BanG Dream! 〜アオハルエクスペリエンス!!〜 作:翡翠織音
今回は主人公である小山兄弟に関して掘り下げていきたいと思いました。
それではどうぞ!
「は、初めましてっ! 小山晴架です。フルカラースコールのギターとボーカルをやってます」
「……同じく小山氷雅。ベース・ボーカルです」
今日は練習終わりにビデオカメラを構えたまりなさんに捕まってしまった。
どうやらライブハウスで流している要注目のバンドに、インタビューを行う企画らしくバンドを代表して僕ら二人が答えている最中だ。
「じゃあ、まずはそのバンド名の由来から教えてくれるかな?」
「えっと……『フルカラースコール』って言うのは僕の好きなバンドの曲から採らせてもらったんです」
「それと、『スコールのように鮮やかな音楽が誰かに届いてほしい』って意味があると晴架が言ってました」
氷雅の理由は後付けなんだけど、それっぽい理由があった方がいいよねって事でこんな理由がつきました。
でも、かなり考えたんだよ?
「なるほど……それじゃあ次はそれぞれ楽器を始めた理由を教えて欲しいな」
「は、はいっ!」
それではまずは僕から。
以前、ちょっとだけ触った話の続きになるのかな。
〜*〜
僕と音楽の出会いは中学生になって間もない頃だった。
特に部活に入っている訳ではなく、学校で勉強だけやって帰ったらただただダラダラしてるだけ……という非生産が極まる日常。
そんなある日、僕は眠れなくてテレビをぼんやりと眺めていた。
そうこうしている間に、普段は見ていない深夜アニメが始まる。
「あー、もう深夜アニメの時間か……早く寝ないといけないのにな」
その時だった。
ドラムロールと共に、洪水のように音が溢れてきたのは。
その時間はだいたい1分半。なんて事はない、ただのオープニング。
でもそれは、僕を魅了するには十分すぎるほどで。
「……カッコいい」
僕にも、僕にだって。
こんな風に言葉を紡ぐことが出来るのかなって。
そして、あのバンドみたいに誰かを夢中にさせてあげられたらどれだけ凄いことなんだろうなって思ったんだ。
そして、この時こう思った。
あの人みたいに高い声は出せないかもしれないけど、あんな風な歌詞は到底紡げないかもしれないけど。
それでも僕もやってみたいってね。
僕も楽器を始めよう。そしていつかは……と、ここまで考えたところで兄の氷雅がベースをやっていたのを思い出した。
最初は難しそうだから、って理由であんまりやる気も起きなかったんだけど、それを見て以来自分もやりたくてやりたくて仕方がなくなった。そんな訳でその次の休みの日。
ロックの聖地・下北沢の楽器店にやって来て……
「この人が持ってるギターを下さいっ!」
その人が持ってたギターを見つけて、夢と希望に溢れた笑顔でこう聞いた僕。この後、現実を知る事になります。
「はい、35万円になります」
「…………え?」
「35万円になります」
「……嘘でしょ?」
「マジです」
「えー……」
なんだこの会話。店員さんも困っただろうなぁ……。
そのギターは「ATELIER Z/L.E.S.」と言うモデルでめちゃくちゃ高かったんだけど、初心者の僕はそんな事も知らず。
35万円なんてギターは、中学生には到底手も足も出せなくて仕方なく安値で売ってたストラトキャスタータイプのギターに決め、今でもそれを愛用している。
「Fender Japan ST57-US CAR」と言うモデルのギターだ。
でも、そんな会話をしたのも今ではいい思い出だ。
〜*〜
俺と音楽のファーストコンタクトは、テレビで特集されていたとあるフェスに登場していた外国のロックバンドだ。
海外勢のワイルドかつスタイリッシュな雰囲気と演奏が、俺の心をがっちりと掴んでいた。
では、なぜ花形であるギターではなくベースを選んだのか。
理由は至極簡単。ベースならあんまり目立たないんじゃないかと思ったから。
……という理由もあるが、第一にはなくてはならないものだからだ。
ベースがなきゃ、バンドは成り立たない。その存在になりたくて俺はベースを握った。
モデルは「YAMAHA TRBX304 CAR」。理由は特にない。
ただ、店に入ってから一番最初に目に付いたベース。だが、それを手にした時、イメージができた。
ロックフェスのトリを務め、声援を浴びる姿を。口元にガラでもない笑みを浮かべてそのベースをレジに持って行った……。
〜*〜
「へー、結構ありがちな理由なんだね」
「うっ……確かにそう言われます」
氷雅は「うるせー」と返しているけど、本当に俗な理由だと思う。 一番ありきたりでつまらない理由かもしれないけど、そんな理由なんだから仕方ない。
