「こんばんは。ファッジさん。」
固まっているハリーをよそに、シャーロットが挨拶をすると、ファッジはチラリと目を向けた。
「ああ、君はミス・ダンブルドアだね。君とナイト・バスがハリーを見つけてくれて助かった。」
ファッジは本当に安心したようにホッと息を吐いた。まだ固まっているハリーの耳にシャーロットは囁いた。
「ハリー、魔法大臣のコーネリウス・ファッジさんよ」
魔法大臣という言葉にポカンと口を開けた。
その後、ファッジがハリーと話すためパブへと入っていった。シャーロットは邪魔をせずそれを見送り、漏れ鍋で2つの部屋をとり、宿泊の手配を進めた。
ファッジはハリーと話したあと、足早に去っていった。ハリーは退学にならなかったことに安心しながらも、ファッジの対応を奇妙に思っているらしい。しかし、初めて自由な生活を手にいれた事には素直に喜んでいた。
それからの日々は平穏だった。ハリーは好きなときに起きて、食べたいものを食べる生活に最初は戸惑っていたが、すぐにそれを楽しむようになった。ハリーとシャーロットは二人で他の泊まり客を眺めたり、ダイアゴン横丁を散策したりと目一杯楽しんだ。「高級クィディッチ用具店」では、新作の箒、『ファイアボルト』にハリーは夢中になっていた。
「ハリー、とても美しい箒ね」
「ああ…」
ハリーはうっとりと箒を見つめた。それからというもの、ハリーはファイアボルトを見るためだけに毎日通いづめだった。
新学期も近くなり、二人は教科書を購入した。ちなみにシャーロットは三年生になったときの選択授業を『魔法生物飼育学』『古代ルーン文字』『数占い』にした。『魔法生物飼育学』の教科書を購入するとき、書店の店主は泣きそうになっていた。
やがて月日は流れ、明日は新学期となった日、ハリーとシャーロットはロンとハーマイオニーと合流した。ロンはハリーのおばさん膨らませ事件を面白がり、一方ハーマイオニーは袋がはちきれそうなほど教科書を購入していた。
「ハーマイオニー、これから一年、食べたり眠ったりする予定はあるの?」
ハリーが言うとロンはクスクス笑い、ハーマイオニーはそれを無視してシャーロットに問いかけた。
「むしろ、私はシャーロットも全科目とると思っていたわ。あなた、勉強好きだし…」
「まあね。でも、私もマグル出身だからマグル学は必要ないと思ったし。それに、占いは嫌いなの」
「え?なんで?」
「嫌なのよ。占いとか予言とか、まるで未来が最初から決めつけられているみたいじゃない」
「でも、あなた数占いはとってるじゃない!」
「…訂正するわ。占いのトレローニー先生が好きじゃないの。できれば関わり合いになりたくない」
シャーロットが教師に対してそんな事を言うのは珍しいため、三人は不思議そうな顔をした。
「トレローニー先生?なんで?」
「あの先生、インチキだもの。今までまともな占いはほとんどしてないわよ。一部に熱烈なファンはいるみたいだけど」
シャーロットの言葉に、占い学を受講予定の三人は少しだけ後悔した。
その後、ハーマイオニーの希望で「魔法生物ペットショップ」に足を踏み入れた。ロンも具合の悪いスキャバーズを診てもらうために、カウンターの魔女の元へ向かった。
「僕のネズミのことなんですが、エジプトから帰ってきたら、ちょっと元気がないんです」
ロンが魔女に説明を続ける横で、ハリーとハーマイオニーは店の中を見渡していた。カエルやウサギなど様々な動物たちが騒いでいる。魔女はスキャバーズをじっくり診てから、別の健康なネズミをロンに勧めていた。ロンがそれを断ると、魔女はカウンターの下から赤い瓶を取り出した。
「別なのをお望みじゃないなら、この『ネズミ栄養ドリンク』を使ってみてください」
「オーケー、いくらですか?――あいたっ!」
その時、オレンジ色の影がロンの頭に着地した。シャーシャーと威嚇するオレンジ色の猫はスキャバーズに突進する。
「ストップ!」
シャーロットはとっさに猫のふさふさの尻尾と、逃げようとするネズミの尻尾を両手で捕まえた。
「危ないわよ、猫さん。」
「クルックシャンクス!ダメじゃない!」
シャーロットは憤慨する魔女に猫を引き渡し、ロンの鞄にスキャバーズを突っ込んだ。クルックシャンクスはスキャバーズの入っている鞄にまだシャーシャーと威嚇をしていた。
「ハリー、ロン。スキャバーズが危ないから、外で待ってて。私はハーマイオニーに付き合うわ」
「う、うん。そうする」
ロンは栄養ドリンクの料金を払うと、ハリーとともに慌ただしく出ていった。
一方、ハーマイオニーは気難しそうな潰れた顔の猫をキラキラした瞳で見つめていた。
「この子、素敵ね!」
「うん。可愛いと思う」
「この子は長いことこの店にいるんですよ。誰も欲しがる人はいなくて。結構頭がいいんですけどね」
ショップの魔女が説明すると、ハーマイオニーはクルックシャンクスを購入する決心をしたようだった。
その後、ロンはハーマイオニーに噛みついていたが、ハーマイオニーは全く気にとめていなかった。
その後、漏れ鍋にてウィーズリー家の家族と対面した。パーシーは首席になっており、誇らしげだった。ジニーや双子も元気そうだった。夕食の席で明日のキングス・クロス駅に向かうために魔法省が車を用意したことをウィーズリー氏が伝えると、シャーロット以外は困惑していた。明日の朝、慌てずにすむようシャーロットは荷造りを完璧に済ませると、早々とベッドに横になった。