あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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第二の課題

第二の課題の前夜、四人にフレッドとジョージが声をかけてきた。

「よう、ハリー!」

「明日は期待してるぜ!」

ハリーが引きつった笑いを浮かべた。

「二人ともどうしたんだ?」

「マクゴナガルが呼んでるぞ。シャーロット、ハーマイオニーの二人だ」

「どうして?」

ハーマイオニーが驚いて声を上げた。シャーロットも首をかしげた。

「知らん。少し深刻な顔をしてたけど」

シャーロットとハーマイオニーは目を合わせ、フレッドとジョージに促されてマクゴナガルの部屋へ向かった。

 

 

 

 

マクゴナガルの部屋へ通されると、ダンブルドアが待っていた。そして、部屋にはチョウ・チャンとガブリエルも不思議そうな顔で座っていた。シャーロットはイヤな予感がして顔をしかめたが、ガブリエルはシャーロットの顔を見ると、パッと顔を輝かせた。案内してくれた双子は事情を聞きたそうにしていが、マクゴナガルに早々に追い出された。

双子が出ていったのを確認して、ダンブルドアが口を開いた。

「すまんのう。急に呼び出して。第二の課題について、君達にぜひ協力して欲しいことがあるのじゃ」

第二の課題は湖で行われ、そこで選手たちは水中人に捕らわれた大切なものを取り返しに行かねばならない。その大切なものに、四人は選ばれたのだった。クラムはハーマイオニーを、フラーはガブリエルを、セドリックはチョウを、ハリーはシャーロットを取り返さなければならない。ダンブルドアは人質が全員安全であること、水から上がってきたときに目覚めるのだということを保証した。ハーマイオニー、チョウ、ガブリエルは不安そうな顔をしていたが話を最後まで聞くと、ダンブルドアが保証するなら大丈夫だろうと安心してコクリと頷いた。

「質問!質問!」

シャーロットは勢いよく手を上げた。

「シャーロット、なんじゃ?」

「課題の件についてはよく分かりました。でも、ハリーの大切なものならロンでもいいのでは?」

ダンブルドアがにこやかに笑った。

「ふむ。わしも最初はミスター・ウィーズリーにしようと思っていたんじゃがの。シャーロット、お主がハリーと仲良くダンスをしているのを見て、大切なものはお主がふさわしいと思ったんじゃ」

邪気のない顔でダンブルドアはひょうひょうと言い放つが、シャーロットは顔を引きつらせてダンブルドアを見やった。

仕方なくシャーロットは了承した。しかし、少し考えた後、ダンブルドアに部屋から取ってきたい物があることを告げた。シャーロットが部屋から持ってきたのは何の変哲もないガラスの瓶だ。ダンブルドアは不思議そうな顔をしていたが、何の魔法もかかっていないことを確認すると、持っていることを許してくれた。その後に四人はダンブルドアによって眠りの魔法をかけられた。

 

 

 

パチリ、と目を開けると水が口に入ってきて、シャーロットは噎せ、咳き込んだ。ハリーが水中からシャーロットを引き上げたところだった。シャーロットは水の上から顔を出し、明るい日差しを見上げる。ハリーはガブリエルも支えて引き上げたところだった。ガブリエルは混乱して怖がっていたが、シャーロットは急いでハリーとともにガブリエルの体を支えた。ハリーはゼイゼイ呼吸をしている。

「ハリー、うまくいったのね!でも、なんでガブリエルも一緒なの?」

「フラーが現れなかったんだ。僕、この子を残しておけなかった」

分かっていたことだが、ハリーの優しさがシャーロットの胸を打つ。ガブリエルを引っ張りながら、シャーロットは静かに話した。

「ハリー、助けてくれてありがとう。でもね、ダンブルドアは私達を本当に溺れさせるつもりはなかったのよ」

「だけど、歌が――」

「制限時間までに戻れるように歌っただけ。私達はダンブルドアに絶対の安全を保証されたわ。」

ハリーの顔が真っ青になり、沈んだ表情をした。シャーロットは苦笑いしながらガブリエルを岸まで引っ張っていった。マダム・ポンフリーがせかせかと他の代表選手や人質の世話をしており、予想通りハリーが最後だということが分かった。

