あの子はこの世界が嫌い   作:春川レイ

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仕組まれていたこと

シャーロットはひっそりとホグワーツの競技場へ戻ってきた。競技場は多くの生徒達が不安そうにザワザワしている。シャーロットはそんな様子に構わず、まっすぐにムーディの部屋へ向かった。

 

 

 

ムーディの部屋に行くと、ダンブルドア、スネイプ、マクゴナガルが部屋の前に立っていた。三人は何かを言いたそうにシャーロットを見てきたが、それに構わず、シャーロットは耳をドアに近づけた。

「狂っている!おまえは狂っている!」

ハリーの叫びが聞こえて、シャーロットは杖を取り出した。

「今にわかる!闇の帝王がお戻りになり、俺があの方のお側にいる今、どっちが狂っているか分かるようになる。あのお方が戻られた。ハリー・ポッター、おまえはあのお方を征服してはいない。そして、今、俺がお前を征服する!」

その言葉が聞こえた瞬間、シャーロットが杖を振るった。シャーロットだけではなく、ダンブルドア、スネイプ、マクゴナガルも一斉に杖を振った。

「ステューピファイ!」

ドアがメキメキと破壊され、ダンブルドアの声が響く。ドアに背を向けていたハリーが振り向き、ムーディは吹き飛ばされた。

ハリーは呆然としたようにダンブルドアを見てきた。ダンブルドアは険しい顔で倒れたムーディを見下ろす。シャーロットは部屋の中に足を踏み入れ、七つの錠前がついたトランクの前に立った。

「ミス・ダンブルドア、何を…?」

マクゴナガルが声をかけてきたが、返事もせずシャーロットは次々に鍵を錠前に差し込んで開けていった。トランクからは次々と本やら羊皮紙、羽根ペンなどの道具が現れる。鍵を開く度に中身は違っていた。最後に七番目の鍵を差し込むと、蓋がパッと開いた。

中は地下室に続いていた。痩せ衰えて気を失っている男の姿が見える。白髪混じりの髪の一部がなくなっていた。

「お爺様、本物のミスター・ムーディです」

シャーロットが男を見下ろしながら、静かにそう言うと、ダンブルドア以外の三人はポカンと地下を見下ろしてきた。ダンブルドアはトランクの中に降りていき、ムーディの傍らに着地した。

「失神術じゃ――服従の呪文で従わされておるな」

ダンブルドアはムーディをじっくり観察しながらそう言った。

「シャーロット、そのぺてん師のマントを投げてよこしておくれ。ムーディは凍えておる。」

シャーロットは言われた通りにマントを地下へ投げた。ダンブルドアはムーディにマントをかけ、端を折り込んでくるみ、トランクから出てきた。シャーロットは一歩前に進み出た。

「お爺様、私が彼を医務室へ連れて行きましょう」

ダンブルドアは意外そうにシャーロットを見てきた。

「シャーロット?ここにおらんでいいのかの?」

「ええ。ここからはお爺様の役目です」

シャーロットはチラリと偽物ムーディに目をやったあと、トランクを持って部屋から出ていった。

 

 

医務室に向かうと、ウィーズリー夫人、ビル、ロン、ハーマイオニーがマダム・ポンフリーを取り囲んでいた。みんながハリーに何が起こったのか、そして、ハリーは今どうしているのか知りたがっている。

「マダム、これをちょっと見てください」

「シャーロット!あなた、どこに行ってたのよ!?」

「一体何が起こっているんだ!?」

「ダンブルドア先生は?ハリーはどうしたの?」

シャーロットがマダム・ポンフリーに声をかけた瞬間、みんながシャーロットにそれぞれ叫ぶように言ってきた。

「ちょっと待ってて」

シャーロットはそれに構わず医務室のカーテンをかけると、見られないようにしながらトランクを開けた。マダム・ポンフリーは驚いたように目を見開きながらもムーディをシャーロットと一緒に運びだし、ベッドに寝かせると次々に薬やらタオルやらを持ってきた

シャーロットはスルリとカーテンを抜けて他のみんなの元へ向かった。

「シャーロット、本当に一体どうなってるの?」

「そこのベッドに誰が寝てるんだい?」

「ハリーは?ハリーはどうしたの?」

シャーロットはそれの質問には答えずに、辺りを見渡した。

「シリウスは?」

「ダンブルドア先生の部屋へ向かったよ」

シャーロットの質問にビルが答えてくれた。シャーロットは頷くと、そこにあった椅子に座った。

「シャーロット?」

「待ちましょう。ハリーは今夜、大変な目にあったのよ。でも、ハリーは生き延びた。私たちはハリーとダンブルドアが来るまで待ちましょう。心配しなくても、もうすぐ来るわ」

何かを知っているようなシャーロットに、四人は次々と質問をしてきたがシャーロットはそれ以上何も言わずに静かに窓から外を見ていた。

しばらくしてから、ダンブルドアとシリウスに連れられてハリーは医務室に来た。

「ハリー!ああ、ハリー!」

ウィーズリー夫人がハリーに駆け寄ろうとしたが、ダンブルドアがそれを制した。

「今、ハリーに必要なのは、安らかに、静かに、眠ることじゃ。もし、ハリーが、みんなにここにいてほしければ」

ダンブルドアがその場の全員を見回す。

「そうしてよろしい。しかし、ハリーが答えられる状態になるまでは質問をしてはならぬぞ」

ウィーズリー夫人が真っ青な顔で頷いた。

それから、ハリーはベッドに連れていかれ、パジャマを着せられた。ハリーは疲れたように顔色を悪くしていたが、ベッドに横になる前にシャーロットに声をかけてきた。

「シャーロット、課題の時どこにいたの?」

「え、なんで?」

「迷路の中で、一瞬だけどシャーロットが見えた気がしたんだ。後ろ姿が…」

シャーロットはギクリとしたが、それを顔に出さないように笑った。

「そんなわけないでしょう。私、ちょっと気分が悪くて寮にいたの。私が迷路の中にいるわけないじゃない」

シャーロットがそう言うと、ハリーは特に怪しむ様子もなく納得したように薬を飲んだ。シャーロットはその様子を見ながらヒヤヒヤした。迷路の中でムーディに見つかる危険があるため、なるべくハチドリの姿になり、ハリーには近づかないように注意していたのに、ツメが甘かったらしい。気を付けなければ。

 

 

 

その後はシャーロットの知っている通りに流れた。

魔法省大臣コーネリウス・ファッジが訪れた。ファッジに付き添っていた吸魂鬼はクラウチ・ジュニアの魂を吸い取った。ファッジは決してヴォルデモートの復活を信じず、ハリーに優勝賞金を与えてすぐに去ってしまった。シャーロットは誰にも分からないようにファッジを軽蔑した目で見ていた。親切で優しい魔法大臣を装っているだけで、実態はただの臆病者で小物だ。ダンブルドアは彼と決別し、かつての仲間に連絡をとるようにシリウスに指示をし、スネイプに任務を与えた。

シャーロットはその様子を口を挟まずじっと見ていた。ここからはシャーロットの仕事はない。全てがダンブルドアの手の内で進むだろう。シャーロットはウィーズリー夫人に抱き締められ、再び眠りにつくハリーの姿をただ、見守っていた。

 

 

 

 

 

 

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