ペティグリューを捕まえたはいいものの、ダンブルドアはまだ調査を続けているらしい。
「まだ証明は無理ですか」
「もうちょっと待っておくれ。ファッジが文句の付け所がないくらい完璧な証拠を集めるからの」
「あの人はいまいち信用できないので、できればアーサーさんとかムーディとかシャックルボルトに話を通してください」
シャーロットはそう言いながら水槽の中のペティグリューに目をやった。水槽にはダンブルドアがこれ以上ないくらいの逃亡防止の魔法をかけたようだ。クルックシャンクスがネズミをじっと見つめ、水槽の周りをウロウロしている。ネズミはすっかり怯えきっていた。
「必ず早めに証明してみせよう」
「よろしくお願いします。クルックシャンクス、一度帰ろう。ハーマイオニーが心配してるわ」
シャーロットが声をかけると、クルックシャンクスは名残惜しそうにしながらもシャーロットの後に続き校長室から出ていった。
シリウス・ブラックの件をハリーから聞き出し、ロンとハーマイオニーはしばらく呆然としていた。特にロンはスキャバーズの正体をなかなか信じられないようだった。
「嘘だ、そんな、スキャバーズが…、そんなのデタラメだ!」
仕方なく、一度シャーロットは三人を引き連れ校長室へ向かった。校長室でネズミを無理やり元の姿に戻すとそこには頭のてっぺんにハゲのある薄汚い小男が現れた。ショックを受けるロンの前で、ピーター・ペティグリューはなにかあれこれ弁明していたが、シャーロットは全てスルーして失神呪文をかけた。その後はダンブルドアの手によって再びネズミの姿にされ水槽に閉じ込められている。
「嘘だろう…。僕、あいつと一緒に寝ていたの?」
「忘れましょう、ロン。悪い夢だったのよ」
シャーロットは青ざめたロンを慰めたがいまだにロンは衝撃から立ち直れないようだった。
「シャーロット、また私達に隠れていろいろしてたのね」
「だって、証拠がなければ信じてくれないと思ったんだもの…」
ハーマイオニーがジトッとした目で睨んできたため、シャーロットは言い訳に言い訳を重ね、謝った。
クリスマス休暇に入った。城では大がかりなクリスマスの飾りつけが進んでいた。柊や宿り木、妖精のキラキラした光、鎧からは神秘的な灯りが煌めく。金色に輝く星が飾られたクリスマスツリーが並んだ。ロンやハリーもその空気に感化され、徐々に落ち着きを取り戻していた。ハリーは時々ルーピンの部屋へ行き、シリウスと少しずつ仲良くなっているようだ。
「エクスペクト・パトローナム!」
シャーロットは四人以外誰もいない談話室で練習を重ねる。いまだにシャーロットは守護霊の呪文ができない。どうしても再び習得したいと思っていた。そんなシャーロットをハーマイオニーは宿題を広げながら、ロンとハリーはゲームをしながら見守っていた。
「シャーロット、大丈夫?」
「…ダメね。こればかりはゆっくりやるしかないみたい」
「シャーロットも一緒にルーピン先生に教わる?」
「ううん。これはどちらかというと私の心の問題だから。ハリーはハリーで頑張って」
心配そうにしているハリーに薄く微笑み、再び杖を振るった。
夢を見た。誰ががコソコソ話している。
『ねえ、知ってるかい?アパートの一階に住む、あの親子』
『ああ、あの綺麗な金髪の?』
『また仕事をクビになったらしいよ』
『またかい?まあ、体が弱いっていってたしねぇ。シングルマザーは大変だ』
『あのチャーリーとかいう子どもさえいなければねぇ』
『確か、あの母親は何か夢があったんだろう。その夢を諦めて子どものためにボロボロになるまで働くなんて、かわいそうに』
『かなりの美人だから、子どもさえいなければ再婚だってできるだろうしね。ああ、あのチャーリーさえいなければ』
『そう、あの子さえいなければ』
あなたさえ、いなければ
ガバッと体を起こした。寝室はすでに明るい。シャーロットは息をゆっくり吐いた。