「それじゃあ、次の質問。二人は兄弟でツインボーカルなんだよね?」
「はい。僕らでボーカルをやっています」
そう、僕らの武器はこのツインボーカル。高音ボーカル担当の僕と、低音ボーカル担当の氷雅。
実はもともと、ボーカルは僕だけだったんだけど……
「じゃあ次はツインボーカルに至るまでを教えてくれる?」
「あー、俺らがツインボーカルになった理由は……」
僕が口を開く前に氷雅が喋り始める。
それじゃあ次は、僕らのバンドがその方向に辿り着くまでのお話。
〜*〜
「げほっ、ごほっ……」
その日は、氷雅ともう一人のドラム担当の子と合わせて演奏する予定……だったんだけど。
そんな日に限って、僕は喉をやってしまったんだ。
「おい、体調管理はしっかりしろって言っただろ?」
「そうッスけど……大丈夫ですか?」
心配そうに僕を覗き込む二人。
のど飴を口に含みながら僕はガラガラで声を上げる。
「ごめんね……氷雅、麻弥ちゃん」
〜*〜
「ちょ、ちょっと待ってもらっていいかな!?」
まりなさんが僕らの話を遮って大声をあげる。
どうしたんだろう、なんか変な話でもしたのかな……?
「どうしたんですか?」
「い、いや麻弥ちゃんって、もしかしてあの……」
「はい、大和麻弥ちゃんです」
「えぇぇぇぇ!?」
絶叫再び。そう、今でこそ違うドラムなんだけど僕らのバンドには「パスパレ」のドラマー、大和麻弥ちゃんがいたんだ。
「ほら、あの麻弥ちゃんってスタジオミュージシャンだったじゃないですか?」
「……確かにその時期はあったけど、でもなんで?」
「……じゃあ、一旦その話は置いておこうか」
ツインボーカルの話はだいたいもう見えてるかもしれないけど、一旦置いておこう。
なんで僕らが麻弥ちゃんと接点を持ったのか。今度は彼女との出会いを振り返ってみる。
〜*〜
僕がギターを握ってまだあまり経ってない頃、氷雅に連れられて「CiRCLE」の地下スタジオにやって来ると……
眼鏡をかけた可愛い女の子が、一心不乱にドラムを叩いていた。
スタジオに入ってきた僕らに気づいていないのか、彼女はドラムを叩く手を緩めない。
「フヘヘ……今日もいい感じです!」
うん……前言撤回。笑い方が独特すぎるかな。
可愛い顔してどんな笑い方してるの、君は。
「あ、あのー……?」
「へ……わ、わぁっ!?」
ようやく僕らの存在に気づいたのか、驚いて眼鏡を落として驚いた彼女。
眼鏡は……うん、どうやら割れてはないみたい。よかった、割れてたら大変だったもん。
「はい……?」
眼鏡を拾って彼女の顔を覗き込むと、意外な事実に気がつく。
彼女は眼鏡を外した方が……可愛い。アイドルでもやってたりするのかな……?
「あ、ありがとうございます!」
「なぁ、ここは俺らが使うんだが。ちゃんと確認したのか?」
「え……あ、ご、ごめんなさい……」
「ちょっと氷雅、言い過ぎじゃない?」
確かに間違えたのは彼女かもしれないけど、だからってそこまで言う必要はないと思う。
少しエキサイトした彼を抑えて、出来る限り優しい口調で彼女を見る。
……でも、確かにドラムは上手かった。正直このまま別れちゃうのも惜しいし……ドラマーもちょうど欲しかった所なんだよね。
よし。
「ねぇ、君さえよければなんだけど……ちょっとドラム叩いてみてくれない?」
「はぁ!? お前、一体なに言ってるんだ!?」
驚いて目を見開き、僕に叫ぶ氷雅。
そりゃそうだ、誰かも知らない彼女にセッションをしようと言っているのだから。
「……いいッスよ、ジブンでよければお願いします!」
でも、彼女は了承してくれた。
隣で氷雅が「いいのか?」と聞いてくるけど、僕にはなんとなく分かる。
「大丈夫だって。僕から見たらすごく上手いし、ちょうどドラムが欲しいって氷雅も言ってたでしょ?」
「いや、確かに欲しいとは言ったが名前も知らない女子に叩いてくれなんて普通は言えねーぞ」
「でもさ、ドラムを叩けそうな知り合いなんていないよ」
「なんで出会って数分で、知り合い認定してんだよ」
っていうか、と言いながら彼女を見るとまた「フヘヘ……」と独特の笑い方を浮かべてドラムセットに座り既に準備を始めていた。
「あれ、正直不気味なんだが」
「……それは否定しないけど」
と、ある程度の一致をしたところで彼女にタブ譜を渡す。
楽曲は「harmonized finale」だ。これを歌うためにギターも歌も練習してきた。どれだけ歌えるかは分からないけど、これに僕らの全てを込める。
ちなみに曲の冒頭にピアノ入ってたりするけど、そんなのは打ち込みでなんとかなる……はず。
「あ、そうだ。僕は小山晴架、こっちのベースが氷雅。双子なんだ」
「そうなんですね、ジブンは大和麻弥です。スタジオミュージシャンをしてます」
ん……?
