BanG Dream! 〜アオハルエクスペリエンス!!〜 作:翡翠織音
ちなみに今回のタイトルに「……ん?」と思った貴方はソレ、読んでますね?(笑)
と言うわけで、今回はキーボード担当・上原怜の物語です。
それではどうぞ!
『上原さん家の事情』
僕の双子の姉・『上原ひまり』はガールズロックバンド・『Afterglow』のリーダーだ。
「よーし、今日もがんばろー! えい、えい、おー!」
「「「「…………」」」」
「って、やってよー!?」
こんな感じではあるけど、リーダーだ。
全く揃わないどころか、もうみんな言う気すらないんだろうけど一応メンバーからは信頼を置かれているギタリストだ。
でも、そんな彼女が本当の姿を見せるのは僕・弟である怜がいる時。
本当の『上原ひまり』は……
〜*〜
「れーくん、れーくーん……」
今まさに、ベッドで僕の膝に頭を乗せて撫でてもらっている彼女。
そう、本当の彼女は僕・弟である『上原怜』が大好きでどうしようもないお姉ちゃんだ。
「え、えっと姉ちゃん? 僕、そろそろ動画を撮らないとならないんだけど……翔也も来るし」
「えー……蘭ってばまたさー……聞いてよー……」
右手で構ってほしがる彼女のふわふわな頭を撫でつつ、左手には今日の撮影で使う楽譜のチェック。最近はハンバーガーを食べまくる動画だったりでどうも本業であるピアノ動画を忘れてるような気がする。
たまにはちゃんとやらないとね? ちなみに今日演奏しようと思っているのは「ノーダウト 」。最近やってるドラマの主題歌でピアノが好きだから弾いてみようかなと思ったんだ。
ちなみに機材とかも準備が終わって、後は彼が来るのを待つだけなんだけど……。
現在、僕の膝にはひーちゃんがいて動くことが出来てません。あんまりこんな所は他人に見られたくないんだけど……
「おーっす、遅くなっ……」
その時自室のドアが開いて僕の親友である山吹翔也が入ってきた。そして、バッチリあまり見られたくない膝枕も見られてしまいました。彼は、はぁとため息をついて踵を返しながら言う。
「……あのさ、姉弟でイチャついてんだったら帰るけど?」
「待ってください帰らないで! 動画撮るの手伝って!!」
右手には「やまぶきベーカリー」から持ってきたのか、パンが入った袋を持っている彼は、多少の嫉妬を含んだ目つきでピアノの前の椅子に座る。
そこからフランスパンを取りだして口に入れながら、僕らのイチャイチャが終わるのを待っているよう。
「ほ、ほら! 姉ちゃん……じゃないやひーちゃん! 一旦離れてよ、あとでいくらでも構ってあげるからさ!」
「う、うん……じゃあ部屋で待ってるからね?」
小さく手を振りながら部屋を出て行く姉ちゃん。
彼女が出て行くのを見送ってから、翔也が僕に対して。
「お前さー、イチャつくのは自由だと思うけどある程度は節度持てや?」
「う、うん……でも姉ちゃんと一緒にいると楽しいし……」
「はいはい、ただでさえパンで腹いっぱいなんだからこれ以上のノロケはいらねーよ」
フランスパンを手に、ピアノの前にセットされたカメラのセットをしながら僕の話を適当にあしらう。
むー、もうちょっと聞いてくれたっていいじゃんか。翔也のお姉さんよりすっごく甘めな日常を送ってんですよー?
とか言いたいけど、準備に勤しんでいる彼の邪魔をするのも悪いかなと思い黙っておく。
「ほら、準備出来たし。楽譜は読み込んであるんだろ?」
「うん。膝枕させつつしっかりとやってたよ」
「お前、どこかしこにもノロケを挟まなきゃならないルールでもあんのか?」
「え?」
「自覚なしか」
ノロケてた……えー、そんなつもりないんだけどなぁ?
