数日後、シャーロットは隠れ穴へやって来た。日刊予言者新聞にはリータ・スキーターによるワールドカップの騒ぎが書かれており、シャーロットも目を通したが、やはり魔法省は今、大変なことになっているらしい。火消しに奮闘しているであろうウィーズリー氏やパーシーに深く同情する。
「こんにちは!」
「まあ、シャーロット!いらっしゃい!」
隠れ穴をノックすると、ウィーズリー夫人が温かい笑顔で出迎えてくれた。
シャーロットが家に入ると、声を聞いたらしいハリー、ロン、ハーマイオニーが部屋へ入ってきた。
「シャーロット!久しぶり!」
「久しぶり。ハリー、ロン、ハーマイオニー。ワールドカップ、一緒に行けなくてごめんね」
「いいよ、そんな事。メチャクチャ大変だったんだから」
「新聞で見たわ。大騒ぎだったみたいね」
「シャーロット!聞いてよ!」
三人はワールドカップでの闇の印、ハリーの傷痕の痛み、シリウスへの手紙などそれぞれ喋り始めた。シャーロットは静かにそれを聞いていた。
「シャーロット、どう思う?」
「…分かんない」
「そうだよね。シャーロットでも意味分かんないよね」
ハリーはガッカリしてそう言った。シャーロットはそんなハリーから目をそらした。
「それより、ロン。今日から新学期まで泊めてくれない?今年ももうみんなと一緒にホグワーツ特急で行こうと思うの」
「オーケー。ママに言ってくるよ!」
ロンがニッコリ笑い、キッチンへ入った。シャーロットはホッとして椅子にもたれかかった。ふと、イライザの事を思い出し、口を開いた。
「そういえば、私、新しくペットを飼うことにしたの。外に出していいかしら?」
「ええ?シャーロットのペット?見せて!」
「やっぱりふくろうなの?」
「まあ、似たようなものよ」
シャーロットがそう言いながらスーツケースを開く。中から勢いよくイライザが飛び出してきた。
「うわぁっ!」
「ちょっ、シャーロット、これ!」
「ダンブルドア先生の不死鳥じゃない!」
ちょうどキッチンから戻ってきたロンも含め、大声を上げたので、シャーロットは苦笑した。イライザは楽しそうにテーブルの上にとまり、四人をじっと見つめてきた。
「違うわよ。よく見て。お爺様の不死鳥じゃないわ。私が新しく飼い始めたの。名前はイライザ」
シャーロットがそう言うと、三人は信じられないとでも言うように目を剥いた。
「不死鳥、飼うの!?」
「似たようなものってふくろうとは全然違うじゃないか!」
「前代未聞よ!」
「仕方ないじゃない。ついてきてしまったんだもの。大丈夫よ。ちゃんと気をつけて飼うわ」
シャーロットはそう言ってイライザの体を撫でた。三人はお互いに顔を見合わせた。
その後、シャーロットは他のウィーズリー家と久しぶりに会い、挨拶を交わした。みんな元気そうだ。また、ウィーズリー家の長男と次男、ビルとチャーリーに初めて会った。二人ともにこやかにシャーロットに話しかけてきた。シャーロットはチャーリーと会ったとき、幼少期の愛称を思い出し、ちょっとだけほろ苦い気持ちになった。
明日はみんながホグワーツに戻る日だ。シャーロットが居間に下りていくと、ロンとビルはチェスをしており、ハリーはファイアボルトを磨いていた。ハーマイオニーは基本呪文集を熱心に読んでいる。フレッドとジョージは隅っこの方に座り込み、羽根ペンを手にコソコソしていた。そんな双子にウィーズリー夫人が厳しい視線を送った。
「二人で何してるの?」
「宿題さ」
「バカおっしゃい。まだおやすみ中でしょう」
「ウン。やり残してたんだ」
「まさか、新しい注文書なんか作ってるんじゃないでしょうね?」
ウィーズリー夫人がズバリ指摘する。フレッドが、
「これはシャーロットからの注文書さ。友達の注文を無視するわけにはいかないじゃないか!」
というと、居間の全員の視線がシャーロットに向いてきた。
「シャーロット!あなた、フレッドとジョージに悪戯グッズを注文してたの!?」
「あー…、ええと…」
ハーマイオニーが噛みつくように言ってきたので、シャーロットはモゴモゴした。
