BanG Dream! 〜アオハルエクスペリエンス!!〜 作:翡翠織音
日本がコロンビアに勝ったぁ!!
……と、ワールドカップでテンションが上がりまくりですが(笑)
今回は唯一の2年生ドラマー・岡澤唯斗にスポットを当ててみました。
それではどうぞ!
俺・岡澤唯斗はアイドルヲタクなドラマーだ。
事実、俺の部屋には推しのアイドル・「Pastel * Palletes」のグッズが所狭しと並べられている。
その中でもひときわ存在感を放っているのがドラムスティックだ。
勿論、ただのドラムスティックなんかじゃない。
パスパレドラマー・大和麻弥のサイン入りだ。
どうやってこれを手に入れたのかを話すためには、まず「フルカラースコール」というバンドでなぜドラムを叩きだしたかを話さなければならないため、もう少し後にさせてもらう。
「……あー、くそっ。また観覧募集外れてるし」
パスパレの情報をまとめたサイトを睨みながらそう呟く。
夜の生放送音楽番組に出演する彼女たちを見に行こうと、トライしてみたのだがやはりダメだった。
「よく考えたら、これ客席にいるの女子しか見たことねーからな。俺ら男子はお呼びでないって事か」
そもそも最初に気付くべきだったんだろうが、彼女たちを見に行くためなら一応賭けてみる価値はある。
と踏んだ結果がこれだ。まぁ、分かってたし特に何とも思わないけど。
やれやれとパソコンを一旦やめ、ヘッドホンを装着する。
スマホに接続し、何度かタップ。すぐに耳に甘い歌声が流れてくる。
今流しているのは「Wonderland Girl」、彩と日菜の「るんるんっ♪」という掛け合いと宙に浮かぶようなメロディ。
パスパレらしさがギュッと凝縮された曲だ。
その曲に身を委ねながら、時計をみる。針はもう3時を指していた。
「……そろそろスタジオ行くか」
バンドでドラムを叩く以上はアイドルだけにうつつを抜かす訳にはいかない。
個人練はほぼ毎日欠かさず行うのが俺のやり方だ。少しでも楽器に触れていないと下手になるような気がして、休む事はあまりない。
自転車に跨ると、ヘッドホンは首にかける。付けたまま走っていると警察に声をかけられるかもしれない。だが、首ならばセーフ……だと思っている。
パスパレの音楽に乗りながら、俺はペダルを踏む足に力を込めた______
〜*〜
風を切りながら自転車を漕いで、スタジオ「CiRCLE」に着く。
カゴに入れたドラムスティックを右手に握って、自動ドアを通るとスタッフのまりなさんが「いらっしゃーい」と手を振っていた。
「今日も練習? 頑張るねー」
「はい……少しでも触ってないと落ち着かないんで」
「あはは、あまり無理はしないでね。適当に叩いておいで」
「はい」
まりなさんとの会話を終え、スタジオに向かおうと歩み始める。
そんな俺に、彼女は何かを思い出したのか「あっ」と声をあげた。その声に反応し、足を止めて振り返る。
「どうしました?」
「うーん……今行っても多分君じゃ叩けないんじゃないかな?」
「はぁ? 馬鹿にしないで下さいよ。ライブも近いのに、時間を無駄に出来ませんし」
「おー、すごい自信。それじゃ頑張ってね」
彼女の声を背に、今度こそスタジオへと向かう。
くるくるとドラムスティックを回しながら、スタジオへと通じる廊下を抜けスタジオへ入るドアノブに手をかけた。
そんな俺の耳に、ドラムの音が。どうやら今日は先客がいるようだ。
たまにはそういう事もあるかと、特に深くも考えずドアを思い切り引いた。
似合う奴にしか似合わないタンクトップを着こなし、眼鏡をかけたままドラムをプレイする女子の姿があった。
間違いない、彼女は……。
「ふー……」
