あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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日常と思案

シャーロットはロンがスキャバーズから目を離す時を待つことにした。夜に男子寮へ忍び込むことも考えたが、ペティグリューに怪しまれたらまずい。それでなくとも、ペティグリューはシリウスを警戒しているだろう。油断したところを一気に引っ捕らえようと考えていた。

 

 

 

冬がどんどん深まり、寒さも一段と増した。シャーロットは最近ハーマイオニーがルーピンを奇妙な目で見ているのに気がついていた。

「ハーマイオニー、ルーピン先生の事、分かっちゃったのね」

図書館で二人きりになったとき、防音魔法をかけてズバリ聞いた。ハーマイオニーはハッとした表情をした。

「シャーロット、ルーピン先生って…」

「人狼だってことよ。気がついたのね」

ハーマイオニーはポカンと口を開けた。

「シャーロット!あなた、知ってたの!?」

「ちょっとね。ハーマイオニーなら気づくと思ってたわ」

シャーロットはクスリと笑った。本当に優秀な子だ。ヒントがあるとはいえ、他の生徒は気づいていないというのに。

「シャーロット、あなた怖くないの?」

「怖い?どうして?」

「だって…」

「ルーピン先生が生徒を襲ったことはあった?いきなり狼になったことはあった?」

ハーマイオニーはブンブンと首を振った。

「そうでしょう?狼人間は差別されているから、闇の魔法使いになることが多いらしいわ。それでもルーピン先生は優秀でとてもいい人よ。差別にも闇の魔術にも屈しない。何よりもきちんと脱狼薬を飲んで制御してるわ。だから大丈夫。ハーマイオニーも事情を知ってしまったのだから、ルーピン先生と向き合ってあげて。先入観にとらわれないで、ちゃんと正面からルーピン先生を見てみて。」

シャーロットがそう言うと、ハーマイオニーは少し考えてから大きく頷いてくれた。

 

 

 

11月の終わり、クィディッチでレイブンクローがハッフルパフに勝利した。グリフィンドールのチームは優勝へ向けてエネルギッシュに練習を重ねていた。校内に吸魂鬼が入ってくることはなく、シャーロットもシリウスが見つかる心配がないので安心していた。

城の中はクリスマスムードで満ちあふれていた。シャーロット、ロン、ハーマイオニーはハリーと一緒にクリスマスをホグワーツで過ごすことになった。ハリーは嬉しそうに微笑んでいた。

「……そうか、ハリーは元気なのか」

「大丈夫よ。ペティグリューを捕まえたら会えるわ」

「うぅぅぅっ」

「泣くか食べるかどちらかにしてくれない?」

シャーロットは山盛りのチキンを携えて、ルーピンの部屋へシリウスの様子を見に来た。少しずつ身綺麗になってきており、ハンサムな顔に肉も付いてきた。ルーピンの部屋から出ることを禁止されたシリウスはハリーの様子を聞き、チキンを食べながら涙ぐんでいた。

「クィディッチの試合、ハリーは飛ぶのが上手かったな。ジェームズそっくりだ」

「あー、そうね」

「うぅぅぅっ、ジェームズ…、すまない。俺はなんという過ちを…」

「はいはい。チキンはもういいの?」

「うぅぅっ、食べる…」

シリウスに付き合いながら、シャーロットは適当に話を聞き、慰めた。

 

 

 

学期の最後の週末、ホグズミード行きが許されハリー以外のみんなは大喜びした。一方、シャーロットはその知らせを聞き、ルーピンの元へ向かった。

「チャンスです。ロンはホグズミードにはネズミを連れて行かないはずです。その日に捕らえてみせます。」

「大丈夫なのかい?」

「俺も行くぞ!」

「シリウスは来ないで!あなたの姿を見たら逃げ出すに決まっているんだから!」

意気揚々と口を挟むシリウスにシャーロットが怒鳴ると、シリウスは悔しそうに顔を歪めた。

 

 

 

 

 

『チャーリー、大好きよ。あなたの髪と瞳は誰よりも綺麗よ』

母の声がする。暗い闇の中、温かい日向のような笑顔が現れた。

『なんてかわいいのかしら。大切な私の娘』

目の前の光景がふわふわと揺れた。次の瞬間、母の顔が奇妙に歪み、吐き捨てるように口を開いた。

『今のは嘘よ。あなたなんて産まなきゃよかった』

ガバッとシャーロットは身を起こした。汗をびっしょりかいている。まだ夜中らしく、辺りは暗かった。近くのベッドでハーマイオニーが眠っていたが、シャーロットの起きる音で目を覚ましたらしい。

「…シャーロット?大丈夫?」

「…ハーマイオニー。本当にごめん。」

「いいのよ。最近のあなた、寝ている時はいつも苦しそうなんだもの」

ハーマイオニーも体を起こし、心配そうにシャーロットを見てきた。シャーロットはハーマイオニーに申し訳なくてたまらなかった。

「ハーマイオニー、私の事はいいから寝てちょうだい。ただでさえあなたはいくつもの授業に出て、疲れているのに。睡眠を邪魔して本当にごめん。」

シャーロットが安心させようとして微笑んでも、ハーマイオニーはまだ心配そうにしている。不意にハーマイオニーがベッドの上で自分の体をずらした。

「こっちに来て」

「うん?」

「今日は一緒に寝ましょう」

「ええっ」

「誰かがそばにいるだけで安心することもあるわ。今日は少し冷えるし、ちょうどいいわよ」

ハーマイオニーがポンポンとベッドを叩いた。シャーロットは少し迷った後、おずおずとハーマイオニーのベッドに入った。

「…狭いね」

「大丈夫。この方が温かいから」

「なんか、なんと言ったらいいのか分かんないけど、すごく嬉しい。ありがとう、ハーマイオニー」

シャーロットとハーマイオニーはクスクス笑うと、すぐにそのまま眠りについた。ハーマイオニーのベッドのすぐそばにいたクルックシャンクスが目を開けると、そこには小さな二人の少女が身を寄せ合い、すやすや眠っている姿があった。

 

 

 

「シャーロット、ちょっといいか?」

「話があるんだ」

その日、授業終わりに図書館に行こうとしたシャーロットを引き留めたのはフレッドとジョージだった。

「どうしたの?フレッド、ジョージ」

適当な空き教室へ行くと、フレッドとジョージは言いにくそうに話を切り出した。

「ハリーのことなんだけどさ」

「うん」

「あの地図を使ってホグズミードに連れていってやれないかな?」

フレッドとジョージの提案は驚くことではなかった。元々原作では忍びの地図を譲り受けたのはハリーなのだ。フレッドとジョージもハリーの事を思いやってシャーロットに提案してきたのだろう。そんな二人の優しい気遣いをシャーロットは微笑ましく感じた。

「大丈夫よ、フレッド、ジョージ。実は私にも考えがあるの。次の週末は無理だけど、必ずハリーはホグズミードへ行けるわ。」

「なんで次の週末はダメなんだ?」

「何かあるのか?」

「ちょっとね」

シャーロットは曖昧に笑って誤魔化す。シリウスに必ずハリーのホグズミード行きの許可証を書かせよう。シャーロットのやることリストがまた増えた。

 

 

 

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