ただ事実を言ってるだけだしね。特に狙ってやってる訳ではないです、はい。
さて、そろそろうだうだやってるのもおしまい。一発で決めて、編集は翔也に任せちゃいますか。
パンパンと頰を叩いて、モードを切り替える。ちょっとだけ前髪もあげて、準備完了。
さぁ、始めましょうか!
「皆さんこんにちは、上原怜です!」
〜*〜
僕がピアノを始めたのは、ただ家にピアノがあってそれを弾こうと思ったから。そして、のめり込んでメキメキと実力をつけて自分で言うのもなんだけど、まぁまぁ上手いと思っている。
それからYouTuberを始めたのは、僕の演奏を誰かに見て欲しいと思ったからだ。中3から少しずつアップしたんだけど、なかなか再生回数は伸びず。興味ないのかな、僕よりも上手い人なんかいくらでもいるし……。
進学した高校は若者の街・渋谷にある「渋谷学園高校」。一番家から近い学校だったし、大学への進学実績もあるしそこでいいかなって考えたんだ。
そして高校生になったのを機に動画投稿はやめよう、そう思っていた入学式終わり。
真新しい制服に身を包んで、メロンパン片手に僕に話しかけてきた。彼こそが山吹翔也だった。
「お前、上原怜ってピアノ動画をしてる奴か?」
「え、そ、そうだけど……?」
やっぱり、と一言呟いてから僕のピアノ動画を開く。
ただピアノと手だけを映して、弾くだけという今考えると無機質な動画だ。
「顔いいんだからさ、顔出しでもいいんじゃね? 俺もお前のファンだし、同じ高校に通えるなら手伝ってやるよ」
これが、僕と翔也の出会いだった。
それから彼の言う通り、顔を出していろんな曲も弾いた。
でも、ピアノだけじゃなくて……
「バブルサッカーしよーぜ」
「はい?」
「シャトルランの限界調べるぞ」
「えっ」
「お前ってさ、どれだけパン食えるん?」
「無理無理ー!」
多少過激で、フリーダムな動画もあげるようになった。
僕がしたい訳ではなかったけど、どんどんそのヤバみな深みにハマっていった……。
そして気づけば、チャンネル登録者も1万人。いつの間にやら人気者になりつつあった。
「はい、オッケー。バッチリじゃね?」
「ありがと。僕も上手くできたと思うよ」
ただ、そんな日々に多少の飽きを始めたのも事実だった。
そろそろ僕も何か違う事を始めてみたい。そう考えていた時、一つのコメントに目が止まった。
『ピアノ上手いですね! もしよかったら僕らのバンドで演奏してくれませんか?』
晴架からのコメントだった。普通だったらスルーしてるはずのコメントに僕は……
『分かりました。スタジオに行くのでお願いします』
そう打ち込んで、僕は彼らが待つスタジオへと向かった。
そこで晴架たちと音楽をしたい、そう思ってこのバンドに入ったんだ……。
なんだろうこの理由。あまりにも特殊すぎてどう言えばいいのか分かんないや。
〜*〜
「はい完了。後は時間になったらアップロードされるし」
「ありがと、助かるよ」
「そろそろお前も編集くらい覚えろよ」
翔也の役割は編集からアップロードまで。ネタ出しなんかは僕もするし一応僕のチャンネルなんだけど、彼なしでこのチャンネルは成り立たないと思っている。
「れーくん、終わったー?」
翔也が伸びをしていると、終わったのを気づいたのか姉ちゃんが入ってきた。
その様子をみた翔也は片付けをさっさと終わらせてもう帰ろうとしている。
「あれ、もう帰るの?」
「あぁ。お前らのイチャイチャに付き合ってる時間はないんでな」
もう帰るわ、と彼は部屋から出ていった。
さて、邪魔者はいなくなった。さっきみたいに僕のベッドに二人で腰かけて今度はひーちゃんが両手を広げて「おいで」とでも言いたげな顔をして微笑む。
