「今回特に解説することもないから作者がふざけきったのサ」
「自重しないスタイルだヨォ」
「あれ? 特に解説ないということは我々の出番もないのね……」
「あっ」
「あっ」
「ペンギンだ!」
「ペンギンさん……」
「ペンギンだねー」
「ペンギンです」
「……ええ」
「……あらあら」
このプププランドで一夜を過ごした艦船少女達は喋る巨大ペンギンごときでは動じない。というより、桃色や橙色、青色の球体生物というわけわからない生物ではなく、自分も知っている生物によく似た形状の生物がいることに若干の安心すら覚えている。
が、新参二人組はそうはいかない。確かに二人とも感情を素直に吐露しないタイプではあるが、インディアナポリスは目を白黒させているし、フッドは若干落ち着きがなくなってきている。
が、巨大ペンギンはそんなこと気にしない。
「メタナイト! 一体全体、これはどういうことだ!?」
「陛下。申し訳ないが一体?」
「どうもこうもない! なんなのだこれは!」
陛下と呼ばれたペンギンはずい、とメタナイトの目前に手の中にあるものを突きつけた。
それは紛れもなくメンタルキューブであった。
「これはどこで?」
「城の至る所にあるぞ! 邪魔で邪魔で仕方ない! ワドルディ達に掃除させたが、処分しようにも燃えないし、かといって粉々にしようとしても砕けないし、なんなのだこれは!」
「……なんというべきか。取り敢えずソレは我々が預かりましょう」
「それならいいんだが……またおかしなことが起こっているんだろう? そうだろう?」
ペンギン陛下はメタナイトをキッと睨みつける。
メタナイトはしばし考えたのち、今までのあらまし全てを話す。
話したことは“今まで起きたこと全て”であり、このペンギン陛下が信頼に足る人物であるとメタナイトが見なしたが故だろう。
もしくはインディアナポリスとフッドに聞かせる目的もあったのかもしれない。
全てを聴き終えたペンギン陛下は先ほどのやかましさが嘘のように静かになる。
そしてポツリと呟いた。
「そうか。しかし思い出すな」
「陛下?」
「プププランドにオーパーツが散らばる時は大体大きな異変の前兆なんだよ」
「……確かに」
「で、そこの艦船といったか?」
ペンギン陛下は徐に艦船少女達をギロリと睨む。
「俺様の名前を知っているか?」
「い、いえ……」
「ならば教えてやろう。俺様の名はデデデ大王である。このプププランドの大王だ」
ペンギン陛下、デデデ大王は胸を張り威厳を持って名乗る。
しかし巨大ペンギンといえども身長はジャベリンと同じくらいかそれ以下。その体はまん丸に太っており、なんとも滑稽に見える。
そのデデデ大王なる人物の口上に戸惑う中、唯一動けた者がいた。
それはフッド。
優雅な動きで跪き、華麗に一礼してみせる。
「御尊名、ありがとうございます。私はロイヤルネイビー所属のフッド、と申します」
流石はロイヤルネイビーの栄光。その応答は完璧であり、美しい。
これにはデデデ大王もまんざらではない様子で有るか無しかの鼻を高くする。
「うむ、うむ。素晴らしい。それで他の奴らは?」
ちらりと他の艦船少女達に目を向ける。意味するところは大方察することができる。
「え、えっと、ジャベリンです!」
「ユニコーン……だよ」
「ロングアイランドなのー」
「……インディアナポリス」
「綾波、です」
「ふん、まぁいい」
自己紹介を受けたデデデ大王は取り敢えずは了解した、とでも言うかのような尊大な態度で頷く。
艦船少女達はカービィやワドルディ、メタナイトとは全く違う態度に困惑したように互いの目を合わせる。
「さて、メタナイト。その様子だとある程度の調査は終わったんだろう?」
「ええ。海図は既に書き終わりました。セイレーンなるものは水棲生物らしいので、もし一戦を交えるようなことがあれば主な戦場は海上になるかと」
「わかった。なら俺様もある程度は協力しよう。“プププランドの大王”としてな。さて、その海図とやらを見せてくれ」
やけに『大王』の部分を強調するデデデ大王はメタナイトを手招きする。どうやら連れ出して話を聞くらしい。しばしメタナイトは迷うが、そう簡単には断れないのだろう。諦めたようにデデデ大王に着いて行く。
「すまないが少々席を外させてもらう。あと、何か欲しいものがあればメタナイツに言いつけてくれ。我々が持っているもので、不都合がなければ融通を利かすよう話を通してある」
「それはあの……アックスナイトとかメイスナイトとかですか?」
