魔神族の英雄が幻想入りしたようです 作:シャイニングピッグEX
「・・・ねえ貴方、それでも第二王子『慈愛』のエスタロッサなの?」
「遠い未来に語り継がれてるのは嬉しいんだけれど、俺のことを買いかぶりすぎじゃない?」
「というと?」
「こんな出来損ないの魔神が戒禁を授かって十戒になるわけないってことだよ」
(・・・あれ?確か言い伝えでは・・・勘違いかしら?)
確かに、何かがおかしい。スカーレット家に語り継がれている三人の王子の伝説。その中で彼は、エスタロッサは見劣りしない程度の活躍はしていたはず。しかし今の彼からはとてもじゃないがそれほどに『どうにもならない』といった感覚はない。
(そういった一点ではやはりメリオダスが例外なのか、それとも逆か)
「いずれにせよ━━━吐いてもらうわよ、処刑人『敬神』のゼルドリスについてもね」
「敬神・・・?やっぱりどこか誤解があるんじゃないかな、その情報。ゼルは『慈愛』だよ?」
「やはり弟のことはよく知っているようね?聞かせてもらうわっ!」
レミリアは大量の魔力弾を放つ。それを裁ききる手段はエスタロッサにはない。
「・・・『
剣の刃で受けるが、すぐに刃こぼれしてしまう。無理もない。今のレミリアはおよそ3倍の強さなのだ。剣自体はすぐに作り直せるが、攻撃に移れなければやがては種切れである。
「やはり見込み違いだったようね。貴方の言うとおり、本当に魔神族とは思えないわ。これなら、メリオダスもたかが知れてるってものね」
「兄貴のことを馬鹿に・・・する、なっ・・・!」
エスタロッサの目と体の一部が以前と同じように闇に染まっていく。それと共に爆発的に増大していく威圧感。腐っても魔神族であるということを思い知らされる。
フランの時ほどの変化ではない。レミリアはその事を正確には把握できないが。
(でも、戦闘センスが並外れているわけでもない。魔力も大した変化はない、夜の私なら決して勝てない相手じゃない)
「でもいいの?そんな闇の魔力、博霊の巫女を傷つける可能性も十分あるわ。━━━それに貴方、その力を維持するだけでもすごい消耗しているみたいだけど?」
「警告どうも、霊夢なら、大丈夫だ・・・!」
(まずい、今までのダメージが!?)
魔神族の闇の再生能力は傷は塞げるが体内にダメージは残る。ちなみに魔力を消費しない分女神族の回復魔術とはトントンである。
「彼女寝てるわよ?━━━これは将来大物ね」
ギリギリの意識を向けて見てみると霊夢は本当に寝ていた。なんて無防備なのだろう。しかし自分の身に危機が降りかかったら何かしそうだと思えるのは、彼女への信頼なのだろうか。
「ええっ!?全力だして損するよ」
エスタロッサの体から溢れる闇の力が刺となりレミリアに向けて動き出す。だがレミリアとて吸血鬼、それも身体能力には自信があるのだ。そう簡単に捉えられることはない。
「━━━こんな腑抜けでも、魔界由来の魔神族の魔力はさすがに堪えるわね・・・!でもっ!」
エスタロッサの闇の刺以上に鋭利な槍を作り出す。洗練された魔力から成されるこの槍はまさしく必殺の槍である。
「『スペア・ザ・グングニル』」
次々と襲い来る刺をどうにか避け、時には受け流し、エスタロッサの懐へと入り込む。
「食らいなさいっ!」
「『
どこか苦しそうなエスタロッサだったが魔力を発動させる。
しかしレミリアとしてはどうにかとんでもない早さの闇の紋様による迎撃を抜け近接戦に持ち込んだのだ。自らがやられるだけで終わるのは我慢いかない。
「・・・はっ!」
かくしてとった術は諦めて距離を取る━━━━ふりをしてのグングニルを投げる。しかしただ投げるだけではない。槍の魔力を解放し爆破する。
「・・・・・・」
不意を突かれたか、はたまた闇を扱いきれていないのかうまく全反撃が発動しない。もしかしたらあの全反撃は全ての攻撃を跳ね返せるのではないかもしれない、という疑念がレミリアの脳裏をよぎる。
レミリアはその疑念に賭けることにした。どうせ異変には負けているのだから少しでも情報をとるべきだ。
(ここは━━━仕掛けましょう)
「『スペア・ザ・グングニル』」
二発めのグングニルを投げる。以前のものとは違い、魔力を纏っているためどれだけ頑強な肉体でもダメージは免れない。もし全反撃を使えるならば確実に跳ね返すはずだ。エスタロッサの目はこの槍を確かに追っている。意識もまだ闇に堕ちきってはないらしい。しかし、全反撃を使用することはしなかった。つまり━━━
「おそらく貴方の能力では跳ね返せるのは物理攻撃のみ。魔力で『内部を』作った武器はセーフでも、魔力で『外部を』強化した武器には無力のようね」
「でもまだ俺は負けてない・・・『
(なぜかしら、彼の魔力には何か違和感が━━━?)
