あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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四年目突入。


炎のゴブレットの失策
新しい家族


夏休み、シャーロットは杖を手に首をひねっていた。

「うーん、もうダメかしら?」

その杖はシャーロットがホグワーツに入学する前に、適当な木の枝で作成したものだ。自分の杖を買ってからはほとんど使うことはなかったが、予備の杖としていつでも持っておくようにしていた。このところ、その杖の調子が悪い。呪文を唱えても、反応しなくなったのだ。

「…専門家に聞きましょう」

シャーロットは適当な服に着替えると、鞄を手に取った。それを見てアンバーが駆け寄ってきた。

「お嬢様?どちらへ?」

「ちょっと杖の調子が悪いの。ダイアゴン横丁へ行ってくるわ。アンバー、悪いけどちょっとお願いを聞いてくれる?」

「はい、なんでしょうか?」

「これを作ってくれる?できるだけ、たくさん」

アンバーは渡された紙を見て、首をかしげた。

「お嬢様、これ、お嬢様が召し上がるんですか?」

「いいえ。ちょっと、人に贈るの」

不思議そうなアンバーを残して、シャーロットは家から出ていった。

 

 

 

 

「うーん」

「どうですか、オリバンダーさん」

「ダメですなぁ」

「やっぱり?」

シャーロットはダイアゴン横丁のオリバンダーの店にいた。自作の杖を見せると、オリバンダーは険しい顔で首を振った。

「ただの木の枝の杖がここまでもったのはあなたの力そのものが強かったからでしょう。恐らくは寿命が来たのだと思いますよ」

「どうにかして本物の杖のようにできません?」

「ふーむ…。分かりました。少しアレンジしてみましょう。でも、うまくいく保証はできませんが…」

「構いません。できてもできなくても私に返してくれませんか?一応、初めての杖なので思い入れがあるんです」

「ええ、もちろん。ホグワーツへ送りましょう」

「よろしくお願いします。それでは……、キャッ!?」

突然、シャーロットは肩の上に重みを感じ悲鳴を上げた。

「な、なに!?」

「これ!お客様になんと失礼を!下りなさい!」

シャーロットの肩の上にいたのは美しい鳥だった。赤と金色に輝くその鳥はシャーロットと目が合うと嬉しそうにピーピー鳴いた。その鳥には見覚えがある。これは――、

「え?これ、不死鳥?」

「ええ。よくご存じで」

ダンブルドアのペットのフォークスに似た不死鳥だった。ただし、フォークスよりは一回りほど小さく、目はクリッとしている。

「どうしたんですか、この子?」

「あー、実は杖の材料を手にいれるためにエジプトに行った時に出会った野生の不死鳥らしいんですよ。かなり希少な鳥なんですが、いつの間にか私についてきてしまって…。ここを棲みかにしてしまったようなんです。食べ物は自分で勝手に手にいれてくるので問題ないんですが、どうしようか迷っていまして……。」

「えぇ…」

不死鳥が勝手に付いてくるなんて聞いたことがない。不死鳥はそんな戸惑いなど構わず、楽しそうに鳴いていた。

「…とにかく、杖をお願いしますね。じゃあまた。さあ、あなたも下りてちょうだい。」

シャーロットが不死鳥に肩から下りるよう促すが、全く下りる気配がない。シャーロットが軽く睨むも、それでも構ってもらえるのが嬉しいとでも言いたげにますます鳴いた。

「あなたの事を気に入ったようですな」

「まさか!とにかく帰ります」

オリバンダーの手を借り、不死鳥を下ろす。不死鳥はバタバタ騒いだが、構わずシャーロットは店から出ていった。チラリと振り返ると不死鳥は寂しそうな目でシャーロットを見つめていた。

 

 

 

 

「ただいまー」

「おかえりなさいませ、お嬢様。頼まれていたもの、完成しましたよ!」

「わあ、ありがとう、アンバー!」

シャーロットは目の前の大量のビスケットやクッキー、スコーンを見て満足だった。全て日持ちするように作ってもらった。更に、アンバーの手により野菜やドライフルーツも入っているので栄養もある。

「お嬢様、これ、全部食べるんですか?」

「まさか!これはね…」

その時、開いた窓から白いふくろうがスーッと入ってきた。手紙をくわえている。

「ヘドウィグ!ちょうどよかった!待っていたのよ!」

シャーロットはヘドウィグにふくろう用のおやつを与えると、手紙を開いた。ハリーからの手紙だ。予想通り、従兄弟のダイエット企画に巻き込まれ散々な夏休みを過ごしているらしい。シャーロットはニッコリ笑うと、お菓子を包み、ヘドウィグに持たせた。

「はい、ヘドウィグ。悪いんだけどもう一度長旅をしてちょうだい。あなたのご主人のためなの。よろしくね」

シャーロットがそう言うと、ヘドウィグはホーホー鳴き、飛び立っていった。

 

 

 

 

「さーて、一仕事終わったし、アンバー、私もおやつ!この間の新作のケーキ、すごく美味しかったからまた――」

「お、お嬢様ー!」

「へ?」

アンバーの悲鳴が聞こえたため、振り返ると、そこには氷のように固まり涙目のアンバーと、その頭の上には先ほどのオリバンダーの店で出会った不死鳥が乗っていた。

「なんであなたがいるのー!?」

シャーロットが叫ぶと、不死鳥はピーッと甲高く鳴いた。

「お嬢様!これ、この生き物は一体!?」

「アンバー、落ち着いて。この子、オリバンダーさんの店にいた野生の不死鳥よ」

不死鳥は今度はシャーロットの肩に留まると、嘴で耳を優しく噛んできた。

「もう!付いてきちゃったの?」

シャーロットが話しかけると嬉しそうに目を細める。そして再びピーピー鳴いた。

「とにかく、早く帰りなさい。ここにあなたの居場所はないわ。オリバンダーさんのところか、エジプトに帰った方がいいわ」

シャーロットの言葉に、不死鳥はまるで懇願するようにウルウルした目で見つめてきた。

「えー、ここがいいの?」

ピー、と一声鳴いた。

「……。まったく、しょうがないわね。居心地は保証できないけど…」

不死鳥は嬉しそうに今度は唄を歌い始めた。この世のものとは思えない美しい唄だ。

「…まあ、いいか。アンバー、新しい家族よ」

「お嬢様!?本当に飼うおつもりですか!?」

「仕方ないじゃない。遠路はるばるここまで来ちゃったんだもの」

アンバーは信じられないとでも言いたげにポカンと口を開いた。

オリバンダーに事情を説明するための手紙を送らなければ。不死鳥は飼育が難しいと聞く。どこかに本があったはずだから、飼い方を調べなければ。ダンブルドアやハグリッドに聞くのもいいかもしれない。シャーロットはこれからの事を考えながら唄を歌う鳥を見つめた。

 

 

 

 

その不死鳥はどうやら可愛らしいものが好きらしい。シャーロットのもっているリボンやアクセサリーを見ると、ピーピー鳴き、じっと見つめてきた。不死鳥に性別はないらしいが、どうやら女性的な感性の持ち主らしい。試しにシャーロットのレースのリボンを首にゆるく結んでやると嬉しそうに歌った。

「よろしくね、“イライザ”」

シャーロットが新しい名前を付けてやると更に嬉しそうに鳴いた。

こうして、シャーロットに新しい家族が増えた。

 

 

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