あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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ダンスパーティーでの驚愕

結局、ハリーとロンはパチル姉妹とパーティーに参加することになったらしい。パーバティが寝室でクスクス笑いながらラベンダーと話しており、シャーロットはその事を知った。

クリスマス休暇に入った。しんしんと雪が降っており、寒さが一段と増す。ロンはシャーロットとハーマイオニーが誰とパーティーに行くのか気になるようで、出し抜けに質問をしてきた。特にハーマイオニーには何度も話を切り出すも、ハーマイオニーは絶対に答えず、シャーロットも笑って首を傾げるだけだった。

「ハーマイオニー、君の歯…」

「歯がどうかした?」

「うーん、なんだか違うぞ…たった今気づいたけど…」

「ロンったら今さら気づいたの?」

シャーロットは、ハーマイオニーをまじまじと見つめるロンを見て悪戯っぽく笑った。例のマルフォイの歯呪いを受けて、マダム・ポンフリーに歯を縮めてもらったらしい。ハーマイオニーは晴れやかな顔をしていた。

 

 

 

 

クリスマスの朝、ハーマイオニーが目覚めると、シャーロットはすでに起きており、ゴソゴソしていた。

「シャーロット?何してるの?」

「あ、おはよう、ハーマイオニー。私、今夜のパーティーの準備をしてくるね」

「…シャーロット、まだ朝よ!」

「いろいろあって。じゃあまた夜に会いましょう。クラムによろしく。イライザ、行きましょう」

シャーロットはイライザを引き連れて寮から出ていった。

ハリー、ロン、ハーマイオニーは談話室で待ち合わせ食事へ降りていった。

「シャーロット、誰と来るんだろう?」

「結局私にも教えてくれなかったわ」

「ハーマイオニー、君は誰と行くんだい?」

ロンがまたこれまでに何度もした質問をし、ハーマイオニーはフンと顔を背けた。

 

 

 

 

ハリー、ロン、ハーマイオニーは午後には雪合戦を楽しみ、夕方になるとそれぞれパーティーの支度を始めた。

ハリーとロンもドレスローブを身につける。ロンは鏡に映った自分の姿を見て、また涙ぐんでいた。フリルだらけのドレスローブを着なくて済んだことを、最大の幸福のように感じているようだ。

「あの女の子っぽいドレスローブはどうしたんだい?」

シェーマスの質問にロンは首をかしげた。

「分からないんだ。シャーロットがこのドレスローブの代わりに欲しいっていうから渡したんだけど…」

「まさかシャーロットが着るの?」

「それはないだろう、シャーロットに限って」

男の子達はワイワイ話しながら寮から足を踏み出した。

ハリーはパーバティとともに大広間のドアの前に立つ。ハーマイオニーとシャーロットの姿を探したがまったく見えなかった。ロンもパートナーのパドマに目をくれずキョロキョロしていた。

「あっ、まずい…」

フラー・デラクールがシルバーグレーのドレスで通りすぎ、ロンが慌てて隠れた。フラーはレイブンクローのデイビースを従えながらも、何故か心配そうな表情でロンと同じようにキョロキョロしていた。

やがて正面玄関が開いた。

「代表選手はこちらへ!」

マクゴナガルの声が響き、ハリーはパーバティとそちらへ向かった。セドリックとチョウの姿が見えて、ハリーは目を逸らす。その視線がクラムの隣にいる女の子の姿を捉え、ハリーは口をあんぐりと開けた。

ハーマイオニーだ。

ハーマイオニーは薄いブルーのドレスローブを身に纏い、いつもボサボサの髪は今夜はツヤツヤに光っていた。

「こんばんは、ハリー!こんばんは、パーバティ!」

パーバティはあからさまに驚いた顔でハーマイオニーを凝視した。パーバティだけではない。クラムのファンは恨みがましい目でにらみつけ、マルフォイでさえあんぐりと口を開けてハーマイオニーを見た。

