『スネイプ先生へ
お元気ですか?お久しぶりです。去年は大変お世話になりました。
突然手紙を出して、申し訳ありません。実は先生にどうしても頼みたいことがあります。新学期が始まる日の朝、ホグズミード村の入り口に来ていただけないでしょうか。お忙しいところ本当に申し訳ありませんが、先生にしか頼めないのです。よろしくお願いいたします。
シャーロット・ダンブルドア』
突然ふくろう便で届いた手紙を読み、セブルス・スネイプは眉を寄せた。昨年入学したグリフィンドールの赤毛の少女を思い浮かべる。少女を見るたび、スネイプは過去の事を思いだし、心がえぐられるような感覚に陥った。特に彼女はポッターと仲がいい。ポッターと少女が二人で並んでいると、スネイプは嫌でも自分の宿敵とその妻の事、過去のあやまちを思い出させられる。とはいえ、少女がリリーとは別人であることはよく分かっていた。単なるスネイプの感情の問題である。スネイプはできるだけ少女とは接触しないようにしていた。
だからこそ、この手紙が来たことは驚きだった。なぜ、自分に頼み事を?何が目的だ?しかし、断る理由はない。スネイプはゆっくりと椅子から立ち上がった。
「おはようございます。お久しぶりです。スネイプ先生」
「……何の用事だ」
シャーロットはスネイプ先生のしかめっ面を見てにっこり笑った。
「手紙に書いたんですけど、先生にお願いがあるんです」
「…何かね」
「はい、先生。」
シャーロットの次の言葉に思わずスネイプは口をポカンと開けた。
「私とデートをしましょう」
「…………は?」
「一体何が目的なんだ」
「まあまあ、先生。ただでさえ目立っているんですから、もうちょっとせめて笑いましょう。さあ、にっこり」
「笑えるか。君は何がしたいんだね」
キングス・クロス駅の近くのカフェ。そこからは駅の駐車場が見える。シャーロットはスネイプ先生の付き添い姿あらわしによって、ホグズミードからここまで来ていた。
カフェの人々は不思議な服装でしかめっ面の男性と、赤毛の少女という奇妙な二人組にチラチラと視線を送っている。
「実は、心配してる事があって。ハリーの事です」
「…ポッターがどうかしたのかね」
「ハリーのところへ、変な屋敷しもべ妖精が来たらしいんですよ。ハリーが魔法を使って警告を受けた件は聞きましたか?」
スネイプ先生はしかめっ面のまま頷いた。
「あれ、実はハリーじゃなくて、その屋敷しもべ妖精がやったらしいんです。何でもその妖精はどうしても、ハリーをホグワーツに行かせたくないらしくて。結果的にハリーは親戚の人に家に軟禁されちゃいましたし」
「それで、君はいったい何がしたいんだね。」
「ハリーから聞いた話をちょっと考えたんです。その妖精、絶対に何かを仕掛けると思うんです。さすがにたくさんの生徒が乗っている列車をどうかするとは考えられないですけど、ハリーが列車に乗るまでに何かをしてきそうな予感がして。例えばハリーが列車に乗れないように事故を起こすとか」
「…まさか」
「でも、十分可能性はあると思います。駅までの道はウィーズリー家の皆さんと来るから心配いらないと思うんですけど、何か嫌な予感がして。」
「……」
「もし、ハリーに何かあったらスネイプ先生、助けてください」
「だから、なぜ我輩なのかね。校長やマクゴナガル教授などもっと適任がいるだろう。」
「今日は入学式です。校長先生やマクゴナガル先生は一年生をむかえるのにお忙しいでしょうし。」
「我輩も寮監としての仕事があるんですがね」
「すみません。でも、せめてハリーが列車に乗るまでは一緒に見届けてください。」
シャーロットがそう言って頭を下げるとスネイプは諦めたようにため息をついた。
「あれ!ロンの家の車です!さあ、行きましょう!」
シャーロットはそう言って、スネイプの服を引っ張った。スネイプは渋々付いてくる。
9と4分の3番線へ繋がる壁。ウィーズリー家の人々が慌てたように柵に突入していった。
「大丈夫ではないか」
「まだです!ハリーはまだ柵を通り抜けてません!」
二人は物陰からこっそり見守る。そして、ハリーとロンが柵に向かって走っていった。
ガッシャーン!!
二人のカートは柵を通り抜けず、ぶつかり後方へはね飛ばされた。スネイプ先生のしかめっ面が深まった。
周囲のマグル達に必死に言い訳するハリーとロンを見ながら、シャーロットは言った。
「やっぱり!先生、お願いします。私達を姿あらわしで学校へ連れて行ってください!」
「ホグワーツでは姿あらわしはできん」
「ホグワーツじゃなくて、ホグズミードです。そこまで行けば、徒歩で学校へ向かいます。校長先生には私から話します。」
スネイプ先生は少し考えたようだが、やがてゆっくり頷いた。
「ハリー!車だよ!車で学校まで行こう!」
「ええ?!」
「大丈夫!運転でき――」
「ダメに決まってるでしょ」
ぺしっと後ろからロンの頭を軽く叩いた。ハリーとロンが呆然とシャーロットの方を振り向いた。
「シャーロット!なんで?君も乗り遅れたの!?」
「まさか。何度も言うけど、私、列車に乗らなくても学校に行けるのよ」
そうだった、とロンは思い出した。
「それよりも、ダメよ。車を使っちゃ。」
「なんで!?」
「こんなに人がいるのよ。透明ブースターがあるとはいえ、見られないとは限らないわ。もし、見られたらあなたのお父様は魔法省の尋問&罰金コースよ。」
ロンの顔がひきつった。
「安心して。実はちょっと心配だったからここに来たのよ。対策はしてきたわ」
「対策?」
「…ウィーズリー。車を使おうとはとんでもない無謀なバカだな。さすがはグリフィンドール。新学期前で減点できないのが残念だ」
「スネイプ!…先生」
シャーロットの後ろから現れた天敵にハリーとロンの顔が強張った。
「そんな顔しないで。二人とも。これから姿あらわしで先生に学校に連れていってもらいましょう」
「えー…」
「別に我輩は君達が学校へ行かず、このまま家に帰りたいなら構わないが」
「…いえ、お願いします」
その後、スネイプ先生によって無事にホグズミードへ姿あらわしが成功した。
姿あらわしが終わるとすぐにスネイプ先生は学校へ足早に帰ってしまった。