その日、リーマス・ルーピンのもとへ奇妙な手紙が届いた。
『リーマス・ルーピン様
はじめまして。突然すみません。私の名前はシャーロット・ダンブルドアといいます。ホグワーツの校長、ダンブルドアの被後見人で、今年ホグワーツの三年生になります。私はハリー・ポッターと同じ寮で、友達でもあります。校長先生からあなたが「闇の魔術に対する防衛術」の先生になるかもしれないと聞きました。ハリーの事について、どうしてもあなたと話したい事があります。もしよければ、ホグワーツでの面接の後、ホグズミードの喫茶店に来ていただけないでしょうか。あなたにとっても重要な話です。お待ちしております。
シャーロット・ダンブルドア』
ルーピンは首をかしげた。なんとも不思議な手紙だ。しかし、怪しいとは思わなかった。どうやらシャーロットという少女はどうしても自分と話したいらしい。別に断る理由もないため、ルーピンはふくろう便で了承の返事を送り、ホグワーツでの面接の後、ホグズミードに立ち寄ることにした。
ホグズミードの喫茶店。目の前に座る赤毛の少女の姿を、ルーピンは失礼だとは分かっていながらもじっと見つめた。幼いリリー・エバンズそのものだった。かつて自分と同じ監督生で、親友の妻となった女性の事を思い浮かべた。
「私の顔、やっぱり気になりますか?」
「あ、ああ。いや、すまない。実は知り合いとそっくりで…」
「リリー・エバンズですね?ハリーのお母さん」
シャーロットがそう言うと、ルーピンはギョッと目を見開いた。シャーロットは苦笑いをした。
「よく、言われるんです。私の実の父がリリー・エバンズと親戚だったらしくて。別に隠し子とかじゃありませんから」
「い、いや、そんな事思ってないさ。」
ルーピンは誤魔化すように、注文した紅茶を口にした。
「ところで、一体どうして僕を呼び出したんだい?ハリーのこと?」
「正確には、ハリーの名付け親のことです」
シャーロットがそう言った瞬間、ルーピンは再び顔を強張らせた。
「なぜ、それを…」
「学生だってその気になれば調べられますよ。ハリーのお父さん、ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラック。グリフィンドール出身で悪戯仕掛人。ジェームズ・ポッターは息子が生まれた時、ブラックを名付け親にそして秘密の守人に選んだ。そして、ブラックは親友を裏切り「例のあの人」に情報を流し、ポッター夫妻は死んだんですね。」
シャーロットがなるべく冷静に語ると、ルーピンは苦しそうに目を伏せた。
「恐ろしい出来事だった。今でも忘れられないよ」
「…数日前、アズカバンに捕らえられていたはずのブラックが逃走しましたね。」
「…ああ。やつはきっとハリーの事を狙うはずだ。なんとしても早く捕らえなければ…」
「本当にそうでしょうか?」
シャーロットがルーピンの言葉を遮った。ルーピンは眉を寄せてシャーロットに視線を向けた。
「ブラックは裏切り者。「例のあの人」の手下。本当にそうなんですか?」
「…そうだ。それはポッター夫妻の襲撃事件で明らかになっている。」
「もし、それが冤罪だったら?もしもブラックが無実だったら?あなたはブラックを信じますか?」
シャーロットの言葉にルーピンは戸惑った。
「なんだい?一体どうして無実なんて――」
「これ、見てみてください」
シャーロットが鞄から羊皮紙を取り出すと、ルーピンは息をのんだ。
「これは!」
「友達のお兄さんからもらいました。その様子だとこれが何か知っているみたいですね。もしかしてムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズの誰かさんですか?」
シャーロットがニヤリと笑うとルーピンは呆気に取られた。
「使い方も知っているのか!」
「もちろん。これをもらったあと、早速抜け道を探してたんです。そうしたら、グリフィンドールの寮でおかしな名前を発見しました」
「おかしな名前?」
「ピーター・ペティグリュー」
ルーピンは呆然と口を開けた。
「まさか!そんなはずはない!ピーターは――」
「十二年前に死んだ。ブラックを追い詰めて木っ端微塵に吹き飛ばされた。そうなっていましたね。でも、違うみたいです。忍びの地図がペティグリューだと示したのは、私の友達のロン・ウィーズリーが飼っているペットのネズミでした」
「ネズミ?…そ、そうか!」
「やはり、そうなんですね?同級生で寮でも一緒だったあなたなら知っていると思いました。ペティグリューは「動物もどき」なんですね?それも、未登録の。」
シャーロットがそう言うと、ルーピンはしばらく迷ったあとに頷いた。
「…そうだ。学生時代、動物もどきになった。」
それからルーピンは学生時代の出来事を語り始めた。自分が狼人間であることを言うときはしばらく迷っていたが、結局シャーロットに促され、すべてを説明した。
「なるほど、あなたがムーニーだったんですね。別にあなたが狼人間だからって怖いなんて思いませんよ。それに、ブラックがアズカバンから脱獄した方法も分かりました。しかし、そうなるとやっぱりおかしい」
「何がだい?」
「ペティグリューはなぜ死んでないのに死んだふりを?わざわざ指を一本残してまで。彼はあの事件のあと、英雄になったんですよ。勳一等マーリン勲章まで授与されたのに。なぜ死んだふりをしなければならないのです?しかも、十年以上もペットのふりを続けてまで!」
「…確かに」
「本当にブラックは秘密の守人だったんですか?もしかして、こっそり秘密の守人をペティグリューに変えた、なんて可能性は?」
ルーピンは頭を抱え、唇を噛んだ。
「まさか!ジェームズが秘密の守人を変えた?」
「それはわかりませんけど。でも、可能性はありますよね?」
シャーロットがそう言うと、ルーピンは戸惑っていたが頷いた。
「ミスター・ルーピン。頼みがあります。おそらく、ブラックは必ずホグワーツへやって来ます。私はブラックを捕まえるつもりです。そして、十二年前の事件の再調査を依頼します。ネズミになっているペティグリューからも目を離さないようにします。本当はすぐにでもペティグリューから話を聞きたいことところですが…。先生はブラックを捕まえるのに協力してください」
「私が?」
「もちろん、すぐに魔法省に引き渡すことはしません。必ず真実をはっきりさせます。ブラックとペティグリュー。本当は誰が、裏切り者なのかを。」
ルーピンは話を聞くと、しっかりと頷いてくれた。