ふぅ……。
遊び過ぎたな……ハンデとして呪力を出来る限り少なくして呪力を放出しなかったのが仇になってしまった。
くっついた後に呪力を放出しても意味はないから。
それにしても、まだ力の加減がいまいち上手く定まらん。本気出すとコカビエル、遊び過ぎるとレヴィアタンの様になる。
遠慮をしない殺し合いばっかしていた影響だなこれは……。
バサバサと翼を羽ばたかせ、火の粉を散らしながら窓の近くに行く。
「摩桜さん、遊びすぎですよ。いくら不死の権能を持っていても
「ああ、まあな。それは分かっとるから言わなくてもいいっての……」
草薙の『戦士』に権能を斬り裂かれたらアウトだしな。
………俺の権能って類似性多いから下手したら詰むかもしれない。
一番斬られたくないのが『蛇』だ。『蛇』の類似性を突かれるとアジ・ダハーカ、サマエル、テュポーン、レヴィアタン、四つも使えなくなる可能性がある。
『蛇』から『死と再生の象徴』の類似性に換えることが出来たらフェネクスが斬られる。
『火』だとフェネクスとアータル、テュポーンが斬られる。
詰む可能性が高いが、事前に智識を頭に入れておく必要があるから草薙の愛人ズと
俺の不死は呪力を使う。まつろわぬ神や同族との戦いで死ねる回数は、三回が限度だ。それ以上死ぬといくら神との戦いで呪力が体から湧いて増えたとしても呪力が足りなくなるだろう。
「相手の最期の攻撃を何故受けたのですか?転移や縮地、神速で避ける事ぐらいはできた筈ですよね?」
「いやぁ、遊びすぎてうっかり、身体から呪力を出さずにしてたらさ……接着剤がくっつく感じでくっついちまってな。剥がそうと思ったけど自爆するみたいだったから便乗しようかなぁって……」
「私は死なないと分かっていましたが、他の人は見たことがないのですから……説明するの大変でした。何故フェネクスの権能をお使いに?」
事前に死なないって言ってたと思うのだが……。やっぱり口頭説明だけじゃあダメって事か。
「だってさぁ…あんな風にベタベタと触られて不愉快だったからのと、身体を新しくするついでに修行に使う霊水でも作ろうかと思ったんだよ」
イリナとゼノヴィアの修行でちょくちょく使ってるからそろそろ補充しないといけない。
「おいおい、随分派手なフェニックスだな……。悪魔のフェニックスよりフェニックスらしいんじゃねぇか?それにしても女の尻に敷かれてるなぁ……」
「それだけ信頼されてるって事だろうね。私の方も───」
「私の方も何ですか?」
「え、あ、いや、グレイフィアちょっと待ってくれ」
「アレが私達と同じフェニックス……綺麗……」
「に、人間の分際で……フェニックスの力を持つだと……」
殺気?彼奴は確か……フェニックスだったか?
人間?の俺がフェニックスの力を持つ事が気に食わないってか。
格の違いでも教えようか……。
後ろの方でもヴァーリが殺気出してるからちょっと面倒になってきたな……。
『(相棒ー、オレ様も暴れさせろォー!ラードゥンとアルビオンついでにドライグとも戦わせろ!)』
「(戦いになるのは、俺の権能で呼んだラードゥンだけだぞ。ラードゥンは邪龍でありながら今は神獣でもあるんだぞ?戦う事も出来るが、下手したら全盛期以上の力を使えるから、戦うと此処等一帯が更地になるからやらんぞ)」
神獣に渡す呪力量は最高で二十%までしか渡さないがこれだけでもまつろわぬ神と同族に勝てるとは言わないが、相手取るには十分だ。
今のラードゥンは八%……たまに顕れる神獣と同程度はあるだろうからこれ以上呪力を渡さなければ苦戦せずに倒せる…………因みにこれは周りの被害を考えないものとする、が後ろに付く。
「セイヤァーー!」
後ろから飛んできた魔力を竜の翼を広げたデルピュネーが蹴って破壊する。
デルピュネーが間に入らなくてもこのフェネクスの権能を発動している状態での俺は身体が傷付いても一瞬で治るのだが………そんな事関係無いと言わんばかりの羅濠のババアの掌底で内臓がバウンドして身体に響くし、ドニの魔剣で斬られると傷が増える。
「おい、ヴァーリ!何やってやがる、まさかとは思ってたが、お前が裏切り者か……」