「受けてたつ、『スペア・ザ・グングニル』!」
闇の炎と紅き槍がぶつかり合う。威力自体はギリギリレミリアの優勢である。しかし、槍を伝って獄炎がレミリアの手を焼き付くそうとする。
「俺の勝ちだぁぁっ!『
エスタロッサはとどめとばかりにさらに闇の魔力を強め、レミリアの体を闇で覆い尽くそうとする。その目は爛々と輝き勝利を確信していた。
「━━━━━はぁっ!」
「えっ?」
しかし少年の淡い期待は一瞬で裏切られる。いとも容易く剣は折られ、エスタロッサの体は吹き飛ばされる。
「・・・あっ、いやそのごめんなさい、えっと、満月の夜だからつい力が入りすぎちゃって死なないで!?」
そしてこの落差である。一応エスタロッサに合わせて手加減をしていたのだ。それを露にしてしまうあたりさすがレミリアだ。
「死なないよ!!━━━━負けかぁ。僕の目指す境地はまだまだ遠いね」
「僕?」
「・・・俺。そんなことより、ゼルのこと、だっけ?」
「えっ?『処刑人』ゼルドリスのこと、教えてくれるの?私こんな大人げないことしたのに」
「ちょっと素が出すぎだよ。戦場で大人げもなにもないでしょ。━━━本題に入ろうか。ゼルドリスは『第二王子』で持つ戒禁は『慈愛』。兄貴が、メリオダスがいるから次期魔神王『候補』で収まってるけれどね。それと、君たち吸血鬼と、その・・・」
「ああ、そういうあれはいいわ。聞いてるから」
「うん、言わない方がいいか。それでゼルは魔神族のナンバー3。魔神王やメリオダスの次だね」
「ふうん、それじゃあ貴方は?」
「俺なんてまだまだだよ。でもいつか兄貴みたいな英雄になるんだ・・・!」
「それが貴方の戦う理由?」
「?俺の戦う理由は兄貴のような英雄になって、『聖戦』を終わらせることだよ!」
「エスタロッサって・・・本当に魔神族?」
レミリアは疑問に思う。当たり前だ。彼女のイメージする魔神族とは侵略者だとか残虐非道だとか・・・そういったものだ。しかしエスタロッサの目からは一滴の悪意も感じられない。どうみても年齢相応の少年である。
「うん、俺も誇り高き魔神族の一員さ!まだまだ雑兵だけどね」
「━━━積もる話しはこれくらいにしなさい」
「ようやくお目覚めね、博霊の巫女?」
「ええ。もう所用は終わったんでしょ?━━━いい加減この異変を畳むわよ。エスタロッサは少し休んでなさい。図書館でも行って待ってなさい」
『丁度いいし送るわ』
「この声は紫の」
『パチュリーよ。━━━かなり疲労もダメージも蓄積していたようね。無理矢理だけど休んでもらうわよ』
「それって・・・?」
そう告げられるとエスタロッサはとても眠くなる。体は動かず、頭も働かない。そして意識は黒に染まっていった。
━その頃、幻想郷のとある場所━
しばらく幻想郷の上空を飛行していたメリオダスだが、一本の木を見つけ出すとそこへと降り立った。
「・・・着いたな」
「ここは?」
「妖精族にとっては故郷に当たる場所さ。今はもう━━━見る影もないようだけどな」
始めは一本小さい木があるだけの場所なのに、メリオダスが何を言っているのか分からなかった。だがその木に触れた途端周りの景色が変化して、まるで見たことのない森の中に入っていた。
「神樹は・・・言うまでもねえ、か」
神樹。妖精王の森の核とも言える存在であり、妖精族にとってもっとも重要かつ偉大なもの。だがそれは見るも無惨に焼け焦げ、僅かな木片が残っているのみだった。
「あれ、それって本ですよね。もしかして図書館から持ち出したんですか?危険だと思いますけど」
大妖精の疑問ももっともだ。パチュリーの本棚から無断で持ち込んだ。今困っているのはこれをどう戻すかだ。正直取ること自体は苦ではないが、おそらくバレている。
「初代妖精王グロキシニア━━━死亡。二代妖精王ダリア━━━同じく死亡。三代妖精王ハーレクイン━━━やはり死亡。そう書かれているな」
「その、確かですけど。妖精王様というのは遥か昔の、伝説上の存在ですよね?」
「ああ、その通りだ」
「じゃあ、師匠の探してるそいつももう寿命で死んだんじゃ?」