そう、僕・『上原怜』も。
お姉ちゃんである『上原ひまり』が。
大好きで大好きでしょうがない甘えん坊な弟だ。
「ひーちゃん!」
「わわっ!?」
もう我慢できずに、彼女をベッドの上に押し倒す。
柔らかな身体と、甘い匂いが僕の脳内を支配する。ひーちゃんも満更でもなさそうな笑顔で僕の瞳を見つめていた。
そして、ひーちゃんの両腕が僕の背中に伸びてきて……
「えへへ、ひーちゃん……」
「今日もお疲れ様、私で癒されちゃえ!」
「うん……癒されちゃうぅ……」
そうしてがっちりホールドしちゃって、僕のベッドで仲良くしちゃってるそんな時に。
「あー悪い、忘れ物したわー……」
帰ったはずの翔也が、戻ってきた。戻ってきてしまった。
ひーちゃんの胸に顔を埋めている、という他人に見られたら生きてく上で致命傷になりかねない状況を見た彼は顔色を少し曇らせて。
「あー……もうお前らノリで入籍しちゃえばいいんじゃね? 後のことは責任取らねーけど」
「待って待って!! これは誤解なんです! 陰謀なんですー!!」
ひーちゃんとくっつきながら、悲鳴をあげて翔也を引き止めようと必死に大声を張り上げる僕なのでした……。
〜*〜
『上原さん家のYouTuber』
私の双子の弟・『上原怜』はYouTuberだ。
今日はどうやら質問コーナーの動画を撮っているみたい。
『狂いながらピアノ弾いてください!』
「だらっしゃあぁぁぁ!!」
ものすごい奇声を発して、顔を思いっきり歪めながらピアノを叩く弟。
『厨二感、出してみて』
「僕の瞳には悪魔の力を閉ざしてある……たやすくその封印を解こうと思うなら、それ相応の覚悟はあるの?」
左目を閉じて右手を構え、なんかそれっぽい感じの厨二感を出してみる弟。
『とりあえずいけるだけとんがりコーンほおばってみてください』
「おぉぉぉ……」
ものすごい表情を浮かべて口からとんがりコーンをリバースする弟。
私は、弟が心配で心配で仕方ないんだよ!
いつもみんなに笑顔を届けるために、無茶を続けるれーくん。
それ自体はいいことだし、私の誇りでもあるんだけど……最近本当に無茶が過ぎる気がする。
最近なんかは……
「スマブラ100人抜きー!!」
ゲームのオンライン対戦で100回勝つまで終われない、という動画を撮影していた。
朝から晩までご飯もろくに食べず、休憩抜きでやり続けてようやく100勝目を掴んで、動画のシメにそれは起こったの。
「はい、と言うわけでいかがでしたか? 皆さんは適度に休憩を……」
「取って楽しく遊んでくださいね! それではっ!」という最後の台詞を言い切れず、そのままバターンと倒れてしまった。
エンディングは「もう二度とやりたくない」で締めくくられていたけど、実はあの後私が彼を慌ててベッドに運び込んでいたのがオチ。
そのシーンはあまりにも恥ずかしいからってカットされたんだけどね。あと他には……あ、こんな事もあったっけ。
「シャトルランの限界まで走ってみたいと思います! 僕、限界を知りたいんだ」
この際、彼が自分に課したのは例え走れなくてもその音が鳴った数だけ走るというもの。ちなみにシャトルランのあの音の回数は247回。1回が20mだから……だいたい5km。
れーくんは80回くらいで間に合ってなかったけど、翔也くんが最後の音の回数まで数を数えてくれていて、その回数を走り切った。
その結果。
「…………」
また、バターンと倒れ込んでそのままピクリとも動かなくなってしまった。
ちなみにこの時のオチは「この後30分くらい動けなかった」で終わってたけど、その時もれーくんが起きるまで付き添ってあげていたんだ。本当に無茶ばっかりだからお姉ちゃんは心配だよ……。
