シャーロットが“姿あらわし”によって連れていかれたのはホグズミードにある小さな家だった。村の隅っこにポツンと建っている。ダンブルドアとシャーロットが家に入ると小さなくりくりした目の変な生き物が出迎えた。
「お帰りなさいませ、ご主人様!お待ちしておりました、お嬢様!」
キーキーとわめくように話す生き物を見て、シャーロットは少し新鮮な気持ちになった。これ、屋敷しもべ妖精だ!
「シャーロット、これは屋敷しもべ妖精のアンバーじゃ。元はホグワーツのキッチンで働いておったのじゃが、君の世話人として引き抜いた。何か困ったことがあればアンバーに言えばよい。」
「分かりました。よろしく、アンバー」
「よろしくお願いいたします!」
アンバーは光栄の極みと言わんばかりにウルウルと目を輝かせた。
「そういえば、あなたの事はなんと呼べばいいのですか?」
シャーロットがダンブルドアに尋ねるとダンブルドアは少し困ったように髭を撫でた。
「うーむ、君の父としてはとうに年がいっておるしのう…。お爺様はどうじゃ?」
「お爺様…ですか。」
シャーロットは呼びにくいなあ、と思いつつ呼んでみる。ダンブルドアは満足したように頷いた。
「これからよろしくのう。シャーロット。」
新しい生活は順調だった。そもそも、ダンブルドアはほとんどホグワーツで生活している。この家で実質シャーロットはアンバーと二人暮らしだった。アンバーは料理がうまかったし、きれい好きのため掃除もよくしている。シャーロットは今までの暮らしとは全く違うのに戸惑ったが、考える時間が欲しかったのでありがたかった。
シャーロットは考える。自分がなぜこの世界に転生したか分からないが、とりあえず精一杯生きよう。そのためには魔法の勉強を早いうちに身に付けていきたい。そういえば、シャーロットの学年はあのハリー・ポッターと同じらしいことに気づいた。面倒なことに巻き込まれそうだ。しかし、主人公は自分と同じ孤児なのに、今頃ダーズリー家でひどい暮らしを送っている。それに比べて自分はなんと幸運か。入学したらできるだけ親切にしようと誓った。
そもそも、ハリー・ポッターシリーズはシリーズを追うごとにたくさんの犠牲を出している。自分が存在している意味は分からないが、その犠牲の救済のためとはどうしても思えなかった。というか、自分も犠牲になる恐れは十分にある。どうやって主人公やその周りと関わっていけばいいのか。シャーロットは遠い未来を思い、頭を抱えた。
とりあえずは勉強だ。シャーロットはたまに家を訪れるダンブルドアに本の購入を依頼した。ダンブルドアは笑いながら、たくさんの本を購入してくれた。その中にはシャーロットの歳では読みにくい物もあったが、シャーロットの見た目はともかく中身は大人だ。次々と知識を蓄えていった。そうなると今度は魔法が試したくなる。ダンブルドアに杖を頼んだが、さすがに「まだ、君の歳では早いのう。杖は入学準備の時に買うからの」と断られた。そうなるとシャーロットにはなすすべがない。ダイアゴン横丁の場所も分からないし、まだお金も持たせてもらえなかったためどうしようもなかった。しかし、シャーロットは図太かった。そんなことで諦めるわけにはいかない。シャーロットは家の庭の適当な木から太めの枝を切り取った。そして枝を杖っぽい適当な形に削っていった。ちなみにアンバーはその様子を心配そうに見ていた。ダンブルドアには内緒にしてほしいというとオドオドとしながらも頷いた。作成した自作の杖を試してみたところ、最初は全く使い物にならなかったが何度も試しているうちに少しずつ効果を現し始めた。ダンブルドアに引き取られてから一年、七歳になったシャーロットはほとんどの呪文は使いこなせるようになった。元々の才能があったのか、難しい高度な呪文も少し練習を詰めばすぐに取得した。
ところでシャーロットには少し気になっている事があった。自分の旧姓と容姿である。エバンズという名前に何だか引っ掛かりを覚える。シャーロットの伸ばし始めた赤い髪は真っ赤というよりは、少し暗く、ダークレッドという言葉がぴったりだ。そして宝石のような緑の瞳。あれ?なんか、これって…。
「お爺様。あの、私ってあのハリー・ポッターと何か関係がありますか?」
久しぶりに家に来たダンブルドアに尋ねたところ、ダンブルドアは目を見開き珍しく慌てたように聞き返した。
「シャーロット!なぜそう思うのじゃ!?」
「え、えっと、なんとなく…」
珍しいダンブルドアの表情に逆に驚いてモゴモゴと答える。ダンブルドアは奇妙な瞳でシャーロットを見つめた。そしてゆっくりと話し始めた。
「…君の実の父親はラルフ・エバンズ。ハリー・ポッターの母親、リリー・エバンズの親戚にあたるのじゃ。そして、シャーロット。血縁の不思議というべきか、君はリリー・エバンズによく似ておる。まるで実の親子のように生き写しじゃよ。」
静かに話すダンブルドアは悲しそうな表情をしていた。