πタッチってあるじゃないですか? あれってスマホ画面のある領域をタッチするとπタッチボイスが流れるようになっていて、秘書官の立ち絵はその領域にπが存在するように調整されていたと思っていたんですよ。
でも扶桑はπタッチ領域が若干右寄りな気もしますし、サウスダコタは左寄りな気がします。
そして何より、なぜかサラトガの場合πだけではなく股間タッチでもπタッチボイスが流れるんです。
もしや、数百のキャラごとにπタッチ領域を設定しているのか……? 確かに見事な胸部装甲を持つ方々のπタッチは簡単だったが、ウォースパイトのようなペタンヌ相手だと狙いすまさないとπタッチできなかったような……
もしかしてアズレンのアプリの容量が大きいのって……運営のπへの熱い想いのせい……?
───同日 14:50 プププランド上空────
「未確認生物六体の撤退を確認したダス」
「僥倖。しかしどうも気づかれたようだな……」
鉄で囲われた広大な室内。その広大な室内の壁一面を覆うスクリーンを眺めていた大柄な紫の鎧を纏い、トゲ付き鉄球を担ぐメイスナイト(しかし得物の名前的に『モーニングスターナイト』もしくは『フレイルナイト』の方が正しい気もする)は一連の経過報告を行い、それに鷲か鷹の頭を持つ白い軍帽を被った人型生物、バル艦長が鷹揚に頷く。
その周囲には骸骨の仮面のようなものとバイキングの兜を被った者アックスナイト、白い切れ込みのある仮面を被った青い騎士のような者、メタナイトが佇んでいた。
「しかし……やっぱり対レーダーステルス積んだ方が良かったんじゃないダスか?」
「確かに。光学ステルスの方が費用かかりますし」
「バカ言うな。ポップスターに対空レーダー積んだ奴がどこにいた? ポップスターで強力な奴といえば大体個の生物……あのピンク玉みたいな奴だろう? だったら光学ステルスの方が効果ある。第一……修繕費が嵩んで無駄な装備はしたくないんだよ」
「ああ……」
「納得……」
バル艦長が切ない顔をする。その表情からいろいろなものを悟った鎧の二人。
そんな弛緩した雰囲気を正すように、後ろに控えていたメタナイトが口を開く。
「無い物をねだっても仕方あるまい。我々がやるべきはあの領海侵犯を犯した一団が何者であるか見極める事だ。ただ、あの武装から考えるに小さな集団ではあるまい。ある程度の規模を持つ団体から送られてきたものである可能性が高い」
「それにしてもあの生物、なんなんでしょうかね?」
「確かに。我々とは似ても似つかぬ生物だったダス。本当にポップスターにいる生き物なんダスか?」
「……いないわけではない。アドレーヌも同じような姿をしていた」
メタナイトの発した人物名に『誰?』という困惑の色を浮かべる鎧二人と心当たりがあったような顔をするバル艦長。
その表情の変化を見抜いたメタナイトは鎧二人に向き直る。
「私も直接見たことはない。だがある時カービィがデデデ大王、ワドルディとともにある惑星を支配していたダークマターを倒す際、協力してもらったカービィの友人だとデデデ大王から聞いている。デデデ大王曰く、そのアドレーヌもあのように体や手足が枝のように細く、頭から毛を生やしているという」
「ワシも聞いたことがありますなぁ。なんでも絵を実体化させるとか?」
「そうなんですか!? ……それって厄介では?」
「あの生物が皆そんな能力を持ってたら厄介ってレベルじゃないダス」
「それはないだろう。彼女が特別なようだ」
目に見えて安堵する鎧二人。
だが、とメタナイトはその弛緩した雰囲気を一蹴する。
「海面を泳ぐのではなく滑るように移動するあの能力……カービィのウォーターのコピーに通じるものがあるが、それより速い。あの小さなものが艦船並みの速度で動くとなると、もし敵対するとハルバードの主砲では当たらない可能性がある」
「かの生物特異の能力ですか……厄介な……」
「水中での肉弾戦は勘弁してほしいダス。重くて沈むダス」
「小型飛行艇を作る必要があるな……さて、カービィはこの異常事態を察知しているのか?」
メタナイトは三人に問うてみるが、答えなぞ自分でも分かりきったこと。
「絶対わかってないダス」
「寝てるんじゃないですかね?」
「むしろ何も考えずあの生物と仲良くしてる光景すら浮かぶ……」
「……一応会っておくか。情報のすり合わせと言う意味でも……」
ハルバードは進路を変え、カービィがいるであろう方角へと飛んで行く。
⚓︎☆⚓︎☆⚓︎
───同日 14:58 プププランド────
しばらく艦載機を飛ばし、何やら探っていたロングアイランド。
やがて艦載機達はロングアイランドの元に戻り、ふわりと消える。
「ど、どうだった?」
ジャベリンの質問にぷるぷると頭を横に振る。
「だめだよー、何にも見つからない。でも曳航痕はあったから、何者かが何者かを砲撃したってことはわかったよー」
「そっか……」
「砲撃……かー」
「ぽょ」
ロングアイランドの報告にじっと考え込むワドルディ達とカービィ。
やがて互いの顔を見合わせ、頷き、ワドルディが口を───どう見ても無いが────開く。