「そうだ。あとワドルディにも聞いてみるといい。むしろ彼らの方が色々なものを持っているだろう。では、失礼する」
マントを翻し、メタナイトはデデデ大王とともに外に出る。
そしてしばし遅れて彼らと入れ替わるように、話にあったアックスナイトとメイスナイト、そしてバンダナのワドルディが室内に入ってくる。
「えー、色々気になるところがあると思うし、十分に説明できないのは申し訳ないダス」
「ただ、こちらも手探りでやっているので我慢して欲しいとしか……」
「いえ、構いませんわ。確かにここは『普通』ではありませんが……指揮官様を見るに、なんだか暖かそうな場所だと確信できますわ」
「ぽよ?」
「私も……構わない」
「そうかー。そう言ってくれると嬉しいよ」
そう言ってニコニコとした顔でワドルディは頷く。
それでは、とアックスナイトが口を開く。
「先ほどメタナイト様がおっしゃった通り、何か欲しいものがあれば我々が融通を利かします。流石に身一つで何も娯楽もなく生きていくのは辛いですし」
「やっぱり話がわかるねー!」
「メタナイト……いいやつ、です」
「では何か希望があれば」
途端、ニマッ、という感じでロングアイランドが笑う。
同時に綾波もその目を輝かせる。
「それじゃー、ゲームが欲しいなー」
「同じく、です」
「げ、ゲーム?」
途端に焦り出すアックスナイトとメイスナイト。
ちょっと待って、と二人は隅に移動し、コソコソと話し始める。
「ゲームってアレダスか? 機械化された時持ち込まれたあの……」
「いや、それ以前にゲーム機自体はあったけど、あれほど進んだのはあの時以来だな。プププランドじゃアレが量産されて一般的になったけど……」
「ウチにあったダスか?」
「……たしかスージー殿からのお詫びの品にいくつかあった気がする。スニーキングするゲームとか、巨大モンスターを狩るゲームとか、配管工の親父が飛び跳ねるゲームとか、筋肉質の男達が拳法で殴り合うゲームとか」
「……それでいいんダスかね?」
「……それしかないだろ」
やがてこちらに向き直り、咳払いとともにアックスナイトが答える。
「えー、希望のものがあるかわからないけど、なんとかします」
「やったー!」
「有能、です」
「えっと、他には?」
次に手を挙げたのはジャベリンだった。
「じゃあ、可愛い服がいいな!」
「服ダスか? サイズ的にうちにはないダス」
そしてメイスナイトはチラとワドルディに視線を送る。
察したワドルディは胸を張って答える。
「ボクらワドルディならきっと作れるよ! だからしばらく待っててね!」
「はい! ちょっと希望があるのであとで聞いてください!」
「了解! 他は?」
「では……」
次にそっとフッドが手を挙げた。
「ティーセットと茶葉をいただければ、と」
「メタナイト様が時々飲んでましたね。あとで聞いてみます」
「ありがとうございます」
「ユニコーン殿とインディアナポリスはどうダス?」
話を振られた二人は顔を見合わせ、ふるふると首を横に振る。
「ちょっと考えつかない……」
「ま、また後でで……いい?」
「わかったダス。それじゃあ今日のところは解散ダス。散歩でもして見るといいダス。プププランドの空気は美味しいダスよ」
⚓︎☆⚓︎☆⚓︎
───同日 15:20 デデデ城会議室────
広大、かつ豪華絢爛な会議室に置かれた巨大な円卓にはたった二人の人物が席についていた。
一人は仮面の騎士、メタナイト。もう一人はプププランドの大王、デデデ大王。
その円卓の上に置かれているのはデデデ大王の持つ全戦力が記された資料。つい先ほどまでメタナイトはそれを読んでいた。
「……ふむ、やはりプププランドの海岸線に沿って詰所を置き、原始的に目視による警戒網しか張れないか。飛行砲台カブーラは小回りが効くが、巡航速度は遅く、プププランド全域をカバーするのは難しいな」
「やっぱりハルバードに頼るしかないな。あとは侵略された時に残った機械がどれだけ使えるか……」
二人揃って首をひねる。
と、その時、一人の人物が部屋に入ってきた。その手には丸められた紙が握られている。
メタナイツの下っ端だ。おそらく海図の複製が終わったのだろう。
メタナイトはそれを受け取り、メタナイツの一員を帰し、それを円卓に広げる。
「さて、これが我々が作り上げた海図だ」
「ほう、どれどれ?」
その海図は見事な出来であり、急造にしては細かい海岸線まで描かれていた。
しかし、その海図を見た途端、デデデ大王の顔が固まった。
「……」
「陛下?」
「……あ、いや、なんでもない。さて、その詰所を置く場所を考えるか」