シャーロットがその場にいなかった理由は単純である。
「ふえっくしょん!」
「まだ風邪治ってないじゃない」
「治ったわよ!ふえっくしょん!」
シャーロットはハロウィーンの日に限って風邪をひいてしまった。その日の朝から、カボチャの匂いを感じないなと思っていたのだ。今まで、ほとんど風邪をひいたことがないシャーロットは異変を感じるのが鈍かった。結果として授業中に倒れ、そのまま入院となったのである。その日の夜に目を覚ましたシャーロットは慌てて保健室から飛び出そうとしたが、熱でフラフラとなっており、マダム・ポンフリーに怒られた。結局その後、『元気爆発薬』の洗礼を受け、すぐに風邪は治ったが、しばらく耳から煙が出るという屈辱を味わった。
「なんで!なんで、ハロウィーンに限って!ふえっくしょん!」
「仕方ないわよ、シャーロット。来年こそはハロウィーンのパーティーを楽しみましょう。昨日はあんな事が起こっちゃったし」
ハーマイオニーはシャーロットの言葉によって、ハロウィーンのパーティーに出られなかったことを残念がっているという勘違いをしたらしい。
ハロウィーンの翌日からホグワーツは騒がしくなった。結局シャーロットが気絶している間にミセス・ノリスは石になったらしい。学校はミセス・ノリスが襲われた事件でみんなが騒ぎ立てていた。フィルチは三階の廊下をウロウロし、壁の文字を消そうと躍起になっていた。ちょっとでもフィルチの前で怪しい行動をとると、フィルチは処罰に持ち込もうとしていた。
グリフィンドールの談話室にて、シャーロットはその日に起こったことを三人から詳しく聞き出した。
「秘密の部屋ね。あんな厄介な物があるなんて全くどこが安全な学校なのかしら」
シャーロットがまだムズムズする鼻を押さえながら呟くと、ハリー、ロン、ハーマイオニーが食いついた。
「君、秘密の部屋が何なのか知ってるの?」
「シャーロットなら知っててもおかしくないもんな」
「教えてちょうだい。図書館に行っても、『ホグワーツの歴史』は全部貸し出されてるの!」
三人に矢継ぎ早に迫られ、たじろいだ。真剣な目で見つめられたため、ゆっくり口を開く。
「秘密の部屋っていうのは、そもそも…」
と、シャーロットが話し始めたところ、談話室中のグリフィンドール生が注目し、近づいてきた。仕方なくシャーロットは立ち上がり、講義をするように少し大きな声で話始めた。
「昔、あるところに四人の偉大な魔法使いがいたの。勇猛果敢なゴドリック・グリフィンドール、優しく誠実なヘルガ・ハッフルパフ、聡明な頭脳を持つロウェナ・レイブンクロー、狡猾で野心家のサラザール・スリザリン。四人は仲が良く、993年にホグワーツを創設し、自身の名を冠した寮を設けたの。ところが、創設後二つの意見によって、決裂した。スリザリンはホグワーツの生徒そのものを生粋の魔法族の家系、いわゆる純血のみに限るべきだと主張、他の三人はマグル生まれを差別するべきではないと主張した。やがて、スリザリンは他の三人との諍いに破れ、ホグワーツを去っていった。
しかし、彼はホグワーツを去る前に、ホグワーツのどこかに、ある部屋を残していったという話があるの。
その部屋はスリザリンの正当な継承者のみが開けることができる。継承者はその部屋に潜む怪物を解き放ち、魔法を学ぶに値しないものを学校から追放するとされた。
これが、秘密の部屋の伝説よ。以上、ご清聴ありがとう」
シャーロットが話終わると、グリフィンドール生達はざわつき始めた。ハーマイオニーが普段の授業のようにピンと手を挙げた。
「何?ハーマイオニー」
「その怪物って?一体どんな怪物なの?」
「…分からない。いろいろ説はあるけど、確実な情報はなかったわ。」
今度はディーン・トーマスが手を挙げた。
「その継承者ってのは何なんだ?そいつは、今学校にいるってこと?」
「そうでしょうね。壁にもはっきりと書いてあったし。きっと、秘密の部屋を開けるには何か厳しい条件があるのよ。スリザリンが作ったその条件をクリアした人物がいるんだと思う。そいつが怪物を解き放ったのよ。」
シャーロットがきっぱり言い放つと、生徒たちは騒ぎ始めた。シャーロットは談話室の隅っこで、ジニーが顔色を青くしているのに気がついていた。