「もしその砲撃がプププランド側からなら、あれだけの砲撃能力を持つ施設は二つしかないよ」
「二つ“も”あるって言うべきなんじゃ……」
「わかるー」
「一つはデデデ大王のデデデ城」
「大王? 王様がいるの?」
「いるよ」
「デデデ大王って、変な名前ー。それに自分の名前を城につけてる時点でアブナイ感じー」
「それ本人の前で言っちゃだめだよ? とにかく、あそこならあれくらいの砲撃ができる大砲があるかもしれない」
「あ! もしかしてそのデデデ城ってあれですか!?」
ジャベリンが人差し指を向ける方。そこには四つの尖塔とドームを併せ持つ巨大建築物が高い山の上に建っていた。
それを見てワドルディは頷く。
「そうそれ。あそこは色々兵器が詰まってるからね」
「物騒ですね……」
「まあそれ以上に物騒なのがもう一つの施設。というよりあそこは施設というか────」
そこまで言った時、地面が揺れる。
ズン、という腹の底に響くような音と共に。その衝撃は体の軽いカービィやワドルディ達がほんの少し跳ねるほどであった。
「何!? 何!?」
「何か落ちた気がするー」
混乱の最中、巨大な駆動音が鳴り響き、そして“ソレ”はその巨躯を白日の下に晒した。
金色の金属光沢を持つボディ。緑色のレンズがはまった目。万力の如き形状の爪。今尚駆動音を響かせる脚。
それは直立する金のエビかカニのような巨大機械であった。それが二体。自分たちを挟み込むようにして同時に現れたのだ。
そして威嚇するかのように爪を広げて見せる。
「ひゃあああっ!!?」
「あー……もうダメだー……おしまいだー」
「あ、ヘビーロブスター」
「うぃ」
恐怖の色で顔を染め、ロングアイランドに抱きつくジャベリン。
終わりを悟った故なのか、その場で棒立ちになるロングアイランド。
大して反応も示さないワドルディ達。
鋼鉄のエビに対して挨拶するカービィ。
四者四様の反応を示す中、三つの影が鋼鉄のエビの後ろから現れる。
「カービィ、ワドルディ。これは一体どういうことだ?」
「……なんかでた!」
「また球体生物だー」
闖入者に対してなかなか失礼なことを言い放つジャベリンとロングアイランドだが、当の本人達は一切反応しない。話す気があるのはカービィとワドルディだけと言った様子だ。
「あ、紹介するよ。この仮面の人がメタナイト。後ろに控えてるのがメイスナイトとアックスナイトだよ。そして、この人が先の砲撃能力をもつ二つの施設のうち一つ、空中戦艦ハルバードの所有者だよ」
「くう……ちゅう……戦艦……」
「SFかなー……?」
「……ワドルディ。どういう関係か教えてくれるかな?」
次々現れる謎生物。刻々と変わる状況。全く聞き慣れない言葉。その全てに翻弄された二人はだんだんと考える力を無くしてゆく。
一方、ワドルディは今まで起きたことや自分達の推測を全てメタナイトに話してゆく。
全てを聴き終えたメタナイトは納得したように頷いた。
「なるほど……であれば最初の『開発ドック』だけが現れた可能性は限りなく低い」
「それはどうして?」
「我々はつい先ほど、プププランドの領海に侵入した者を威嚇射撃で追い払ったのだが……そこの二人とよく似た姿をしていた」
「それ、もしかしたらアズールレーンかレッドアクシズか、どちらかの陣営の艦隊だと思います!」
「ん? 対セイレーン組織が二つあるのか?」
「あ、いや……理念の違いで人類同士で戦争中なんです」
「……どうして人類共通の敵がいる中人類同士で争っているのかとか、なぜ“生まれたばかり”の貴女がそんな情報を持っているのか、色々興味は尽きないが今は置いておこう……どちらの陣営かはわからないが、あれは正規の軍人としての動きをしていた。だからあの艦隊がプププランド以外に現れた『開発ドック』から生まれた『艦船』というわけではないだろう」
「どうしてそう言い切れるのー?」
「ポップスターに訓練された軍隊を持つ国家は存在しない。というか、プププランド以外に国家と呼べるものは数少ない」
「なんというか……すごく平和なんですね」
「というより未開なんじゃないのー?」
「未開の星がこんな機械作れるわけないじゃないですか!」
「あ、それもそうかー」
逸れてしまった話を戻すべく、メタナイトは一つ咳払いをする。
「とにかく、『ポップスターに開発ドックが突然現れた』という説の可能性は低い。よって『ポップスターと人間とセイレーンが戦争をする星とを結ぶ穴ができた』説と『プププランドそのものがその星に移った』という説の信憑性が高い。……侵入者のうち何人かを捕虜にすべきだったか?」
「尋問は嫌です」
「かわいそうダス」
「私も好む訳ではない。騎士の一人として女子供を甚振るのは下衆のする事だ。さて、いずれにせよこの状況を確認する必要がある訳だ」
この言葉には皆が───面倒臭そうではあるがロングアイランドも────頷く。
皆の肯定を得たメタナイトは故に、と続ける。
「我々はプププランドの東西南北、全ての海を調べなくてはならない」