あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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特ダネと金の卵

その夜はみんなと同じようにシャーロットも疲れからぐっすり眠り込んだ。クリスマスの翌日は全員寝坊した。

ハリーとロンは例のハグリッドの秘密を聞かせてくれた。

「ああ、そういうことね」

「まあ、そうだろうと思っていたわ」

ハーマイオニーはそれほどショックな様子は見られなかった。シャーロットももちろんすでに知っていたので、軽く驚いているふりをするだけに留めた。

「全部が全部恐ろしいわけではないのに…狼人間に対する偏見と同じことね…単なる思い込みだわ」

ハーマイオニーの言葉にロンが何かを言いたそうにしたが、結局言葉を飲み込んだ。

クリスマス休暇の残りの日々をシャーロットは、ハリーとロンの宿題を手伝いながらのんびり過ごした。自分の宿題はとっくの昔に終わらせてある。

シャーロットがクリスマスパーティーに男になって参加したことはある種の影響をもたらした。廊下を歩いていると、女の子達がクスクス笑いながらシャーロットを眺めて、目が合うとキャーッと叫ばれる。シャーロットはクラムの気持ちがちょっとだけ理解できた。ラベンダーに至っては、かなり大真面目に「また男になってくれない?」と持ちかけてきた。

「しょうがないわよ、私も惚れ惚れしちゃったもの」

ハーマイオニーも小さく笑いながらシャーロットに言ってきた。

「そんなによかった?」

「ええ。今のあなたも素敵だけど、男のあなたもカッコよかったわ」

ハーマイオニーが残念そうに首を振った。

「だけど残念だわ」

「何が?」

「私もあなたとダンスしたかったの」

「あはは。クラムに私が恨まれるよ」

シャーロットは思わず笑った。

その姿をジニーがじっと見つめる。シャーロットと目が合うと慌てて寝室へ引っ込んでいった。

「ジニー、どうしたんだろう?」

「あなたがハリーと踊ったからよ」

ハーマイオニーの言葉にシャーロットは首をかしげていた。

「それが?」

「あなた達のあの最後のワルツときたら!完全に二人だけの世界だったじゃない。二人ともお互いに見つめ合って、知らない人が見たら恋人にしか見えなかったわよ!」

シャーロットは目を見開いた。

「私とハリーはそんなんじゃないよ!」

「分かってるわよ。でも、ジニーとしては複雑なんだと思うわ。しばらくしたら落ち着くから大丈夫よ」

シャーロットは失敗だったかな、と今更ながら気づいた。終わったことは仕方ない。ジニーと喧嘩したくはなかった。ほとぼりが冷めるまでは何も言わずに、いざとなったらウィーズリー兄弟にフォローを頼もうと思った。

 

 

 

 

ところで、ハリーは金の卵の謎をまだ解いていなかった。シャーロットはその謎を解いたら、鰓昆布の事を教えるつもりだった。

「ハリー、早く卵の謎を解かなきゃ」

「まだ早いよ」

ハリーはそう言いながらも不安そうな表情をした。

「早くないわ。何の手掛かりもないの?」

「あ、あのさ、セドリックが何か教えてくれたんだ」

ハリーは渋い顔をしながらパーティーの夜にセドリックからの助言をもらったことを話した。シャーロットはホッとした。

「よかった。それじゃあ、早くお風呂に行けばいいわ」

「……」

ハリーは顔をしかめた。セドリックへの嫉妬からか、素直に助言を聞くのが自分の中で許せないらしい。シャーロットはため息を吐いてそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

新学期の一日目、シャーロットは日刊予言者新聞を早めに取り寄せた。やはりリータ・スキーターはハグリッドの秘密と中傷記事を載せていた。朝食の席で睨むようにそれを読む。

「おはよう、シャーロット。なんでそんなに怒った顔をしてるんだい?」

ハリー、ロン、ハーマイオニーも朝食の席にやって来たので、シャーロットは黙って新聞を三人に押しやった。

 

『ダンブルドアの「巨大な」過ち』

 

三人がそっくり同じ反応をした。

「なんだよ、これ!」

「これ、ハグリッドがあのスキーターっていう女に話したの!?」

「『僕たちはみんな、ハグリッドをとても嫌っています』って、どういうつもりだ!」

三人が怒りのあまりに震えていた。シャーロットもあまりにもひどい記事に怒りをうまく押し殺せない。ハグリッドの秘密はいつかバレると分かっていた。あえて記事が出るのは止めなかったが、実際に読んでみると、そのデタラメっぷりに吐き気がした。

「ハグリッドのところに行こう!」

「もう最初の授業が始まるわ。その次の授業で会えるからその時に話しましょう」

ハーマイオニーの言葉にハリーとロンは悔しそうに歯噛みしていた。シャーロットも黙って頷いたが、その日の授業ではハグリッドに会えないだろうなと思っていた。

予想通り、「魔法生物飼育学」はハグリッドの代わりにグラブリー・プランク先生が教えた。スリザリン生のニヤニヤ笑いをシャーロットが睨む。大きな美しい一角獣の授業にハーマイオニーはウズウズしていたが、シャーロットは遠いところでグラブリー・プランク先生の話を聞くだけに留めた。

授業の後、グリフィンドールのテーブルで四人で話し合った。

「あのスキーターっていうイヤな女、なんで分かったのかしら?ハグリッドがあの女に話したと思う?」

「思わない。僕たちにだって一度も話さなかったろ?さんざん僕の悪口を聞きたかったのにハグリッドが言わなかったから、腹を立てて、ハグリッドに仕返しをするつもりで嗅ぎ回っていたんだよ」

