神速の雷パンチとネメアの猫パンチでコカビエルが動かなくなった。
ネメアに近づいて確認しろ、と念を送る。
ネメアの前脚がちょんちょんしているが、反応が無い……ただの屍のようだ……。
マジかぁ……。
神獣を倒すノリで殴ったのがいけないのか……。神獣ぐらいに強いかなぁって、神速で殴ったくらいで死ぬとは思わなかった。これからは神以外に神速は禁止だな、戦いの「た」の字も出来ずに終わっちまう。
神速を解いて縮地法で祐理とアーシアの前に跳ぶ。
「祐理~。コカビエル死んだから帰るぞぉ」
「え、もう終わったんですか……」
「そうなんだよ。神獣と戦う感じで殴ったら死んじまった。神以外に神速はムリがあるみてぇだ。アーシアは…大丈夫そうか?」
「精神的に参ってしまったみたいです。信仰する存在が死んでいるのはショックだった様で……」
教会の聖剣使いですら知らなかった事実。教会の一部の上層部と天使たちによる情報統制……だろうな。一般の信者が知るモノじゃない。
何か悪魔どもが俺らを囲んでいるが何するつもりだ?捕まえるつもりか?コカビエル殺したの見てないのかよ……。
────パキパキパキ……。
ん?結界に罅だとぉ……。
────パリィーンッ!!
へぇー、よく壊したな。一応頑丈に作ったハズなんだが……。イイネェ……強い奴は歓迎するぞ。
……おっと、イカンイカン。これじゃあドニみてぇじゃねぇか。あんな脳みそ筋肉バカと一緒の思考はさすがに俺も嫌だ。
結界を壊したのは所々に青い宝玉のある白の全身鎧の悪魔の様だ。……悪魔?全身鎧が神器なら人間とのハーフか?
「苦労して結界を半減して壊したは良いが、もう終わった様だな。……コカビエルを倒したのは誰だ?」
「俺だ。あんたは、何処の誰だ?」
「君か……俺は、ヴァーリ。一応堕天使側の人間である白龍皇だ。そう言う君は何処の誰だ?」
へぇー、堕天使側の神器保有者か……。
……ん?よく考えれば今って聖書の三勢力が揃ってるじゃん。
丁度良いじゃねぇか。どうせバラすつもりだったんだ、今此処で名乗っても支障はねぇな。……天照の胃に支障が出るかもしれんが、神殺しの俺には関係無いな!
「俺か?俺は、カンピオーネ…神殺しの鬼崎摩桜だ」
「神殺しだと……?」
「そうだ。人でありながら神を殺す事に成功し、神の権能を簒奪した罰当りな
「つまり、強いって事で良いのかい?」
「ああ、俺を殺せる存在は同族か神以外あり得ん。……オメェーから知り合いの同族と同じ匂いがする。オメェー、戦闘大好き野郎だな」
「確かに俺は、戦う事が好きだ。出来れば、今此処で君と戦いたい。……けど今日はアザゼルからコカビエルを連れて帰ってこい、と言われているからまた今度戦おうか」
そう言ってコカビエルの方に飛んでいく。
『……無視か、白いの?』
兵藤の左手の神器から声が響く。今の声が赤龍帝ドライグって事か……。
『何だ、起きていたのか赤いの』
『まぁな。宿主がまだまだ弱いからな』
『そうか。しかし、赤いの。以前のような敵意が感じられないが?』
『それこそお互い様だ。俺もおまえも、今は戦い以外の興味対象があると言う事だ』
『(相棒!正体バラしたならオレの事も言えよ!…てかオレにも話させろ!)』
「(分かったっての)……我は全てに死を与えるモノなり」
アジ・ダハーカの聖句を唱え首を出す。
「よぉ、久し振りだなぁ、ドライグにアルビオン」
『何!?その声は、何故邪龍のキサマが其処に居る!』
『答えろ!《
「ご紹介どうも~。なぁに簡単な話だ。この罰当りがオレの封印を解いてオレの魂を取り込んだせいで、一心同体の存在に成ったんだよ」
『なん…だと。邪龍の魂を取り込む人間だと……』
『信じがたいが、キサマが其処に居るという事は、本当と言うことか……』
「ま、そういう事だ。お、そうだ。アルビオンの宿主に言っておくが、相棒と勝負したいなら生前の二天龍以上で龍神レベルじゃねぇと勝負にならねぇぞ?」
『な、その人間はムゲンどもと同じレベルだと言うつもりか!?』
『そこまで言うか、アジ・ダハーカ……』
「クククッ、そうだぜ。覚えときな!オレ様の相棒は、三大勢力が束になった所でその全てを蹂躙するだけの力を持っているという事をよぉ!」
「フッ……面白い。ライバル君は正直、期待外れだけど彼は、俺を楽しませてくれそうだ」
