あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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ボーバトンとダームストラング

ハーマイオニーはどうやらSPEWの事はいったん中止することにしたらしい。ハリー、ロン、シャーロットはほっとした。シリウスはすぐさまホグワーツまで飛んできた。ある日の夕方、グリフィンドールの寮の前で黒い犬が座っていたため、四人は慌てて誰もいない教室に引っ張り込んだ。犬はすぐに人間に戻った。

「ハリー!」

「シリウス!久しぶり!」

二人は固く抱き合い、近況を語り合った。

「傷の痛みはどうだ?大丈夫か?」

ハリーの傷が夏休みのあとは痛まなかったことを伝えると、シリウスはほっとしたようだった。

「そうか、本当によかった」

「シリウス、ここにはどうやって?」

「ああ、ハリーの顔だけは見たいと思って、ホグズミードへ姿あらわししたんだ。それからは犬の姿でこっそり忍び込んだ。ホグワーツに人間の姿で入ると、さすがに騒ぎになって先生ににらまれると思って…」

「賢明だと思うわ」

シャーロットは深く頷いた。それから少し話したあと、ハリーの元気な姿を見て安心したのかシリウスは犬の姿になって帰っていった。帰り際、何かあればすぐに知らせなさいとハリーに何度も念を押していた。

 

 

 

それからはシャーロットもハーマイオニーと同じく図書館に通いつめることになった。四年生になってから宿題の量が格段に増えたのだ。そんな中、ムーディが授業で「服従の呪文」を生徒たちにかけると発表した。みんな動揺し、ハーマイオニーが恐る恐る反対したがムーディはそれをはね除けた。

「ダンブルドアが、これがどういうものかを、体験的におまえたちに教えてほしいというのだ」

シャーロットは心の中でダンブルドアをなじった。

それから生徒は一人一人ムーディによって「服従の呪文」をかけられた。シャーロットももちろん服従させられた。心が強ければ呪文に抵抗できるが、そんなことをしてムーディに目をつけられるなんてまっぴらだ。

「インペリオ!」

呪文が聞こえた瞬間、全ての事がどうでもよくなり幸せな気持ちに包まれた。ぼんやりとして、思考がフワフワする。

『ダンスを踊れ』

『さあ、ダンスを踊るんだ』

ムーディの声が頭の中で響く。シャーロットは特に抵抗せずぼんやりとステップを踏んだ。

ハッと気がつくと、みんながシャーロットを見ていた。どうやら呪文が解けたらしい。慌てて席へ戻った。隣のハリーにこっそり聞いた。

「私、どうなってた?」

「ものすごく華麗なダンスをしていたよ」

シャーロットは顔をしかめ、それからはムッツリと黙って他の生徒たちの様子を見ていた。

授業が終わって、ただ一人服従の呪文に抵抗できたハリーはフラフラになっていた。

「お疲れ、ハリー」

「ムーディの言い方ときたら…」

ハリーは疲れきっており、ロンはそれからムーディがどんなにメチャクチャなヤツかをコソコソ語り始めた。

 

 

 

 

それから数週間後、掲示板に紙が貼り出された。とうとう、10月30日、ボーバトンとダームストラングの生徒たちがやって来るらしい。

アーニー・マクラミンがセドリック・ディゴリーに掲示板の内容を伝えに行ったのを見届けるとロンが声をあげた。

「あのウスノロが、ホグワーツの代表選手?」

「あの人はウスノロじゃないわ。クィディッチでグリフィンドールを破ったものだから、あなたがあの人を嫌いなだけよ」

「ロン。その言い方はあんまりよ。私も話したことあるけど、彼は優しくて親切よ」

シャーロットまでもがセドリックを庇うように言ったため、ロンは拗ねてしまった。

「あの人はとっても優秀な学生だそうよ。その上、監督生です!」

「君はあいつがハンサムだから好きなだけだろ」

「お言葉ですが、私、誰かがハンサムというだけで好きになったりいたしませんわ」

ロンがコホンと咳をしたが、「ロックハート!」と聞こえたため、シャーロットとハリーは顔を見合わせてニヤリと笑った。

 

 

 

それからは三校対抗試合の話で持ちきりだった。城は念入りに清掃され、甲冑達はピカピカに磨かれた。先生達も妙に緊張していた。

10月30日の朝、大広間は豪華な飾りつけがされていた。その日の授業はみんながソワソワしていた。ようやく六時になり、二つの魔法学校の生徒たちがやって来た。

ボーバトンは巨大な天馬に引かれた馬車で現れ、ダームストラングは湖から船でやって来た。生徒たちが呆気にとられ、ポカンと口を開く。巨大な女校長、マダム・マクシームが数人の生徒を引き連れダンブルドアと挨拶を交わしていた。ダームストラングの生徒たちはみんな大柄でガッシリしている。校長のカルカロフが愛想よく握手をするのが見えた。その時、ロンが上ずった声をあげた。

「ハリー――、クラムだ!」

ハーマイオニーがたしなめるが、ロンの興奮は止まらない。ダームストラングの生徒たちがスリザリンのテーブルに着いたときは憎々しげにマルフォイをにらんでいた。

全校生徒が大広間に入ってテーブルに着いた。ダンブルドアから笑顔で歓迎の挨拶を述べる。

「ホグワーツへのおいでを心から歓迎いたしますぞ」

挨拶のすぐあとにテーブルの上には様々な料理が並べられた。大広間はいつもより混み合っているように感じられ、賑やかだ。シャーロットも珍しい料理に舌鼓をうった。ハグリッドが教職員のテーブルの端に座ったとき、後ろからだれかの声がした。

「あのでーすね、ブイヤベース食べなーいのでーすか?」

四人が振り向くと、そこにはフラー・デラクールがいた。ロンが真っ赤になる。知ってはいたが、同性のシャーロットでも見とれてしまう、シルバーブロンドの美少女だ。

「私達はもう食べたからどうぞ。もしよければこちらも食べてみて。ホグワーツ自慢の料理よ」

シャーロットがニッコリ笑ってブイヤベースと、更にシェパーズパイの皿を勧めた。フラーは少し戸惑ったようだが、

「ありがとうございまーす」

と笑って皿を受け取りレイブンクローのテーブルに運んでいった。

「あのひと、ヴィーラだ!」

ロンが掠れた声で言った。

「いいえ、違います!」

ハーマイオニーがバシッとそう否定したが、シャーロットが口を挟んだ。

「ロンの意見は当たってると思うわ。多分彼女、親戚にヴィーラがいるか、祖先がヴィーラなんじゃないかしら?」

ロンはもう一度体を横に倒してフラーを見ようとし、ハーマイオニーは少しだけ怒った表情をした。

デザートが消えると、ダンブルドアがクラウチ氏とバグマン氏の紹介と、三校対抗試合の詳しい説明を始めた。そして、運ばれた木箱からとうとう炎のゴブレットが姿を現した。荒削りの木のゴブレットから青白い炎が踊っている。シャーロットはじっとそれを見つめた。あそこからは四人の代表選手の名前が出てくるだろう。シャーロットはそれを阻止するつもりはなかった。ヴォルデモートの復活も阻止するつもりはない。ハリーには気の毒だが、何としても代表選手になってもらわなければならない。そして、優勝させるのだ。ヴォルデモートには肉体にハリーの血を取り込んでもらわなければならない。そのために、出来る限りの手伝いをする。必ず。

シャーロットが考えているうちにパーティーはお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

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