そしてある日、そんな生活を送っていた彼に聞いてみたんだ。
「れーくんは、YouTuberやってて楽しいの?」
「うーん……楽しくなかったらこんな事出来てないよ」
そうなんだ、と返すけどもう一つ聞いてみたい事が。
それは、始めた理由だ。動画投稿を高校生からやり始めるなんて、よほどやりたかったからなんだろうけど。
気になったのもあったし、ついでに聞いてみようかなと思ってまたれーくんに聞いてみた。
すると、彼は少し考えてから私の顔を見つめて答えてきたの。
「ひーちゃんはバンドしてるけど、僕はそういう仲間がいなかったし。それだったら僕の演奏を誰かに見て欲しいなって思ったんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「……あ、あとひーちゃんに構って欲しかったし」
「ん、なんか言った?」
「べ、別にっ!」
小さく小声で何か呟いたみたいだから、聞いてみたいだけどその時は結局教えてくれなかった。
さて、質問コーナーを撮影しているれーくんだけどそろそろ最後の質問みたい。
『大好きです、頑張って!』
「ありがとう、僕もだよっ!」
うぅ、我が弟はモテモテみたいだよ……嬉しいけどちょっぴり複雑だよ……。
なんだかモヤモヤしたまま、れーくんは「それではっ!」と言って撮影を終えていた。そして……。
「ひーちゃん、そこにいるんでしょ? 出てきなよ」
「う、うん……」
どうやら最初から分かってたみたい。
その声で隠れてた私も出てきてれーくんの部屋に入る。あれだけ色々な事をしてきた割にはあまり疲れてないみたい。
「本当にモテモテだね、れーくんは」
「あはは、まぁね……あ、でも」
途中で何を思ったのか、少し言葉を止めて私の顔を見る。
そして、自慢の笑顔でこう言ってくれたんだ。
「本当に一番大好きなのは、いつまでもひーちゃんだからさ。心配しなくていいからね?」
「……れーくーん!!」
その言葉を聞いた私は、この間とは逆にれーくんを押し倒していた。そしてまたぎゅーっと彼を抱きしめて、思いっきり堪能しちゃう。
私、『上原ひまり』も。
弟である『上原怜』が。
大好きでしょうがないお姉ちゃんだ。
「えへへ、れーくん!」
「ちょ、ちょっと苦しいかも……」
大丈夫、今日は誰も来る予定がないし! 思う存分にれーくんを堪能しちゃえるよ!
さぁ、まずは……。
「やっほー、ひーちゃん。遊びに来たよー……」
なぜかこんな時に限ってモカが遊びに来た。来てしまった。
れーくんのシャツがはだけて、私がその上に跨って何かあらぬ事をしてるようなそんな言い訳不可能な状況。それを見た彼女は黒い笑顔を浮かべて。
「ふっふっふ、これはキッスからの入籍ですかー? とりあえずゼクシィ買って式に備えましょうねー」
「ち、違うのモカ! これはトラップだったの! 謀略なんだよー!!」
ニヤニヤするモカを前に涙混じりの声で弁解をする私なのでした……。
『上原さん家の秘密』
「第1回・ひーちゃんとれーくんの秘密を探っちゃおうかーい」
今日は動画のストックもあって、珍しくオフな日。
それもあって、姉ちゃんに誘われてAfterglowの練習にお邪魔する事になった。
そんな僕らの前でモカちゃんが、こう言ってわーと盛り上がっている。
「モカ……何それ?」
早く練習を始めたいのと、あんまり興味がなさそうなボーカリスト・蘭さんがそう言う。
ちなみに今日はフルメンバー。つぐみさんに巴さんも楽器の前に陣取って始まるのを今か今かと待ち構えている。
「だってー、ひーちゃんとれーくんってすっごく仲良いじゃん?」
「そうだな」
「本当に仲良しだよね」
「姉弟、だよね……?」
