明してくれますよね、黒歌姉様?」

 

「うぅ……」

 

 

 

 これは、長くなりそうだったので、裏技を使う事にする。

 

 やったことは無いが、出来るハズだ。

 

 黒歌が了承すれば、だが……。

 

 

「黒歌、口に出したくねぇなら俺が代わりに全部教えるが……どうする?このまま夕飯食う時も引き摺られるのは、イラッとする。自分の口で言うか、俺が代わりに言うか、二つに一つだ。とっとと選びな」

 

 

 

 

 黒歌は、観念したのかはぐれ悪魔になった理由などを全て話した。

 

 

 因みに、俺がやろうとしたのは、〈教授〉系魔術の応用で対象者の記憶を俺を中継点にして他の人の頭に直接視せる〈記憶渡し〉という魔術だ。俺を中継点にするのは、記憶を視せる事で起きる発狂などを防ぐ為だ。

 

 

 

 

 理由(わけ)を知り、誤解が解けた事で感情が爆発したのか、二人とも泣き出した。二人の周りに防音の結界を張っておく。

 せっかくの再会だからな、そっとして置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 泣き止んだ二人と共に夕飯を食べた後、小猫に何時でも来てもいいように、アジ・ダハーカに顕身した時にできる鱗を渡す。魔術を掛けた通行証の様なものだ。

 

 

 俺の事を口に出すのは面倒だったので、小猫に〈教授〉して教えた。

 

 最初は信じてなかったが、腕を龍のモノに顕身したら信じてくれた様だ。

 

 

 

 数日後、ライザー・フェニックスの眷属が転入してきた。

 

 特筆すべき事が起こってないので、書くことがないが、兵藤と天野って付き合ってんのか……。天野を善人に変えてやったけど……効果ありすぎるな。誰だよって言いたいぐらいなのと、兵藤が覗きをしなくなった模様。彼女が出来て真人間になったのか?

 しかし、表情があまり良くないのは、リアス・グレモリーの事を引きずってるのか……小猫にそこら辺の事って聞いてないからよく分からん。駒王町の管理を疎かにしなければ、俺はそれでいい。

 後は、球技大会のバスケで匙と一緒に無双した事ぐらいだろうか。勝負事になるとついつい気分が上がってしまうから困ったもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 動物たちが騒がしい。

 

 キュベレーの権能で声を聞いたが知らない誰かが来たらしい。後、血の匂いがするとも言っていた。一体何が来たのだろう。

 

 昼休みに生徒会長から訊いたら教会の使者が来た、と言っていた。放課後にグレモリーと話をするらしいので俺もその場に行くことにした。

 

 

 

 放課後……旧校舎。

 

 

「失礼するぞ、グレモリー先輩」

 

「誰だ、お前は……」

 

「鬼崎君……」

 

 

 青髪と栗毛の二人が教会の使者か……。

 

 

「日本神話の食客呪術師をやってる鬼崎摩桜だ。生徒会長から教会の使者が来たって聞いたから来たんだが……そういうあんたらは誰だ」

 

「教会の使者のゼノヴィアだ」

 

「紫藤イリナです」

 

 

 

 どうやら話をする直前に俺が来た感じのようだ。

 

 小猫に後で訊くのは面倒だからな、丁度良い。

 

 

 

 話を黙って聴いていたが、天界陣営の教会も随分身勝手だなぁ。

 日本神話に連絡しろよ。そんな危険人物と物が来たって言いやがれ。天照から連絡来ないから報せてないだろうな。他神話の土地なら好き勝手して良いとでも考えてんのか?流石は、異教徒ってだけで人を殺す野蛮な歴史がある宗教なだけはある。

 

 上層部が信用してないって言ったのに悪魔の言葉を鵜呑みにするのは矛盾しているように思えるのは気のせいか……。

 

 悪魔は介入するなって事は人間?の俺は介入して良いという解釈でいいよな。

 

 

 聖書にその名を刻む堕天使コカビエルか……まつろわぬ神と同等とは思わんが、せめて加護の無い従属神、神獣ぐらいはあって欲しいのが本音だ。

 

 

 相手が悪神だったなら喜んで首を突っ込むんだがな。

 

 悪神殺しの面目躍如ってね。

 

 

 ……というか、二人で戦うつもりかよ。

 

 この二人、強いのか?せめて草薙の愛人ズの少し下程度なら良いんだが……視たところ下っ端テンプル騎士やあまり戦わない甘粕のが上だろうな。

 

 本人の強さより武器がそれなりにスゴいってだけだろう。

 エクスカリバーねぇ……。グィネヴィア、まつろわぬアーサー、ランスロット、神槍……うっ、頭痛くなってきた……。

 

 

 

 何で天界陣営がエクスカリバーを持ってんだ?湖の乙女に返還されたんじゃねぇのか……もしかして湖の乙女から奪ったのか?そりゃあ、担い手でもなんでもない奴が振ったら壊れるだろうさ。

 

 

 破壊と擬態のエクスカリバー、取って付けた感があるのは俺の気のせいか?伝説にそんな機能あっただろうか……。

 

 

 

 ……此処に来てからずっと殺気出してる奴、そろそろ鬱陶しく成ってきたんだが……教会に恨みでもあんのか?

