「きゃああぁぁーーー!?」
「何でこーなるんだよ…」
現在、『悪神殺し』の異名を持つカンピオーネ・鬼崎摩桜と御付きの媛巫女・万里谷祐理は、カンピオーネであるアイーシャ夫人の『通廊』を通って出た先で何故かスカイダイビングしていた。
カンピオーネの中でも傍迷惑筆頭の権能はやっぱり傍迷惑だと思いながら、自身の権能である悪神のアジ・ダハーカから簒奪した権能『千魔の邪龍』を発動させ、背中から翼を出して祐理をお姫様抱っこして空中を漂う。
「あ、ありがとうございます、摩桜さん…」
「どういたしまして。さて、アイーシャの『通廊』から出て早々大変な事になってるな………」
「摩桜さん?その言い方ですとまだ大変な事があると聞こえるのですが………」
「実際、大変だと思うぞ?祐理、下見てみ」
「下、ですか……?」
疑問符を付けながら下を見る祐理。
「……え?これってどういう事ですか?」
祐理が驚くのもムリはないだろう。
何故なら東京タワーが
ブーメランだ?
確かに何度か壊した事はあるがその度にボランティアしてやってるっての。主に魔術と呪術の講師をしたり、壊した物を退かしたり、怪我した奴に無料で霊水使ってやったり。
戦闘用の権能以外は全部秘匿しているからな、戦闘用以外は発動条件がアレなので発動させる事が出来ないのとそもそも戦闘に使えないからだ。
動物と
キュベレーの動物と意思疎通をする権能は役立っている、幻獣が何が言いたいかが分かるからな。特別呪力を喰う訳でもないし聖句も唱えなくてもいい、地味権能その一。
ガネーシャの権能は微妙過ぎる。象の像を材質は何でもいいので作らないといけなく、一度作った物に減った呪力をもう一度流してやれば再利用できるエコ仕様。幸運要素が
刑部姫の自宅を鉄壁の城に変える権能も微妙だ。自宅と定めた所に一ヶ月は住まないと発動しない。しかもこの一ヶ月っていうのがまた面倒な事にその家から外に出てはいけないというふざけ仕様である。まあ、その一ヶ月をクリア出来れば『白馬』でも『魔剣』でも『魔弾』でも無双の剛力だろうと破壊出来ない。鉄壁の城なのだが、洪水に弱いという弱点ありの地味権能その三。
今が何時なのかとか色々と確認したいから認識阻害の魔術を掛けて地面に降りる。
近くのコンビニに入って雑誌を読んで一つの仮定というか結論が出た。
「祐理、たぶん…というか、確定…というか……」
「摩桜さん、今度は何ですか?」
言うより自分の目で確かめた方がいいので雑誌を渡して目を通させる。
「二年前の三月という事は、過去に来たのは分かりますけど……これって普通の漫画雑誌ですよ?」
「よく読んでみろ。雑誌の名前とか漫画の名前が微妙に違うぞ」
あっ!?という祐理の気付いて驚いた声を聞く。
「甘粕さんが言っていた漫画にそっくりですね」
甘粕の話聞いてたんだな……。甘粕って出来る忍者だけど、俺と同じでサブカルチャー好きだからな、俺の悪巫山戯に乗ってくれる貴重な人材だ。
「これで分かる通り、俺らは俺らが居た世界とは別の平行世界に来ちまったみてーだな……」
「そう見たいですね……」
二人してため息を吐いた後、飯を買って近くのホテルに入って今後の方針を決めることにした。