どうやら僕らの仲はAfterglow全員が認めているみたい。っていうか、僕はみんなからも気に入られているようでこの5人でハーレムを作っちゃうんじゃないかぐらいのレベルだ。
「まぁそんな訳で、2人の秘密ならいくらでもあるんじゃないかと思ったんですよ」
なるほど……でも、とは言っても。
「秘密……っていうほどのようなものはないような気がします」
基本的に開けっぴろげな感じだし、隠すような事もないし。
オープンな関係でいたいんだよね、僕ら。
「ふっふっふ、モカちゃんはなんでもお見通しなのだよー?」
こういう時のモカちゃんは、何か本当に知ってそうで怖い。
ま、まぁ僕らに秘密らしい秘密もないし大丈夫だと思うよ。根拠なんてないけど。
「それじゃあ、第一の秘密。『ひーちゃんとれーくんは一緒に寝てるらしい』」
「「…………」」
「え、なんで黙るの」
蘭さんが突っ込みを入れてくるけど、僕たちは何も喋れない。
なぜなら、つい数日前の話……。
〜*〜
「あ、今日バイオハザードだって。姉ちゃん、一緒に見ない?」
「えぇ!? 無理だよぅ、怖いもん!」
その日は、テレビで映画がやるから一緒に見ようとしていたんだ。
勿論、怖いのが苦手なひーちゃんは拒否していたけど僕と一緒ならって事で見ることになったんだけど……。
「きゃあぁぁ!?」
「うわあぁぁ!?」
当然のようにあまりの怖さに最初から最後まで絶叫しっぱなし。
映画の間はずっと、一緒に手を繋いで絶対に離れないようにしていた。その間、映画を見ながら僕らは……
「れ、れーくん! 絶対に離さないでね!?」
「ひーちゃんもね!? 本当に怖いから!」
こんな会話を繰り広げていた。姉弟揃って怖いのは苦手だ、じゃあなんでこんなのを見ようと思ったんだとか言わない。二人なら大丈夫かなと思ったんだけどやっぱり怖いものは怖かった。
それでもなんとか見終わって、歯を磨くために洗面所に向かう僕をひーちゃんは「待って」と呼び止める。
「れーくん……お願いがあるんだけど……」
あまりの怖さに我慢が出来なくなったのか、目に涙を溜めてうるうるになった姉ちゃんの口から信じられないような言葉が。
「……きょ、今日は一緒に寝てください」
「えぇぇぇぇ!?」
家では基本的には一緒な僕らだけど、寝る時はさすがに別。
……ちなみに、小学校ぐらいまでは一緒に寝てました。中学に上がる頃には別れてたかな。
それ以来、やっぱり一緒に寝ることはなくなった。
こんなのがバレたら僕は多分生きていけない。
でも、今日だけは。
僕もひーちゃんからのお願いを、断る事が出来なかった。
多分、僕も彼女もその日は一人じゃ寝られなかった。
ちなみに、僕とひーちゃんの関係に関しては両親は何も口を出してこない。諦めてるのか、微笑ましいと思ってるかのどっちかだろう。
〜*〜
そして、ひーちゃんの部屋。
彼女のベッドに二人で潜り込んで、また手を繋いでどうにかして怖い夢を見ないように。
暗がりのなか、二人でお喋りをして過ごしていた。
「……なんか、こういうのって久しぶりだね」
懐かしくなって、暗闇の中でひーちゃんの目を見つめてそう言う。
思えば、小さい頃の関係のままここまで来ちゃったのかな。だからここまで甘えて甘えられてな関係を続けてきたのかな……?
「うん。小さい頃って、いつもこんな感じだったもんね」
「……でもさ、高校生になって一緒に寝てるなんてみんなに知られたらどうしよう?」
「大丈夫だって! 今日の事は私たち、姉弟だけの秘密だから。蘭たちには、内緒だからね?」
「分かってるよ」
その日の夜は、僕が思った怖い夢を見る事はなかった。なんの夢を見たかは覚えていない。
でも、ひーちゃんと一緒だったから怖い夢を見ずに済んだ……のかも?
