あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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波乱の魔法生物飼育学

しっとりとした空気が生徒たちを包む。シャーロットは城の外で大きく深呼吸をした。これから、あのヒッポグリフと初対面だ。楽しみな反面、ちょっとだけ緊張していた。ロンとハーマイオニーはまだピリピリしている。ハリーとシャーロットは顔を見合わせ、ため息をついた。

ハグリッドが小屋の外で生徒を待っていた。

「さあ、急げ!早く来いや!」

ハグリッドは授業を早く始めたくてうずうずしていた。

「さーて、イッチ番先にやるこたぁ、教科書を開くこった――」

「どうやって?」

マルフォイの気取った声が聞こえ、シャーロットはチラリと視線を送った。ハグリッドのガックリした声と教科書を開く方法を聞きながら、シャーロットはなぜマルフォイはこの授業を選択したのだろうとわりと真剣に考えていた。これから起こる悲劇を防ぐ方法はいろいろ考えた。ヒッポグリフの襲撃を防御呪文で防ぐ事も考えたが、ハグリッドの授業のやり方を考えると、結局今後もマルフォイはハグリッドの邪魔をしかねない。それならば―――。

「オォォォー!」

シャーロットの後ろでラベンダーが甲高い声をあげた。

ハグリッドが連れてきたのは、胴体、後ろ脚、尻尾は馬、前足や羽や頭は巨大な鳥のヒッポグリフだった。その迫力に生徒は後ずさった。

「美しかろう、え?」

ハグリッドが嬉しそうに大声を出す。

「立派なヒッポグリフね。最高よ、ハグリッド」

シャーロットが声をかけると他の生徒達はぎょっとしていたが、ハグリッドはニコニコして頷いた。

「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねぇことは――」

ハグリッドの話を聞きながら、シャーロットはマルフォイを横目で見ていた。話を聞こうともせずに、クラッブやゴイルとひそひそしている。

「よーし、誰が一番乗りだ?」

シャーロットだけが真っ先に手を挙げた。

「やるわ、その美しい子に触らせて、ハグリッド」

「偉いぞ、シャーロット!よーし、そんじゃバックビークとやってみよう」

ハグリッドに導かれ、放牧場の柵を越える。他の生徒たちの視線を無視し、シャーロットは灰色のヒッポグリフの前に臨んだ。

「目をそらすなよ。なるべく瞬きするな」

ハグリッドの声が静かに耳に届く。シャーロットはゆっくりとお辞儀をした。目を上げると、ヒッポグリフはまっすぐにシャーロットを見据えていたが、やがて前脚を折り、お辞儀を返してくれた。

「やったぞ、シャーロット!触ってもええぞ!」

シャーロットは早速嘴を撫でると、ヒッポグリフはそれを楽しむように目を閉じた。クラス全員が拍手した。マルフォイ達だけはがっかりしていたが。

「よーし、シャーロット。そいつはお前さんを背中に乗せてくれるぞ」

「え?ほんとに?」

シャーロットは恐がるよりも、興奮でドキドキした。ハグリッドの指示通り、バックビークの背中に飛び乗る。ハグリッドがバックビークの尻を叩くと、翼がシャーロットの左右で羽ばたいた。

「う、う、わああ」

思わず情けない声が出る。箒に乗るのとは全く違う。快適とは言えなかったが、上から景色を見る余裕はあった。放牧場をグルリと回る。生徒達がヒッポグリフを見上げる様子が分かった。やがて、バックビークの首が下を向き、地上が近くなる。滑り落ちそうな気がして思わず目をつぶった。そのままドサッと着地するのを感じた。

「よーくできた、シャーロット!」

ハグリッドの大声が聞こえ、シャーロットは瞳を開けた。クラスの歓声の中、ハグリッドの手を借りてバックビークから降りた。楽しかったが、ドッと疲れが襲った。

「ほかにやってみたいモンはおるか?」

他の生徒達も恐々と放牧場へ入ってきた。マルフォイがバックビークに近寄るのが見えて、シャーロットはこっそりとマルフォイ達の後ろへ回り、ばれないように佇んだ。

バックビークがお辞儀をしたので、マルフォイは尊大そうに嘴を撫でた。

「簡単じゃあないか。ダンブルドアにできるんだ、簡単に違いないと思ったよ。」

マルフォイがわざと聞こえるように声を上げる。シャーロットはゆっくりと更にマルフォイに近づいた。

「そうだろう?醜いデカブツの野獣君」

そう言った瞬間、鋼色の鉤爪が光ったが、準備していたシャーロットの方が速かった。マルフォイの首根っこを掴み、ゴイルの方へ突き飛ばす。ゴイルとともにマルフォイが倒れるのが分かった。バックビークの鉤爪がシャーロットの背中を抉った。シャーロットは鋭い痛みを感じ、その場に倒れこんだ。

「シャーロット!」

ハリー、ロン、ハーマイオニーが駆けつけてくる。バックビークは狙った獲物を外し、再びマルフォイに向かおうとしたが、その前にハグリッドがバックビークに首輪を着けた。

「死んじゃう!」

マルフォイが喚く声が聞こえた。

「ああ、シャーロット!血が――」

「早く医務室へ!」

周りの生徒の声が聞こえたが、シャーロットはマルフォイの顔を見つめ、話しかけた。

「怪我はない?マルフォイ」

マルフォイはポカンと口を開け、何も言わずにシャーロットを見ていた。どうやらかすり傷一つ負っていないようだ。それを確認すると、シャーロットは再び口を開いた。

「あなたが不真面目だからよ、マルフォイ。ハグリッドの説明を聞いていなかったものね。あなたがやらかしたその結果をよーく、見ておくことね。こんな傷を負いたくなければ、授業の邪魔はしないで。それが嫌だったら『魔法生物飼育学』をやめることね。きっとあなたのお優しいパパなら授業を一つやめることくらい許してくれるわよ」

シャーロットの言葉にマルフォイは真っ赤になり、うつむいた。さすがに言い返す気はないようだ。その後、ハグリッドに抱えられ医務室へと連れていかれた。

 

 

 

「なんでマルフォイをかばったのよ!」

「だって、あそこでマルフォイが怪我をしたらハグリッドはクビになるか、バックビークは殺されちゃうもの。仕方なかったのよ」

ハーマイオニーはプンプンと怒ったが、シャーロットが言い返すと黙りこんだ。ハリーとロンは心配そうにシャーロットを見ている。背中には深々とした裂け目ができていたが、マダム・ポンフリーがあっという間に治してくれた。もう痛みもない。

「マルフォイのやつ、やっぱり引っ掻き回してくれたよな…」

「大丈夫よ、ロン。少なくともマルフォイは傷一つないわ。あの父親は何もできないわよ。でも、やっぱり最初の授業でヒッポグリフはやりすぎだったかもね」

「ハグリッドのところに行ってみようか」

ハリーの言葉にシャーロットは首をふった。

「やめておきましょう。もう外は暗いわ。私だけならともかく、ハリーはダメよ。明日の休み時間に小屋へ行きましょう」

シャーロットの言葉に三人は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

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