マクゴナガルに誘導されてようやく席につく。席からはハーマイオニーを見て顔が歪んでいるロンと膨れっ面のパドマが見えた。

その時、ザワっと人々が揺れた。誰かに注目している。ハリーがそちらに目を向けて、そこに信じられないものを見た。

そこにいたのは可愛らしい女の子だ。恐らくはまだ7~8歳だろうか。銀色の髪は可愛らしく結い上げられ、上品な薄い桃色のドレスが輝いて見える。フラー・デラクールに似ている凄まじい美少女だ。しかし、人々が視線に捉えたのはそのパートナーの方だった。

そこにいたのは栗色のローブを身につけた、赤毛の青年だった。長い髪をゆるく後ろで一本に縛っている。胸には緑色のリボンが結んであり、瞳の緑によく映えていた。しっかりとした足取りで隣の少女をエスコートしている。隣の少女もまるで夢を見ているようにうっとりとした表情で青年を見上げた。ハリーはその人物を誰よりもよく知っていた。

 

 

 

 

話は数週間前に戻る。

 

 

 

 

第一の課題が終わり、少したったあと、シャーロットが図書館に行くために一人で廊下を歩いていると、イライザが飛んで来た。

「あら、イライザ。昨日からどこに行っていたの?」

イライザは肩に止まり、何かを言いたげにピーと鳴いた。イライザは再び飛び立ち、前の方にあった石像に止まりシャーロットの方を向く。まるで付いてこいと言われているみたいだ。シャーロットは首をひねり、イライザに誘われるようにして廊下を進んでいった。やがてイライザが廊下の端の床に止まり、ピーピー鳴き出した。シャーロットがそちらに目を向けると、シルバーブロンドの少女が目を泣きはらして座り込んでいた。シャーロットが驚いて、少女に駆け寄る。

「どうしたの、こんなところで。何かあったの?」

少女は警戒するように身をすくめた。イライザが少女の方へすりより、ピーと鳴いた。そのイライザの姿を見て、少女は少しだけ表情が柔らかくなった。シャーロットは安心させるように再び話しかけた。

「こんにちは。私はシャーロットっていうの。こっちは私のペットのイライザ。あなたは…ボーバトンの生徒?」

少女はまだ警戒していたが、コクリと頷いた。

「もしかして、迷った?」

再びコクリと頷いた。シャーロットは少し笑って、手を差し出した。

「校庭まで案内するわ。イライザも一緒よ」

少女は少しだけ迷ったようだが、シャーロットの顔を見て、手を握ってくれた。

「名前は?」

「…ガブリエル」

「…もしかして、お姉さんがいる?」

「ウン」

どうやら少女はフラーの妹、ガブリエル・デラクールだったらしい。姉と同じく美少女だ。まだ英語に不慣れなのかたどたどしく事情を説明してくれた。

「わたーし、おねえさまとけんかしまーした。馬車からとびだして、気がつくと、あそこにいて、帰れなくなりまーした」

「それはきっとお姉さんも心配してると思うわ」

シャーロットは苦笑しながら、禁じられた森の端にある馬車へと向かった。

「ガブリエル!ガブリエル!」

馬車の近くにいたフラーが駆け寄ってきた。ガブリエルをしっかりと抱きしめる。ガブリエルも泣き顔でフラーに抱きついた。シャーロットは肩に止まったイライザとそれを見ていた。フラーとガブリエルはフランス語で何かを話すと、シャーロットに近づいてきた。

「あなた、前にパイをくれた人でーすね」

「あ、覚えてたのね」

「もちろんでーす。妹を連れてきてくれて、ありがとうございまーした」

フラーは感謝の視線をシャーロットに向けてきた。シャーロットも笑って首を振った。

「気にしないで。イライザが妹さんを見つけてくれたのよ」

「オー、この鳥はあなたの鳥でしたか?」

「?うん」

「この鳥はガブリエルのここでのはじめての友達でーす。よく馬車まで飛んで来て、妹と遊んでまーした」

シャーロットは驚いてイライザを見た。ようやく最近よくいなくなる理由を知った。どうりでガブリエルによくなついているわけだ。

「この浮気もの」

フラーとガブリエルに別れを告げ、再び図書館に向かう。シャーロットが少しにらむとイライザは特に気にしていないようにまた一声鳴いた。

 

 

 

