「シャーロット!」
三人が駆け寄るよりも早く、マダム・ポンフリーはカーテンをさっと閉めた。
「見てはいけません!お戻りなさい!」
「でも――」
「ダメです。見てはいけません!」
その時、ダンブルドアが早足で保健室に入ってきた。
「ダンブルドア先生!シャーロットが――」
「分かっておる。君達は戻るんじゃ」
ダンブルドアは珍しく険しい顔で三人にそう言うと、カーテンの中へ入っていった。
マダム・ポンフリーは三人が入ることを許さず、結局戻るしかなかった。
「シャーロットが襲われるなんて…」
「シャーロットは何かを掴んでいたわ。きっと、狙われてしまったのよ」
「でも、何を知っていたんだ?」
「分からない。何も話してくれなかった。」
三人は寮に戻り、相談をし始めた。寮でもシャーロットが襲われた噂で生徒はザワザワしていた。とうとう生徒が犠牲になったのだ。
「シャーロット、死んでないよね?」
「石になってしまっただけよ。マンドレイク薬さえできれば大丈夫」
三人は慰めあったが顔は暗いままだった。
数日後、三人は秘密の部屋に関していろいろ調べるも、場所や継承者の謎は分からないままだった。その間、バレンタインでロックハートが小人と大騒ぎしていたが、ハーマイオニーを含めイライラするだけだった。
「分からないわ。一体シャーロットは何に気づいたの」
「ねえ、保健室にお見舞いに行ってみないか」
ロンの提案に、三人は保健室に足を向けた。
「ダメです」
「お願いします。マダム。少し顔を見るだけなので」
「いいえ。ダメです」
マダム・ポンフリーは絶対にカーテンを開けてくれなかった。その様子は頑なで、三人は引き下がるしかなかった。
「あれ?」
「どうしたの?」
「これ…」
ハリーは保健室の床で何かキラリと光ったものを見つけた。
マダム・ポンフリーは気づいてないようだったので、それをこっそり拾う。
「これ、シャーロットのブローチよ」
「ああ、夏休みに作ったんだっけ?ジニーがこれと同じブローチをもらってた。ジニーのは銀色だったけど」
「落としたのかしら?」
話しながら歩いていると、
『ハリー』
小さな声がした。
「何?今の」
「シャーロットの声だ!」
『ハリー、ロン、ハーマイオニー』
すると、ハリーの手のひらにあった金色の猫が動き出した。三人は驚いて見守る。猫はゆっくりと手のひらに座ると、口を開いた。
『ハリー、ロン、ハーマイオニー。私、シャーロットよ』
「シャーロット!」
『これは、私の記憶よ。何かあったときのために、これを残すわね。もしかしたら、私も襲われる可能性があるから』
「スゴいな、こんなの作るなんて!」
「黙って!」
『秘密の部屋の場所は分かったわ。覚えてる?秘密の部屋が前に開いたのは五十年前。五十年前に特別功労賞をもらった生徒がいるの。そして、同じく五十年前に退学になった生徒がいる。退学になった生徒で、六十歳過ぎの人に心当たりがあったの』
「まさか…」
『ハグリッドよ』
「ハグリッド!?」
『ハグリッドが秘密の部屋を開けて、生徒を襲ったなんて信じられなかった。だから、直接聞きに行ったの。ハグリッドはやっぱり無実だった。ハグリッドはバジリスクの事なんて知らなかったわ。五十年前、ハグリッドは大きな蜘蛛を飼っていたみたいなの。その蜘蛛が秘密の部屋の怪物だって、生徒を襲ったんだって、勘違いされたのよ』
蜘蛛の話が出たときに、ロンの顔がひきつった。
『五十年前、特別功労賞をもらった人物、退学になった人物、そしてバジリスクによって死に追いやられた人物もいる。覚えてる?「五十年前にはなかったわ」って言葉』
「あっ!」
『嘆きのマートルが、その犠牲になった女子生徒よ。彼女にも話を聞いたの。彼女は自分の死因を知らなかった。死ぬ直前まで三階の女子トイレで泣いていたら、外国語で男の声が聞こえたんですって。そして、扉を開いたら、大きな黄色い目玉があって、気がついたら死んでたらしいの』
「そうか、トイレなのね!秘密の部屋の入り口よ!」
『外国語というのは恐らく蛇語のことよ。ハリー、秘密の部屋に入れるのはあなたしかいないの。バジリスクを倒さなければならないわ。継承者は焦っているはず。被害が思ったよりも少ないからよ。取り返しのつかないことをする前に、秘密の部屋へ行って。きっと、継承者は、もう…』
猫は最後まで言葉を言えず、スッと動かなくなった。
「どうしたんだ?」
「魔力が切れたらしいわ」
「どうしよう!」
「とりあえず先生に言いましょう」
三人が職員室に行くと、教師達は誰もいなかった。
「先生達はどこに行ったんだ?」
その時、マクゴナガル教授の声が響いた。
「生徒は全員、それぞれの寮にすぐ戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集まりください。」
「何があったの?」
「もしかして、また誰か襲われたとか…」
「とにかく隠れて、何が起こったか確認しよう!先生が戻ってくる」
三人は先生達のマントの中に隠れた。
数分後、当惑しきった教師達にマクゴナガル教授が顔を強張らせ話始めた。
「とうとう起こりました。生徒が一人、怪物に連れ去られました。」
「一体誰が?」
「ジネブラ・ウィーズリー」
ロンが口を押さえた。その顔は真っ青になっている。
「スリザリンの継承者がまた伝言を書き残しました。最初に残された文字のすぐ下にです。『彼女の白骨は永遠に秘密の部屋に横たわるであろう』。」
教師達は沈黙した。その時、ロックハートがいつものきらめく笑顔で部屋にやって来た。
「失礼しました。何か聞き逃してしまいましたか?」
何も出来ないくせに口だけが達者な男が暢気に笑っている。それから、ロックハートは先生たちに八つ当たりぎみに秘密の部屋の事柄を押し付けられた。ロックハートは顔をひきつらせながら、支度をすると言って部屋を飛び出していった。
「これで厄介払いが出来ました。寮監の先生方は寮に戻り、生徒に何が起こったかを知らせて下さい。ダンブルドア先生は魔法省に呼び出され、事情を説明しています。今後、学校はどうなるかはまだ決定していません」
先生たちは立ち上がり、ぞろぞろと出て行った。
誰もいなくなったのを確認して、三人はゆっくり洋服掛けから出る。
「な、なんで、なんで、ジニーが!」
「落ち着いて、ロン。きっと生きてるわ。助けに行きましょう!」
「すぐに秘密の部屋へ行かなきゃ」
「そうだ、ロックハート先生のところに行きましょう!先生も秘密の部屋を探しているはずだわ!」
ハーマイオニーの提案に、とにかく何かをしたい二人は頷き、駆け出した。