ププープレーン 〜遍く照らす星の航路〜   作:糖分99%

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「短めなのね」
「ちょっと忙しかったのね」
出雲(炎上中)「全く、だらしない作者だ」
「あんたまだ燃えてるよかヨォ!」
出雲(炎上中)「消して(懇願)」
『ヤダ』
出雲(炎上中)「(´・ω・`)」



初陣 1

 ───4/9 13:10 プププランド港(仮)────

 

 誰もが平和な日々を過ごしていた。

 誰もが平穏な日々を過ごしていた。

 それが当然であるかのように、意味もなく。

 

 だが、予期された“その時”は遂にやってきた。

 

 桟橋で釣り糸を垂らすカービィ。

 ジャベリンも同じように釣り糸を垂らしている。

 だが、二人バケツの中身は全く違う。カービィのバケツは満杯なのに対して、ジャベリンのバケツには一匹も魚が入っていない。

 

「むー、なんで私は釣れないのよぅ……」

「ぽよ!」

 

 言っているそばからカービィの竿がしなり始める。

 グイグイと引いているうち、パシャン、という水音と共になかなかの大きさの魚が釣れる。

 慣れているカービィは釣り糸を外すとバケツに入れ、釣り糸を垂らす。

 ちなみにカービィはとても小さな疑似餌(ルアー)を使っての釣り。ジャベリンは釣り餌をつけての釣り。難易度は疑似餌を使う方が高い。そして隣には匂いもある餌を使っての釣りを行うジャベリンがいるのだ。普通に考えるならジャベリンの方が有利だ。

 にも関わらず、カービィは次から次へと魚を釣り上げてゆく。

 

「う〜、どうして上手くならないんだろう……」

「う?」

 

 キョトンとするカービィ。多分何もわかってはいないのだろう。

 

 と、その時。何か落ちる音と共に桟橋が揺れた。

 慌てて振り返れば、そこにはメタナイトが翼を広げた状態で立っていた。おそらくかなりの勢いで桟橋に着地したのだろう。先の揺れは着地の衝撃に違いない。

 

「カービィ、ジャベリン。すぐに司令塔コンテナに来てくれ。緊急事態だ」

「ぽよ!」

「ええっ!? き、緊急事態、ですか?」

「そうだ」

 

 メタナイトの肯定にはある種の覚悟が込められていた。

 

「いつか来るとは思っていたが、思いの外早かったな。……確証はないがな」

「あの、何かが来たんですか?」

「ああ、来た。プププランドの領海付近にな。恐らくこのままいけば領海に侵入するだろう。相手は小型の艦船のようなものを引き連れた、海上を滑るように移動する人型だ。艦船少女という線もあるが……」

 

 メタナイトが仮面の奥からこちらを見た気がした。

 まるで、最終確認をするかのように。

 

「しかしその艤装は黒く、生物的……今まで見た艦船少女のどれとも似ても似つかない。……恐らくこれが我々の恐れた『セイレーン』なのだろう」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 艦船少女は生まれながらの兵士である。その事実を再確認させられる見事な集合の早さにメタナイトは満足げな視線を送る。

 集合したのは司令塔コンテナ。壁一面にディスプレイが置かれ、執務机と海図が置かれた質素なもの。

 そこに(本人はしっかり理解しているのかは不明だが)指揮官であるカービィが座り、横に秘書官としてのジャベリン、進行役としてのメタナイトが立つ。

 海図に置かれたコマをカービィがいじって遊ぶ中、ディスプレイの電源が入り、スピーカーから音が流れる。

 

『あー、あー、マイクテストマイクテスト。聞こえるダスか?』

「問題ない。続けてくれ」

『了解ダス』

 

 続いて画面は切り替わり、かなり高空から写した写真がディスプレイに表示された。

 このディスプレイは上空のハルバートから無線で接続されており、現在はメタナイトの指示に従って動かしている。このコンテナ内にサーバーや電源を持ち込むと室内が埋まり、かといってコンピュータの質を落とすと司令塔としての役割を果たせないが為にハルバード頼りとなっているのだ。

 

 映し出されたのはいくつかの黒い船。どこか生物的雰囲気を醸し出している。

 そしてその中心に立つ、人型の生物。髪は白く、艤装は黒く、生物的。周りの船とよく似ている。

 

「さて、これが件の領海侵入者だ。恐らくこれが『セイレーン』だと思うのだが?」

「間違いないですね」

 

 断言したのはフッド。それに追従するように皆が頷く。

 

「そうか。やはりか……このまま進路を変えずに本土へ向かっている以上、手をこまねいて見ているわけにはいかない。これから接触を図る。最悪の場合そのまま交戦だ」

「だからこれから本当の意味で初陣となります! その為の編成ですけど……」

 

