翌日は土曜日だった。多くの生徒が早起きしてウロウロしており、その視線はゴブレットに釘付けだ。フレッドとジョージは『老け薬』を飲み、果敢に年齢線へ挑戦したが、すぐに弾き飛ばされた。ポンと音がして二人の顔から白い顎髭が生えてくる。玄関ホールが大爆笑に沸いて、シャーロットもお腹を抱えて笑った。
炎のゴブレットにはディゴリーやワリントン、更にアンジェリーナが名前を入れた。その後はハグリッドの小屋に四人で遊びにいった。ハグリッドはマダム・マクシームにうっとりと見とれ、話しかけていてシャーロットは苦笑した。他の三人は信じられないとでも言うように呆気にとられていた。
そして、その夜、代表選手の名前がゴブレットから出てきた。
『ビクトール・クラム』
『フラー・デラクール』
『セドリック・ディゴリー』
それぞれの学校が拍手の嵐、歓声の渦に包まれた。
「結構、結構!」
ダンブルドアが嬉しそうに呼び掛け、話を始めたとき、炎のゴブレットが再び赤く燃え始め、火花が迸った。空中に炎が伸び上がり、羊皮紙が出てくる。その羊皮紙を見つめ、ダンブルドアがそこに書かれた名前を読み上げた。
「ハリー・ポッター」
その夜、談話室はお祭り騒ぎだった。しばらくしてから帰って来たハリーもそれに巻き込まれる。
「僕、やってない!どうしてこんなことになったのか、分からないんだ」
ハリーが繰り返し言うのが聞こえたが、誰も気にしていなかった。やがてハリーは怒鳴ってみんなを振り切り、寝室への階段を上っていった。シャーロットがそれを追いかけた。
「ハリー」
「シャーロット!僕、いれてない!名前を入れてないんだ!」
「知ってるわ。ええ、あなたは入れてない」
シャーロットがキッパリ言うと、ハリーはじっと見つめてきた。ようやくハリーの言葉に耳を傾け、信じてくれたことに安心したようだった。
「でも、なんで、誰が?」
「分からない。きっと、あなたの命を狙ってるのよ」
「ムーディ先生も同じ事を言ってた。でも――」
「とにかく、課題を乗り切るのよ。余計なことは私とハーマイオニーが考えるわ。あなたは明日からかなり大変だと思うけど、自分の命を一番に考えて。それから、シリウスに手紙を書くのよ」
シャーロットがそう話すと、ハリーは少しだけ落ち着いたようだった。
「それから、ロンのことなんだけど…」
「ロン?寝室にいるんだろう?」
「うん…。きちんと話し合って。私から言いたいのはそれだけ」
シャーロットはそう言って背を向けて、自分の寝室へ向かった。多分、ロンの今の状態で話し合うのは無理だろうなぁと思いながら。
翌朝、シャーロットは誰よりも早起きし、ハーマイオニーを起こした。
「ハーマイオニー、起きて」
「うう…?シャーロット、まだ早すぎじゃない?」
「大広間の朝食を持って、談話室でハリーを待つの。今、ハリーを大広間に行かせない方がいいわ」
シャーロットがそう言うと、目をトロンとしていたハーマイオニーもしっかり覚醒した。
ナプキンに簡単なサンドイッチを包み、グリフィンドールへ戻る。寮へ戻ったとき、ちょうどハリーと出くわし、シャーロットはハリーの手を引いてグイグイ校庭へと向かった。
「ええ、あなたが自分で入れたんじゃないって、もちろん、分かっていたわ。ダンブルドアが名前を読み上げた時のあなたの顔ったら!」
サンドイッチを食べながら黙ってハリーの話を聞いたあと、ハーマイオニーが言った。
「ロンを見かけた?」
ハリーの言葉に、シャーロットとハーマイオニーは顔を見合わせた。
「僕が自分の名前を入れたと、まだそう思ってる?」
「違うのよ、ハリー」
ハーマイオニーが口ごもったので、シャーロットが話を続けた。
「本当はロンだって、名前を入れてないことくらい分かってるわ。ハリーに嫉妬してるのよ。いつだって注目を浴びるのはあなただわ。ほら、ロンのお兄さんは優秀で有名でしょう?昔からきっと何度も比較されてたんじゃないかしら。友達のあなただって小さい頃から有名人だし。きっと添え物扱いされてるって思ってたのよ。今まで何も言ってこなかったけど、昨日の出来事で爆発したんだと思う」
「そりゃ傑作だ」
ハリーは苦々しそうに言った。
「ロンに僕からの伝言だって伝えてくれ。いつでもお好きなときに入れ替わってやるって」
シャーロットはそんなハリーの様子を見てため息をついた。
昼食のあと、シャーロットはロンの元へ向かった。
「ハイ、ロン」
「…何だよ、シャーロット。もしもハリーの事なら…」
「ええ。ハリーの事よ」
シャーロットがキッパリ切り出したのでロンは逆に面食らったようだった。
「分かってるんでしょ?ハリーは名前を入れてないわ」
「…僕の事は放っておいてくれないか?」
「ええ。そのつもりよ。別にハリーと無理して仲良くしなくてもいいと思う」
シャーロットがそう言うと、ロンは唖然とした。
「シャーロット?」
「あなたの性格からしていつか爆発すると思ってた。これから、ハリーのそばにいればきっとこういうことはこれからも何度もあるわ。ハリーは何度でも注目され、あなたは何度でも悔しい思いをする。それに耐えられないのなら、離れるという選択肢もあるのよ」
ロンが途方にくれたような顔をしたが、シャーロットは話を続けた。
「でも、一つ言わせて。ロンはこんなつまらないことで喧嘩するくらいにしかハリーの事を考えてなかったの?この3年間、たくさんの冒険をして、ハリーの事を一番に分かっているのはあなただった。あなたがいたからこそ、ハリーは何度も辛い事を乗り越えられたのに、こんなわけのわからない試合のためだけに離れちゃうの?」
シャーロットが一気に話を続けた。ロンは無言になり俯いてしまった。
「ロン、あなたがどんな判断を下したとしても、それを私は否定しない。悪いけど、私はハリーのそばにいるわ。きっとこれから何日かはハリーは最低の日々を過ごすことになるだろうから、私はそれを支える」
シャーロットは宣言するようにそう言ってロンに背を向けた。