自分の準備が出来次第、祐理の自宅に行って荷物に召喚の魔術を掛けて、家に戻る。
「祐理……確認しておくが良いんだな?当分家族には会えないし、もうほとんどの媛巫女の仕事とかもしないって事にもなる。向こうに行ったら友人関係もリセットだ。それでも、俺に…俺の側に居るんだな?」
「はい。摩桜さんの隣に居させてもらいます」
嘘のない、本心の言葉を聞いて祐理の覚悟を理解する。
俺の隣か……。
ああ、そうだよな……俺の事が好きでもなければ、一緒に行こうなんて言わねーよな……。
「分かったよ。祐理の好きな様にしな。それじゃあ、先に荷物を転移させてから行くか…
召喚した祐理の荷物と俺の荷物をまとめて転移させてから祐理の手を掴んで俺たちも転移する。
無事に転移は成功した。
そして、楔として置いてった幻獣オルトロス───名前はダブラス───に置いていった事に対する愚痴を言われた。
キュベレーから簒奪した権能のお陰で何を言ってるのかが分かるが……たまに、どうでも良いことを言っていたりする。因みに動物の括りが存在しており、今の掌握度なら哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類の声を聞けるがある程度の大きさが必要、でないと話をする知能がないので虫とかはまずムリだ。
「さてと……何処に拠点を置くかを決める前に……確認したい事があるから先にそっちを済ませても良いか?」
「私は大丈夫ですよ。それで、確認したい事とは何ですか?」
「ああ、それはな……この世界に来たときから何となくだが、アジ・ダハーカの力を感じとったんだよ」
「それは……本当何ですか?もし本当なら顕現するかもしれないという事ですよね?この世界のアジ・ダハーカと摩桜さんが弑逆したアジ・ダハーカとは違うと思いますけど………」
真剣に考えてるだろうけど俺と、ペインとディストの考えが正しいなら…………。
「確かに、この世界のアジ・ダハーカと俺が殺ったアジ・ダハーカは違うかも知れんが同位存在だからか、しっかりと気配とか力が感じとれる。でも、感じとれる力が微弱だからな…たぶん竜骨になってる可能性が高い。だからちょっと回収してくるわ」
「出来れば私も付いていきたいのですが……」
「悪いが此所で待っててくれ。千の魔術の中には霊体でもダメージを与えるのがあるからな……もし、顕現したら戦いに集中しちまうからな。一応、幻獣を置いてくから何かあったら幻獣に話掛けてくれ」
「分かりました。今回は、待たせていただきますね」
幻獣を三匹───オルトロスとエトンとネメア───と風の精霊を顕現して祐理を守る様に命令して置く。
結界も何重に認識阻害とか気配を偽るのを掛けておく。同族か魔術関連の神、智慧の神にしか分からないだろうレベルのモノにした。
話をしている時からペインとディストに身体の中でアジ・ダハーカの力がある場所を探してもらっていたので直ぐにホテルの屋上に転移して長距離転移の準備をする。
『見つけたぜぇー。ほとんど力の質が変わってないから簡単だったぜい』
『まつろわぬ神だったオレらに比べたら劣るけどなー』
『それな!』
身体の中で会話する二匹の声に耳を傾けていたが……まつろわぬ神だった時より弱い、か……。
この世界のアジ・ダハーカは悪神じゃあなくて竜だって事かな?
ま、行けばわかるか……。
長距離転移が終わり、周りを見渡すとそこには……廃墟が広がっていた。
相当古い建築物だが今は、アジ・ダハーカの竜骨が優先だ。
探して十分もせずに物凄く分かりやすい祠を見つけた。ご丁寧に三つ首の竜蛇の石像が置かれていた。
隠す気があるのだろうか……?
