ハイスクール・フリート~北の海より愛をこめて~ 作:葉桜照月
不定期ですので2話は未定。つーか執筆中。
ブロック工法式執筆法採用者なので、書けてるところと書けてないところが穴ぼこなのです。
――紋別沖 2016/4/6/1620
舞鶴女子海洋学校所属の教育艦「大和」。
その艦長、七島珠洲。
普通の高校で言うところの2年生になる我々は、艦を預かってからもう1年が経ち、すっかり海に生きる女らしくなった…と思う。少なくとも私はなったと思う。この船の副長として色々なことを体験してきたからだ。
ましてや艦長など私達に比べたら仕事量や責任はずっと大きい。そこから由来するストレスや使命感もまた、私たちの比ではないだろう。
その人物が、
「…いた」
今、目の前で、
「艦長」
「…………」
釣糸を海に垂らしている。
「かーんーちょーう??」
「ん」
艦長は釣り糸を凝視したままで返事をした。
「舞鶴より入電です、読みますよ」
「ん」
「『舞鶴から大和へ通達。貴艦は遂行中の任務完了後、北東へ航行し、幌筵島の柏原で補給を行った後で幌筵海峡にて特殊任務に当たれ』…だそうです」
遂行完了後、とある。つまり舞鶴のほうはまだ我々は任務遂行中だと思っていたようだ。
がしかし、実はとっくに任務自体は完了している。帰るのがだるいので、航行中のタービンの不調による速度低下を理由に任務完了報告を遅らせていたのだ。
当然艦長の判断だが、もう艦長がこういうことを平気でするのは慣れっこだし、帰ってもどうせすぐまた遠くまで行かされることも分かりきっているし、何よりも私達の任務が重要で、また私達自身の成績も優秀であるから多目に見られているのが大きい。
艦長のカンもまた冴えていることも理由のひとつだ。今回たまたまオホーツク海まで来てのんびりしていたいるから幌筵島…つまり千島列島のかなり北の方まで行けと言われても割りきって対応できるのだが、任務完了直後にハイスピードで直帰するコースだったらこうは行かなかっただろう。恐らくは津軽海峡、悪くすれば粟島沖まで南下していたかもしれない。
「遠いね」
艦長は釣糸を凝視したまま返した。
「まあ紋別沖まで来ていますから。舞鶴で聞かされなかっただけマシでしょう」
「…ん」
「艦長、柏原ってどんなとこですか?」
「北千島最大の有人市街。2000くらいだけど」
知らなかった。艦長は、さすがと言うべきか地理関連の知識がかなり豊富である。
艦長は、実は千島列島に関してはプロだ。大学教授並みの知識を持っている。詳しくは知らないが、時々誰かと電話でレベルの高い会話をしているようだ。
「それで最大…。寒いから人が少ない…ということですか?」
「それと火山。環太平洋造山帯を形成するから活火山が豊富」
「カムチャツカ半島のようなものですか」
「千島は『噴火による火山ガスでふもとの集落が全滅した』みたいなニュースに事欠かない」
「めちゃめちゃ危険なところじゃないですか」
「私もそんなかんじのとこで育った」
「艦長って千島の生まれなんですか」
「ん。択捉紗那島の紗万部っていう、沈降前は択捉島っていうひとつの島だったとこの真ん中あたり。火山の麓のいい村だ」
「成程、知りませんでした。ではもうタービンまわして…」
「…来たッ!」
「艦長?出航しますよ?」
「副長。黙れ。魚が逃げる」
「ええ…」
「ラーッ!!!」
「魚が逃げるのでは!?」
――――――。
艦長の握った釣り糸には、魚がぶら下がっていた。
「マイワシ」
「ええ、見ればわかります」
知らなかったけど。魚だってことしかわからなかったけど。
「私が釣った」
「ええ、見てればわかります」
それくらいはわかる。
「私が食べる」
「ええ、知ってます」
いつも艦長が自分で食べてる。
「やった、夕食は丼イワシだ」
ここまでのやり取りをして、気付く。
多分艦長がやりたいのはここまでの一連のやり取りだ。
「…もういいですか?」
「いいよ」
「じゃあ艦橋に上がりましょうよ」
「他のみんなは」
「もう呼んでます。全員とっくにいますって」
というと、艦長は親指を立てて言った。
「有能」
「艦長が無能なんですよ…」
っていうかアンタさっきまで艦橋にいたろ。(0話参照)
「もっと褒めて」
「褒めてないですよー?」
そこまで言うと、艦長はふう、と一息ついて釣具を仕舞い、立ち上がり、
「行こう、千島へ」
「だからそういってるじゃないですか」