氷雅に目を向けると、氷雅もさっきまでと目つきが変わった。
「す、スタジオミュージシャン……?」
「はい、そうですよ?」
「「うぇぇぇぇ!?」」
どうやら、僕らはとんでもない大物を釣り上げてしまったみたいです……!
〜*〜
「……で、アイツがパスパレに入るまでサポートとして世話になってたってことだ」
「あ、今でも友達でたまに遊びに行ったりしてるんですよ?」
「す、すごいね二人とも……」
まりなさんも一通り話を聞き終えた上で、やっぱり興奮と驚きが入り混じったような表情を浮かべていた。
LINEもしっかり交換しています。今度はいつ遊びに行けるのかな……?
「じゃ、じゃあツインボーカルにしたのって……」
「コイツが風邪を引いて歌えなくて。仕方なく、俺がボーカルをしたんだよ」
「そうしたら、氷雅がボーカルなのもいいねって話になって。だったら二人ともボーカルすればいいんじゃないって思ったんです」
「そ、そうなんだ……さっきの話が衝撃すぎてあまり頭に入ってこないんだけど……」
そう口にしつつ、彼女は僕らにフリップとマジックを手渡す。
これはなんだろう、大喜利とかでもさせる気なのかな? 自信はないけど……。
「ここからは、5問の質問に答えて頂くクエスチョン・ファイブ!」
「わー!」
こういうのは盛り上げていったほうがいいのかなと思って、拍手。
氷雅はマジックの蓋を開けて既に準備中。
「それじゃあ1問目! 二人は兄弟だし、この際言いたい事があるんじゃない? それを書いて!」
言いたい事……ねぇ。特に不満がある訳じゃないんだけど……まぁ、強いて言うなら……。
「それじゃあ、二人ともオープン!」
「はいっ!」
「おー」
僕らが書いた、言いたい事は……
『氷雅、正直タンクトップ着るのやめて欲しい』
『晴架、この間貸した1000円はよ返せ』
「こ、これは……両方ともなかなか面白いけど、まず晴架くん。タンクトップって……?」
「あの、氷雅って筋トレが趣味なんですけど……その時に着ているのがタンクトップなんですよ」
「ジャージじゃなくて、タンクトップ?」
「はい。僕ら一応バンドやってるじゃないですか? いくらオフだからってそんな格好はどうなのかなって……」
「別にいいだろ。体鍛えるうえで一番好きな衣類なんだよ」
まぁ、タンクトップは似合ってるし辞めさせる権利は無いからなぁ。でも、バンドマンなんだから筋肉で武装せずに服装で武装しようよ……。
「で、氷雅くん。1000円早く返せってどう言う事?」
「この間CDを買うからって、コイツが金を借りたんですよ。二週間前に」
「そ、それはダメだと思うよ晴架くん。お金あるの?」
慌てたまりなさんが「早く返した方がいいよ」と急かしてくる。
確かに、バイトもしてるしお金も今はバッチリあるからなぁ。
「ほら、2500円。ごめんね」
「許そう」
「お金の問題なの……?」
利子(1500円)もつけて返済。流石に倍以上の金額だし、氷雅も割と納得いってるみたいだし。
この件はこれでおしまい……でいいよね?
