……まだでかいイベント1つも終えてないんですけど? でかいイベント5つは起こす予定なんですけど? 今年中に終わんのこれ?
「……厄日ね。着任早々襲撃なんて……この艦隊の日常茶飯事かしら?」
「そんなことはない……筈だ。なにせこのプププランドは艦隊を持って日が浅い」
「ぷぷぷ……らんど……? まぁいいわ。敵が来たなら迎え撃つ。それだけよ」
「それはそうなんだが……しかし……」
セイレーンはなぜ、今になってやって来たのか?
白昼堂々攻め込むとは、正気の沙汰とは思えない。
単なる偶然? 余裕? どれも違う気がする。
セイレーンの思惑を掴みかね、惑うメタナイト。
しかし結局、やることは変わらない。
「……ポートランド、インディアナポリス、ジャベリン、エレバス、ユニコーンで第一艦隊。高雄、プリンツ・オイゲン、綾波、ロングアイランド、フッドで第二艦隊を組んでくれ。……懸念すべきは主力不足だが、仕方ない」
「了解です!」
迫る外敵を撃滅すべく、艦船少女達はその艤装を展開する。
カービィの無欲によって装備だけは充実している。以前のように決め手が足りないなどということにはならない筈だ。
プリンツ・オイゲンにも余った装備を装着し、生まれて直後で悪いが艦隊を組んでもらう。
そしてアズールレーン側もすでに臨戦態勢を整えていた。
デューク・オブ・ヨークを旗艦とし、クイーン・エリザベス、ウォースパイトがその左右を固め、シェフィールド、ラフィー、エイジャックスがその前に立つ。
本来であればラフィーの代わりにヴァンパイアがいるのだが、彼女は南方の仕事があるために初日に本国に帰っていた。クイーン・エリザベスの特殊能力の恩恵に預かることはできないが、単騎性能は高いのでなんとかなるだろう。
はっきり言って無駄が多く主力に穴があるこちらの編成の方が不安が多い。
しかしそれでも一定の戦果を上げねばならない。メタナイトはそう考えている。
自国を自力で守れないと判断された国はどのような運命が待つのか。それを考えれば、やるしかない。
「カービィ」
「ぽよ?」
「我々も出る」
「うぃ!」
即座にワープスターを呼び出し、飛び乗る様はやはり幾度となくプププランドを救った英雄と言うべきか。
「ワドルディ、メタナイツに伝言を。ハルバードによる支援砲撃は最終手段だ。あまり手の内を見せるべきではない」
「りょーかい」
後詰めの準備も完了。あとは出撃するだけだ。
艦船少女達は戦う者として、兵器としての使命のまま、海原へと飛び出した。
⚓︎☆⚓︎☆⚓︎
「……すでに気づいたか?」
「そうねぇ。艦載機達が攻撃を受けてるわぁ」
腕を組み、無表情ではるか水平線を睨むのは銀髪に金の瞳を持つ女性。黒い機械的な眼帯を装着し、背負うのは黒い蟹の爪のような艤装。その爪1つ1つが砲塔になっている。
その問いかけに答えたのは、やはり銀髪、金の瞳の女性。しかしその表情は余裕に満ちた笑みを湛えており、艤装は黒と黄色の触手を持つイソギンチャクのようであった。
先のカニ型艤装を装着する者が戦艦級セイレーン、スマッシャーI型。イソギンチャク型艤装を装着する者が航空母艦級セイレーン、コンダクターI型である。
旗艦の役割を担っていると思われるコンダクターはほかのセイレーンに命令を下す。
「そうか。では各員規定通り陣形を取れ。それぞれに預けた量産艦艇は予め組んだ陣形を保たせるが、後は臨機応変に各自の指示で動かせ」
「了解」
その指示に従うのは、以前プププランドの艦隊と一当たりした重巡洋艦級セイレーン、ナビゲーターI型。やはりオウムガイ型艤装を座るようにして装着している。以前と同じ個体かはわからない。
他には軽巡洋艦型セイレーン、チェイサーI型。コバンザメ型艤装を見にまとい、怪しげな笑みを常に浮かべている。
最後に駆逐艦型セイレーン、スカベンジャーI型。サカタザメ型艤装を装着している少女の姿をしており、それが2名、駆逐艦型量産機を引き連れていた。
「今回我々の目的は情報収集。……まぁ、いつものことだな。何より重要なのは我々の“記憶”。スペアボディに記憶は移送されるのでここで死んでも問題ない」
「あら、あら、いつものことね。大方テスターの命なの?」
「いや、今回はオブザーバーからだ」
「ふぅん? 珍しいんじゃなくて? だいたいこういうのはテスターに一任してるでしょう?」
「それだけ彼の地は特異というわけだ」
「……アレは突如浮上した。……オブザーバーが興味を持つのも道理」
「そういう事だ。……そろそろ視認域か? ではお喋りはここまでだ。各員“良い記憶”を残すように」
指示の通り陣形を組み、やがて艦船少女達と交戦し始める。
スマッシャーはひとまず支援砲撃に徹し、コンダクターからもたらされる情報をもとに戦況を分析していた。
アズールレーン陣営と思われる艦隊はやはり強い。クイーン・エリザベスの特殊能力の恩恵がやはり大きい。
しかしそれは既知の事実。なにせそういう風に創造したのだから。
そして浮上した島に所属する艦隊の強さも予測の範囲を出ない。カタログスペック通りだ。