〜*〜
「「…………」」
「おーい、ふたりともー?」
モカちゃんの声で僕らは我に帰る。
マズい、これは何とかして誤魔化さないと……。
「い、いやさすがに僕らも高校生だし? ね、ねぇひーちゃん?」
「そ、そうだね……今さら一緒に寝るなんて恥ずかしいよ……」
「目線はどこに向いてるの……」
蘭さんが再び突っ込みを入れてくるけど、とにかく誤魔化そうとするのに必死で(誤魔化しきれてる訳ではない)そんなのは気にしていない。
この事がバレたら、またみんなにからかわれちゃうよ……。
「ふっふっふ、それじゃー二つめの秘密。『ひーちゃんとれーくんは一緒にお風呂に入ったらしい』」
「「「はぁぁぁぁ!?(はいぃぃぃ!?)」」」
「「えぇぇぇぇ!?」」
驚きに満ちたアフグロメンバーと、あらぬ疑いをかけられた姉弟の絶叫がスタジオを包む。
や、さすがにそれはないよ!? いくらなんでも! それもはやただのエロゲじゃん!
「じゃ、じゃあひまりの生育が良いのは……」
巴さんの震える声に、モカちゃんは「そー」と頷きながら答える。
〜*〜
カポーン、というありがちな音がするお風呂場。
同じ浴槽に浸かる姉の柔らかな二つのかたまりに、弟の手が伸びていく。
「んんっ……」
色っぽくて艶やかな声が漏れる。彼の手のなかでそれは面白いように形を変えた。
「ど、どうかな……? また……んっ、大きくなった、かな……?」
「う、うん……も、もう僕の手じゃ抑えきれないよ……」
「えへへ……あっ、れーくん……大胆すぎぃ……!」
どんどん甘さを増していく彼女の声。
もっと彼女の声を聴きたくて、溶けていく顔を眺めていたくて。
さらに彼は自分の手に力を込めた……。
〜*〜
「お風呂でのスキンシップが、ひーちゃんをここまで育てたのだー」
「……いや、モカ。普通にありえないから」
「そ、そうだよ! れーくんとは仲良いけど、それぐらいのラインはしっかり持ってるつもりだよ!」
「ひーちゃんとは普通の関係だよ! 健全だよ!」
蘭さんの冷静な突っ込みを逃すまいと、その機に乗じて否定を続ける。僕らは一体どんな風に思われてるの!? みんなが思ってる以上に僕らはノーマルだよ、異論は認めないっ!!
「……とまぁ、冗談はさておき」
「「冗談だったの!?」」
完全にモカちゃんに弄ばれる姉弟。主導権を握られ、やりたい放題にされてしまう。
冗談である事がしっかりと伝わったようなのでひとまず僕らも黙る。
ただ、気になるのはモカちゃんが不気味に微笑んでいること。
この子、もしかしたらまだ残しているのかもしれない。僕らの秘密って、あったりするのかな……?
「それでは、最後の秘密ー」
モカちゃんは人差し指を突き立てて、声を上げる。
さっきから嘘なんだか本当なんだかよく分からないから、どうせ次も……。
「れーくんとひーちゃんは、小さい頃に結婚の約束をしたらしい」
ピクンと心が跳ねる。なんで知っているの、この子。
そう、それは保育園ぐらいの頃だったかな……?