一通り叩き終えたのか、ドラムセットの近くに置いてあったアクエリアスを手に取る女子。
「ん……あぁ、唯斗さんじゃないですか。どうもッス!」
「お、おー……」
そう。彼女はパスパレのヲタク系ドラマー・大和麻弥だ。
なぜ、俺が推しのアイドルとこんな風に呼び合っているのか。
それではここでようやく。
俺がバンドに入った理由と、彼女と関わりを持つまでを話すことにしようか。
〜*〜
俺がドラムを始めたのは、ただそれがかっこよかったからって言う月並みの理由。これに関しては特に言う事も無いので、こんなもんでいいだろうか。
アイドルにハマるのもごく自然な流れだったし、特に最近はパスパレにハマっている。5人全員可愛いし、何より埋もれない個性がそれぞれに備わっている。
中でも最近は麻弥に夢中だ。あの独特な笑い方も癖になるし、そして笑った時の顔もたまらない。
そして、肝心のドラムプレイもカッコいい。まさに俺の理想を全て装備したような完璧なドラマーだ。
〜*〜
さて、俺はただ趣味でドラムを叩いていたので特にバンドに入るという考えはなかった。このまま、あくまでも趣味で叩けたらなと思っていて。そんな高1のある日。
その日も、いつも通りにスタジオで練習をしていた時にあいつらが入ってきたのが始まりだ。
「あのー……」
「ん? どした、なんか俺に用か?」
突然入ってきた彼らにドラムの手を止め、そう言う。
申し訳なさそうに入ってきた彼らには、どこかで見覚えがあるような……?
「お久しぶりです、岡澤先輩」
「なんだかあんまり変わってないですね」
「おい、失礼だろ」
あー……確か、中学生の時の体育祭だったかで同じ組だったような。クラスのリーダー的な役割で何回か会った事があるんだよな。
で、名前が……。
「えーと……小山晴架と、小山氷雅。だっけ?」
「覚えててくれてたんですね!」
「ありがとうございます」
おいおい、兄弟でこんなに違うもんなのかよ。
笑顔を浮かべる弟・晴架と礼儀正しさが滲み出ている兄・氷雅。
そう言えば、何しにここに来たんだ? いや、スタジオにいる事は音楽に関してで間違いないだろうけど。顔見せなのか、それにしてもこいつらも楽器を始めていたのか……。
色々な考えが脳内を駆け巡るなか、晴架が口を開いた。
「岡澤先輩ってドラムやってたんですね」
「あぁ。結構長いことやってるんだぜ。お前らも楽器してたのか」
それにしても、と俺は彼らが抱えている楽器を見る。
晴架のギターと氷雅のベース。それぞれ大切に使い込んでいるのか、なんだか彼らの色に染まってるような感じがした。
「はい。それで今日は、岡澤先輩にお願いがあって来ました」
「お願い? ジュース奢るくらいなら任せとけ」
軽くジョークを飛ばして、二人の顔色を見てみる。
晴架は「違いますよー」と笑顔を崩すことなく、そう言った。
いいですか、と告げ氷雅が聞いてきたので「あぁ」と返す。
こんな場所でのお願いだ、だいたい予想がついている。
「俺たちはバンドをしてたんですが、ドラマーが抜けてしまいました」
「だから、岡澤先輩に僕らのバンドに入ってもらいたいなって思ったんです」
なるほどね、やっぱりバンドを組んでたのか。
そしてドラマーがいなくなったから俺に声をかけてきたって訳だな。
でも、もう答えは決まっている。
「悪りぃ、俺はバンドに入るつもりはないんだ。趣味で叩いてるだけだし、悪いけど他を当たってくれ」
「えー……」
晴架が不満そうな顔を浮かべたのを、氷雅は「失礼だろ」といさめ「すいませんでした」と小さく礼をしてからスタジオを出ていった。
この時は、多分彼らと出会うのはこれが最後になるだろうなと思っていた。しかし、スタジオに足しげく通う以上はそんな訳にも行かず。
