ハイスクール・フリート~北の海より愛をこめて~ 作:葉桜照月
お久しぶりです第二話です!
ここで「このセリフ誰が言ってるか分かんねーよ土へ還れハザクラこのやろう」と思っている方にご報告です!
「……()」の形で無口なのが書記・記録員の国東 詩歌、
「ヤバくね?」とか言ってる渋谷で膝上25cmくらいのスカートはいてそうなガングロ卵ちゃん的ポジションのいいヤツが常陸 樋芽子、
「~ですよ艦長」が語尾の人が副長の高柳うしおです。それ以外が基本的に艦長。
たまに艦橋外の人間が出てきます。今回はタムラさんみたいな人などが出てきます。
――オホーツク海 北国後島沖 2016/4/6/1930
「艦長、相談が」
と、伝声管で話を切り出したのは、炊事長の神宮寺抄だった。
「なに」
「いやあ、これからいよいよ任務に行くって時に水を差すようで悪いんスが…」
「遠慮はいらない」
「ありがたいっス。いや実は、味噌が足りんっスよ」
「味噌」
「不肖この神宮寺、不注意で使いすぎました。無くなりそうなんスが、どっかで補給できないっスかね」
「味噌…味噌か」
さすがに渋っている。むやみに停泊するとサボってるのがバレるかららしい。
前に話してくれたのだが…いや、その理由はどうなんですかね。
「このままだと艦長の釣った折角のイワシ、みそ煮に出来ないっスよ」
「補給しよう」
悲しいほどに即答だった。
「ここからだと、補給できるのは紗那しかないですよ」
というと、艦長は微妙な反応を返した。
「紗那か…」
「何か問題が?」
「いや…。ま、大丈夫か…」
「??」
なんだろう。
紗那と言ったら艦長の故郷に程近い。何か帰りたくないのだろうか…??
――択捉紗那島 紗那別飛港 紗那第四埠頭 2016/4/7/0200
紗那は、留別村、蘂取村と並んで旧択捉島を形成していた紗那村の村役場所在地で、かつ現在も旧択捉島地域――現在は択捉列島という主に7つの島となっている――のみならず、千島列島全域でも最大の街だ。同時に、択捉列島、国後諸島、色丹群島からなる南千島にそれぞれ一つずつ存在するフロート(紗那、古釜布、色丹)の一角でもある。ちなみに、かつて歯舞諸島と呼ばれた島々は完全に海没し、現在は歯舞群浅堆と呼ばれている。平たいその地形を生かし、新たな海上都市を建設しようとの声も上がっているが、好漁場であるため地元漁協の反発も根強く、具体的な話は進展していないらしい。
列島沈降の影響を受けた紗那は、もともとが散布半島の西の付け根に存在したため、深く開けた湾となり、東の付け根である別飛とともに良いフロートの設置場所となった。紗那と別飛の間には三本の運河が通り、紗那別飛港というひとつの港という扱いになっている。豊かな地形を生かして、現在では北海道第五の大港湾にまで発展した。規模的には苫小牧を超えて道内一の港になるポテンシャルを秘めてはいるが、如何せん近くの外国の港に恵まれていない。アンカレジやペトロハヴロフスク=カムチャツキ―などは得意先だが、ポロナイスクやコルサコフまで来ると小樽に持っていかれる。これには小樽は札幌が近いのも大きい。その点でも紗那は恵まれていないといえる。
『こちら紗那港。夜遅くお疲れ様です。…って舞鶴の大和?ああ、珠洲じゃねーか!元気か!?』
「悪い予感が…」
「??」
「父だ…」
「!?!?!?!?!?!?!?!?!??????!!!??!?!?!」
ここで働いてたのか…
『で?何の用だい?』
「補給と一旦休憩。別飛に移りたいけど、運河使える?」
どうやら艦長は父親と遭遇したくなかったようだ。
『おう、第一運河なら使えるぞ。今すぐがいいか?』
「いや、今日はもう営業終了」