「その理屈は・・・あり得ないとは言わねえが。妖精族の寿命は極めて長い。数先年くらいならあるいは、と思ったんだが、はっきり言ってあてが外れたぜ」
メリオダスは周囲の森の惨状を観察する。何か思うところがあるようだった。
「妖精王の森は本来森に入るべきものとそうでないもの達を選別する。・・・なのにオレが入れたと言うことは、やはり、あいつらはもう━━━」
「・・・?メリオダスってそんな悪人なの?妖精が嫌いとか?」
「ちょっとチルノちゃん、失礼だよ・・・」
「生まれたときから、いいことなんて期待されたこともねえ。ずっと戦い続けてきたから━━━自分のやったことが正しいのかどうかも分からねえ」
「聖戦の中に生まれてきた、ってことですよね?その口振りだと。それなら仕方ないと思います」
(妖精王の森は自然そのもの。自然よりなる魔力を持つ人間、巨人、妖精、女神族には壊せやしない。出来るとすれば、魔神族の操る煉獄の炎のみ。・・・昔のオレは、どうしたんだろうな)
オレが幻想郷に来たことで間違いなく過去のオレの世界と未来の、正確には今の幻想郷には差違があるはずだ。しかしそれを感じるには情報が少なすぎる。どうにか魔界にでも行ければいいのだが。
だが、今感傷に浸ったところでどうしようもない。過去は変えようがないのだ。神樹は使い物にならず、妖精王を選別する力はもはやない。確認すべきことは確認したのでまたも二人の妖精を掴んで妖精王の森を出る。そしてもう一つの目的地へと向かう。
「えっと、今度はどっち行くの師匠?」
「弟の尻拭いにな」
「弟━━━エスタロッサさんですよね」
「あいつ!凄いメリオダスに似てるやつ!ねー大ちゃん?」
「う、うん」(・・・似すぎじゃないかな?)
服も顔も全く同じ。敢えていうなら雰囲気が殺伐としているか緩いか、大人びているか子供っぽいか。もっとも分かりやすいのは金髪か銀髪か。
「━━━なあ、一つ聞きたいんだが」
「はい、どうしました?メリオダスさん」
「幻想郷にあんな深い穴ってあるもんなのか?」
「いえ、ないです。間違いなく。・・・なんででしょう?」
その穴は、とても不思議なものだった。とにかく、『深い』そして、『暗い』。その二点だけでもとんでもなく不気味だった。
「深い━━━この魔力、似ている・・・解析誤差はほぼ0・・・エスタロッサだ、間違いねえ」
「それにしても不思議な穴だね師匠。底が見えないや「言っておくが、入るのはやめた方がいい。アイツがこれだけのことをするなんて奥にどんなやつがいても責任はとれないからな?」・・・はーい」
「でもなんでメリオダスさんはこの穴があるって思ったんですか?」
「穴があるとは思わなかったぜ・・・だが弟が怪我してることくらい、兄貴は分かってやらないとな」
魔神族の闇の力では傷を塞ぐことはできても傷を直すことはできない。だからこそあのときエスタロッサと打ち合って何らかの負荷を抱えていることくらい容易に想像できた。
(あいつは、いやあいつがいったいこんな穴を開けて何をしていた・・・?やはりキナ臭いな、幻想郷)
「せっかくだし、中を確め━━━」
『聞こえるか・・・我が代理、我が息子』
『!
ようやく聞きなれた声を一人でも聞けて心が安らぐ。そう考えるとメリオダスも案外人(?)の子である。
周囲を見回すが二人には聴こえていないようだ。念のための確認だが安心した。
『━━━━!━━━━?』
『━━━━。』
その会話はチルノにも大妖精にも聞こえはしない。分かることと言えばメリオダスの心境に何か変化が起きたということ。
「悪いがまたやるべきことができた━━━少し幻想郷を案内してもらって構わねえかチルノ、そして大妖精」
「よし!いくぞ師匠!」
「あ、待ってよ二人とも・・・」
珍妙なパーティでの幻想郷巡りが始まった。これからどうなるのかと大妖精は溜め息をつかずにはいられなかった。
闘級のインフレどうするかと聖戦の結末で結構悩んでます。
女神族と魔神族の共倒れ・・・にすると原作大罪ルートで原作メリオダスとウチのメリオダスが邂逅する可能性が!ありますけどやりませんよそりゃ。
意見・感想などありましたらよろしくお願いします。
テスト週間終わったぜヒャッハー!