ガールズトーク~あの子は思春期
それはシャーロットが試験勉強をするために図書館へ行こうとした時だった。廊下を歩いていると、後ろから声がかけられた。
「ミス・ダンブルドア。これ、落ちたよ」
「はい?」
シャーロットが振り替えると、ハッフルパフのネクタイを締めたとてもカッコいい青年がシャーロットに何かを差し出してきた。青年の手にはシャーロットが髪に結んでいた黒いリボンがあった。
「ありがとう!ほどけちゃったのかしら」
シャーロットは笑って受け取った。そんなシャーロットを青年はじっと見つめた。
「たくさんの本だね。試験勉強?」
「ええ。図書館に行くの」
「さすがは学年首席の優等生だね」
シャーロットはビックリして青年を見返した。青年はそんなシャーロットの様子がおかしかったのかにこやかに笑っている。
「君の事は有名だしね。よく知ってるよ。もしよければシャーロットって呼んでもいい?」
「ええ、もちろん」
「あ、僕は……」
「知ってるわ。あなたが出てるクィディッチ戦を見てたし。ハッフルパフのセドリック・ディゴリーさん。セドリックって呼んでもいい?」
セドリック・ディゴリーは目を見開き、それから笑って頷いた。
「ねえ、シャーロット」
「なに?ラベンダー、パーバティ」
女子寮で教科書を開いていると、ラベンダーとパーバティが話しかけてきた。ハーマイオニーは試験に向けてフリットウイックに質問をしに行っている。シャーロットの隣ではジニーが同じく教科書を広げていた。分からないところがあればシャーロットに質問ができるので、この部屋で勉強したいと言ってきたのだ。熱心に羊皮紙に何かを書き綴っていた。
「さっき、廊下でハッフルパフのディゴリーと話していたのを見たんだけど…」
「ああ、うん」
「ディゴリーと仲いいの?」
「ええ?まさか!」
ラベンダーの質問にシャーロットはブンブンと首を横に振った。隣のジニーも興味をそそられたのか顔を上げる。
「話したのも初めてよ!さっきは落ちたリボンを拾ってくれただけ」
「あ、そうなのね」
ラベンダーとパーバティは顔を見合わせた。すると二人合わせてシャーロットに近づいてきた。
「ねえ、シャーロット。ハーマイオニーもいないし、この際だからハッキリさせときたいんだけど……」
「な、何?二人とも。なんか怖いよ」
「真剣に聞いて。ハリーとロン、どっちが好きなの?」
シャーロットはポカンと口を開けた。
「はあぁぁ?」
「だって、シャーロット、モテるのにボーイフレンドを全然作らないじゃない!そのくせハリーやロンとは仲がいいし。」
「それで、どっちが好きなの?やっぱりハリー?」
「シャーロット!ハリーが好きなの!?」
「声が大きいよ、ジニー。別にハリーの事は何とも思ってないわ!」
ジニーはホッと安心したような顔をしていたが、ラベンダーとパーバティはますますシャーロットに近づいてきた。
「じゃあ、ロン?」
「ええ……?ロンにはハーマイオニーがいるじゃない」
「はあ?ハーマイオニー?冗談でしょう?あの二人しょっちゅう喧嘩してるじゃない」
「いや、でもあの二人はけっ………」
「け?」
「け、喧嘩するほど仲がいいって、なんかの本に書いてたし!」
危ない。危うく結婚する予定だからと口走ってしまうところだった。
「いや、でもロンとハーマイオニーよ?」
「でも、確かにシャーロットの言うとおり、あの二人は仲がいいし…」
「じゃあ、将来はハーマイオニーが義姉?」
「気が早いわよ、ジニー。とにかく、ロンの事はただの友達だし、ハリーの事は弟みたいにしか思ってないから」
シャーロットは無理やり話を終わらせ、教科書に向き直った。ラベンダー、パーバティ、ジニーは複雑そうな顔をしていた。
「……という話を聞いたんじゃが」
「ダンブルドア先生。なぜそんな話を知っているのです?」
「ミス・ウィーズリーがこっそり教えてくれたんじゃ」
「……それで?」
「ミネルバ。あの子の好きな人を調べてきてくれんかの?」
「拒否します」
「ミネルバ…頼む…」
「そもそも知ってどうするんですか」
「あの子にふさわしいか調べて、試して、もしもふさわしくなかったら…」
「ミス・ダンブルドアに嫌われますよ」
アルバス・ダンブルドアはガックリと肩を落とした。