「去年から、一番のお得意様だぜ!シャーロットに注文を受けて作った改良型クソ爆弾は、これまで以上の最高傑作さ!それにカナリアクリームとかずる休みスナックボックスとか!俺たちも逆に他の悪戯グッズのすごいアイディアをもらったしね!」
ジョージが誇らしげに言った時、タイミングよくウィーズリー氏が帰って来たため、シャーロットはハーマイオニーとウィーズリー夫人の追及を逃れた。シャーロットはホッと息をついた。
ウィーズリー氏は疲れきっていた。魔法省での後始末は大変だったようだ。やがて、闇の印の話題からクラウチ家の屋敷しもべ妖精の話題へ移り、更に、ハーマイオニーとパーシーが熱い議論をしようとしたため、その場にいた子供達はウィーズリー夫人に促され荷物をまとめるため2階へ追いやられた。
「ねえ、今年はドレスが必要みたいだけど、何に使うのかしら?」
「ああ、それね。いろいろよ」
「シャーロット、何か知ってるの?」
ジニーが不思議そうに首をかしげている。
「明日になったら分かるわよ。それよりも、早く荷造りして寝ましょう。明日は早いわ」
シャーロットはそう言って笑い、荷物をまとめ始めた。
翌朝、少しだけ朝寝坊した。荷造りを終えててよかった。少しだけ急いで居間に下りていく。どうやら朝からエイモス・ディゴリーが暖炉に来ていたようだ。それからが本当に大変だった。マグルのタクシーを呼んだのはいいが、ピッグウィジョンは騒ぐわ、ヒヤヒヤ花火は炸裂するわ、クルックシャンクスは運転手に噛みつくわでとても快適な旅とは言えなかった。イライザをスーツケースに入れておいてよかったとシャーロットはこっそり安心した。ちなみにその時、ヒヤヒヤ花火をフレッドに頼み、一つもらった。
「それ、何に使うのよ?」
「知らない方がいいよ」
ハーマイオニーが不審げにシャーロットを見てきた。
9番線と10番線の間にある柵から入ると、紅に輝く蒸気機関車が目に入った。列車の中ほどでコンパートメントを見つけ、荷物を入れる。別れの挨拶をするとき、ウィーズリー夫人、ビル、チャーリーが今年の対抗試合の事をほのめかすため、みんなは不思議そうにしている。唯一全てを知っているシャーロットは苦笑した。
やがて汽車が動き出した。どんどんスピードを上げ、汽車がカーブを曲がる前にウィーズリー家の三人が姿くらましするのが見えた。
四人はコンパートメントに戻った。ロンはまだ不満そうにしている。その時、隣のコンパートメントから嫌な声が聞こえた。
「…父上はほんとうは、僕をホグワーツではなく、ほら、ダームストラングに入学させようとお考えだったんだ…」
ハーマイオニーが忍び足でコンパートメントのドアを閉めた。
「本当にそっちに行ってくれたらよかったのに」
ロンが口を尖らせた。それからしばらくは他の魔法学校やホグワーツがどんなふうにしてマグルの目から隠しているかに話題が移り、シャーロットは聞き役に徹した。
午後になると、同級生が何人か顔を見せた。ロンが誇らしげにネビルにビクトール・クラムのミニチュア人形を自慢した時、ドラコ・マルフォイが姿を現した。相変わらず青白い顔に、ニヤニヤ笑いを張り付けている。後ろにはもちろん、クラッブとゴイルが立っていた。
「ウィーズリー…、なんだい、そいつは?」
マルフォイがロンのドレスローブに手を伸ばそうとしたため、シャーロットはヒヤヒヤ花火をマルフォイの足元に投げつけた。
「うわぁっ!なんだ、これ!」
ヒヤヒヤ花火が炸裂する。マルフォイがビビって後退りしたため、その隙を狙ってシャーロットはコンパートメントの扉を力任せに閉めた。
「ロン、あいつの言うことなんか気にしちゃダメよ」
「…このドレスローブ、何とかならないかな?」
ロンは少し落ち込み、大鍋ケーキをつまんだ。
やがて、ホグワーツ特急がホグズミード駅に到着する。馬車の中から大きな城を目にし、シャーロットはじっと学校を見つめた。
とうとう帰って来たのだ。命を懸けることになる、この決戦場に。