もちろん、カタログスペックのステータスだろうと、戦略次第では想定以上の被害が出ることもあるが……そういうこともなかった。
ハズレ。その三文字がスマッシャーの脳裏に浮かぶ。
いずれにせよ、自分たちのやることは変わらない。戦闘データを取り、死んで、スペアボディに記憶を移し、記録する。これだけだ。
いつもと変わらないといえば変わらない任務。故に緊張感などない。
緊張感がないからか、ふとコンダクターが口を開く。
「そういえばぁ、また海の明度が下がったって知ってるぅ?」
「……ああ、知っている。ここに来た当初はここまでではなかったんだがな」
コンダクターの口から出て来たのは、セイレーンの間でも問題となっている現象。
それは『海が暗くなっている』ことだ。
そしてその原因は確定されていないが、すでに信憑性の高い推測は立っている。
「人間に内乱をさせすぎたか」
「そうねぇ。火薬と鉄塊を海に投げ込み、油を垂れ流す……クリーンとは言い難い戦争だからねぇ。場所によっては息苦しいところもあるしぃ」
「そろそろ『間引き』の時か?」
「かもねぇ」
雑談の内容は人間側の首脳陣が聞けば顔を青くするどころでは済まないようなレベルの悍ましいもの。
しかしセイレーンはそんな残虐な話を、まるで今月の定例のイベントについて語るかのような気楽さで話す。
やがて、自分たちのところまで砲弾が飛来する。そろそろ時間のようだ。
「さて、そろそろ我々の番だ」
「そうねぇ。それじゃ……んぅ?」
艦載機を新たに発艦させたコンダクターが訝しげな声を上げる。
そして、ニンマリと笑ってみせた。
この顔をするのは、非常に興味深いものを見つけた時であるということをスマッシャーは知っている。
「どうしたコンダクター」
「いやぁ、いいもの見たわぁ。これがナビゲーターの言ってたずんぐりピンクね。仮面のもついて来ているけど」
「ふむ……」
スマッシャーは眼帯をいじり、倍率を上げる。
拡大された視界に映るのは、1つの流星。
星型の物体に乗る、桃色の球体生物。
それが、こちらに向かって来ていた。
「ほう、あれか。あれがナビゲーターの言っていた……」
「どうするのぉ?」
「決まっていることだ。いつものようにデータを取る」
スマッシャーは無表情で答える。
しかし、その声には隠しきれない喜悦があった。
出雲(炎上中)「今回は新しい艦船少女がいないな」
「だからセイレーンの紹介をするヨォ」
「前出て来たナビゲーターの説明もしておけばよかったのね」
「後悔先に立たずなのサ」
スカベンジャー
駆逐艦型のセイレーン。そういや鋼の桜イベントに出て来たっけ? ハード周回しかしていないせいで見ていない気がする。セイレーンはマップ上をプレイヤーの艦隊のように動き、プレイヤーの艦隊に接触し交戦しようとする。故にそんな彼女らの通称は『動く“見ゆ”』、略して『うごみゆ』。報酬が美味しいので高レベル指揮官は率先してセイレーンを狩りに行く姿がよく見られる。まぁ人類の敵なので間違っちゃあいない。魔神柱と同じ匂いがする。ちなみにスカベンジャーは幼女。困った時はアークロイヤル。なお、スカベンジャーは死肉を食べる生物の総称で、ハイエナとかハゲワシとかウジもこれに当たる。ちょっと可哀想な名前。
チェイサー
軽巡型のセイレーン。本SSでは艤装をコバンザメとしているが、これは独自設定で、SDキャラを見た限りかなり分かりにくい。クロスする青弾に加え、精密な自機狙いマシンガンに泣かされた指揮官の数は数知れず。セイレーン最強うごみゆとか言われる。
ナビゲーター
重巡型のセイレーン。以前登場時は艤装の表現をぼかしたが、後でじっくり見て見たらオウムガイ型であることに気がついた。クロスする青弾はチェイサーと同じで、スリーウェイ貫通弾×3→休止→スリーウェイ貫通弾×2→扇状通常弾→休止→以下ループという攻撃ルーチンを取る。前衛の高雄が削れて痛い。
コンダクター
空母型セイレーン。艤装は多分イソギンチャク。チェイサー並みに確証がないのでSS独自設定だとしてください。砲撃はそこまでだが、妙に耐久の高い自機狙い弾を連射してくる艦載機が厄介。……しかし赤賀を編成すると、攻撃速度バフの関係で敵艦載機発艦と空母のチャージ完了タイミングが被るため、発艦して早々に自軍の戦闘機や爆撃機に撃墜される姿をよく見る。ちなみにSDキャラがふとましいことで有名。女の子なんだぞ。
スマッシャー
戦艦型セイレーン。艤装はタカアシガニっぽい。とりあえず蟹で間違い無いだろう。作者の好きなタイプの艤装。画面を横断する、進行方向に対して横に並んだ5つの巨大通常弾を放ちながら、範囲は狭いが数が多くばらける主砲攻撃を前衛に飛ばし、赤賀の攻撃速度バフでも間に合わないタイミングで主力に貫通弾砲撃をかましてくる地味にうざいうごみゆ。ちなみにSDキャラなので分かりにくいが、着用しているのは白いハイレグ。セイレーンの中で作者の一番好きなキャラである。視点がスマッシャーなのはそういうこと。