「ガブリエル!あの子は生きているの?」

フラーの叫び声が聞こえた。シャーロットはマダム・ポンフリーに他の人質がいるところに引っ張られる。毛布にくるまれたが、すぐに袖に隠していたガラス瓶を取り出した。

「シャーロット!あなた、大丈夫?」

「うん…、うん…」

ハーマイオニーの問いにろくな返事を返さず、その周辺に目を凝らす。そして、目的の姿を捉えた。

「ハーマイオニー、虫が付いてるわ」

何でもないことのように言って、素早くハーマイオニーの髪に付いていたコガネムシを手でつまむ。風のような速さでガラス瓶に突っ込んだ。シャーロットはコガネムシを見て、満足そうに頷いた。予想通り、触覚の周りの模様がメガネのようなコガネムシだった。コガネムシは人が多くいるスタンドで元に戻るわけにはいかず、慌てたようにブンブンとガラス瓶の中で飛び回っていた。

「ハリー、あなた、制限時間をずいぶんオーバーしたのよ…」

ハーマイオニーがハリーに話しかける。その横でクラムがハーマイオニーの関心を取り戻そうと必死になっていた。水際ではダンブルドアが水中人と何かをマーミッシュ語で話し込んでいた。そのまま審査員は協議に入る。ハリーとシャーロットの元へ傷だらけのフラーがやって来た。

「あなた、妹を助けました。あなたのいとじちではなかったのに」

フラーが声を詰まらせた。そのままハリーとシャーロットの両頬にキスをしてきた。ハリーが顔を真っ赤にする。シャーロットは大人しくキスを受けて、本来キスされるはずだったロンに悪いなーとちょっと罪悪感を感じた。

そして、バグマンから審査の結果が発表された。ハリーは制限時間をだいぶオーバーしたが、人質を全員助け出そうとした道徳的な行為から四十五点をもらい、顔が一気に明るくなった。セドリックと同点で一位だ。シャーロットも大きく拍手を送った。

「第三の課題、最終課題は六月二十四日の夕暮れ時に行われます」

バグマンの声が響く。こうしてようやく第二の課題は幕を下ろした。

 

 

 

 

「うふふふふふふ」

グリフィンドールの談話室。シャーロットは目の前のコガネムシを残忍な笑顔で見つめた。すでにガラスの瓶には割れない魔法をかけてある。コガネムシは怒ったようにガラスにぶつかってきた。

「シャーロット…、何してるの?」

ハーマイオニーとロンが不審そうにシャーロットを見てきた。ハリーも疲れからかグッタリとソファに座り、こちらに目を向けてくる。

「私の新しいペットよ。うふふ」

シャーロットはそう言いながら、鞄からいろいろ何かを取り出した。

「じゃーん!」

「…なにそれ」

「殺虫剤!前にマグルの店で買ってきたの!これをかけると一発でコロリらしいわ」

わざとコガネムシに聞こえるように声を張り上げる。そのまま優しい笑顔で、ガラス瓶の右隣に置いた。コガネムシは慌てたように瓶のなかをブンブンと飛び回った。

「ああ、そうそう。こっちもどうぞ」

シャーロットが肉食植物を今度は左隣に置く。

「私の手が滑って、これを瓶に入れちゃうかもね」

シャーロットが手に顎を乗せながら、のんびりとコガネムシを観察する姿を見て、ハリー、ロン、ハーマイオニーはわけが分からず顔を見合わせた。シャーロットはそんな事に構わず、ブンブンと飛び回るコガネムシをニコニコといつまでも眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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