「日常回はプププランドらしいほのぼのした感じを強調してゆくのサ!」
出雲「ふむ、日常か……いいものだな」
「出雲!? 何故ここにいるノォ!?」
出雲「いや、せっかく建造したから出て欲しいと……」
「バランス崩れるからかえるのね!(本音・出番を食われたくない)」
「そうなのサ! 余計なお世話なのサ!(本音・出番を食われたくな(ry)」
「こっちはいい感じで回ってきたところなんだヨォ!(本音・出番を食(ry)」
出雲「いや、これは命令…」
「……(無言のマホロア版ドラゴストーム)」
出雲「え、ちょ、熱っ! あっつ! 炎は! 炎はダメだぁっあっつぅ!!」
───4/8 20:08 プププランド某所────
日が沈み、すっかり夜の帳が下りた頃。
夕飯も食べ終え、カービィは眠い目をこすりつつ砂浜を歩く。
夜釣りもいいが、今日は寝てしまおう。そう考え、カービィは海岸近くに移設した自らの家に向かう。
と、その時。ふとある人物と出会った。
アックスナイトとメイスナイトだ。えっちらおっちらと何かを運んでいる。
気になったカービィはその後ろをテコテコとついて行く。
二人が向かう先。そこはロングアイランドの部屋だった。
荷物にくくりつけられた紐を使って慎重にコンテナの上に引き上げ、コンテナ上部にある入り口を叩く。
カービィもコンテナの上にホバリングして乗り、荷物の上に着地する。
「あ、コラ! それは繊細な機械だから乗っちゃだめダス!」
「早く降りて降りて!」
「ぽよ?」
よくわからないが二人が慌て始めたので、カービィは素直に言われ通りに荷物から降りる。
すると、出入り口からひょっこりと顔をのぞかせるものがいた。
ここに寝泊まりするロングアイランドではなく、綾波であった。
「待ってた、です」
「それじゃあそっちに降ろしますよ」
「了解、です。受け止めるです」
綾波は中へ戻り、アックスナイトとメイスナイトは荷物を中へ紐を巧みに使って入れる。そして自らもコンテナの中へと入る。
中で何が行われるのか気になったカービィも、ひょいと中に入ってみる。
すると中にはさっき顔だけ覗かせた綾波とロングアイランドが歓喜の表情で運び込まれた荷物に群がっていた。
が、その格好はいつもと違う。
ロングアイランドが着ているのは白地に『退役至上』と書かれたTシャツ一枚。綾波が着ているのはやはり白地に『やや波』と書かれたTシャツ一枚。下は履いているのかは確認できず、際どい。目のやり場に困る格好である。
しかしそんな下心を持ってないどころか理解していないカービィは、なんだかいつもと格好が違うなぁ、程度にしか思っていないのだが。
アックスナイトやメイスナイトは下心を抱かないわけではないが、そもそも種族が違うので何とも思っていない。
ロングアイランドと綾波は異様に素早い手さばきで荷解きしてゆく。
現れたのはディスプレイ二つ。謎の箱が複数。謎のリモコン数種類が複数。謎のCD‐ROMのような何かが複数。
そしてそれをやはり凄まじい速度で組み立てて行く。
やがて完成したらしく、二人が歓喜の声を上げるが、カービィには何のこっちゃさっぱりわからない。
「ふふー! これでゲームができるのー!」
「ゲーム三昧、です」
どうやらこれがあの時欲しいと言っていた『ゲーム』らしい。
カービィがまじまじと見ていると、ようやく二人はカービィの存在に気がついたらしい。
「あれー? 指揮官? 来るって言ってたっけー?」
「ゲームやりに来た、ですか?」
「ういうい」
カービィは頭を横にプルプルと振る。
とはいえ、『ゲーム』が何なのか気になるといえば気になる。
興味深げな視線に気がついたのだろう。綾波が屈んでカービィを覗き込む。
その際胸元が際どいことになっているのだが、残念ながらそれはカービィの心を揺らす光景ではない。
「指揮官も一緒にやるですか?」
「うい!」
⚓︎☆⚓︎☆⚓︎
プププランドみたいに緑が広がる風景。
その風景の中、ただ一人たたずむ赤いおっさん。
ボタンを押すと『プーン』と跳ね、別のボタンを押すとテクテクと歩きだす。
よくわからないが、ボタンを押すと画面の中の赤いおっさんが動くのだ。
やがて、画面右端から歩くキノコみたいなものがやって来る。
すると画面の中のおっさんはウロウロし始め(実際には操作するカービィがあたふたしてボタンをめちゃくちゃに押しているだけである)、やがて歩くキノコに当たる。
すると何故だか物悲しい音楽とともにおっさんが落ちて行く。
「あららー、また失敗なのー」
「これでゲームオーバー……3回目です」
「カービィにゲームは向いてないダス」
「そもそも操作を理解してないんじゃ?」
この光景を何度も繰り返していて、カービィにはゲームの面白さがさっぱりわからない。
一度ロングアイランドがお手本を見せてくれたが、その通りにちっとも動かない。
カービィは『ゲームは自分には向かないらしい』と割り切り、リモコン(ロングアイランドや綾波はコントローラーと呼んでいた)をロングアイランドに返した。
受け取ったロングアイランドはちょっと残念そうな顔をしていた。
「うーん、指揮官も干物に染めようかなーなーんて思ってたけどー、無理かー」
「う?」
仕方ない、とばかりにロングアイランドは機械をいじり始める。
やがて、一つの画面が表示される。どうも大量のキャラクターが登場するゲームのようだ。
「ガンガン乱闘する、です」
「せっかくだからー、アックスナイトとメイスナイトもどうー?」
「え、私らですか?」
「あー、じゃあ少しだけやるダス」
次に二人が誘ったのは後ろで見ていたアックスナイトとメイスナイト。
二人にロングアイランドがリモコンを配り、その間に綾波が色々操作してゆく。
「綾波はこの指揮官に似たキャラクターを使うのです」
そしていつの間にか大量のキャラクターの顔が表示させる画面が写っており、綾波は一足先にキャラクターを選んでいた。
操作キャラクターだろうか?