『あいよ、停泊な。そうか、じゃあ朝になったら家に寄るか?』
「絶対嫌だ」
「え、艦長の実家普通に行きたすぎるんだけど(笑)」
「…(コクッ)」
「興味ありますね」
めっっっちゃ興味ある。
『ほら、御学友もそう言ってるぜ?』
「うう…」
――択捉紗那島 紗万部 七島邸 2016/4/7/0900
翌朝、艦長と私と神宮寺さんは、艦長の父親の車で紗那郊外にある艦長の実家に来ていた。
「広い…」
「広いっスね…」
広い。豪邸だ。しかも陸上である。
沈降によって、陸地として残った部分の地価は急激に高騰した。
そもそも沿岸部に都市の集中していた我が国においては、海洋沈降は非常に大きな問題であった。当時陸地で最大の都市はかつては「桑の都」と謳われるほどに養蚕業と絹織物産業が盛んだった東京府八王子市であり、また絹織物は当時主要な輸出品であったために、ここに首都機能を移転しようという動きも生まれた。『海上の人工都市を国の中心とするのは天津神の創生せし大秋津洲に対する冒涜だ』という神道原理主義勢力も絡んでこの首都移転運動は一時世間を席巻した(ダジャレじゃないよ)が、結局は天皇陛下のおわすところが我が国の中心であるという考え方により、帝都八王子の称号は東京大フロート竣工までの臨時として位置づけられた。
話がそれたが、陸に新しく居を構えることはそう簡単ではなかった。豪邸とあらば尚更である。そうなると七島家は沈降前から大地主としてここに大豪邸を持っていた由緒ある一族か、高騰した陸地にこれだけの豪邸を築けるブルジョワジーのどちらかということになる。やばい。
そんなことを神宮寺さんと再確認していると、艦長の父親―お父様と言った方がいいかもしれない―が割り込んだ。
「ははは!そうだろそうだろ!だがなんせ田舎だからな!じーさんは安く買えたそうだぜ!」
「父さんやめて…」
いや、でも、それにしても実際広い。初めて見たこんな広さ。
「おや、お嬢さまお帰りなさい」
屋敷の中に入ると、待ち構えていた執事さんっぽい人が言った。
「お嬢さまですってよ奥様」
「言われてみたいっスね…」
「やめて…」
艦長ったら、さっきからやめてとしか言ってない。
「さっきから正気を保てていませんよ艦長」
「正気しか保っていないよ副長」
「絶対保ててないっスよそれ」
こんな艦長は珍しい。カメラを持って来ればよかったが。
艦長のお母様は優しい方で、私たちを丁重にもてなしてくれたし、会話をしても極めて多岐にわたる分野において浅からぬ知識を持っていることが分かる人でもあった。なぜこの人と暑苦しい紗那港職員から任務遂行報告を平気で遅らせるような盆暗干物が誕生したのかよくわからない。
他にも艦長の実家に―というより友人の実家ならどこにでも興味はあるものだが―行きたいという人は多かったが、私と神宮寺さんしかその願いを果たすことはかなわなかったので、やや後ろめたくはあったが、そのぶん楽しまなくてはと変に意気込んでしまった。艦長の自室を見させて貰って昼食を頂いて帰ったが、これが素晴らしく楽しかった。意気込む必要など最初からなかった。
食事については、食レポ技術がないので報告を避けるが、わが艦の炊事長たる神宮寺さんが衝撃を受けるほどに美味しかった。彼女は相当ショックだったのか、帰りは殆ど無口を貫き、迅速に味噌の調達を終えると、運河で別飛側に出ていた大和に到着すると、颯爽と調理室に籠ってしまった。
駆け足です。すみません。
第三話は、とうとう横須賀の異変が大和に・・・・
もう書きあがってるんで、四話がある程度書けたら投稿します。
次回「推理して不穏な報告して暗雲」
君の中のはいふり愛が、目を覚ます――。