ププープレーン 〜遍く照らす星の航路〜   作:糖分99%

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「タイトルで察して欲しいのね」



デストロイモードなんてないし、嗤えばいいというわけでもない

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 ジャベリンが慌ててメタナイトの話を遮る。

 

「さ、流石に駆逐艦一人と空母一人じゃ戦力不足というか……私は回避には自信があるけど火力には自信がないし、ロングアイランドちゃんも艦砲は積めないから砲撃能力はないし……」

 

 ジャベリンの指摘にロングアイランドも後ろでブンブンと首を縦に振って肯定する。

 この指摘にはメタナイトも唸らざるを得なかった。

 

「確かに。空母一隻と駆逐艦一隻の艦隊なぞ聞いたことはない。となると増やすしかないが……そのメンタルキューブとやらを見つけねば話にならんだろう」

「まだそこらへんに転がってるんじゃないかなぁ? ボクらで探しに言ってみようか?」

「そうか? ではたのむぞワドルディ。あとアックスナイト。すまないがハルバードから海図を持ってきてくれ」

「わかりました」

 

 メタナイトの指示でワドルディ達は散り散りになり、アックスナイトもどこかへと消えて行く。

 残されたのはカービィ、メタナイト、メイスナイト、ジャベリンとロングアイランド。

 一気に人の数が減り、静かになったことで気まずい雰囲気が流れる。

 もっとも、カービィだけはそんな空気気にせずジャベリンの足元で眠っているのだが。

 

 堪らずジャベリンはメタナイトに声を張り上げ話しかけて見る。

 

「えっと! メタナイトさんは騎士(ナイト)なんですよね! なのでロイヤル所属だったりするんですか?」

「いや、この星の国とは無関係だと思うが?」

「あっ、ですよねぇ……」

 

 会話が止まった。

 なんというか、非常に話しづらい相手だ。

 やはりメタナイトの中でもジャベリンら艦船は未だ敵か味方か測りかねている為なのだろう。

 

 なんとなく居たたまれなくなったジャベリンは、その足元で寝ているカービィを抱き上げようとする。カービィだけはジャベリンのことを全面的に信じている気がする。というか、腹芸は一切できないだろう。

 が、いつのまにか足元からカービィが消えていることに気がつく。

 見れば、ロングアイランドの長い袖に埋もれ、気持ち良さげに寝ているではないか。

 そしてロングアイランドも眠るカービィに頬ずりしている。

 

「えへへー、すべすべー」

「あっ、ずるいですー!」

「早いもん勝ちだもんねー」

「早く着任したのはジャベリンです! 指揮官を返してください!」

「あー!ダメなのー!」

「ぶぃっ!?」

 

 そのまま始まる綱引き。なお綱はカービィである。

 事の顛末を見ていたメタナイトは「精神年齢は見た目相応なのか?」と冷静に分析するが止める気は無い。主人が動かないためメイスナイトも特に何もしない。

 

 しばし綱引きが行われていたが、やがて基礎体力の差なのか、相性の問題なのか、はたまた別の要因か、軍配はジャベリンに上がる。

 そして綱にされたカービィは目を回している。

 

「むー。ジャベリンは強引なのー!」

「初期艦は私なんです! このまま秘書艦にも着いちゃうんですから!」

「何やってるの二人とも……」

 

 そんなことをやっている間にワドルディ達が戻ってきていた。

 ワドルディは呆れを多分に含んだ声を出すが、心外だと言わんばかりに抗議の声を上げる。

 

「秘書艦の地位は艦船にとって重要なんです!」

「私はどうでもいいけどー指揮官の肌触りは格別なのー!」

「あ、カービィ指揮官認定されたんだ。ま、そんなことどうでもいいか」

「ひどいっ!」

「メンタルキューブ3個と高速建造材2個拾ってきたよ。……なぜか木に引っかかってた」

 

 ワドルディ達は掲げたメンタルキューブと高速建造材を地面に置く。

 そして目を覚ましたカービィはジャベリンの腕から逃れ、メンタルキューブを一つ、建造ドックに投げ入れた。表示される『0:23:00』のカウント。それが減って行く。

 続いて今度は2つのメンタルキューブを同時に投げ入れる。表示されたのは『2:30:00』。

 初めて見る建造の様子をメタナイトは興味深げに眺める。

 

「なるほど、キューブの数によって時間が変わるのか」

「というより、建造される艦船によって変わるんです。キューブの数で建造される艦船はある程度決まってるんですけどね」

「なるほど……では新たな仲間となる者を迎えようではないか」

「うぃ!」

 

 カービィは高速建造材を掲げ、開発ドックに差し込む。そして今まで通りの動作の後、『0:23:00』のカウントが0になる。

 吹き出す蒸気。開く蓋。聞いていたとはいえ、初めて見る光景にメタナイトは若干身構える。

 そして中から出たのは、銀髪の少女。その髪をポニーテールにし、頭からは金属の角状のものを生やしている。着ているのは丈の短いセーラー服。ジャベリンやロングアイランドと比べればまだ水兵らしいと言える。

 その少女はやはり前者二人と同じようにそれが規定であるかのような自己紹介を行う。

 

「綾波……です。『鬼神』とよく言われるのです。よろしくです。……出るところ間違えた……ですか?」

 

 若干無感情に聞こえる声色。しかしながらその声は多分に困惑の色を湛えていた。

 まぁ、青空の下で謎の球体生物が大量にいるのだからそれは当然なのだが。それでも前の二人よりも慌てていないのは綾波という少女の性格故か、それとも同族である艦船が2人もいる故だろうか。

