あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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それぞれの悩み

クリスマス休暇明け、ハリーは急いでシリウスの元へ向かった。シリウスはハリーのお礼を言う輝くような笑顔だけで満足そうだった。ちなみにロンとハーマイオニーもシリウスに初対面した。分かっていた事ではあったが、明るい表情を浮かべる逃亡者にロンとハーマイオニーは最初は戸惑っていたが、徐々に打ち解け始めた。シリウスはロンにネズミの件で何度も謝っていた。

 

 

 

学期が始まる前の夜、ウッドがハリーに声をかけた。

「いいクリスマスだったか?」

ウッドはピリピリしている。もうすぐレイブンクローとの対戦があるのだ。

「ハリー、新しい箒は注文したか?早くしないと――」

「僕、ファイアボルトを買ったんだ」

ウッドの時間がピタリと止まった。

「……ハリー、幻聴が聞こえたんだが、何を買ったって?」

「幻聴じゃあないわ、ウッド。ハリーはファイアボルトを買ったのよ」

シャーロットが助け船を出すと、ウッドは目を見開き、その場に崩れ落ちた。

「ウッド!」

「ファイアボルト?まさか!ほんとか?ほ、ほんものの?」

ハリーがファイアボルトを見せると、ウッドは今度こそ本当に飛び上がり喜びの雄叫びを上げた。

その声につられ、グリフィンドールの寮は大騒ぎになった。誰も彼もが一目ファイアボルトを見ようと押し掛ける。ハリーは囲まれてもみくちゃにされていた。

 

 

 

学校は次の週から始まった。学校はシリウス・ブラックの話題は鳴りを潜め、ハリーがファイアボルトを手に入れた噂で持ちきりだった。マルフォイがギラギラした目でハリーを睨んでいた。ハリーはファイアボルトを使ったクィディッチの練習に夢中のようだ。それを覚ますためにシャーロットは声をかけた。

「ハリー、あなたも守護霊の呪文の練習をした方がいいわ。試合の時、また現れる恐れがあるもの」

「あ、そうだった!ルーピン先生に声をかけてみるよ!」

いまだにシリウスの冤罪は晴らされてはいない。ダンブルドアを急かしてはいるが、まだ無理のようだった。吸魂鬼はまだウロウロしているし、今後の事を考えるとハリーは守護霊呪文ができておいた方がいい。

「闇の魔術に対する防衛術」のあと、ハリーはルーピンに声をかけに行った。それにシャーロットも続いた。

「先生、私も参加していいですか?」

「君も?」

「邪魔はしません。離れた場所で見るだけなので」

シャーロットは自分の守護霊を再び出すために、ルーピンとハリーの訓練を見ることにした。少しはヒントになるかもしれない。

 

 

 

訓練は「魔法史」の教室で行われた。ボガートを使用するらしい。ハリーは緊張して不安そうな顔をしていた。そして、その教室の隅では、

「なんで、シリウスはここにいるの?」

「キューン」

「一緒に行くといって聞かなくてね。大丈夫だよ。念のため首輪を着けたんだ」

シャーロットは呆れて、首輪を着け鎖で繋がれたシリウスを見やった。シリウスはハリーだけを心配そうに見守っている。すっかり本物の犬のようだ。

ルーピンの訓練が始まった。ハリーの前に黒いマントを来たボガートが姿を現す。

「エクスペクト、パトローナム!エクスペクト――」

ハリーは途中でふらふらになりながらも何度目かの訓練で、銀色の霞を出すことに成功していた。シャーロットはそれをシリウスとともに見守り、終わった後にルーピンに声をかけた。

「先生、やはり守護霊を実体化させるには最も幸せな記憶を思い浮かべるしかないのでしょうか」

「そうだね。この呪文は術者の精神や人間関係に影響されやすいんだ。実体化させるのは最高に幸せな思い出に集中する必要があるよ」

シャーロットは目を伏せた。シャーロットの幸福の記憶にはいまだに影が差している。母との記憶を思い出す度にボガートの言葉が頭をよぎるのだ。

「シャーロット。大丈夫だよ。吸魂鬼はもうすぐここから去るはずだ。急いで習得する必要はないんだ」

シャーロットはルーピンの言葉に何も返せなかった。ルーピンはシャーロットにこれ以上どう言えばよいか分からず、困ったような顔をしていた。

 

 

 

レイブンクローとの対戦が近づいてきた。その頃になると、ハーマイオニーは膨大な勉強の量にイライラし始めていた。ほとんど誰とも口を聞かず、邪魔されると怒鳴った。仕方ないので、シャーロットは昼食の席でハーマイオニーに話しかけた。昼食を食べながらもハーマイオニーは参考書を読んでいたが。

「あのさ、ハーマイオニー」

「なに?」

「『占い学』だけでもやめたら?」

「そんなこと、できないわ!」

「もうとっくの昔に分かってるんでしょ?トレローニーはインチキよ。ラベンダーやパーバティはともかくハーマイオニーに占いは合ってないわ」

そう言うと、ハーマイオニーはグッと言葉に詰まり考え込んでしまった。

一方、ハリーの吸魂鬼防衛術訓練は順調とは言えないようだった。あれからボガートが近づく度にハリーは銀色の影を作り出すことはできるが、形をそこに留めることはまだできていない。シャーロットもまた、悪夢に悩まされ続けており、守護霊を出現させることはできなかった。

 

 

 

「ミス・ダンブルドア!少し居残りなさい!」

その日の授業終わりは『変身術』だった。マクゴナガルは授業が終わるとシャーロットに声をかけた。

「え?私、何かした?」

「さあ…?」

シャーロットが居残りをさせられるなんて前代未聞だ。ハーマイオニーも不思議そうにしていた。シャーロットは三人に「またあとで」と声をかけ、教室に残った。

広い教室にマクゴナガルとシャーロットだけが静かに座っていた。

「先生、レポートのことですか?」

「いいえ。あなたの事です」

マクゴナガルはシャーロットをじっと見つめた。

「三年生になってから変わりましたね、ミス・ダンブルドア。二年生までのあなたはもっとのびのびしていました。今のあなたはどことなく余裕がなく、鬱屈としていますよ」

シャーロットは唇を噛んだ。

「それは、あれです。先生もご存知のように、あのネズミと犬の件がありましたから」

「いいえ。それだけではないでしょう。ボガートの件をルーピン先生から聞きました。守護霊の事もです。まだ母親の幻覚にとらわれているようですね」

まさか、マクゴナガルにそこまで踏み込まれるとは思わず、シャーロットは反射的に睨むようにマクゴナガルに視線を送った。

「先生には関係のないことです」

「今までは、あなたが自分で乗り越える事だと考え、遠くから見守っていましたが……。少し思い出話をしましょう。ダンブルドア」

「話?何の話があると言うのです、マクゴナガル先生」

「あなたのお母様の事です。グレース・テイラーの話ですよ」

 

 

 

 

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