その後、シャーロットは寮へと戻りじっと考え込んだ。自分が闇の帝王になるなんて、想像できない。この世界に生まれて14年。ずっとヴォルデモートを倒すハリーの助けをしてきた。その助けは全て無駄だったのだろうか。いつか、自分はヴォルデモートのように闇へと堕ちていき、ハリー達と敵対することになるのだろうか。
「……ありえないわ」
ボソリと呟いた。そうだ。ありえない。自分はヴォルデモートのように闇に魅せられてはいない。
それでもシャーロットは目を背けていたことから、それを直視せざるを得なかった。自分とヴォルデモートはあまりにも似ている。両親がいなくて、孤児院出身。小さい頃から強い魔力を持ち、それ故にダンブルドアに警戒されている。痛いほどにそれが分かっていた。自分が、やがて闇の帝王になる?
「………」
シャーロットは考えが纏まらず、ベッドへ寝転がり目を閉じる。何も考えたくなかった。
数日後、「占い学」の授業中、ハリーの額の傷が痛み奇妙な夢を見た。そして、それを知らせにいったダンブルドアの部屋で憂いの篩を見てしまったらしい。たくさんの事が一気に起こったため、ロンやハーマイオニーも考えることが多過ぎてクラクラしていた。シャーロットもじっと考え込む。とにかく、ハリーを優勝させることに全力を注ごう。
「プロテゴ!」
「ハリー、杖の振り方が違うわ!もっと大きく!」
シャーロットは試験勉強の傍ら、しっかりとハリーの指導をした。これはシャーロットにとっても有り難かった。試験勉強とハリーへの指導でダンブルドアの言ったことを考えずに済んだ。現実逃避にしかならないことは分かっていたが、今は深く考えたくなかった。
「シャーロット、今日はもうやめない?」
ハーマイオニーが疲れきったようにそう言った。
「あなた達は先に帰って。私はもう少しハリーに付き合うから。このリストの呪文は出来るようになってもらうわ」
シャーロットは、自ら作った呪文のリストを見ながらそう言った。ハリーは疲れたようで教室の端で休んでいる。ロンとハーマイオニーは呆れたようにしながらも、寮へ戻っていった。二人も試験勉強があるのだ。そろそろ自分の心配をしなければいけない時期だろう。
「シャーロット、大丈夫かい?」
「何が?」
「いや、最近、なんだかカリカリしてる気がしてさ。僕のことなら気にしないでいいよ。シャーロットも戻った方がいい。試験だって近いんだし」
ハリーが心配そうに言うが、シャーロットは軽く首を振り、ハリーの肩を叩いた。
「ごめんね。ちょっとお爺様と喧嘩してイライラしてたのよ。試験なんてどうでもいいわ。私はあなたの手助けをしたいのよ」
「…大丈夫?」
「ええ。さあ、始めましょう」
シャーロットがリストを持ち、ハリーは再び杖を構えた。
シャーロットは競技場へ来た。じっと迷路を見つめる。やがて杖を持ち、行動を起こした。
シャーロットは自分の仕事を済ませると、寮へ戻った。寮ではハーマイオニーとロンが勉強しており、ハリーは課題で使えそうな新しい呪文を探している。
「あ、シャーロット。どこ行ってたの?」
「ちょっと試験の事で先生に質問してたの」
適当な事を言って誤魔化し、自分もロンの横で教科書を広げた。
「そういえば、なんか変じゃない?」
「ハーマイオニー、何が?」
「いえね、スキーターの事だけど、第二の課題の後くらいから全く記事を書いてないじゃない?」
「いい事じゃないか!」
「私、新聞をチェックしてるんだけど、彼女、本当に何も書いてないの。もしかして、何か企んでるんじゃないかしら?私、ホグズミードでかなり罵倒したし…」
シャーロットは爆笑した。お腹を抱えてひたすら笑う。こんなに笑ったのは久しぶりだった。他の三人が不思議そうに見てきた。
「あのね、スキーターはしばらく姿を見せないわ。それどころか私たちに近づこうとも思わないし、記事も書けないはずよ」
「え?シャーロット、どういう事!?」
「ほら、ハグリッドの記事が出たとき、なんでそれが分かったかってみんなで疑問に思ったでしょう?ハグリッドはそれを話していないのに。あの女はね、やっぱりハグリッドとマダム・マクシームの話を影で聞いてたの」
「でも、あの時は…」
「スキーターはいなかった、でしょう?違うのよ、ハリー、ロン。スキーターはね、あの場にいたの。あなた達が気づかなかっただけ」
ハリーとロンが顔を見合わせる。シャーロットは他の生徒に聞こえないように声を潜めた。
「スキーターはね、動物もどきなの。無登録のね」
三人がポカンと口を開けた。シャーロットがそれに構わず話を続ける。
「スキーターが変身するのはコガネムシよ。私、第二の課題の時、ハーマイオニーの髪にくっついているのを捕まえたの。模様があの女のメガネにそっくりだったから、すぐに分かったわ」
「あ、そう言えば、パーティーのあの時、石像にコガネムシが止まってた!」
「それがスキーターよ。安心して。ハグリッドに代わってたっぷり復讐したから。それに散々脅したから、もう中傷記事は書かないわよ」
シャーロットはニッコリ笑う。三人はホッとしながらも、その微笑みが恐くて苦笑いした。
とうとう第三の課題、当日となった。ハリーはマクゴナガルから呼ばれて、大広間の脇の小部屋に向かう。きっとウィーズリー家が来ているはずだ。シャーロットは不安そうに部屋へ行くハリーを見送り、試験が行われる教室へ足早に向かった。
試験ではハリーや今夜の帝王復活の事が頭をよぎりながらも、いつも通り全力を出した。手応えももちろん、ある。昼食に下りていくと、テーブルにはウィーズリー家の人々と、驚いたことにシリウスまでいた。
「シリウス、来てたのね!」
「ああ、久しぶりだな、シャーロット」
シリウスはハリーに会えて嬉しいのか機嫌よく挨拶した。みんなで賑やかに昼食をとる。まるで隠れ穴にいるときのように騒がしいが、楽しい。そんな中、別のテーブルにいるフラーがビルをチラチラ見ているのに気づき、シャーロットはビルを引っ張っていった。
「え?シャーロット、どこ行くんだい?」
戸惑うビルに構わず、フラーに声をかけた。
「フラー、ちょっといい?彼、ビルっていうの。私の友達のお兄ちゃんで、エジプトの銀行で働いているのよ」
「え?あ、あー、そうでーすか」
「ビル、こちらはフラー・デラクール。ボーバトンの代表選手よ」
「へ?あ、ああ、はじめまして。ビル・ウィーズリーです」
ビルは戸惑いながらもフラーに挨拶をした。フラーはちょっとはにかみながら挨拶を返す。そのまま二人は穏やかに話をはじめ、シャーロットは二人がこのまま付き合ってくれればいいな、とぼんやりそう思った。