あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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リトル・ハングルトンにて

『シャーロットへ

 

シャーロット、クィディッチワールドカップだ!パパが切符を手にいれたぞ。アイルランド対ブルガリア。月曜の夜だ。ハーマイオニーももうすぐここに来る。僕の家まで来れるかい?もしよければ迎えに行くようパパに頼むよ。ハリーも迎えに行くんだ。

パーシーは就職した。魔法省の国際魔法協力部だ。

 

ロン』

 

 

『ロンへ

 

久しぶり。クィディッチの切符、ありがとう。でもごめんなさい。せっかくのお誘いだけど行けそうにはないの。実はちょっと夏休みの間にやっておきたいことがあって、私は今、ホグズミードから遠く離れた場所にいます。私の分まで楽しんできてね。ハリーやハーマイオニーによろしく。

 

シャーロットより』

 

『シャーロットへ

 

あなた、またとんでもないこと考えているんじゃないでしょうね?

 

ハーマイオニーより』

 

 

 

「まあ、考えているけど」

シャーロットは列車の席に静かに座り、ハーマイオニーからの手紙を思い出していた。

これからの一年、ハリーには更なる災難が降りかかる。一番の災難はヴォルデモートの復活だろう。これから、魔法界はどんどん闇へと染められ、ヴォルデモートの脅威にさらされる。それに立ち向かうための準備が必要だ。

列車にはシャーロット以外誰もいない。シャーロットは退屈しのぎに、マグルの書店で購入した本を読んでいた。可愛らしい表紙の児童書だ。

天才的な頭脳を持つ少女が主役だ。邪魔物扱いする家族に辛く当たられるが、そんな境遇に負けない女の子。彼女は唯一の理解者である女性教師を救うために、学校を支配する横暴な校長に立ち向かっていく。最後はもちろん、みんな大好きなハッピーエンド。

「…………。」

シャーロットは視線を外の景色に移した。本の中の少女は自分にとってまぶしい存在だ。自分はこんなふうにダンブルドアに立ち向かっていけるだろうか。いや、今のシャーロットには無理だ。もっと、強くなりたい。もっと、もっと―――。

シャーロットが考え事をしているうちに、列車は目的地に着いた。シャーロットはスーツケースを抱えると、列車からゆっくり降りた。これから少し歩かなければならない。

 

 

 

その村はのどかな田舎そのものといった雰囲気の村だった。村の人々は突然現れた不思議な少女をジロジロ眺めた。そんな視線に構わず、シャーロットは近くにいた少年を呼び止めた。

「こんにちは。ちょっと話を聞いてもいい?」

少年は胡散臭そうにシャーロットを見た。

「あんた、誰だ?この辺では見かけないな」

「ええ。ちょっと知り合いに会いに来たの」

シャーロットがニッコリ微笑むと、少年は顔を赤くして目を反らした。

「ここには何もない。警察に見つかる前に早く帰った方がいいぜ」

「警察?」

「ああ。この間、村に住んでいたじいさんが死んだんだ。警察はまだ調べてるけど犯人は捕まっていない」

シャーロットは目を見開き、少年に尋ねた。

「その場所、教えてくれる?」

 

 

その建物には警察はいなかった。立ち入り禁止を示すテープはあったが、見張りもだれもいない。

「ここが、『リドルの館』ね」

リトル・ハングルトンの小高い丘に建つその館は不気味で荒れ果てている。シャーロットはゆっくりと周りを歩き、その館を眺め回した。一度見たいと思っていた。ヴォルデモートは今、どこにいるのだろう。

館の中に入るのは流石にやめておいた。別に観光で来たわけではない。かつて、何人もの人間が死んだ場所はシャーロットにとっても、居心地がいい場所とは言えなかった。

 

 

 

リトル・ハングルトンの教会墓地。小さな教会に墓石。右手にはイチイの木がある。シャーロットは墓石の文字に視線を走らせた。

 

『トム・リドル』

 

数ヵ月後、ここでヴォルデモートは復活を遂げるだろう。そして、ハリーはそのために傷つけられ、セドリック・ディゴリーは命を落とす。

「……できれば復活そのものを阻止したいけれど」

シャーロットはボソリと呟いた。墓地の周辺を見渡す。小さな村故に誰もいない。好都合だ。シャーロットはスーツケースからたくさんの道具を取りだし、準備を始めた。

 

 

 

 

数時間後、シャーロットは全ての仕事を終え、スーツケースを持ち村を歩いた。田舎のため、もう列車はない。辺りは夕焼けに染まっている。シャーロットは駅の隅っこでスーツケースを開いて中に入った。このスーツケースは著名な魔法動物学者、ニュート・スキャマンダー氏の所持品を参考にして作った。探知不可能拡大呪文により魔術で拡大されたスーツケースだ。スキャマンダー氏のスーツケースほど広さはないが、シャーロットの研究室の役割を果たしている。ここならダンブルドアにも見つからないし、何より未成年の“臭い”が感知されないように細工した。更に、ウィーズリー家の車をヒントに透明ブースターを付けたため、スーツケースそのものを隠すことも可能だ。

スーツケースの中では不死鳥のイライザがピーピー鳴いていた。

「ごめん、ごめん。遅くなって」

シャーロットが苦笑いしてイライザの体を撫でると、満足そうに目を細めた。

簡単な食事を取ると、シャーロットは備え付けられたベッドに横になった。ハリー、ロン、ハーマイオニーの事を考える。三人とも今頃ワールドカップだろう。あちらではきっと大騒ぎに違いない。シャーロットはしばらく物思いにふけっていたが、やがて眠りに就いた。

 

 

 

 






シャーロットが列車で読んでいた児童書は実在します。ピンと来た方はいますかね?
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