「…あいつ、死んだの?」
「正しくは消滅、かしらね」
「シャーロット!」
突然ハーマイオニーが抱きついてきた。
「もう、バカ!信じられない!あなたが襲われたと思って、どんなに心配したか…」
「うん。ごめんね。金縛りの術をかけたことにハーマイオニーならすぐにばれるかもしれないと思って、マダム・ポンフリーに隠してもらって、ダンブルドアにも黙っててもらったの。でも、私が残したメッセージに気づいてくれてありがとう」
シャーロットが笑うと、ハーマイオニーは頬を膨らませた。
その時、今まで意識のなかったジニーがわずかに動き出した。そしてゆっくり目を開く。
「ジニー!」
ロンが声をかけると、身を起こし辺りを見渡す。部屋の惨状を見ると、途端に大粒の涙を流した。
「…ご、ごめんなさい。ごめんなさい。 あ、あたしなの、あたしがやったの! で、でもあたしそんなつもりじゃなかった、う、嘘じゃない―――リ、リドルがやらせたの―――それで、あ、あたし!」
「分かってるわ、ジニー。もう大丈夫」
「シャーロット!ごめんなさい。あなたは心配してくれてたのに。私、日記にあなたが何かを知ってるかもって書いちゃったの…。ごめんなさい」
「もう大丈夫だよ。ジニー。もう悪夢は終わったんだ。帰ろう」
「私、きっと退学になるわ!」
「そんなことさせない。絶対に。とにかく、戻りましょう。もう、ロンのパパやママも来ているはずよ。ジニーが無事だってこと、知らせないと。」
シャーロットはそう言いながら立ち上がった。
「でも、どうやって帰るの?」
「あんなところまで登れないよ」
「しまった、箒があればなぁ」
「大丈夫。フォークス!」
シャーロットが呼ぶと、フォークスが降りてきた。
「シャーロット、そういえばその鳥って…」
「ああ、教えていなかったわね。お爺様のペット。不死鳥のフォークスよ」
それから、フォークスの驚異の力で上まで引っ張ってもらい、四人は地下からトイレへ戻ってきた。
トイレまで戻ると、マートルが待っていた。
「…生きてるの?」
「何とかね。マートル、五十年たったけど、あなたの仇は取ってきたわ。でも、ごめんなさい。あなたと一緒にここに住むのは無理みたい。」
「…いいのよ。あんたは、きっと、生きている方が面白いわ」
マートルはニキビだらけの顔で、可愛くニッコリ笑った。
「ジニー!」
ウィーズリー夫妻の声が響いた。二人は娘をギュッと力強く抱き締める。その向こうには、微笑んだダンブルドアと厳しい顔のマクゴナガル教授がいた。
ハリーが一つずつ、事件の内容を説明し始めた。シャーロットは口を挟まずそれを聞いていた。
ハリーが日記の事を説明し、ヴォルデモートがジニーを操っていた事を言うと、ウィーズリー夫妻は驚愕の声を上げた。
「でも、ジニーが、その、その人と―――な、何の関係が?」
「その人の、に、日記なの!あ、あたし、何時もその日記に、か、書いてたの!そしたら、そしたら、その人が返事をくれたの!」
「ジニー!パパはお前に何にも教えていなかったというのかい?パパはいつも言っていただろう『脳みそが何処にあるか見えないのに、一人で勝手に考えることのできるものは信用しちゃいけない』って!」
「あ、あたし、し、知らなかった!」
ジニーが泣きじゃくった。
「ミス・ウィーズリーはすぐに医務室に行きなさい。過酷な試練じゃったろう。処罰は無し。もっと年上の、もっと賢い魔法使いでさえ、ヴォルデモート卿に誑かされてきたのじゃから」
「は、はい……」
「安静にして、それに熱い湯気の出るようなココアをマグカップ一杯飲むが良い」
ジニーがマクゴナガル教授と両親に連れられて部屋を後にした。
「シャーロット」
ダンブルドアがシャーロットを呼んだ。
「はい。お爺様。」
シャーロットがダンブルドアの元へ行くと、ダンブルドアは思いもよらぬ行動をとった。
シャーロットをギュッと力強く抱き締めた。他の三人はポカンとしている。
「本当に、なんと言ったらよいのか。どれだけ心配したか…」
「…でも、お爺様は武器を貸してくれました。私のこと、信じてくれてありがとう」
シャーロットが小声で言うと、ダンブルドアは体を離し、複雑そうに苦笑した。
「あーっ!」
突然ハーマイオニーが声を上げた。
「どうしたんだよ!?」
「忘れてたわ!ロックハート先生がそのままよ!」
「あ、あー、忘れてた」
「先生、あの人詐欺師なんです!」
ハーマイオニーとロンが早口で同時に説明し始めた。シャーロットは少し笑うと、二人の肩を叩いた。
「とりあえず、ロックハートのところへ行きましょう。大丈夫。私も分かってるから」
二人を押し出すようにして部屋を後にする。部屋を出るとき、残ったダンブルドアとハリーにウィンクした。
「縛って、閉じ込めたままなのよ。」
「えっ、ハーマイオニーがしたの?」
「だって、我慢できなくて…」
ロックハートの部屋に行く途中、金髪の大柄な男性とその男性の連れらしい屋敷しもべ妖精とすれ違った。シャーロットは男性と目が合い、思わず睨むように目が細くなったが、男性は何も反応せず、足早に廊下を進んでいった。
「今の…」
「ロン、関わらない方がいいわ」
「えっ、だけど…」
「いいから、急ぐわよ」
シャーロットは何か言いたそうなロンを急かすようにしてロックハートの部屋へ向かった。
洋服ダンスでは、ロックハートが縛られ、項垂れていた。
「こんにちは、先生」
「え?ミス・ダンブルドア?どうしてここに?戻ったのですか?」
「それはともかく、ロックハート先生。あなたは逮捕されます」
ロックハートはポカンとバカみたいに口を開けた、
「は?」
「この半年ほど、うちの屋敷しもべ妖精に調査してもらいました。不思議だと思ってたんです。闇の魔術と戦ってきたわりには、顔や体に傷は見当たらないし、魔法の技術も高くない。詳しく調べてもらったら、綻びが出てきましたよ。前の日に化け物を倒したはずなのに、次の日には全て忘れている人とか。その人の周りであなたの目撃証言がありました。本人やご家族は事情を知って、あなたを訴えるそうです。よかったですね。新聞の一面ですよ」
シャーロットがニッコリ笑うと、ロックハートはアワアワし始めた。シャーロットは「ステューピファイ」と唱え、ロックハートを気絶させた。
「あれ?どうするの?」
「このままこの人の縛りを解いたら、この人の事だから、誰かの杖を奪って、また忘却術をかけかねないわ。役人が来るまで眠っててもらいましょう」
「あ、もしかしてシャーロットの所に来てた大量の手紙って…」
「この人の調査の報告書。全く、骨が折れたわ」
シャーロットは心の中で、調査を頑張ってくれたアンバーに感謝した。この夏休み、たくさんお礼をしなければ。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、シャーロットは今回の事件で100点ずつもらった。それからは、大広間にてお祭り騒ぎだった。寮など関係なく、誰も彼もが夜中だというのにパジャマ姿でお祝いし、空には花火が飛び交い、テーブルは輝かんばかりのご馳走が並んだ。シャーロットはやっと安心して、みんなと一緒に食べて騒いだ。