でも結界は張ってあるな……。とりあえず、結界を壊さない様に侵入するか……。
ペインとディストと協力して、結界を解読して無害に結界を解除して祠の中に入る。
祠の中央付近に台座の上にある宝玉が目に入る。
その宝玉からアジ・ダハーカの力を感じるからこれが竜骨なのだろう。
宝玉に手を置いたら割れてしまった。
宝玉そのものが結界、封印みたいなものだったみたいだ。
そりゃ、俺が触ったら壊れるわなぁー……。
お、何か魂みたいなのが出てきたな………。
「よし、取り込むか。同位存在ならもしかしたら権能の力が増すかもしれないしな。ペインとディストもそれで良いか?」
「おう、取り込め取り込め!」
「レベルアップしようぜ!」
浮いた魂を鷲掴みして身体に押し込む。
「うぐっ、アッツ!コイツ、魂の状態でも生きてんのかよ!?」
マジで身体が熱い。
この感覚、ペインとディストが俺に反抗していた時に似ている。
つまり、俺の身体を乗っ取ろうとしてるのか……。
ハッ。上等だ、この程度の熱さで乗っ取れると思うな!
炎になれる俺に生半可な熱さは逆効果だ。このまま魂を権能の一部として取り込んでやらぁ!
『チッ……まさか、封印から解かれたと思ったら人間に取り込まれるなんてな……しかも、オレの力に呑まれないなんて…テメェ本当に人間か?てか、何でオレの力を持っていやがるんだよ!?しかもこの嫌な感じは……まさかアータルの力か!?オイ、テメェー!本当に人間か?!何で神の力を持ってんだよ!?』
「意識が出てきたと思ったら質問ばっかりか……まあいい、その疑問に答えてやるよ。まず、俺の名前は鬼崎摩桜。カンピオーネ…つまり、神殺しに成功してその神の力、権能を簒奪した人間だ」
『ハァッ?!ただの人間が神殺しをして力を奪っただ?!信じられるか!』
「それじゃあ、俺の中にあるアータルの力や、お前のアジ・ダハーカの力があるのはどうしてだ?」
『確かにな…力を奪ったのはまだ分かる。だがアータルはまだ生きているはずだ!神殺しはあり得ねー!』
神が生きてる……だと?
……あ、俺が別世界から来たって言ってないな。
「言い忘れてたが、俺はこの世界じゃない別世界から次元を越えてきた人間だ」
『……何だって?』
そこからはずっとアジ・ダハーカの疑問に答えてやって行きながらこの世界の事も聞いていく。
「この世界は神が実際に生きている世界何てな……しかも人間だけの武器
「元の世界じゃあ、あり得ねぇな!」
「まっ、こっちは、まつろわぬ神と『最後の王』がいるけどな!」
「まさか、お前の世界のオレを殺して奪った力がオレになる力とはな……。しかも、真ん中の意志だけ無いとかありかよ…一番大事な頭なのによぉ」
この世界のアジ・ダハーカの魂を取り込んだ事で権能に影響があるか調べてみたが、どうやら真ん中の三本目の首がこの世界のアジ・ダハーカになった様だ。
今まで通り顕身も出来る上に、この世界の魔法の智識も入ってきた。千の魔術と似たのもある。この世界だと魔力は悪魔と契約しないといけねぇのか……。まあ、自前の呪力使えば問題はないな。
元々規格外に多いカンピオーネの呪力量が倍以上に増えた感じがする。
これなら戦いの時にモルス──〈死〉のラテン語から取ったこの世界のアジ・ダハーカの名前──に戦いを任せて権能の操作をしたりも出来るかもしれないな。
そろそろ帰った方がいいな祐理に心配掛けるのは……ってモルスの事で絶対心配させる上に怒られるな、たぶん……。
「成り行きだがこれからよろしく頼むぜ、
「頼むぜー」
「ヨロー」
「クククッ、ああ、イイゼ!悪神のオレを殺したんだ。マオは、この『
更に魔術の精密操作が出来るようなって数秒で長距離転移が出来た……が、事情を説明し終わった後の祐理の説教で霞んでしまった。