「あっ、ずるいー! じゃあ私は大王に似たキャラでー。あ、メタナイトに似たキャラもあるよー?」
「あ、恐れ多いので……この青い髪の剣持ちで」
「じゃあ緑の帽子の剣持ちにするダス」
「決まったねー。フィールドはー?」
「ランダム、です。その方が面白い、です」
綾波が何かボタンを押す。
途端、野太い声が何か叫び、途端にキャラクターが動き始める。
「おわっ! 何ダス何ダス!?」
「なんか動きがもっさりしてるぞ!?」
「ふふふー、私達の方が慣れてるみたいだねー」
「『鬼神』の恐ろしさ、味わうのです」
何やら盛り上がっている中、カービィはそばに転がっていた顔つきのクッションを抱いて眠り始めた。
⚓︎☆⚓︎☆⚓︎
「アックスナイトのキャラ、一撃が重すぎ、です!」
「しかも全然吹っ飛ばないダス!」
「それを言ったらロングアイランドの陛下似のキャラも全然飛ばないだろう!」
「あのジャンプは反則、です」
「なんでよー、緑帽子の飛び道具も面倒じゃないー」
「チマチマ削るのはなんかずるい」
気づけば皆ゲームに熱中し、やんややんやと互いのキャラに難癖をつけていた。
難癖というよりかはそのキャラの強みと言いかえられるのだろう。
だが、その中で満場一致で『ずるい』とされたキャラ……いや行為があった。
「綾波のカービィ似のキャラの自爆はどう考えても反則ダス!」
「残機が有利になった途端飲み込んでもろとも落ちるのは酷すぎるよー!」
「ふふん。勝つためには『鬼神』は手段を選ばないのです」
「ずるい。流石鬼神ずるい」
言い合っているようにしか見えないが、これで四人は楽しんでいるのだ。
なお、盛り上がっている中カービィはやはり眠っている。
と、その時。何者かがコンテナ内に気配もなく忍び込んだ。
普段なら訓練されたアックスナイトもメイスナイトも気がつくのだろうが、熱中しすぎて気づかない。
やがて、闖入者は四人の後ろに立つ。
「……楽しんでいるようだな」
ビクン! と四人の肩が震える。
ゆっくり後ろを振り返ると、そこにはメタナイトがいた。
仮面をいつものように被っているため、表情はわからない。だが……何やら『怒気』らしきものが立ち込めているように見える。
「め、メタナイト様……」
「ど、どうされたダス?」
「……私は騎士たるもの弛んではならないと思ってはいるが、それは娯楽すらも禁じている、というわけではない。でなくば、いつかはパンクしてしまうだろう。だから公私のメリハリをつけてこそ、一流の騎士だと思っている。娯楽はそのためにも必要だと」
そしてメタナイトは懐中時計を取り出す。表示時間は『11:23』。当然夜だ。
その時間を見てアックスナイトとメイスナイトはかすれた悲鳴を漏らす。
そして────
「だが、娯楽に溺れ、消灯前集会に出席しないとはどういう事かッ! そこに直れアックスナイトッ! メイスナイトッ! 今すぐ喝を入れてくれるッ!」
『ひぇえっ!!』
────爆発するメタナイトの怒り。
その怒りの矛先が向けられるアックスナイトとメイスナイトどころか、ロングアイランドも綾波も悲鳴をあげる。
やがてアックスナイトとメイスナイトはメタナイトに連行される。
後に残されたロングアイランドと綾波は抱き合いガタガタと震えていた。
なお、その間カービィは眠っていた。
翌朝、カービィが目覚めると、いつの間にかロングアイランドと綾波にがっちりホールドされた状態にされていた。
まるで状況が飲み込めないカービィは、ぽよぽよ言いながら、二人が起きるまでもがいていたという。
「日常回はこれくらいなのね」
「ユニコーンとインディアナポリスは?」
「それはまた別の機会を用意してるって言ってたヨォ」
「あ、もしかして今回みたいなペアなのサ?」
「そうらしいのね」
「ふふふー! インディちゃん! お姉ちゃんが行くから待っててねー!」
「ちょ、あんたの出番はまだなのさ!」
「ええ! でもでも! インディちゃんと離れ離れは嫌ぁ! もう待ちきれないっ!」
「ちょっ、ダメだヨォ!」
「ええい、『操りの秘術』なのね!」
「ナイスだヨォタランザ!」
「くう、この程度の術が、インディちゃんの愛に勝るものですか! アッセイ!(ブチィ)」
「ああ! 術を力づくで破ったのね!」
「っていうか別ゲーなのサ!?」
通りすがりの一般スパルタクス「おお、同志の気配が、憎き圧政者へ立ち向かう反逆者の気配がする! さあ我が同志よ、共に反逆を! アッセイ!」
「そんでもって変なの呼び出しちゃったのサ!?」
通りすがりの一般マスター「すみませーん、そっちにうちのスパルタクスがにげちゃってー」
「インディちゃん! インディちゃん!」
「アッセイ! アッセイ!」
「ああもうめちゃくちゃだヨォ!」
見ていた出雲(炎上中)「なんなのだ、これは!? 一体、どうすれば良いのだ!?」
この後どうにかなった(ヤケクソ)