その後、シリウスはアズカバンにいた時の事を思い出したのか一気に体調不良となったため、医務室に連れていった。魔法省に行くのは延期になるそうだ。ダンブルドアに吸魂鬼が襲い掛かったことを報告すると、ダンブルドアは静かな怒りに燃えていた。正式に魔法省に苦情を申し入れるらしい。
ハリーはシリウスが体調を壊したことで不安そうにしていた。それでも、ダーズリー家から出ることができるかもしれないという希望がでてきたため、シリウスが早く良くなるようにと心から祈っていた。その後、シリウスは体調を壊したついでに、聖マンゴ魔法疾患傷害病院へ行った。いろいろ検査をしてもらうらしい。ハリーはシリウスとしばらく会えなくなるので残念そうにしていたが、長年アズカバン暮らしだったため、身体検査は必要だろうとシャーロットとダンブルドアが勧めた。
土曜日、今日はホグズミードに行ける日だ。ハリーは誰よりも早起きをしていた。ハーマイオニーはやはり大量の勉強に集中したいそうなので、今回は行かないそうだ。三人でハニーデュークスや悪戯専門店、叫びの屋敷などに行き目一杯楽しんだ。
次の週の初め、小さな事件が起こった。
「…あー、やっぱりね」
「もう、やめた!お茶の葉も水晶玉もこりごりよ!」
ハーマイオニーの息が荒い。どうやらトレローニーのインチキにとうとう爆発して教室から飛び出したらしい。シャーロットは分かっていたが、プンスカ怒るハーマイオニーに苦笑いした。
それから数日後、グリフィンドール対ハッフルパフのクィディッチが行われた。ハッフルパフのセドリック・ディゴリーはいい飛びっぷりを見せたが、ハリーはしっかりとスニッチを掴んでみせた。グリフィンドールは大歓声を上げた。次のスリザリン戦で勝てば優勝だ。ハリーは毎日クィディッチの練習で空を飛び交っていた。ウッドは果てしない作戦会議を何度も繰り返し、他の選手も熱くなっている。寮同士の緊張は爆発寸前まで高まり、特にハリーとマルフォイの敵意は頂点に達していた。ウッドはどこに行くにもハリーを一人にしないように指令をだし、ハリーはここ最近いつもいろんな人に囲まれていた。
グリフィンドールは試合前夜からやたら騒がしかった。ハーマイオニーでさえ教科書を手放した。ハリーは明日の事を考え、緊張と不安で顔が強ばっている。
「絶対大丈夫よ」
「君にはファイアボルトがあるじゃないか」
「ハリー、思いっきり飛んでね。マルフォイをやっつけて」
シャーロット、ロン、ハーマイオニーが声をかけるもハリーはずっと顔色が悪かった。
翌日、グリフィンドールチームは大広間に拍手で迎えられた。レイブンクローとハッフルパフからも拍手があがる。スリザリンからは嫌みな野次が飛んだ。
シャーロットはロンとハーマイオニーとともに観客席へ向かった。グリフィンドールの深紅の旗が風に揺れる。
怒濤のような歓声の中、とうとう選手達が姿を現した。キャプテンの握手の後、フーチ先生が号令をかける。
「箒に乗って!…さーん…にー…いちっ!」
箒が一斉に飛び上がった。赤と緑の影が空を舞う。ハリーがスニッチを探してスピードを上げ、その後ろからマルフォイがついてくる。シャーロットも双眼鏡でハリーの姿を追いかけた。
アンジェリーナがゴールを決め、歓声が上がった。しかし、フリントがアンジェリーナに体当たりし、その仕返しにフレッドが棍棒をフリントの頭に投げつける。ペナルティーが出て、フレッドが喚いていた。
アリシアとケイティがゴールを決め、今のところはグリフィンドール優勢だ。しかし、優勢になったことでスリザリンチームは手段を選ばなくなった。今までで一番ひどい泥試合に突入した。スリザリンが棍棒でグリフィンドールを殴り、その仕返しにまた殴る。更にウッドがブラッジャーに襲われ、フーチ先生が怒りで顔を真っ赤にしていた。ペナルティーゴールの連続だ。
グリフィンドールの応援団が叫んでいる。マルフォイにマークされたハリーが突然上へ飛び上がった。スニッチを見つけたのだ。ハリーが手を伸ばす。しかし……
「うわー、あいつ最低」
「あのやろう!くそー!」
「何てことするの!」
隣のロンとハーマイオニーが叫んだ。マルフォイが身を乗り出してファイアボルトを掴み、引っ張ったのだ。ハリーは今にも殴りかかりそうな顔をしていた。マルフォイの目はランランと輝いている。マルフォイの狙い通り、スニッチは姿を消した。
スリザリン生以外の観衆が怒りに沸いた。ジョーダンのなじりの実況か響く。マクゴナガルまでもがマルフォイに向かって拳を振り上げた。
今度はハリーがマルフォイをマークした。マルフォイがイラついた表情で何かを言っている。クアッフルを奪ったアンジェリーナがゴールを目指すが、スリザリンチームはマルフォイ以外がアンジェリーナをブロックするべく疾走していた。ハリーがそれを阻止するため弾丸のようにスリザリンチームの中に突っ込んでいった。
「まだスニッチは見つからないのかしら?」
シャーロットがそう漏らした時だった。ハリーがファイアボルトで急降下した。ハリーの目線を追うと、その先ではマルフォイが勝ち誇った顔で飛んでいるのが見えた。その先にあるのは、小さな金色の煌めきだ。
「行って!行って!行って!行けーーー!」
シャーロットも観衆とともに我を忘れて叫んだ。そして、
「やった!」
ハリーがマルフォイの手を払いのけ、その金色のボールを掴んだ。その手を空中高く突き出した。競技場が爆発する。腕を絡ませ、抱き合いながらグリフィンドールチームは地上へ降りてきた。
深紅の応援団がフィールドになだれ込んだ。選手達が肩車をされている。ロンとハーマイオニーがハリーに駆け寄った。マクゴナガルは大泣きで旗で涙を拭っている。選手達はスタンドの方で優勝杯を持ったダンブルドアに迎えられた。
もしも、今、ハリーが吸魂鬼に会ったなら…。シャーロットは優勝杯を天高く掲げたハリーを見て、歓喜の涙を拭いながら思った。きっと、世界一素晴らしい守護霊を作りだせるだろう。