そこまで言うとお互い無言で艦橋に向かった。
艦長がやりたいことはもう終わって、仕事モードになったのだった。
「あ」
「どうしましたか」
「調理室に渡してくる」
…なってなかった。
艦橋。
「点呼とるよ。副長、高柳うしお」
「はい」
「航海長、常陸樋芽子」
「うぃーっす」
「書記、国東詩歌」
「…(コクッ)」
艦橋要員、私含め四人。
「砲雷科」
「はい。射撃指揮所神若、駒ヶ岳両名います」
「水測員幌内、います」
砲雷科は三名だ。
「航海科」
「マストは島村、今井。います」
「電信、平山茉莉」 「電測、平山杏奈」 「「います」」
「続いて操帆担当から。操帆長那須野以下6名、既に持ち場についています」
航海科は操帆担当含め、10名いる。
「機関科」
「機関室に全員いる!」
「お、応急工作、嵯峨野も、いいい、いますよ…」
機関科も4人。
「主計科」
「主計長・荻原。おりましてよ」
「炊事、神宮寺・鈴木。いるっスよー!ちなみに今夜のメニューは…」
「神宮寺黙って。保健室朝田、います」
主計科四名。
「測量専科」
「測量長・高遠。以下、大雪、高野、夜叉神、堀江。全員います」
測量は基本全員でするが、主導となる測量専門担当が5人いる。
以下、大和乗員、計三十名。
「オーケー、26人全員いるね。
抜錨、発進準備を。タービン準備出来てる?OK。総帆展帆用意。これより本艦は北東へ転針、千島列島の幌筵島北東部の港町・柏原へ向かう。各員はさらなる気温低下を警戒し、耐寒装備を整えられたし」
「よし。呉女子海洋学校所属、K117・超大型直接教育艦・「大和」、出発するよ」
「……(ハァ…)」
「………それやらないと死ぬ的な?」
「艦長。いつものことですが…」
「…ロマンがないなあ…」
「ダメです」
n回目のやりとりだ。
「はあ…。分かったよ…。
舞鶴女子海洋学校所属、M2401・汽帆兼用測量支援教育艦・「大和」、出発するよ。
操帆班、出帆用意。
右60度、タービンは原速航行。タービンの回転については、風の様子を見て判断。
各員は引き続き各々の職務を遂行。
砲撃担当はもしもの戦闘に備えてレベル1の待機状態を継続。こちらの指示から40秒以内に攻撃出来るよう心掛けること。
各マスト見張員はそれぞれ引き続き警戒に当たれ。また付近を航行する船舶を発見した場合も艦橋へ報告。手旗信号員はあらかじめ決めておくように。
また、各マストに1名づつ記録員を配置。流氷や結氷、氷山を確認した場合は速やかに記録、報告せよ。
それ以外の各担当はそれぞれ通常待機状態を継続し、必要があれば直ちに待機状態を解除し艦橋へ報告をいれること。
各員への連絡は以上。現在時刻は西暦2016年4月6日1627。不明瞭な点は直接艦橋に知らせ。ではタービン回せ、大和、発進!」
・・・いやホント、やるときはやるんですけど。この長い指示を淀みなく言える人間が、さっきまで任務ほっぽって釣りしてたんですよ、信じられます?
「そういえば入学式シーズンですね」
「もーそんな時期?マジ?」
答えたのは常陸だった。
「もう演習が始まってるらしいですよ」
「場所は」
艦長が尋ねる。
「西之島新島沖です」
「え」
艦長の動きが止まった。・・・いつものことだけど、まあ、文脈的になんか驚いてるっぽいですよ。
「どうかされました艦長」
「西之島新島は最近の火山活動の影響で海上及び海底地形が変化したばかり」
「測量されてるんじゃ…?」
「まだ」
「…(!?)」
「は?」
「危なくないですか!?」
「危ない」
「潜水艦とかやべーんじゃね?」
「航洋艦も十分危険、座礁する」
「あっそうか」
ざわざわする艦橋を代表して艦長が締め括った。
「嫌な予感」
もっとも、まさかあんな大事になるとは艦長すら予測していなかったようだけれど。
名前 七島珠洲
NAME Suzu Nanashima
所属 (本来は呉だがいろいろあって)舞鶴女子海洋学校
所属艦 大和
役職 艦長
所属科 航海科
好きな物 イワシ
嫌いな物 〆切
得意科目 地理、特に日本近代地理
苦手な科目 英語
好きな言葉 やらなくたっていいじゃないか どうせできるし すずを
性格・特徴 「北の小天使」とまで呼ばれた天才、その正体は干物
趣味 釣り、地図旅行
出身 北海道根室支庁紗那郡紗那村
誕生日 3/31、おひつじ座
身長 148cm
【次回予告】
次回「早速寄り道して豪邸泊まって停滞」お楽しみに!