あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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エピローグ~もしも魔法があるのなら

‘’シャーロット‘’

誰かが娘の名前を呼んだ気がして、グレース・エバンズは目を覚ました。

今の時刻は真夜中。グレースは体調を崩し、数日前からベッドの住人だった。五歳になる一人娘のチャーリーの姿が見え、グレースはほっとする。看病する娘に、風邪が移るから自分の部屋で寝なさいとは言ったが、チャーリーは結局毛布を持ってきてこの部屋のソファで眠っていた。

そんなチャーリーの姿を見るとグレースは自分が情けなくて仕方ない。チャーリーは貧しい暮らしに文句も言わず、家事を積極的に手伝ってくれた。せっかく可愛らしい顔をしているのに、華やかな服や靴も買ってやれない。髪を短く切り、いつもみすぼらしい格好をしているため、男の子に間違われる事も多い。グレースが外でもチャーリーと呼ぶため、近所の人々もチャーリーを男の子と勘違いしている者が少なくなかった。

母一人子一人での暮らしは楽ではない。ここ数日の風邪のせいで、仕事もクビになった。今回の風邪はやけに長引く。まだ熱は下がらず、咳もひどい。

「…ママ?起きたの?体がきつい?」

チャーリーが目を覚ましたので、グレースはベッドの中から声をかけた。

「…大丈夫よ、チャーリー。ちょっと変な夢を見ただけ。寝なさい」

そう言うと喉に痛みが走る。グレースがムリヤリ微笑むとチャーリーは安心したように、再び目を閉じた。

そんな娘の姿を見て、グレースは考える。チャーリーはグレースと家の事を考えてばかりのため、近所に友達らしい友達がいない。外にでると意地悪な子どもに追いかけられた事があるらしく、積極的に友達を作ろうとはしなかった。それがグレースには悲しい。チャーリーには自分だけの世界に留まってほしくない。もっと大きな世界で生きてほしい。

グレースは寝返りをうつと、窓から外を見上げた。星が見えるかと期待したが、生憎今日は曇りだったらしい。どんよりとした空に星は全く見えなかった。

もし、奇跡が起きるのなら。ううん、奇跡じゃダメ。もしも、この世に魔法があるのなら、自分はチャーリーが、心から甘えられて信頼できる友達ができるように魔法をかけるのに。

 

グレースはそんな自分の妄想に苦笑いした。さあ、もう寝よう。早く風邪を治さなければ。そして、たくさん働いて、チャーリーにかわいい服を買ってあげよう。チャーリーはもったいないと怒るかもしれない。それでもいい。チャーリーは怒った顔もとても可愛らしいのだ。そうだ、髪も伸ばすように勧めてみようか。チャーリーは自分の赤毛が嫌だと嘆くけど、長く伸ばしたら絶対に綺麗なはずだ。

グレースは娘の髪を伸ばした姿を想像しつつ、瞳を閉じた。

 

 

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