「あー、岡澤先輩!」
「こんばんは」
「…………」
これで一週間連続だ。流石に会いすぎだろ、俺もお前らもどんだけ練習してんだよ。
晴架はモンスターエナジーで氷雅はコーヒー。こんな所にも違いがあるのか、とつい興味深く彼らを見てしまう。
「……どうしたんですか、岡澤先輩?」
「あー、いやなんでもねーわ」
あまりじろじろ見るのもよくないよな、と思い適当に誤魔化す。
練習終わりの俺はヘッドホンを首に巻き、パスパレの音楽を流したまま買ったコーラを喉に流し込む。
しゅわしゅわとした爽快感が突き抜けて、なんとも言い難い感覚になる。
すると、俺の首から流れている音楽に気づいたのか晴架が俺に声をかけた。
「あ、岡澤先輩。それってアイドルの曲ですか?」
「おー、『Pastel * Palletes』って言うアイドルバンドだ」
「岡澤先輩ってそう言うの好きなんですね」
「あぁ。意外だったか?」
意外です、とそれぞれ答える。あんまりそう言うイメージが無かったのか、と思いながらパスパレの画像を二人に見せる。
勿論「しゅわりん☆どり〜みん」の画像だ。そのアー写が一番好きだったりする。
「どうだ、可愛いだろ? 特にこの緑の子。大和麻弥って言うんだけど……」
「「…………」」
あんまり興味がないのか二人して黙ってしまった。
なんだか申し訳なくなり、見せていた画像を閉じる。
「あー、お前らは興味なかったか。悪いな」
「……あの、岡澤先輩」
「どうした?」
晴架が何か考えているのか、遠慮しがちな声を出して俺を見る。
氷雅も何か難しそうな顔をして俺を眺めていた。
「麻弥ちゃんに会いたいんですか?」
「あぁ、会えるもんならな。でもアイドルだしなかなか……」
会えるもんならば会いたい。ただ彼女はアイドルだ。
なかなかそう言う訳にも行かないし、そもそもそんな事が出来るはずない。
「おい晴架」
「任せて、氷雅」
何を企んでいるのか、兄弟は顔を見合わせそう呟き合う。
そして、晴架が俺に対して。
「岡澤先輩。もし麻弥ちゃんに会わせる事が出来たら、僕らのバンド入ってくれますか?」
「は? あぁ、いいぞ」
何を言い出すのかと思ったら。正直言って無理ゲーじゃねーか。
プライベートで何かの繋がりがあるなんてとてもじゃないが思えない。
だから、俺はこの条件を飲んだ。こんなお願いなんて出来る訳ないし飲んだ所で何も変わんねーし。
ただ、気になるのは「よし!」と小さくガッツポーズを目の前で決める二人だ。
まさか……いや、そんな訳ないよな。まさかだし。
〜*〜
それから数日後、スタジオに続くドアの前には俺一人。
晴架と氷雅が「いいって言うまで開けないでください」と言っていたから、彼らを外で待っている最中だ。
「……まさか、な」
彼らが連れてこようとしているのは、(売り出し中とはいえ)アイドルだ。正直、ただの高校生である彼らにそんな繋がりがあるはずがないし、あったら怖い。
まぁ、彼女とて暇なはずないから。適当に練習でもして帰るかな、と思っていた時。
「入っていいですよ」
晴架の声だ。さてどうなる事やら、「やっぱりいねーじゃねーか!」とでも言ってやろうか。
期待などしていないし、するのも馬鹿らしい。
「はいはい」と期待薄な生返事をして、スタジオに入ると同時に。
「ほら、やっぱり……」
そこまで言ったところで目を見開く。
俺の前にはドラムセットがでんっとセットされていたのだが、それを今叩いている彼女こそ――――
「えっと……唯斗さんッスね。初めまして、大和麻弥です!」
「……えぇぇぇぇ!?」
間違いなくパスパレのドラマー・大和麻弥だった。
