あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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雨の中のクィディッチ

「シャーロット、スネイプと何を話してたの?」

「何でもないわ。それよりも、ハリー、早く寝た方がいいわよ。明日は大変なんだから」

夜のグリフィンドール。明日はクィディッチの試合なのでみんなが、ソワソワしていた。

「早くルーピン先生に元気になってほしい…」

「大丈夫よ、ルーピン先生なら。」

ハーマイオニーはまだルーピンの事を心配していたが、シャーロットは軽く励ますと、ハーマイオニーを促し床についた。

 

 

 

『チャーリー、あなたのせいで…』

美しい母が見たこともない表情でシャーロットを見つめる。暗い闇のなかで母の姿がぼんやりと光っていた。

『あなたなんて生まなければよかった』

母の憎々しげな声が響き、シャーロットはその言葉に首を絞められたような感覚に陥った。

苦しい。苦しくて気が狂ってしまいそうだ。

『嫌いよ。チャーリー、あなたなんて』

 

 

 

「シャーロット!シャーロット!」

気がつくと、ハーマイオニーがシャーロットを見下ろしていた。

「…あれ?ハーマイオニー?」

「大丈夫、シャーロット?うなされていたわよ」

「…ごめん。起こしちゃったわね。今何時?」

「大丈夫よ、ちょうど起きる時間だったから。ちょっと早いけど朝食へ行きましょう」

シャーロットは頷き、身を起こした。汗で体がびっしょりだ。とても体が重く、吐き気がする。夢の中の光景がしばらくは忘れられそうにはない。

シャーロットとハーマイオニーは大広間に向かった。大広間ではハリーがオートミールをたっぷり頬張っていた。

「おはよう。ハリー。眠れた?」

ハリーは苦笑いした。あまり眠れなかったようだ。シャーロットが席についたとき、グリフィンドールのチームメイド達が次々に姿を現した。

「今日はてこずるぞ」

「オリバー、心配するのはやめて。ちょっとぐらいの雨はへっちゃらよ」

ウッドをアリシアがなだめるように言った。

外に出ると、とてもじゃないが「ちょっとぐらい」とは言えなかった。大雨の上に、風は荒れ狂っている。シャーロットはちょっと思い付いて、ハリーの元へ向かった。

グリフィンドールのチームはウッドの激励演説が終わったところだった。

「ハリー」

「あれ?シャーロット、どうしたの?」

「ちょっと眼鏡貸して」

戸惑うハリーから眼鏡を受けとると、「インパービアス」と唱えて、ハリーの手に返した。

「これで水を弾くわ。頑張ってね」

「ありがとう!」

ハリーは嬉しそうに眼鏡を受け取った。

 

 

グリフィンドール対スリザリン。雨の中、ずぶ濡れで選手達が空を舞う。ハリーも寒さのせいで苦戦していた。マルフォイもまた、腕は上がっているようだがスニッチの姿を捉えられないようだった。雨はますます強くなり、もはや誰が敵で味方かもはっきりしない。

やがて、稲妻が大きな音を轟かせ、光った。今のところグリフィンドールは優勢のようだ。シャーロットは選手ではなく、スタンドの方へ目を凝らす。そして、それの姿を捉えた。

スタンドの一番上の誰もいない席、巨大な毛むくじゃらの黒い犬がハリーの姿をじっと見ていた。

その姿を見た瞬間、シャーロットは走り出した。隣にいたロンとハーマイオニーは試合に夢中で気がついていない。

「そこで待っていてね、わんちゃん」

暗いスタンドを駆ける。その時、観衆が一瞬悲鳴を上げた。ハリーが箒に乗ったまま一メートルほど落下したらしい。一瞬だけシャーロットもハリーへ視線を送る。どうやら大丈夫のようだ。しかし、次にスタンドへ視線を戻すと犬の姿は消えていた。

「…もう!なんで!」

シャーロットは唇を噛んだ。ブラックと接触するチャンスだったのに。この雨の中で忍びの地図を開くのは賢明とは言えないだろう。まだ、チャンスはあるはずだ。

その時、奇妙な事が起こった。あんなに騒いでいた競技場が静まり返る。シャーロットは上を見上げた。

たくさんの吸魂鬼が空に浮かんでいた。シャーロットの体に鳥肌が立つ。マルフォイが悲鳴を上げ、観客席へ突っ込んでいくのが目に入った。そして、次の瞬間、ハリーは真っ逆さまに箒から落ちていった。

「――ハリー!」

シャーロットが声を上げる前にダンブルドアが競技場へ駆け込み、杖をふった。シャーロットは思わず身震いをした。寒さからではない。遠くから見ても、ダンブルドアがかなり怒っているのが分かった。ダンブルドアはハリーをゆっくり着地させると、吸魂鬼へ向かって守護霊を放った。

シャーロットがホッとしていると、ハリーのニンバス2000が吹き飛んで行くのが見えたので、シャーロットは走った。もしかすると、大丈夫かもしれない。どうか間に合いますように。

だが、間に合わなかった。シャーロットが暴れ柳の方へ向かうと、あわれなニンバス2000は粉々になっていた。

 

 

 

シャーロットはニンバスの亡骸をできるだけすべて集め、鞄に入れる。そしてトボトボと医務室へ向かった。ハリーはもう目覚めている頃だろうか。途中でアンジェリーナに会ったため、試合の事を聞いてみた。どうやらどちらのシーカーもスニッチを掴む前に吸魂鬼が現れたため、試合中止となったらしい。少なくとも敗北ではないことにシャーロットは少しだけ安心した。それでもニンバスの亡骸を見たハリーの事を思うと、心が重い。

保健室ではベッドの上のハリーにロンとハーマイオニーが付き添っていた。

「誰か僕のニンバスつかまえてくれた?」

ハリーがまさにその質問を投げ掛けたため、シャーロットは覚悟して3人の元へ近寄った。

「…あの、ハリー」

「シャーロット!どこに行っていたのよ?」

「いつから消えたんだ?気づかなかったよ」

「ごめん。それよりも、あのね、あなたのニンバス、私がつかまえたんだけど…」

シャーロットの言いにくそうな雰囲気にハリーは顔を青くさせた。

「シャーロット…?」

「あの、ハリーが落ちたあと、突っ込んでいったの。あ、暴れ柳に…」

ハリーの顔が凍った。シャーロットはゆっくりと鞄から粉々になったニンバスをベッドの上に開けた。ロンとハーマイオニーが呆然とする。ハリーは今にも失神しそうな顔をしていた。

 

 

 

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