それがきっかけとなり、シャーロットはたまにフラーやガブリエルと話すようになった。特にガブリエルはイライザを連れてくると、非常に喜び、ニコニコしながら戯れていた。

「もう、そっちの子になっちゃいなさい」

シャーロットが冗談めかしていうと、イライザは抗議するようにピーピー鳴き、ガブリエルはクスクス笑っていた。

クリスマスが近づくと、ガブリエルは少し顔が暗くなってきた。

「どうしたの?最近、元気ないわね?」

「…パーティーに行きたいのでーす」

「?行けばいいじゃない」

シャーロットは不思議そうに言い返したが、ガブリエルがすねたように事情を説明してくれた。

フラーは夜遅くにあるクリスマス・ダンスパーティーにガブリエルが行くことを反対したらしい。帰りは遅くなるし、まだ幼い妹に悪い虫がつくことを恐れ、ダンスするのは姉として許せないようだ。

「それはフラーの気持ちも分かるわね。ホグワーツの生徒も下級生が行くことは許されていないし…」

もっとも、上級生が誘えば参加するのは可能ではあるが。ガブリエルはパーティーに参加したくてたまらないようだった。そんなガブリエルを見て、シャーロットはピンとひらめいた。

「ガブリエル、じゃあ、私と行きましょうか?」

「ええ?」

「性転換薬を持ってるの。それで少しの間だけだけど、男性になれるわ。パーティーには長い時間はいられないけど、ダンスの一曲ぐらいは踊れるはずよ。私は女だし、それならフラーも許してくれるんじゃないかしら?」

ガブリエルの表情が明るくなった。フラーを探して、事情を説明する。フラーは最初は渋い顔をしていたが、ダンスするのは一曲のみ、最後は必ず馬車までシャーロットが送り届ける事を条件にようやく許してくれた。

それからはシャーロットは忙しくなった。まずは2年生になる前の夏休みに作成した性転換薬の調整。なかなかの出来映えで、3時間ほどは男性の姿を保てるようになった。男性になったシャーロットを見て、ガブリエルは目を輝かせ、フラーも満足そうに頷いた。また、男性用のドレスローブはないため、ロンに新しいドレスローブをプレゼントする事を約束し、代わりに例のフリルだらけのローブを手に入れた。シャーロットもドン引きするほどセンスが悪いため、アンバーに事情を説明する手紙を送り、センスよくアレンジしてもらった。ガブリエルとは上手く踊れるように何度もダンスの練習をする。ガブリエルは8歳で幼いが、身長はこの年にしては高い方だったため、何とか様になりそうだった。

クリスマスの当日も忙しくなった。アンバーから送られてきたドレスローブの最終チェックをする。さすがはアンバーだ。フリルは全て取り払われ、黴っぽかったローブは上品な栗色のドレスローブへと変貌していた。

夕方になると、フラーに合格がもらえるまで何度も髪型や服装を整える。ようやくオーケーをもらえて、準備をするフラーやガブリエルの横でシャーロットは性転換薬を口にした。

シャーロットは鏡で男になった自分を見つめる。フラーとガブリエルによって整えられた髪や服装は自分でいうのもなんだが、なかなかハンサムだ。

「今日はよろしくお願いしまーす」

準備ができたらしいガブリエルがシャーロットに微笑む。シャーロットも笑い返して、ガブリエルの手を引いてパーティー会場へ乗り込んだ。

 

 

 

 

「やあ、ロン」

シャーロットの目の前ではロンが呆然として口を開いている。ロンにもそれが誰なのかはっきり分かった。

「シ、シャーロット!君…君…」

「なかなかいいだろう?」

シャーロットはわざと男性言葉を使う。シャーロット特製性転換薬の効能は抜群で、声も低くなっていた。ロンの横にいるパドマがぼうっとシャーロットに見とれる。パドマだけではない。会場にいる女の子達はうっとりとシャーロットを見つめる。逆に男の子達はシャーロットを知っている生徒は呆然とし、知らない生徒達はあれは誰だと首をかしげていた。

代表選手の席を見るとハリーとハーマイオニーがやはり呆然とこちらを見ていた。近くにいたダンブルドアまでもがポカンとしていたため、シャーロットはおかしくて仕方なかった。

こうして波乱だらけのクリスマス・ダンスパーティーが幕を開けた。

 

 

 

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