俺は楽しめなさそうだな。ドニがもう一人いる感じがしない事もないが、一つの武を極めようとする武芸者で、心眼や無念無想の境地に至ってでもなけりゃあ勝負にならねぇぞ?意図的に俺がお前のレベルまで下げれば戦いになるだろうけど。
『ヴァーリ、お前は最強の白龍皇に成るだろうが、止めておけ。邪龍筆頭格のアジ・ダハーカを取り込んでいるという事は、アジ・ダハーカの魔法全てを扱える可能性がある。生前の私の能力があれば対処できるが、〈半減〉と〈吸収〉だけでは、まず勝てないだろう。『
お、パートナーから良い助言貰ってるじゃねぇか。
最強の白龍皇ねぇ……そこまでの境地に至ったなら面白いだろうな。
「ま、戦いたいなら何時でも掛かってきな。俺の力の半分は引き出せるぐらいに成ってくれよ?」
「……ああ。俺の力が何処まで通用するか試させてもらう」
そう言ってヴァーリと呼ばれる奴はコカビエルを担いで帰っていった。
そろそろ俺らも帰るか……。
「待ちなさい」
グレモリーか……もう帰って寝たいんだけど。
「………何だよ。俺は、もう帰って寝たいんだよ」
「ちゃんと事情を聞かせてくれるんでしょうね」
「……気が向いたらな……そんじゃ、後始末よろしく~」
今回は珍しく何も壊してない──ネメアが抉った地面のみ──ので悪魔たちに後始末を投げる。悪魔が管理しているなら片付けるだろう。
祐理等と絶望してる聖剣使いの二人──そのままにしておくのは忍びないので──も一緒に転移してマンションに帰る。
祐理に聖剣使い二人を隣の部屋に案内させて寝かせてもらった。絶望して自殺されても面倒だから、幻獣たちを近くに寝かせておく。
寝ようとしたらアーシアがくっついて離れてくれないので一緒に寝る事になった。疲れているだろうし、今日くらいは一緒にいても良いか。
翌朝。
酷い顔をした聖剣使い二人と共に朝食を食べる。アーシアはどうやら持ち直してくれた様だ。寝る前に言った、「神という存在は人が紡いだ神話が有る限り不滅であり、悠久の時を経てまた、その姿を顕すだろう」が効いたのだろう。
朝食を食べた後、聖剣使いのゼノヴィアとイリナに、もし教会に今回の事を報告して教会から追放されたら行く宛がないと思うから、この部屋の合鍵とマンションに入るための龍鱗と連絡係兼護衛のエトンとオルトロスを押し付けてから学園に向かった。
学園はすっかり元通りになっていた。悪魔の魔力って案外使えるんだなぁ。
教室で匙が何か言いたそうな顔をしている。何も説明せずに帰ったからだろう。チラチラこっち見んな、腐った連中に目をつけられるだろ………。
放課後に当然の如く、呼び出されたっていうか、匙に引き摺られながら旧校舎の方に向かう。
グレモリー、シトリー、フェニックスが勢揃いだ。
「さぁ、あなたが何者か訊かせてもらうわ」
「おいおい、随分と上からな物言いだな。あんた等は、コカビエルを殺した俺に感謝して下手になるのが適切だぞ?まあ、話が進まんから今回はスルーしておくわ。それで、俺が何者かは昨日言ったろ?神殺しをした人間だって」
「人が神を殺す事なんて出来る筈ない……」
「信じる信じないはご自由に。俺は、嘘なんか吐いてないんでね。……ってか、コカビエルを殺した時の俺、見てないのか?匙、お前見てたろ、俺の姿見えたか?」
「え、俺!?いや、確かに見てたけど……鬼崎の身体が雷纏ったと思ったら鬼崎が消えてコカビエルが吹っ飛んで、いきなり現れたライオンがコカビエルを前脚で触ってたのしか見てないぞ!?」
「いや、それ十分に見てるからな、匙。ああ、因みにそのライオンは、ギリシャ神話に出てくるネメアーの獅子だ」
「ま、待ってください!?ネメアーの獅子は、神滅具の
生徒会長鋭いな……。ああ、俺がこの世界の住人じゃない事言ってないな。……この中じゃあ、小猫にしか教えてないから分からないか。
「頭の良い生徒会長の指摘通りネメアーの獅子は一体しかいない。では何故封印されてるネメアーの獅子がいるのでしょうか……小猫正解言っちゃってぇ。後、俺の事とかもついでによろしく~」
俺の急な無茶ぶりに小猫が驚き、部屋にいる者が小猫の方に視線を向ける。
視線が集まる中、一度息を吐いた小猫が答えを口にする。
「………摩桜先輩が言う昨日のネメアーの獅子は、摩桜先輩が神から奪った権能から造り出した物で、摩桜先輩と祐理先輩はこの世界ではない……違う世界から来た人間……です……」
突然の別世界から来た発言に部屋が静まりかえった。