なんで、どうしてと頭がクエスチョンマークで埋め尽くされていく。その様子を一通り見終わったのか、端の方に隠れていた晴架と氷雅が姿を現す。
「驚きましたか、岡澤先輩?」
「この時間空けてもらうの結構大変だったんですよ」
いつも通りの笑顔で話してくる晴架と、やれやれと疲れたような顔でため息をつく氷雅。
それでもまだ状況が飲み込めない。こいつら、麻弥といったいどんな関係なんだ……そう聞こうとした矢先、晴架が。
「じゃあ僕らは、ちょっとだけ開けるので。後はごゆっくりです」
「は? いや待て……」
止めようとする俺を無視して、あの兄弟はさっさとスタジオを出て行ってしまった。
どうするんだよ……今俺は憧れのアイドル・大和麻弥と二人っきりになってしまったんだけど。
脳内がパニックに陥る俺を見た麻弥は、あまり意識していないのか「唯斗さん」と話しかけてくる。
「フヘヘ……驚きましたか?」
「…………」
ヤバいです。何も喋れないんです。
でもそれが普通だとは思う。好きなアイドルを目の前にして普通に喋ることが出来るなら、どれだけ良いことだろうか。少なくとも今の俺にはそんな勇気はない。
くそっ、この時間で俺に何か出来る事はないのか……そう考えていると。
「実は私ですね、パスパレに入る前にあの二人と一緒にドラムを叩いていたんですよ」
「えぇぇぇぇ!?」
再びの絶叫。結局彼女との時間はあっという間に過ぎてゆき、もう帰るという時間になりそうな時に俺はようやく勇気を振り絞って。
「さ、サインください!」
大切に使ってきたドラムスティックを彼女の前に差し出して、そう頼んだんだ。ちなみに背は45度の折り曲げて。サインを頼む姿勢ではないような気がする。
彼女も差し出した物が物だったからちょっと戸惑うような表情も見せてはいたが、最終的には快くサインをしてくれた。この瞬間、俺の部屋に飾られる事になるサイン入りドラムスティックが誕生。こうして夢のような時間は終わったのだった……。
~*~
彼女を見送った後、それが終わるのを待っていた兄弟がスタジオに入ってきた。
晴架はニヤニヤしていて、氷雅も表情を崩してはいないがだいたい弟と同じような気持ちなんだろうか。
「どうでしたか、生麻弥ちゃんは?」
「……晴架、最高だったわ」
でしょうね、と言いながら嬉しそうな表情を浮かべている晴架。何をそんなに嬉しそうにしてるんだか、と思っていたがちょっと考えてみるとある事を思い出した。
「ところで先輩」
「あの時の約束、覚えてますよね?」
今まで彼らから見たことがないような笑顔で、そう聞いてきた。
そうだった。無理だと思って不用意に「いいぞ」なんて言うんじゃなかった。
「さ、さぁ? 何の事だかさっぱりだなー……」
一番最初に考えついた作戦で、なおかつ考える限りでは最低な作戦ではあるがこれしかない。
そう、俺らがしたのはあくまでも口約束。つまりは「言っていない」の一点張りで切り抜ける事も可能……であるかもしれないのだ!
……背後からタックルを飛ばされそうで若干は怖いが、あっちの兄弟が確たる証拠を突きつけてこない以上はもしかしたらこれで乗り切れるかもしれない!
はぁ、とため息を晴架がついた。あ、あれ……これ、ひょっとして行けるんじゃないか!?
そう思ったその時、彼は後ろを振り返って。
「氷雅?」
「はいはい」
そう言って氷雅はポケットからスマホを取り出す。
何回か画面をタップすると、何やら聞き覚えのある声が流れ始めた……。
『岡澤先輩。もし麻弥ちゃんに会わせる事が出来たら、僕らのバンド入ってくれますか?』
『は? あぁ、いいぞ』
バッチリ回されてたぁぁぁ!! スマホから流れるあの時の会話。
確かに今時はボイスレコーダーとか回すけどさ、何もここで使う必要はなくない!?
