翌日の朝、ダンブルドアは朝食の席でハリーをそっとしておくように、質問や話をせがんだりしないようみんなに話した。2日ほど経ってから、ハリーはグリフィンドールに戻ってきた。ほとんどの生徒はハリーを見ると、避けたり、ヒソヒソと話をしていたが、ハリーは気にしていないようだった。四人で静かに残りの学校生活を過ごし、ヴォルデモートの話題には触れないようにした。
ある日の午後、ハグリッドの小屋を訪ねると、ハグリッドはニッコリ笑って歓迎してくれた。どうやら、四人が来る前にマダム・マクシームとお茶を飲んでいたらしくご機嫌な様子だ。
「やつが戻ってくると、分かっとった」
ハグリッドの言葉に四人は驚いてハグリッドを見上げた。ハグリッドは真剣な様子で言葉を紡いだ。
「戦うんだ。あいつが大きな力を持つ前に食い止められるかもしれん。とにかくダンブルドアの計画だ。偉大なお人だ、ダンブルドアは。俺たちにダンブルドアがいるかぎり、俺はあんまり心配してねぇ」
シャーロットは思わず目を伏せた。ハグリッドはその様子に気づかず、誇らしげに続けた。
「来るもんは来る。来たときに受けて立ちゃええ」
それから、四人は少しだけハグリッドと話したあと、小屋を出ていった。
「ハリー」
シャーロットはハリーに声をかけた。ハリーが振り向く。ロンとハーマイオニーはハリーの前で何かを言い争っていた。
「大丈夫よ、ハリー」
「うん?」
「ハグリッドの言うとおりだわ。あなたの前にはきっとこれからもたくさん辛いことが待ってる。その時に受けて立てばいいわ。どんなに辛いことが、苦しいことが待ち受けていても、私がハリーのそばにいる。もちろんロンも、ハーマイオニーもよ」
ハリーはシャーロットをじっと見つめてきた。
「私達だけじゃない。あなたのご両親だって、いつだってあなたのそばにいるの。目に見えないからってこの世に存在しないことにはならないわ。隣にいて見守っているのよ。ちゃんと、繋がっているの」
シャーロットはハリーの手にそっと触れ、力強く握った。
「ハリー、今年のあなた、すごくカッコ良かったわ。きっと、来年からも大丈夫よ。あなたの勇気があれば」
「…僕がうまくいったのはシャーロットのおかげだよ。君やロン、ハーマイオニーがいてくれるから僕は前に進めるんだ」
シャーロットはその言葉にきょとんとしたあと、ニッコリ笑った。ハリーも笑い返し、シャーロットの手を同じくらい力強く握った。
ふと誰かの視線を感じたような気がして、シャーロットはホグワーツ城を見上げたが、四人を見ている者は誰もいなかった。
「ハリー、シャーロット!夕食に遅れるわよ!」
「早く行こうぜ!」
ロンとハーマイオニーが呼んでいる。シャーロットとハリーは慌てて城の中へ入っていった。
学期末パーティーでの出来事は、シャーロットの予想通り、ダンブルドアがヴォルデモートの復活を生徒達に語った。そして、今後の戦いに向けての結束を促す。シャーロットはそんなダンブルドアの様子を黙って見つめていた。
「アリー、シャルロット!」
玄関ホールではフラーが声をかけてきた。
「まーた、会いましょーね」
フラーの横ではガブリエルがシャーロットに抱きついてきた。シャーロットも笑いながらぎゅっと抱き締め返した。
「シャルロット、手紙書いていいでーすか?」
「もちろん。楽しみにしてるわ」
「さようなら、あなたに会えておんとによかった!」
フラーとガブリエルは美しい髪をなびかせながら、マダム・マクシームのところへ戻っていった。
次に声をかけてきたのはクラムだった。どうやら、ハーマイオニーに別れを言いに来たらしい。クラムとハーマイオニーは何かを話すために人混みに紛れた。ロンは二人が何をしているのか気になって仕方ないようで、人混みの上に首を伸ばしていた。二人はすぐに戻ってきた。それからクラムは手を差し出して三人とも握手を交わした。
「君にはヴぉんとに感謝している」
シャーロットと握手した時、クラムがこっそり囁いてきた。
「あの時、ヴぉくをピクニックに誘ってくれてありがとう」
シャーロットはハーマイオニーをチラリと見てから苦笑いし、クラムとしっかり握手をした。
「夏休みはまた遊びに行ってもいい?」
「もちろんさ。いつでもおいでよ」
「手紙書くわね」
シャーロットは駅で四人に別れを告げた。
「バイバイ、ハリー、ロン、ハーマイオニー!いい夏休みを!」
三人も窓から大きく手を振る。シャーロットはホグワーツ特急が見えなくなるまでずっと駅に立っていた。
「それで、お爺様。なにかご用ですか?」
シャーロットがそう言って振り向くと、予想通り、そこには無表情のダンブルドアが立っていた。
「…シャーロット。どこに行くつもりかの?」
「どこって、家に帰りますよ?アンバーが待っていますし」
その言葉にダンブルドアはわずかに目を見開いた。
「もしかして、私が家を出ていくと思ってました?」
「………」
「どうせ、どこに行っても、あなたは私を見張るでしょう?」
「……シャーロット」
「お爺様、私はヴォルデモートのようにはなりませんよ」
シャーロットはキッパリとそう言った。
「私とトムは違う。一見似ているようでも、全っ然違います」
「……」
「闇になんて、惹かれない。全部まとめてゴミに捨ててやる。こんな世界、全部変えてやる。この世界はあなたの手のひらの上じゃない。私がこの世界をねじ曲げる。ハリーは、私が守る。あなたはそれをあなたの目でちゃんと、そばで見ていてください。私はあなたから逃げませんよ」
「……」
「だから、あなたも、あなたの役目を――きちんと果たしてくださいね?」
シャーロットは挑戦的にそう言うと、駅から足を踏み出した。