夏休みの過ごし方
『ハリーへ
この手紙があなたに届いていますように。なぜだかお返事がこないので、念のためマグル式の郵便で送ります。
お元気ですか?こちらは上々です。ちょっと早いけどお誕生日おめでとう。実は私も同じ誕生日なの。生まれてきた喜びをあなたと共有したいので、これを贈ります。私が作りました。もしよければ使ってね。
ロンの家には遊びに行けそうかしら?あなたを迎えに行きたいので、相談するつもりなの。それまでは、どうか体に気をつけて、頑張ってちょうだいね。
シャーロットより』
ハリー・ポッターはほっと息を吐いた。どうやら、自分は友人に見捨てられたわけではなかったらしい。
夏休み、なぜか学校のみんなから手紙が来ないのだ。ヘドウィグは叔父さんによって閉じ込められているため、こちらからも手紙は送れない。今日はハリーの誕生日の前日。悶々と考えているなか、シャーロットから郵便が届いたことは、夏休みが始まってから初めての喜びだった。朝、叔父さんに新聞を取ってくるよう命じられ、玄関に行ったところ、自分への手紙が届いていることに驚いた。それをとっさに物置に投げ込み隠し、あとからこっそり取りに行った。もう前のようなへまはしない。
シャーロットの手紙の優しい言葉に心が温かくなる。同封されていたのは、キラキラと光る美しい栞だった。ニンバス2000と思われる箒が描かれている。その絵をじっと見ていると、箒がスニッチやふくろうに次々と変化していった。それにクスリと笑みがこぼれる。
明日はハリーの誕生日。シャーロットの誕生日でもあるらしい。友人にこちらからはプレゼントが贈れないのが残念でならない。明日、行われる叔父さんの商談&ディナーを考えて、ハリーはまた憂鬱になった。できれば、早くシャーロットかロンが迎えに来てくれますように。
「…あの、お嬢様、何を作っているので?」
「これ?魔法のサングラスよ。性能はヒミツ」
「前に作っていたのは…?」
「ああ、ただの性転換薬よ。特に作った意味はないの。ただ、なんか役に立つかなーって。」
「その前は…」
「キャンディ!食べると猫の耳が生えるだけ。これも特に意味はないわ。ただ、面白いから友達の双子のお兄さんにあげようと思っているの」
「……」
「ちなみにその前に作ったのは合言葉・キーよ。ホグワーツの寮みたいに、決められた言葉を言わないと絶対に鍵が開かないの。かなり強力な魔法をかけたから、鞄とか部屋とかに鍵をかけるとき結構使えると思うんだけど。」
「あの、宿題はよろしいのですか?」
「そんなの、とっくに終わらせたわ」
ホグズミード村の小さな家で、シャーロットはアンバーと会話しながら作業を続けていた。
ダンブルドアと話し、夏休みが始まり数日たった。最初はダンブルドアは何度もシャーロットと話そうとしたが、シャーロットは拒否をした。そのうち、ダンブルドアは諦めたように家には来なくなった。時々アンバーにシャーロットの様子を確認しているようだったが。
初めての夏休み、シャーロットは自分の研究と新しい魔法道具の発明に時間のほとんどを費やしていた。未成年につけられた“臭い”など、ホグズミードでは意味をなさない。こっそり魔法を使っているが、ダンブルドアには分かっているだろう。それでも何も言ってこないことにほんのちょっとだけ感謝した。夏休み中、いろいろ作ったが、中には到底役立ちそうもないものも混じっている。
「アンバー、これどう思う?」
「お嬢様、これは?」
「ブローチ。余った材料で作ってみたの。変かしら?」
シャーロットは猫の形をした2つのブローチをアンバーに見せる。1つは金色、もう1つは銀色のしなやかな猫だ。
「素敵だと思います」
「そう?じゃあ、これでいいか」
シャーロットは適当にブローチを包むと鞄にしまった。
ボンっと音がして、シャーロットは驚いて窓に駆け寄る。そこにはボロボロのふくろうが手紙を持って倒れていた。
「ちょっと!大丈夫?」
シャーロットは慌てて窓を開け、ふくろうを引き上げる。調べたところ、怪我はないようだった。ふくろうに食事と栄養ドリンクを用意し、あとはアンバーに任せ手紙を開けた。
『シャーロットへ
元気?夏休みの宿題は終わった?実は相談したい事があるんだ。ハリーから手紙が返ってこないんだよ。何度も手紙をふくろうに持たせるけど、返事が全然ない。シャーロットには返事が来てる?来てなければ、きっと、何か事情があるんだと思う。家族で相談したんだけど、車でハリーを迎えに行こうかと思うんだ。もしよければシャーロットもうちに来ないかい?歓迎するよ
ロン・ウィーズリー』
ああ、ロンからの手紙ということはこのふくろうはエロールか。シャーロットは哀れな老ふくろうに同情して視線を送った。どうやら、ドビーは積極的に動いているらしい。ハリーは元気だろうか。自分が少し前に届けたプレゼントを受け取っていればいいが。きっと、今は誕生日の騒動が原因で部屋に閉じ込められているに違いない。
シャーロットはふむ、と頷く。そろそろ動くべき時かもしれない。さっそく準備を始めた。
「アンバー、友達の家に遊びに行くわ。しばらく帰ってこないから。」
「え?お嬢様、どちらへ?」
「ウィーズリー家よ。自分で何とかするから大丈夫。もちろん、外では魔法は使わないから。お爺様にもそう言っておいて」
シャーロットは最後に哀れなエロールを籠に優しく入れ、荷物を持って家を飛び出した。