ロックハートの部屋に行くと、慌ただしい物音が聞こえた。ハーマイオニーがノックすると一瞬静かになった。少し間をおいて、ロックハートがドアの隙間から顔を覗かせた。
「ああ、…どうしました、三人とも」
「先生、私たち、お知らせしたいことが…」
「あー、…いや…私は、都合が…いや、いいでしょう」
ロックハートが戸惑いながらもドアを開いたので三人は中に入った。部屋の中は片付けられ、トランクが二つ準備されていた。
「どこかへ行くんですか?」
「急に、呼び出されて仕方なく…」
「どうして!ジニーはどうなるんです!」
「そう、その事だが、まったく気の毒だと…」
「闇の魔術に対する防衛術の先生じゃないですか!」
「本に書いてあったような偉業を成し遂げた先生が逃げ出すんですか!?」
ハーマイオニーが叫ぶように言うと、ロックハートは口ごもりながらもとんでもない言葉を吐いた。
「私が、この仕事を受けたときはこんなことがあるなんて予想だに…。本は誤解を招く。私の仕事は……まずそういう偉業を成した人たちを探しだす。どうやって仕事をやり遂げたのかを聞き出す。それから『忘却術』をかける」
ハーマイオニーが震えながらショックを受けたように声を振り絞った。
「そんな、先生、嘘ですよね?」
「私は忘却術だけは自慢できるんですよ」
ロックハートは歪な笑いを見せながら、三人に背を向けトランクに鍵をかけた。そのまま振り返り、杖を振りおろした。しかし、三人の方が速かった。
「エクスペリアームス!」
ロックハートの杖はロンの手の中に飛び込んだ。ロンはその杖をポキッと二つにへし折った。ロックハートは情けない顔でへたりこんだ。
「最悪だわ!この詐欺師!」
ハーマイオニーは「インカーセラス」と唱え、ロックハートを縛ると、部屋にあった洋服ダンスに突っ込んだ。
「どうする?」
「僕たちで秘密の部屋へ行くんだ」
「さあ、早く行きましょう!」
三人は階段を降り、マートルのいるトイレへ向かった。
「マートル!」
「なによ?なんか用なの?」
マートルがトイレの個室からひょっこり顔を出した。
「君が死んだときの様子が知りたいんだ」
「あら、あんた達の仲間のあの赤毛の子から聞いてないの?」
そう言うとマートルは誇らしげに死んだときの状況を語り出した。
「その目玉は正確にはどこで見たの?」
「あのあたりよ」
マートルは手洗い台の辺りを指差した。
「蛇口が壊れっぱなしよ」
「ハリー、何か言ってみてちょうだい」
「でも、」
「蛇を見たときのように、しゃべってみて」
ロンとハーマイオニーに言われハリーは蛇口の蛇のような傷を見つめ、口を開いた。
『開け』
すると、蛇口がゆっくり回転をし始めた。三人の目の前で手洗い台が床へ沈んでいく。そして、大人一人分が通れそうな穴が現れた。どうやらパイプのようだ。
「僕はここを降りる」
「僕もジニーを助けに行く」
「もちろん、一緒よ」
三人はパイプの中を覗きこむ。
「用心して。バジリスクがすぐそこにいる可能性もあるんだから」
「あいつの声が聞こえたら、すぐに知らせるよ」
三人は頷き合うと、一人ずつパイプの中に入っていった。滑り台のように急降下していく。やがて、平らになっていき、三人は放り出されるように着地した。床はじめじめして、空気が冷たい。
三人はようやく秘密の部屋へ降り立った。
三人が消えて、しばらくたった後。女子トイレでマートルがパイプの中を覗きこんでいると、黒い影が現れた。
「あら?あんた…」
マートルが話しかける前に、その黒い影はパイプの中に入り込み、一気に滑り落ちていった。