「じゃあ2問目。『兄弟でここはスゴイと思う所は?』 まずは、晴架くん!」
「はいっ。えっと……『努力』ですかね?」
「ほう、努力……その理由は?」
「本当に筋トレバカな所はあるんですけど……」
「おい」
本人は不服そうにしているけど、事実だし。
御機嫌斜めな彼を横目に話を続けることにしよう。
「ベースが大好きで、上手くなるためだったらどんな努力も惜しまないんです。それは弟だけじゃなくて、ミュージシャンとして尊敬してます」
「…………」
あらあら、黙ってしまいましたよ。
照れてんのか、うるさいだけなのか。多分後者なんだろうな。
「それじゃあ次は氷雅くんから見て、晴架くんのスゴイと思う所は?」
「はい。俺が思うのは『いつも笑ってる』所ですね」
いつも笑ってる……まぁ、僕の取り柄は笑ってる事ぐらいしかないからなぁ。でも、それってスゴイ事なのかな?
氷雅はさらにこう続けた。
「どれだけ辛い時も、苦しい時もコイツは笑ってるんですよ。それを見ていてなんでこんなに笑えるんだろうと思ってたんです」
「ふむふむ……それで晴架くん、なんでいつも笑ってられるの?」
いつも笑ってられる理由……ねぇ、そんなの一つしかないじゃん。
僕が笑ってられる理由は……
「ただ単にギターが大好きなんです。確かに辛い時もあるんですけど、好きだから笑顔でいられるんです」
「本当にギターが好きなんだね」
「それと、氷雅みたいにあまり笑ってないと幸せも逃げまくりですし。笑ってた方が幸せですよね」
「おいこら」
いつも思ってたんだけど、氷雅みたいに笑ってないと楽しくないから。コンビニでバイトを始めた理由もこの笑顔を生かせるからだ。
大変だけど、その分やりがいもあるってもんだよね。
「続いて3問目。高校生だし、こんな質問だよ。『彼女に求めるものはなに?』」
『いつも隣で笑ってくれる人』
『興味なし』
「晴架くんは……やっぱり君らしいね」
「はい。顔とかお金とか考えたら色々あるとは思うんですけど、やっぱり誰かと一緒に笑ってられたらいいなって思うんです」
まぁ、そんな予定なんて……うぅ、もうちょっと勇気を出せば僕もモカちゃんと……。
いやいや、そんな訳ない! 僕とモカちゃんなんて釣り合わないかも……。
「……で、氷雅くん。恋愛には興味がない、と」
「はい。そう言うのにうつつを抜かしていては、上手くなるものもならないと思います。俺は音楽に集中したいので」
「真面目だねぇ」
当然です、とさらに語る彼を横にして恋に恋している僕はなんなんだろうと思ってしまう。
音楽するためには恋愛も犠牲にしなくちゃならないのかな。
僕と彼は、やっぱり考え方も違うみたい。
「次に4問目。『ズバリ、志向する音楽性は?』」
おっと、ここでついに僕らの音楽性に関する質問が。
まぁ、正直な話をすると好きなバンドも入り方も全く違うしこんなのは一致するはずないんだけどね。
『誰にも真似できないポップを!』
『スタイリッシュにキメたい』
「あー、やっぱり割れたね……」
「はい……」
「まぁ、一致するなんて思ってなかったけどな」
「ですよねー……」
どうやら似通った考えはしてたみたい。前言撤回である。
邦楽、しかもアニソンから目覚めた僕と洋楽、それもフジロックあたりに出るようなバンドから目覚めた彼と合うなんてあるはずない。
「やっぱり憧れなんです。誰でも使えちゃう言葉で、本当に真似ができない音楽を作り出しちゃう……まだまだ足元にも及ばないですけど、いつかそんな風になれたらなって思ってるんです」
「俺は……なんていうか、日本人では出来ないようなバンドをやりたいと思ってました。気づいたらツインボーカルで、どポップなバンドになってましたが」
「あはは……弟の方がやる気あるから、兄が持ってかれてるのかな」
「うるせーです。間違ってはないですけど」
何やら不満げな兄。なんだか申し訳ないとは思ったりもするけど、そのバンドの方向性を決めてるのは僕だったりするから仕方ないね。
「それじゃあ最後の5問目! 『将来、どうなってたい?』」
『ロックシーンのトップに立ちたいっ!』
『進学して就職』
「ちょおおお!?」
まりなさん、今日何度目かの絶叫。
そうなんだよねぇ……問題というか、悩みはこのボーカリストの志向にありまして。