「悪いなアザゼル。俺はやっぱり戦いたいからな、アース神族と戦ってみないかと言われてね。禍の団の誘いを承ける事にした」
禍の団が此処を襲撃出来たのは、ヴァーリが手引きしていたからなのか。
ヴァーリってルシファーの血を持ってるのか……だから悪魔の気配がするのか。
あれ?オーフィスって抜けたハズなのに未だに名前使われてるのか……ついでに言っておくか。
「───そのオーフィスがついこの間、抜けると言って姿を消してしまってね。禍の団全体が騒いでたよ」
「はぁ?いなくなっただ?なんじゃそりゃ……」
「あ、オーフィスなら此処にいるぞ」
『はぁ?』
おお、声が揃った。
「なぁ、神殺し。聞き間違えじゃあなけりゃあ、オーフィスが此処にいるって言ったか?」
「言ったが?オーフィスは黒歌と同じ様に見えなくしていたんだよ。ほら、そこにいるだろ」
指をパチンッ、と鳴らしながら祐理の横側の方に指を向けると
「え、あれってオーフィスか?」
「ん?あ…アザゼル久しい」
「お、おう。オーフィス久しぶり……。おい!?神殺しどういうこった、これは!?」
「どうも何もオーフィスは今、俺ん家に住んでるんだよ。禍の団を抜ける様に言ったのは俺だよ」
三勢力のトップが頭を抱えてるが、お前らの事情なんて知るかよ。
「神殺し鬼崎摩桜。俺と戦ってくれるんだろ?今、此処でやらないか?」
「俺と戦う前に自分のライバルと戦って勝ってからにしな。そうしたら戦ってやるよ」
「な!?おい、鬼崎!俺を売るんじゃねー!」
「ふん。文句言う暇あんなら戦って勝ちゃー良いんだよ、勝ちゃーよぉ。この先弱いままだと死ぬぞ?敵はお前が強くなるのを待つことはねぇんだよ」
「俺は、あんたやヴァーリみたいに強くないんだぞ!そんな簡単に言うな!後、勝手に決めんな!」
「そうよ、私のイッセーにあなたが命令しないでくれるかしら」
「俺はあんた等が言う下等な存在である人間だぞ?見下してる存在に言われて悔しくないのか?俺は、あんた等みたいに魔力や神器なんて持たないで神を殺したんだぞ。肉体のスペックも高い悪魔の癖に逃げんのか?言っとくがヴァーリは戦闘狂だぞ。戦う為ならなんでもするぞ……例えばお前の家族を殺してでもな」
「な……、そんな事……」
「無いって言い切れるか?おい、ヴァーリ!お前は戦う為なら兵藤の家族を殺すか?」
「フッ、確かに必要ならそうするかもな。いや、赤龍帝である君が強くなるなら……良いね、そうしようか」
やっぱり、コイツも頭がトンでやがるな。
はぁ………何でこう……俺は、頭が残念でダメな奴に逢うのかな、不思議な縁だ……いや割りとマジで……。
怒った兵藤はアザゼルからリングを貰って赤い全身鎧を纏ってヴァーリに突撃して行った。
「一時的に禁手化に成っているがどうなるかね……。近接戦闘を極めたらなる可能性が高い全身鎧を纏ってるから……」
「おい、アザゼル。今、近接戦闘を極めたらって言ったか?」
「言ったが……それが何だ?」
「いや、あの程度で極めたって言われるなんて……この世界の近接戦闘はお遊戯レベルだなって思っただけだ」
「お遊戯って……お前の世界の近接戦闘はもっと上って言いたいのか?」
「そうだよ。比較する相手が俺と同じ神殺しで、剣術と武術で軍神を驚かせる程の規格外だけどな。そいつ等と何度も殺し合いをしてるから仕方ないかもしれんが……」
あの二人は、無念無想と心眼を持つ規格外だ。対抗する為に緩急自在だけでも身に付けたいが、今はイリナとゼノヴィアの修行と祐理、アーシア、黒歌の修行も並行して行ってるから時間が取りづらい。
ま、それは後でエトンとかを呼んでからにするか。丁度良くラードゥンの結界で被害を少なく出来るしな。
「……あの神殺し、変な事考えてないですよね……」
「グルゥ、グオゥ(それは、フラグだぞラードゥン)」
「ご主人様の事だから、ラードゥンの結界で被害を少なくしようって考えてるかもよ?」
「蘇ったら雑用係にされそうに成ってる件について……」
「グオゥオウ……(ドンマイ……)」
「フザケンナァーーーーー!!!」
アザゼルと会話した赤龍帝がいきなりキレた件について…………。