〜*〜
「ねぇ、れーくん」
「どうしたの、ひーちゃん?」
子供の頃だったけど、おぼろげながらに覚えている。
恐らくは小さい頃に言っちゃうありがちな台詞かもしれないけど、今でも話に上がってきたりするんだ。
「おおきくなっても、ずっといっしょにいようね?」
「うん、しあわせにしてみせるから。ぼくといっしょにいてよ?」
「わかったー!」
今でも、冗談ではあるけど「しちゃおっか?」「も、もー!」って感じで盛り上がってたりしている。
さすがに高校生になって、結婚の仕組みなんかもバッチリ理解した後だと、結婚は出来ないって分かるけど。
それでも、出来る事ならずっと一緒にいたいななんて思うのです。
〜*〜
「も、もー! モカってばなんでそんな事も知ってるのー!?」
「そうだよ! モカちゃんって実は未来人なの!?」
「…………え?」
僕らの言動になぜか驚きの表情を浮かべるモカちゃん。
そしてこの後、彼女の口から信じられないような言葉が飛び出してくるんだ。
「やー、確かに秘密を言うとは言ったけどー……本当だとは言ってないよね?」
「「え…………?」」
そ、そう言えば確かに本当だとは言ってなかった。
あれ、って事はモカちゃんじゃなくて僕らでその噂が本当だってバラしてしまったって事じゃん!?
「「わぁぁぁぁ!!」」
恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にしてしゃがみ込んじゃう姉弟。
姉弟だからか、その辺りの行動も似てる気がする。
「ふっふっふ、いただきましたー」
してやったりな笑顔で僕らを眺めるモカちゃん。
いつまで経っても僕らは彼女には勝てない、そう思い知らされたのでした……。
〜*〜
「あー、今日は疲れたぁ……」
「そうだよー……モカってばあんなんだから……」
練習の帰り道、商店街を歩いている。
結局練習もしたんだけど、モカちゃんに振り回されてばっかりだったなー……。
「ねぇ、れーくん。アイス食べてこーよ」
ひーちゃんが指差す先には季節としてはまだ早めなアイスの出店。
ちょうどお腹も空いてたしいいかな。いいよ、と頷いてそのお店に向かう。
ひーちゃんは大好きなチョコレート、僕はスッキリとした味わいのバニラ。ワッフルコーンに乗った白黒のコントラストが映える。
「うー冷たい……」
「美味しいね、れーくん!」
そんな笑顔で見つめてこないでよ、姉ちゃん。
どう反応したらいいか分かんなくなっちゃうんだからさ。
「ねぇ、それちょっとちょーだい!」
そう言い切る前に彼女は僕のバニラに飛びついていた。
また「美味しいね」という彼女の舌がバニラの白で染められて、ちょっとドキッとしてしまう。ダメだよ、姉弟なのに……。
「うー……僕も!」
お返しとばかりに彼女の手にあるチョコアイスを頂く。
そして彼女と同じようにぺろっと舌を出す。チョコの黒に染まった僕を見てひーちゃんも笑いだす。
「やっぱり二人で食べると美味しいね!」
「あんまり人に見られるのも恥ずかしいんだけどなぁ……」
今さらな僕の言葉に彼女はまた笑って。
ちょっと僕の前に歩き出す。
「もういーじゃん! 折角だし見せつけちゃおうよ、私たちの仲良さを!」
「いや、そう言う訳じゃなくて……あー、もういいや!」
もうどうにでもなれ。これが見つかってモカちゃんにからかわれても明日のYouTubeのコメント欄が騒ぎになっても知ったことか!
……や、それはやだなぁ。出来るだけ騒ぎになりませんように。
そう祈りながら、彼女が差し出した左手を右手で掴む。
行き交う人たちが僕らに視線を向けているけど、もう完全に僕らはゾーンに入っている。もはや世界は僕らだけのもの。
ひーちゃんの手にひかれ、これからどんな出来事が待っているのか。
楽しみに心を弾ませながら駆け出していた……。
これが僕ら、「上原さん家の姉弟」だ。
本日の作業用BGM
「鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック」 ♪ヤバイTシャツ屋さん
タワレコで注文しましたよ、完全生産限定盤!
ちなみにPVで歌詞を覚えようとしているならやめた方がいいです。あんなPVじゃ覚えられるものも覚えられませんっ!
……ってな感じでいかがでしたか?
書いてる途中で「あれ、ひまりってこんな感じだっけ?」と思ったりしましたがこれで行くと決めたので、もう突っ切ります!
次回は出来るだけ早く投稿したいのでお願いします。
それではっ!