「ひょ、氷雅くんは後でゆっくり聞くとしてまず晴架くん!」
明らかに動揺が伝わってくる彼女の問いに慣れた感じで答える僕。
まぁ、彼の考えは今初めて聞いた訳じゃないからそんなに驚かないけどね。
「なれるかどうかは分からないですけど、やっぱりバンドやってる以上はそれくらいの目標を持ってたいなって」
「うん、それがバンドマンの通常な考えだよ! はい、氷雅くん!」
「……まず、これは俺個人の考えです」
「はい」
そう前置きして、彼は口を開く。
実は一番将来を真剣に考えているのは、間違いなく氷雅だと僕は思う。
「コイツと同じようにバンドの頂点に立ちたいと考えてる奴は山ほどいます。で、実際名前が売れてるバンド、音楽番組に出れるようになるのはほんの一握りですよね?」
「うん、それは間違いないね」
「でしょう? 俺もシーンのトップに立てたらいいなとは思います。でも、それは宝くじに当たるか当たらないかみたいな話であって、将来が約束された訳じゃない。だから、俺は普通に進学をして普通に就職したい。音楽は高校までって決めてるんです」
今までとは明らかに空気が変わっている。
ロックだけで暮らしていけるなんて、確かに夢みたいな話だし彼の考えも分からなくはない。
でも、僕はやっぱりバンドで日本を制してみたいと思うのです。
「じゃあ最後に、いまスタジオで見ているみんなに一言ずつフリップにお願いします。ライブ直前だからそう言うのをお願いね」
「はい」
「おー」
これは真剣に書かないと。ボケてる場合じゃないよ!
隣を見ると、氷雅もさっきよりも真剣に書いてる。バンドは高校までとか言ってるけど、それまではちゃんとやってくれるんだね。
「それじゃあ、オープン!」
『僕らの音楽が、誰かに届きますようにっ!』
↑フルカラースコール ギター・ボーカル 小山晴架(弟だよ!)
『興味があれば、是非見に来てください』
↑フルカラースコール Ba. & Vo. 小山氷雅 (兄です)
「うんうん」と頷いて、撮り終えた事に満足げなまりなさん。
いよいよこのインタビューも終わりが近づいてきた。
「はい、本日の注目バンドはフルカラースコールから!」
「ギター・ボーカル、小山晴架と!」
「ベース・ボーカル、小山氷雅でした」
〜*〜
「ありがとうね、二人とも。編集してこれから流すから楽しみにしておいて!」
そう言い残してまりなさんはたったと去っていった。
ギターとベースを肩にかけた僕らはその様子を遠巻きに眺めている。
「なんだかもうすぐって感じがしてきたよ」
「はいはい、お前は楽しそうで何より」
彼に褒められた笑顔を浮かべ、もっと頑張らなくちゃなって思いになる。
あれだけの事を言ってしまったんだもん。
できなきゃカッコ悪いし、出来たらできたでカッコいい。
これは、きっとそんな感じの話だ。
「よーし、もう一回スタジオ入ろっか?」
「ふざけんな、もうメシだ帰るぞ」
「はーい……」
「なんだそのテンションは」
ベースを抱えた氷雅が歩きだした。兄の背中を追いかける弟はいつまでたってもこんな感じのままだ。
楽器を始めた時もこんな感じだったかな。やっぱり僕は弟で、それ自体はどう頑張っても変えられない現実だけど、あんま乗り気じゃない彼を、無理矢理にでも引っ張っていかなくちゃならない。
だって、このバンドには絶対に彼が必要だから。
……なんて、とても口には出来ないんだけどね。
「ねぇ、氷雅。いつもありがとね?」
「なんだよ急に、気持ち悪っ」
「へへっ……」
沈みかけの夕日が僕らを照らす。
いつも、いつまでも。
この気持ちだけは、忘れたくない。
本日の作業用BGM
「ノーダウト 」official髭男dism
月9ドラマ・コンフィデンスマンJPの主題歌にインディーズバンドとして担当した(後のライブでメジャーデビューを発表した)今話題騒然のピアノPOPバンド。
癖になるメロディがたまらないです、ぜひご一聴を。
……って、そうじゃなくて(笑) いかがでしたか?
次回からは小山兄弟を取り巻く愉快な愉快な仲間たちをピックアップしていきたいなと思います。
更新ペースも文才もイマイチですが、気が向いた時にでも見てくれたら嬉しいです。
それではっ!