 

 

 

「───アーシア・アルジェントか?」

 

 

 色々考えてたから聞き逃したが、アーシアが何だ?

 

 

「は、はい……」

 

「……まさかこんな地であの魔女と会うことになるとはな」

 

 

 そういえば、アーシアは教会から魔女として追放されたんだっけ。

 

 

「……あなたは確か、一部で噂になっていた元聖女さん?悪魔をも治癒してしまう力のせいで教会から追放された……」

 

 

「何故此処に……悪魔に成ってはいないようだが……君はもしかして、まだ神を信じているのか?君からは罪の意識を感じながらも神を信じる信仰心が匂う。私はそう言うのに敏感でね」

 

「……捨てきれない、だけです。……ずっと、信じてきたものですから……」

 

 

 面倒くせぇ……教会関連……クソ面倒くせぇ……。

 

 

「悪いがそこまでだ。教会の事情なんざ知ったこっちゃ無いが、今のアーシアは日本神話に所属している。それ以上アーシアを貶める事言ったら……潰すぞ、狂信者ども……」

 

 

 声のトーンを落として、殺気と呪力を一瞬だけ解放する。これで大人しく尻尾巻いてどっか行ってくれれば良いんだが……相手と自分の実力差も分からんなら奴なら、その身に刻み込んでやろう。

 

 

「……クッ!?」

 

「……ウッ!?」

 

 

 当てられただけでプルプル震えてらぁ。これなら殺気も呪力も必要なかったな、俺の全力の一割程度の威圧で震える戦士なんて弱いに決まってる。

 生意気なテンプル騎士や日本の上役に何回かやったことあるから効果があるのは分かってる。一割ぐらいの威圧で耐えれん奴はテンプル騎士にはいなかった。聖ラファエロにしごかれてるからだろうか?

 

 

 

「ふん、その程度の実力でよぉ吠えたな。アーシア、祐理、帰って天照に連絡と結界を張りに行くぞ」

 

「仰せのままに、我がお、ぅ…摩桜さん」

 

「は、はい!」

 

 

 祐理……今の結構ギリギリだぞ。我が王って言おうとしたな。

 

 

「ま、待て!約束が───」

 

「約束?それは悪魔との約束だろ。俺は日本神話側の人間だ。悪魔じゃないから約束の適応外に決まってんだろ。……それとも何だ?力ずくで言う事を聞かせるか?俺は構わんぞ」

 

 

「……良いだろう。エクスカリバーの錆びにしてやる……!」

 

「その勝負、僕も参加するよ。個人的に天界と教会は許せないからね……」

 

 

 

 

 

 天界と教会陣営、真っ黒過ぎねぇか?まさか、人体実験とかしてんのかよ……。

 木場が恨んで当然だろ。いっその事天界と教会の上層部滅ぼした方が世界のためになるかもな……。いや、それだったら聖書の三勢力全部のがいいかもしれん。

 

 

 

 取り敢えず、紫藤イリナとの勝負に目を向けるか……剣士の対応はドニのせいで嫌という程、身体に染み着いている。

 

 

 擬態のエクスカリバー……形が変わるなら少し間合いを取るか……。

 

 

「所詮は、呪術師……接近すればこっちのモノよ!アーメン」

 

 

 日本刀に変形させたエクスカリバーで突っ込んで来る。

 呪術師だから近接が出来ないって本当に思ってんのか……。

 

 相手の遅い振り下ろしに対して俺は……右手で掴んで止める。ドニ相手に白羽取りなんてしないが……こんなにも遅い剣なら強化した手で十分だ。

 

 

「遅いんだよ」

 

「う、嘘!?この、な、何で!離れないの!?」

 

 

 掴む力を強化してんだ、簡単に離せる訳ないだろ。

 

 

『(相棒、分かってんだろうな……)』

 

「(言われなくても大丈夫だ。カンピオーネの勝負時の集中力嘗めんな。隠さん殺気を感じ取れないとでも思ってんのか……)」

 

 

 身体を左向きにして後ろから迫っていた大剣を左手で視ずに掴む。

 なかなか重い一撃だがこの程度、姐御の拳の一撃のが重い。……比較の対象が人類最強の剣士(規格外)人類最強の拳士(規格外)なのが、おかしいだけか?そもそもまともに人と戦った事って無いんだよな…あの二人以外で……。

 

 

 掴むのも面倒になったので剣を引き寄せて二人をぶつけて…ハイ、終わり。

 

 

「キャッ!?」

 

「がぁっ!?」

 

 

 これで、文句を言う事はないだろう。言ったらもう一回叩きのめすだけだ。

 

 

 木場がフラフラして何処かに行ったみたいだが、取り敢えず帰って報告と結界を張らないとな。

 

 日本神話と三勢力との対応に追われる日々になるかもしれん。

 

 

 

 





 摩桜は、アジ・ダハーカの権能を持っているから魔術が出来て当然と考えており規格外の自覚はあるが、自身が魔術の天才だという自覚がない。

 規格外二人に並ぶ人類最強の魔術師。
 

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