「ふっふっふ、岡澤先輩。こっちも策なしでこんな事するはずないじゃないですか」
く、黒い……晴架の笑顔がダークだ。
ぐっ、と言葉に詰まる。氷雅が「先輩、もう一度聞きますね」と前置きしてから今度は兄弟二人で。
「「僕(俺)らのバンドで、ドラムを叩いてくれますか?」」
ここまで追い詰められてしまっては、もはや打つ手なしか。
はぁ、とまたため息をついて両手を挙げる。
「わーったよ。ただ、一つだけこっちにも条件がある」
初めて会った時からずっと気にはなっていたんだ。今度は人差し指を突き立てて彼らに言う。
「同じバンドでやる以上、先輩呼びはいらない。先輩後輩は関係なくやりてーから、好きな風に呼べ」
拍子を抜かれたように驚いた表情を浮かべる二人。他にどんな事を言われるのか、とか考えていたんだろうか。
少し考えていたようだが、ややあって。
「ありがとうございます、唯斗さん!」
「これからよろしくお願いします、唯斗さん」
「……あぁ、結局そう落ち着くんかい」
こうして弱みを握られた結果、「フルカラースコール」でドラムを叩く事と相成ったのだった――――――
~*~
長くなってしまったが、これが俺のバンド加入までの道のり。そして、麻弥と接点を持つようになった理由だ。
最近ではまりなさんも気を遣うようになってくれたのか、スタジオにドラムを2セット用意してくれるようになった。
ちなみに俺は、ドラムの激しさをあまり求めないタイプ。ドラムはあくまでも曲を成り立たせるベースみたいなものだ。ベース(ここでは氷雅)との共同作業でしっかりと骨格を作り上げて、後はギター組に任せる……そんなドラムスタイルで俺はやっている。
だから、俺の練習はカッコよくドラムを叩く……よりかは一見地味だが、リズムを重視したキープの練習が主だ。
曲の練習もするが、自分が満足するまでドラムと向き合い続ける。それが、俺の基本方針だ。
~*~
その日はだいたい一時間。リズムを重視して今日も一心不乱にドラムを叩き続けた。
ちょうど麻弥も練習を終えたようだったから、俺はドラムセットの横に置いてあった小さな紙袋に手を伸ばす。
中から出てきたのは、コロッケ。俺が一番好きな食べ物だ。
「ほら麻弥も。一緒に食べるか?」
「いいんですか? ありがとうございます!」
スタジオの真ん中に腰かけて、2人でちょっと冷めてしまったコロッケをほおばる。
「美味しいッスね」と話しかける麻弥に対して「そうだな」と答える俺。
……よく考えたら俺は、限りのない贅沢をしていると思う。だって、アイドルと一緒に食事をするなんて普通じゃあり得ないことなんだぞ?
まぁ、それも(無理やりとはいえ)このバンドに引き込んだあの兄弟に感謝だな。
~※~
練習帰り。その途中で必ずと言っていいほどある場所に立ち寄る。
右手に自販機で買ったコーラを握ったまま自転車を漕ぎ進め、見えてきたのは「北沢精肉店」。まさにこの店は俺にとっての「元気のみなもと」だ。
「いらっしゃーい……って、ゆーくん! 今日もコロッケ買いに来てくれたの?」
俺が店に現れたのと同時に、オレンジ色の髪をした見るからに活発そうな少女が飛び出す。
彼女は
「はい、コロッケだね? 1個で80円だよ?」
「分かった」
さっきも麻弥と食べてはいたが、どうしてももう1個食べたいと思ってしまう不思議な一品。
100円玉と引き換えに、また俺は肉厚でジューシーなコロッケにかぶりついた。
「……やっぱうめーわ」
「ふふん、もうここまで来ると時代が変わっちゃうね!」
最近よく見るCMの真似だろうか、自慢げな表情を浮かべるはぐみ。
かなりパンチの効いたしっかりとした味わいなのに、なぜか軽くたいらげられてしまうのはなぜだ。これはアレか、隠し味に愛情が入っているとかそういう感じのやつなのか。
「ありがとーございましたー!」
自転車に乗る俺の背中からはぐみが大きく手を振っているようだ。
俺も右手をあげて彼女に応える。
「家に帰っても少しくらいは練習しとくかな」
実はもうすぐ俺たちの初ライブだ。合わせたりもしているが、最後にモノを言うのは自分たちの努力の成果。
もう少しも無駄にはできない、日が傾きかけている直線を俺は思いっきり駆け抜けた…………
本日の作業用BGM
「容姿端麗な嘘」 ♪THE ORAL CIGALLETES
なんでMステでこれをやらないんだ。いや「BLACK MEMORY」もかっこいいとは思うけど。
……と言う訳でいかがでしたか? 書くペースも本当に上がっていませんが、それでも読んでくれる方がいるんで本当に感謝です。これからも週1ペースになりそうですが(笑)
次回はいよいよ最後のバンドメンバー・山吹翔也のお話です。
それではっ!