「パーティーでハグリッドがマダム・マクシームに話しているのを聞いたんだわ」

シャーロットが静かに言ったが、ロンが欠かさず反論した。

「それだったら僕たちがスキーターを見てるはずだ!」

「とにかく、スキーターはもう学校に入れないことになってるはずだ。ハグリッドが言ってた。ダンブルドアが禁止したって…」

四人で話し合ったあと、ハグリッドの元を訪ねる事にした。しかし、小屋を何度もノックしたが、結局ハグリッドは姿を見せなかった。

 

 

 

その後のホグズミードではハグリッドにバッタリ会わないかと目を凝らしたが、やはり来ていなかった。四人で「三本の箒」に向かう。パブは相変わらず混み合っていた。バタービールを注文したあとに、バグマンと出くわし、ハリーと何かを二人きりで話し合っていた。シャーロットはじっとそれを見つめた。全ての話が終わったあと、バグマンはパブを出ていき、ハリーが戻ってきた。ハリーがバグマンが助けを申し出てきたことを話し、ロンとハーマイオニーは驚いていた。そんな時、リータ・スキーターがパブに入ってきて、ロンが声を上げ、シャーロットはギクリと肩を揺らした。

「また、誰かを破滅させるつもりか?」

ハリーがスキーターに挑戦するような大声を上げた。スキーターは少し戸惑ったようだが、懲りずにハリーにインタビューをしようとする。

「ハリー、君の知っているハグリッドについてインタビューさせてくれない?『筋肉隆々に隠された顔』ってのはどうざんす?君の意外な友情とその裏の事情についてざんすけど、君はハグリッドが父親代わりだと思う?」

「あーら、なんて素敵な記事ざんす!」

シャーロットが小声で吐き出すように皮肉を言って、スキーターを睨み付けた。ハーマイオニーが我慢できず立ち上がった。

「あなたって最低の女よ」

歯を食いしばって鋭い目で見つめた。

「記事のためなら、なんにも気にしないのね。誰がどうなろうと。たとえルード・バグマンだって――」

「お座りよ。バカな小娘のくせして。分かりもしないくせに、分かったような口を利くんじゃない。ルード・バグマンについちゃ、あたしゃね、あんたの髪が縮み上がるような事をつかんでいるんだ。…尤ももう縮み上がっているようざんすけど…」

スキーターがハーマイオニーの髪をチラリと見ながら、冷たくそう言った。四人は立ち上がり、パブから出ていった。スキーターは満足そうにしていたが、四人が出ていくのを見送ったとき、不可解なものを見た。

シャーロット・ダンブルドアがリータ・スキーターをじっと見つめていた。その顔は驚いたことにニコニコと笑っていた。しかし、その笑顔はまるで勝利を確信しているかのような、不思議と恐ろしい笑顔であり、スキーターは思わず身震いをした。

 

 

 

ハーマイオニーは猛烈に怒っていた。恐らくこんなにも怒りを表に出したのは初めてだ。そのままの勢いでハグリッドの小屋へ向かう。玄関のドアを何度も激しくノックすると、ようやくドアが開いた。ハーマイオニーの表情が固まる。そこに立っていたのはハグリッドではなく、ダンブルドアだった。ダンブルドアは微笑みながら四人を招き入れた。

その後は泣きじゃくるハグリッドをみんなで元気付けた。ダンブルドアはハグリッドに辞表は受け取らない、とキッパリ告げ、帰っていった。シャーロットは大粒の涙をこぼすハグリッドを見ながら、スキーターへの復讐を心の中で誓った。

 

 

 

木曜日の夜、ハリーはようやく風呂にて金の卵の謎を掴んだらしい。

「どうやって一時間も水の中で過ごせばいいんだ?酸素なしでだよ!」

ハリーが頭を抱えた。ロンがまた「呼び寄せ呪文」を使って道具を取り寄せればと提案し、ハーマイオニーに却下される。

「もちろん、理想的な答えはあなたが潜水艦か何かに変身することでしょうけど」

ハーマイオニーが今度はシャーロットに向き直った。

「シャーロット、何かいい呪文は知らない?」

「一番有効なのは泡頭呪文ね。頭を空気の泡ですっぽりと覆うの」

すぐに答えが帰ってきたことで、ハリーとロンの顔が輝いた。

「じゃあ、それだ!今すぐ練習しよう!」

「待って。私がハリーならそれを使わないわね」

シャーロットがそう言うと、三人が不思議そうに首を捻った。

 

 

 

「うわ、なんだい、ここ」

「私の個人的な研究室よ」

シャーロットがスーツケースの中の部屋へ招き入れると、三人はまじまじと部屋を眺め回した。たくさんの本、わけの分からない薬の瓶や植物、道具が転がっている。

「スーツケースの中がこんなことになってるなんて…」

「シャーロット、この本、今度貸してちょうだい」

ハーマイオニーが興味深そうに眺めているのをよそに、シャーロットは植物の山から目的のものを探しだした。

「さあ、ハリー。これを使って」

「ゲッ!なにこれ!」

ロンが大声を上げた。シャーロットが取り出したのはヌメヌメの汚い団子だった。

「鰓昆布!これを食べると一時間、首の後ろに鰓が生えるわ。手足にも水掻きができるの。これなら水中で格段に動きやすくなる」

「うえー、これ、食べるの?」

ハリーが顔をしかめたが、シャーロットは無理やり鰓昆布を手に持たせた。

「うえー、じゃない!やるの!あなたの命がかかってるんだから!」

ハリーは気が進まないようでげんなりしており、ロンとハーマイオニーは顔を見合わせた。

 

 

 

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