「おはよう、シャーロット。プレゼントが届いてるわよ!」
ハーマイオニーももう起きており、ニッコリ笑った。シャーロットはベッドの、足元を覗くとたくさんの小包が見えた。シャーロットは急いで小包を引き寄せると、順番に破り始めた。
「あー、ウィーズリー家のセーターだわ。ありがたい…」
クリーム色で胸のところにライオンを編み込んだセーターを見て、シャーロットの顔が明るくなった。
「シャーロット、それは?」
ハーマイオニーが包みから出したばかりの何かの本を手に取り声をかけてきた。シャーロットがそちらに目を向けると、なにか大きな箱が置いてある。
「何かしら?」
シャーロットが包みを破り、箱を開けた。
「……うわ」
「えっ、可愛い!」
それは白いドレスだった。サラサラとした手触り、上品なレースに、息を飲むほど素晴らしい刺繍が鮮やかに光っている。
「それ、絶対すごーく高いものよ」
「う、うん。お爺様からかな…」
シャーロットが戸惑いながら、添えられたカードを見るとそこにはこう書いてあった。
『メリークリスマス
君には本当に感謝している。感謝の贈り物としては足りないが受け取ってほしい。
黒い犬より』
「シリウスだわ…」
「こんなすごいドレスどうやって買ったの!?」
「まあ、どうにかしたんでしょうね。あの人お金持ちだし」
シャーロットは戸惑ったが、ドレスよりもシリウスの気持ちを嬉しく思った。大切にしよう。
「ハリーとロンの部屋へ行ってみましょうか」
ハーマイオニーと一緒に男子寮へ行くと、二人も大騒ぎしていた。
「どうしたの?」
「シャーロット、ハーマイオニー!これ見て!」
ハリーが興奮したように駆け寄る。手には見事な箒を持っていた。ファイアボルトだ。ハーマイオニーがあんぐり口を開けた。
「まあ、ハリー、いったい誰がこれを!?」
「シリウスでしょ。私にもドレスが届いたわ」
シャーロットは苦笑いをした。シリウスはクリスマスのために何百ガリオンも使ったのだろう。
「たぶんスリザリンの箒全部を束にしてもかなわないぐらい高いぜ」
「夢じゃないか…」
ハリーとロンは夢心地だった。シャーロットは少し考えて、二人に切り出す。
「ねえ、ハリー。その箒、誰にもらったことにする?」
「へ?」
「マクゴナガル先生には話せるけど、他の生徒にはシリウスからだって言えないわよ」
「あ、あー。そうか。どうしよう」
四人で知恵を絞ったが、いい案が思い浮かばず、結局ハリーがお金を出して自分で買ったことにしようとなった。まあ、大丈夫だろう。みんなファイアボルトに夢中になってどこで買った、いくらだったとか気にしないに違いない。
昼食時、大広間に降りていった。生徒は少なく、先生達もクリスマスの空気を楽しんでいる。
シャーロットとハリーはシリウスからファイアボルトが贈られた事をマクゴナガルにこっそり報告しに行った。マクゴナガルは話を聞くと、冷静にそれを受け止めようとしたが口元が喜びでピクついていた。その後シャンパンや蜂蜜酒を飲みまくり、途中でトレローニーが入ってきたことにも気づかず、珍しくベロベロになっていた。
「オホ、オホホホホ、セブルス、負けませんよ。今年こそは我が寮の勝利です」
スネイプに絡みまくり、喜びの言葉を吐いている。スネイプは不気味そうに顔をしかめ引いていた。
四人は先生の様子に構わず大広間のたくさんのごちそうを楽しんだ。
「ルーピン先生が来ていないな?部屋に行ってみようか」
ハリーがそう提案した。きっとシリウスにお礼を言いに行きたいのだろう。でも、ルーピンは今日はいつものあれの日だ。ロンとハリーはまだ知らないし、行くのはよくない。
「やめておきましょう。ルーピン先生は具合が悪いみたいだし。お礼を言うのは休み明けでも大丈夫よ」
シャーロットはそう言ってケーキをハリーに差し出した。
素晴らしいクリスマスの夜だった。