 そんな綾波にカービィはいつも通り笑顔を振りまき挨拶する。

 

「はぁい!」

「……もしかして、指揮官……ですか?」

「はぁい! カービィ!」

「綾波の想像してた指揮官像より……ずっと丸いです。そしてずっとかわいいです。よろしくです」

「ぽよ!」

 

 そしてムニムニとカービィをつつく綾波。

 しばし感触を楽しんでいたが、それにしても、と突然頭をあげる。

 

「この艦隊、絶対普通じゃないのです。何があったですか?」

 

 綾波の質問に対してメタナイトが「もう1人の艦船を建造してからまとめて説明しよう」と受け流す。

 すぐに疑問に対する答えが得られないとわかった綾波はまた視線をカービィへと戻し、つつき回す。

 ちょっとしたぬいぐるみ扱いだが、そこはもとより順応性の高いカービィ。気にせずもう1つの高速建造材を用いて高速建造を行う。

 『2:30:00』のカウントはたちまち0となり、蒸気とともに蓋が開く。

 現れたのは紫の髪の少女。白いドレスのようなワンピースを纏い、背中には翼のように飛行甲板を背負っている。今まで建造された三人の中でも特に幼く見え、腕にはユニコーンのぬいぐるみが抱かれていた。

 そしてやはり、定型文のような自己紹介を始める。

 

「あ……わたし……ロイヤルネイビー……ユニコーン……指揮官……あのぉ……お兄ちゃんって呼ん……で……も……」

 

 そして辺りの状況を確認し、困惑するまでが1セット。ユニコーンと名乗る少女も群がる球体生物達を見て完全に困惑していた。

 しかしそれでも誰が指揮官であるのか生まれた時の艦船としての本能でわかるのか、じっとカービィの方を見つめていた。

 カービィは当然、自己紹介を始める。

 

「はぁい! カービィ!」

「かー……びぃ?」

「うぃ!」

「えと……おにぃ…………かーくんって呼んでも……いい?」

「うぃ!」

「よろしくね、かーくん」

 

 幼い少女であるからだろうか。目の前の理不尽でファンタジーな存在もあっさりと受け入れるのは子供の順応性を想起させる。

 だが、メタナイトだけはその鋭い観察眼故に気づいていた。ぬいぐるみにしか見えないユニコーンが僅かに動いていることを。

 別にぬいぐるみが動いた程度で動揺したりはしない。元はポップスターの住人。これくらい不思議なことは割と発生する。

 問題はユニコーン自身が自らのぬいぐるみが動くことに気づいているのかどうか。気づいているのだとしたら、ジャベリンやロングアイランドが驚いた不可思議存在である我々も「動くぬいぐるみ」と同じように簡単に受け入れられるのだろう、と。

 建造した艦船は皆個性的だ。そして奇跡的に皆我々に猜疑を抱かない。だがもし仮に猜疑的な反応を示す者が生まれた時どうするべきか。

 その時はユニコーンのような順応性の高く、かつ保護欲を刺激する艦船が架け橋になるのではないか。そうメタナイトは計算していた。

 

「さて、生まれたばかりの2人には早速で悪いが状況説明だ」

 

 メタナイトは2人に対して滔々と今までの事を説明してゆく。

 そして本題、探索の話へと移る。

 

「ここで役割分担だ。君達は恐らく十数から二十数……もしくは三十ノット近くまで速度が出せるのだろう。だが、その速度では探索する範囲に限界がある。故にこの星のマッピングを衛星軌道からハルバードより我々が行う」

「じゃあ私たちがするのは?」

「艦載機で空撮とかー?」

「いや。先にも言ったようにプププランドに近づいた君達と同じ艦船がいた。君達はその後を追い────」

「追撃ですか。綾波、雷撃には自身があるのです」

「戦闘は苦手だけど……頑張る!」

「い、いや、接触し、友好関係を築いてもらいたい。別に我々はアズールレーン、レッドアクシズどちらかに所属して戦争をしたいわけではない」

 

 途端に顔を曇らせる艦船少女たち。やはり“兵器”として生まれただけあってそれ以外には難がある者が多いのだろうか。

 

「……友好関係……対話……綾波、自信がないのです」

「幽霊さんも同じくなのー」

「し、知らない人は苦手……」

「そういうことならジャベリンに任せてください!」

 

 しかしながらジャベリンだけは胸を張ってそう答える。

 たしかに愛想も振りまくことも得意そうだし、適任かもしれない。

 

「そうか。それは頼もしい。ではカービィとワドルディ……ああ、話せるワドルディ一人を連れて追って欲しい。ただ偽装のため逃走した方角に彼らの拠点がない可能性があるが、それでも直進して欲しい。その場合は大陸を見つけ、現地の様子の確認だけでよろしい」

『了解!』

 

 威勢のいい声が青空に響く。任務に関してはしっかりとした応答をするのはやはり職業軍人であるからこそなのだろうか。

 

「さて、不測の事態に巻き込まれた我々としては一分一秒が惜しい。早速準備に取りかかれ!」





「カービィ、かーくん呼ばわりされたのサ」
「ユニコーンがカービィをお兄ちゃんって呼ぶのも変な気がしたからこうしたらしいのね」
「……あと作者がナンカダウンしてるヨォ」
作者「_(:3」z)_」
「……出雲建造にいる重桜戦艦の累計経験値が300万必要とわかってダウンしてるのね」
「ちなみに今は650,000/3,000,000なのサ」
「ウワァ……」
「だからゴールデンウィーク中は出雲建造に集中するため、投稿が空く可能性があるのね」
「来週、再来週中には建造したいって言ってたのサ」
「……」

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