 ジャベリンはメモ帳を開く。編成を考えたのはジャベリンだ。メタナイトよりも艦船の能力(スペック)は把握している。だからこそ任されているのだ。

 

「人数が少ないので全員出撃。旗艦はフッドさんです。その左舷にロングアイランドさん、右舷にユニコーンちゃんです」

「わかりました。勝利をつかんで見せましょう、指揮官」

「ゆ、ユニコーン、頑張る……」

「私もほどほどにー」

「ぽよ!」

 

 言われたことを理解しているわけではないだろうが、カービィも勢いでなんとなく返事をする。

 

「そして前衛先頭がインディアナポリスちゃん、次に綾波ちゃん、殿が私です」

「わかった……防御には自信がある……」

「魚雷を叩き込んでやる、です」

 

 意気揚々と戦意を高める前衛組。

 士気は高いに越したことはない。メタナイトは初陣ということもあり心配してはいたが、どうやら杞憂であったことに安堵し、口を開く。

 

「高い戦意を評価しよう。しかし、戦わずに済むならばそれに越したことはない。深追いは禁物だ」

『了解!』

「そしてついて行くのは……カービィのみだ。本当は私も行きたいが……もし連中が陽動であり、伏兵がいるならばそれに対処する人員がいなくてはならない。その為、私は残らねばならない。よって……」

 

 メタナイトはカービィに一つの機械を渡す。手のひらサイズの小さな機械だった。

 

「通信機だ。スピーカー付きのな。有事の際は私が指示を出す。それでは……」

 

 メタナイトはとん、と海図を叩き、短く、そして明快な命令を下した。

 

「出撃だ」

 

 

⚓︎☆⚓︎☆⚓︎

 

 

 海は静かだ。凪の状態であり、スムーズに予定地点へと近づきつつある。

 しかし、それが妙に気持ち悪かった。

 まるで、何か大きなものが手招きしているかのようで。

 そういった不安は容易く伝播する。誰もが口を閉ざし、海を進んでいた。

 だが。

 

「ぽよ! ぽよ!」

 

 カービィだけはあいも変わらず陽気であった。

 不安に押しつぶされないのは、海面をワープスターで飛行するカービィのおかげでもあるのだろう。

 

「かーくん、不安じゃないの?」

「ぽよ?」

 

 動くぬいぐるみ、ユーちゃんを強く抱きしめるユニコーンは側を飛ぶカービィに話しかける。

 だが、カービィは首をかしげるのみ。一切緊張感を持っていない。

 

「かーくん、強いんだね……ユニコーンもそうなりたいな」

「ぽぉよ!」

「……なれるの?」

「ぽよ!」

「……がんばる」

 

 カービィは人の言葉を喋らない。

 だが、そのフィジカルな言語と表情によってなんとなく言いたいことがわかる気もする。わかる時はまるで心が繋がっているかのようにカービィの言いたいことがわかるのだ。

 ユニコーンもきっと“そう”なのだろう。

 

「……きたよ」

 

 だが、インディアナポリスの一言で和やかであった空気は搔き消える。

 インディアナポリスの睨む先。そこには画像で見た黒い船団がこちらに向かってきていた。その船団は皆一様に武装しており、恐らくは駆逐クラスから軽巡洋艦クラスだと思われた。

 まだ砲撃はしていないが、砲門はこちらに向けられている。

 

 そして、それは現れた。

 

「……ふふ、なるほど、なるほど。未確認浮上島には既に資格ある者が存在していたか、ふふ、ふふ」

 

 現れたのはサイドテールの少女。人外的な黄色い瞳は愉悦の色を湛え、黒い艤装に座るようにしている。腰掛ける艤装は黒く、大きく、側面から伸びる三対六門の砲門がこちらを向いている。

 

 ここまでくれば、もはや間違えようもない。彼女こそ『セイレーン』だった。





『セイレーン』

 艦これの深海棲艦みたいなやつ。が、タチの悪さは比ではない。なんとアズレン世界の人口の九割を殺している。現在は反攻作戦によりある程度退けた新しいが、どうやって退けたんだ……。ところで、水棲生物らしいセイレーンはどうやって九割の人類を殺したのだろうか? 沿岸から攻めたらアメリカ(ユニオン)はともかく、ドイツ(鉄血)、日本(重桜)、イギリス(ロイヤル)は面積的に滅亡しそうなのだが。内陸がほとんどの中国は逆に栄華を極めそうなのだが。核弾頭で内陸を攻めたのならば、あたりは死の大地となり、反抗しても再興は無理そう。……となると、セイレーンは陸上でも活動できる……?

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