あの子の知らないこれからの話
ミネルバ・マクゴナガルは校長室へ向かっていた。足を進めながら、ホグワーツの今後について思いを馳せる。去年は継承者やらバジリスクやら大変だった。幸運にも死者は出なかったし、自寮の生徒たちの活躍でグリフィンドールは優勝杯も獲得した。マクゴナガルはグリフィンドールの生徒たちを誇りに思う。少々やんちゃで悪戯好きも多いが、愛すべき素晴らしい生徒たちだ。
合言葉を唱え、校長室へ入る。校長室では、自分の上司がアクセサリーや小物のカタログを前に頭を抱えていた。
「……何をやっているのです。」
「おお、ミネルバ。よいとこに来たの。意見を聞かせておくれ。もうすぐシャーロットの誕生日なのじゃ。今年のプレゼントに迷っていての」
ミネルバは少し頭が痛くなり、ため息をついた。
この上司が孤児を引き取り、後見人をしていることを知ったときは胃がひっくり返るかと思った。10年以上前、ハリー・ポッターの両親が亡くなったときはあっさり親戚に託したのに、自分は見ず知らずの子どもを引き取るなんて。偉大な魔法使いの考えは読めない。
それにこの男の養い子、シャーロット・ダンブルドアはマクゴナガルにとって、ある理由から少しだけ思い入れのある子だった。ダンブルドアは恐らく知っているだろうが、シャーロットは知るよしもないはずだ。
ダンブルドアはシャーロットを可愛がっている。校長という職からあまり子育てには関われなかったはずだが、シャーロットはダンブルドアにとってまぎれもなく特別な家族だった。普段は教師と生徒という関係からあまり周囲には悟られていないが、ダンブルドアはシャーロットを家族として愛していることをマクゴナガルは知っていた。
「どうかのう。やはりアクセサリーじゃろうか。あの子も少し大人っぽくなってきたしのう。」
「そんなことよりも、アルバス。吸魂鬼とは何事ですか」
マクゴナガルはダンブルドアを少し睨みつつ話を切り出した。ダンブルドアは珍しく顔をしかめ、声を絞り出すた。
「わしは反対したが、ダメじゃった。あのシリウス・ブラックが脱獄したことで、魔法省は混乱しておる」
「だからと言って…」
「出来る限り、生徒からは遠ざけねばならん。攻撃させないようにしなくてはの」
「…もう変えられないのですか」
「あの男が捕まるまではの」
マクゴナガルはかつての教え子だった青年を思いだし、苦い思いが溢れた。そして現在の教え子である少年の事を思い、もっと苦くなる。あの男がしたことを知ったら、ハリー・ポッターはどう思うだろう。仇討ちを、復讐を望むだろうか。
「それよりも、誕生日じゃ。プレゼントとしては微妙じゃがやはり本とか勉強の足しになる道具がいいかのう。シャーロットは勉強が好きじゃしの」
「勉強と言えば、逆転時計の件はどうでしょうか。ミス・グレンジャーに提案してみるつもりですが。」
ダンブルドアの言葉を華麗に無視し、マクゴナガルは切り出した。
「おお、よいと思うがの。ミス・グレンジャーも大変な勉強好きじゃし。きっと喜ぶじゃろう」
「では、ミス・ダンブルドアにも使用を提案してみてはどうでしょうか。彼女も喜びそうですが…」
マクゴナガルが提案すると、ダンブルドアは少し考えるような顔をした。
「…一応、本人に聞いてみようかの。じゃが、恐らく使わんじゃろう」
「?何故です?勉強にはそれこそ役に立つ道具ですが…」
「うーん、うまく言えないが、あの子は時間を無理やり作ってまで勉強をしようとはしないじゃろう。時間の使い方は誰よりも上手な子じゃよ」
ダンブルドアはわけのわからない返答をしたが、マクゴナガルはとりあえず新学期になったら、優秀な二人に逆転時計を提案しようと考え、校長室から出ていった。
部屋にはプレゼントにいつまでも思い悩む老人が残された。